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時代の変化に対応した今後の幼稚園教育の在り方に関する調査研究協力者会議

1997/04/21 議事録
時代の変化に対応した今後の幼稚園教育の在り方に関する調査研究協力者会議 (第9回)議事要旨

   時代の変化に対応した今後の幼稚園教育の在り方に関する調査研究協力者会議(第9回)議事要旨


1.日  時  平成9年4月21日(月)10:00〜12:00

2.場  所  文部省5A会議室

3.出席者
  (協力者)明石、新山、小川勝音、小川博久、近藤、齋藤、塩、柴崎、立原、田中、羽豆、真山、無藤、森の各協力者
  (文部省)土居幼稚園課長、小田視学官、若生幼児教育企画官、神長教科調査官ほか関係官

4.議  事
(1)事務局より配布資料の確認があった。

(2)中間報告骨子(案)について以下のような議論があった。  

○  幼稚園教育の現状として保護者の教育に対する責任や自覚の希薄化を明示するととともに、幼児期に「やって良いことと悪いこと」がわかるようになることは「将来の善悪の判断の基礎となる」ことを示してはどうか。

○  幼児はやっていいことと悪いことを自分で判断できない場合、教師や周囲の大人の行動を見ながら行動基準を獲得していくものであり、予め決まっている「きまり」に基づいて行動するものではないということに十分に配慮することが必要。

○  直接的・具体的な体験には様々な体験が含まれており、焦点を明確にするためには自然体験の不足を明確にするべきではないか。

○  幼児期に直接的・具体的体験が乏しいことが、依頼心が強く、自我の形成が不十分な幼児が増加する原因となっているのではないか。

○  幼児を取り巻く社会の変化を捉えるに当たって、少子化、情報化の進行は著しく、既に少子時代、情報時代にあるという認識が必要ではないか。

○  完全学校週5日制の実施により教育日数が減少する中で、これまで以上に充実した教育を行うためには、幼児が我を忘れ真剣に取り組む活動、目を輝かせて自分の興味・関心を追求し、地道に遊びに取り組むことが必要であり、そのためには幼児が遊びをしっかり意味付け、我を忘れて面白いと思って取り組めるよう教師が環境の構成や直接的な援助を十分に行うことが重要になってくるのではないか。

○  幼稚園教育においても精選の考え方には重要な意味があり、幼児の活動を視野に入れながら幼児の活動が精選されるという考え方を強調することが必要。

○  活動の精選は子どもが行うものであり、その際、教師が幼児の身につけるべき内容を考えながら環境を構成することが精選ではないか。

○  幼児が自ら選んだ主体的な活動に集中的に取り組めるようゆとりをもたらすため、子どもにとって意味の乏しい活動を精選し、そのための環境を豊かにすることが重要。

○  園外の生活において十分な自然体験を確保することが困難になりつつある状況の中で、花壇の配置や小動物の飼育など日常的に自然と触れあう環境を幼稚園の中に十分に用意することが必要。

○  幼児の様々な身のこなしは、運動だけではなく全身を使って遊ぶ中で満足感や充実感を味わいながら育つものであり、また、3歳児の運動、4歳児の運動などと明確に分けることはできないため、幼児期の身体発達にふさわしい活動を大切にするという視点を一層明らかにしていくべきではないか。

○  思いやりの気持ちなど道徳性の芽生えを培うためには、人の役に立つことが自分の喜びとなるような体験的な学習で、将来のボランティア活動の芽となるような活動を大切にしていくべきではないか。

○  思いやりの気持ちや道徳性の芽生えは園内の生活の中でも培われるため、そのことを中心としながら高齢者との触れ合いなどを通してボランティア的な活動の芽となる活動を行うべきではないか。実際に高齢者との交流を行っている幼稚園では、保護者も高齢者自身もこのような交流活動が非常に大切だと思っており、様々な機会を捉えて実施することは極めて重要。

○  高齢者との交流など地域に開かれた幼稚園づくりを進める際に問題となるのはイベント的な保育になる可能性があるということである。このような活動が常に園内の交流や人間関係の深まりなどの延長線上にあることを意識しながら保育を行っていくことが必要。

○  知的教育の推進は「系統的に」や「一斉に」ということと連動して、「知的教育=知識の習得」という誤解を招くことがないよう、知的好奇心を育てるという観点から示すべきではないか。

○  知的好奇心とは興味をもつことだが、知的教育は興味をもって考えることであり、幼稚園は後者の教育を行うと積極的に主張し、従来の「早期教育=知的教育」というイメージを変えていくべきではないか。さもないと今後、両者が同一視され、知的な教育は幼稚園では行われないと誤解されてしまうのではないか。

○  早期教育に対抗しながら知的教育を推進するにあたっては、親の戸惑いが大きいことを踏まえ、知的教育が早期教育と同一視されないよう、両者の内容的な違いを明確にすることが必要。

○  早期に子どもに高度な知識を教え込むことではないということなど、これまでの早期教育への批判を記述してはどうか。また、早期教育として文字などを教えることは単なる暗記であり、本当の意味で考えることを導くものではないということをはっきり示してはどうか。

○  知的教育は従来、「遊びを通して」などと表現されてきたために不明確になっている。「ゆとり」という観点から教育を捉え直している現在、幼児が学ぶことを喜んだり、問題を解決する力を育成するという観点から、幼稚園教育本来の内容を明確に位置付けることによって小学校との連携を考えていくことが必要。

○  知的教育の重要性を示すことは賛成だが、それを本当の意味で実施するためには教師自身に子どもをみる目がないと難しいのではないか。

○  知的教育の基本的な在り方、考え方を明確にし、それが小学校の新しい学力観につながっていくということをはっきりと示せばよいのではないか。

○  子育ての経験から、子どもの生活には知的教育といえる部分が多く、当然、幼稚園の生活の中にも様々な経験があるはずであり、教師は常にそれを保護者に説明し、理解を求めていけばよいのではないか。

○  小学校以降の学習基盤の育成を考えるに当たっては、「生きる力」を育成する観点から幼小の接続の重要性を強調していくことが必要ではないか。  

5.今後のスケジュール
    5月中に2回ワーキンググループを開催し、報告書素案を検討し、それを踏まえ、次回の会議において議論することとなった。
    次回は5月28日(水)10:00〜12:00文部省5A会議室において開催予定。 

(初等中等教育局幼稚園課)

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