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情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議

1998/02/09 議事録
情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議 (第18回)議事要旨

     情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議(第18回)議事要旨

1  日  時    平成10年2月9日(月)14:00〜16:00

2  場  所    文部省5B会議室

3  出席者
 (協    力    者) 赤堀,安彦,天笠,清水,鈴木,中村,中田,長澤,永野,波多野,美馬,棟方の各協力者
 (文    部    省) 太田中学校課課長補佐,松田教科調査官,田中マルチメディア調整官ほか関係官
 (オブザーバー) 吉川 通商産業省 機械情報産業局情報処理振興課課長補佐,伊東 郵政省 通信政策局政策課課長補佐,三田 自治省 大臣官房情報管理室課長補佐(代理 熊谷事務官)

4  議  事
  (1) 第16回の議事要旨は特段の意見はなく,原案どおりとする旨の確認があった。
  (2) 事務局から配布資料の確認及び報告が行われた。
        〈報告事項〉・教育課程審議会の審議状況について
  (3) 有識者からの意見発表,質疑応答及び意見交換を行った。
        I  (株)電通総合研究所 チーフプロデューサー  吉田  望  氏
              「社会一般のネットワーク化の将来展望と学校のネットワーク化の考え方について」
        II 小松市教育研究所 指導員  森  千草  氏
              「教員の研修の現状と課題」


主な内容は,以下のとおりである。


I  「社会一般のネットワーク化の将来展望と学校のネットワーク化の考え方
    について」−社会一般のネットワーク化を予測する−


・  初等中等教育分野におけるネットワーク化をどうするかについて,プロバイダーを「経営」することを想定し,シミュレーションしてみる。
  まず,日本におけるネットワーク環境の現状を分析すると,
i)サーバー・アクセスコストの劇的低下
  中小企業のインターネット利用は加速し,SOHOマーケットは拡大し,インターネットは必需品化した。
ii)垣根を越えたインターネット利用
  E-mailによるコミュニケーションは激増。ユーザー総数572万人,うち自宅ユーザーが260万人(インターネット白書97)となる。特徴としては,利用者の8割が20−30代で,女性が17%を占め,東京に集中している。
iii)多様化するプロバイダーの概念
  アクセスプロバイダーとサービスプロバイダーが分化し,PSI(インフラを持たないアクセスプロバイダー)が登場した。パソコン通信とインターネットプロバイダー(インターネットの技術向上に追いつけない独自ブラウザ)は融合してきた。などがあげられる。

・  このような現状を踏まえ,発生する課題を考える。わかりやすくするために,プロバイダーを「経営」すると想定してみると,まず,サーバー管理,ドメイン名管理や生徒と教師のデータベース連動のID管理など,管理の問題。電話サービス・派遣・マニュアル作成などのエンドユーザー向けケアサービスの問題。ホームページ制作・制作代行,ブラックリストデータベース制作など検索エンジンの設計。また,諸運営ルールを策定する必要もあり,コンテンツ(教材)販売なども課題として考えられる。

・  これらの課題に取り組むには,ボランティアと連動しオープンな仕組みを活用した解決のための諸委員会の設置が必要だし,通信事業・ネットワーク事業者などのアウトソーシングの運営の在り方が問われる。
・  また,有害情報をいかに遮断するかも大きな課題である。「完全な」遮断はあえないので,コストをいかに下げ,利用者を増やすか,独自ドメイン(prep.jp)によるサーバー側での遮断や警察(摘発)との連動で実効性をあげることもある。
陳腐化や利用者少のリスクのなかで,子ども向け詮索サイトや検索エンジンの開発は,長期的・持続的にはいかにあるべきか。
・  ブラックリストの作成はいたちごっこで,ボランティアの活用が必要だが,漏洩には注意しなければならない。しかし,やはり完全な遮断は現状では無理だ。
・  しかし,将来的には完全な遮断の可能性もあり得るが,現状では機能していない。制御がより難しいのはホラー映像やナイフ等の通信販売など「ダークサイト」の取り扱いである。


・  ネットワーク犯罪をどう防ぐか。米国では犯罪の90%が関係者であり,発生の85%が土日に集中している。ID・パスワード管理は必要なのだが,難しい。機密情報には,回線・端末・ユーザー確認などの物理的遮断が必要だ。
・  今後学校のネットワーク化を図っていくためには,様々なルール化をいかに進めていくのか。
子どもたちのメールを教師やシステムオペレーターが見ることは可能か,顔写真などのプライバシー情報をどう扱うか,「自警団」は許されるか,「事件」の際の機敏な対応が可能か,責任の所在の明確化をどう進めるか,などである。


−意見交換−
○  プロバイターサービスとは何か。
○  ホームページ作成やニュースグループサービスのこと。接続はルーターサービスやインターネットターミナル
○  容量,基準はどのくらいが適当か。
○  企業向けはコンサルティングしているが,学校向けは予想が難しい。メールをどの位使うかで違う。
○  メールだけでなく,教材用の画像の利用もある。学校導入の際に参考になるような指標はないだろうか。
○  コストによるが,128Kぐらいは必要。もっと実態を調査し,問題点を調べないとわからない。
○  プロバイダーの今後の動向についてはいかに考えるか。
○  米国では,プロバイターは50社位に減るのではないか,と言われている。機器の記憶容量が増えるので,巨大設備を持っている企業が強いだろう。

II  「教員の研修の現状と課題」
  
・  平成8年4月に情報担当指導員として,市内の民間企業から小松市教育研究所へ出向した。
    小松市における学校へのサポート体制は,情報担当指導員が,市内の会社の技術部や営業員から情報収集して,市内小・中学校や市庁舎に指導を行っている状況である。
サポート対象は,市内の小学校25校の教職員,事務職員約410名と,中学校10校の教職員,事務職員約240名。小松市教育委員会職員及び小松市マルチメディア研究会メンバー,その他である。


・  通常の主な仕事内容は,文書受付と文書整理。パソコン研修会の開催,パソコンに関するアドバイス,パソコントラブルへの対応。パソコン教育利用研究会やマルチメディア研究会の補佐,各種情報の収集及び発信である。

・  出向当時(平成8年4月)の市内の教員状況は,殆どがパソコンを使ったことがない状況であり,便利なのになぜだろうと不思議であった。

・  パソコン研修会は,一斉研修と学校訪問研修を行っている。
  一斉研修には,教職員向けと事務職員向けに分けて開催する夏季研修会と,リーダーを養成するキーマン研修会を行っている。
  学校訪問研修は,平日授業終了後に2時間確保してもらい,学校に出向いて実施している。
・  平成8年度の夏季研修会では,教職員対象には「スーパーYUKI」の使い方を,小中学校長対象の夏季講習会でWindows入門,パソコン入門,文字入力練習,フリーランスでの作品づくりを,事務職員対象にはWindows入門を実施した。
・  平成9年度の夏季研修会では,教職員対象には,インターネットでホームページづくり,学級通信を作ろう,音を使ったマルチメディアというテーマ,事務職員対象にはインターネットでホームページ,表計算を使って,データベースってなに,というテーマで実施した。
・  学校訪問研修は,学校に機器・機材を搬入し,セットアップすることから始める。この作業を手伝ってもらうことで初心者の抵抗感を和らげ,容易さを感じさせるという啓発効果もねらえる。
・  研修テーマは,平成8年度は「Windowsをさわってみよう」,平成9年度は「インターネット体験」であった。

・  実際に求められるアドバイスは機器構造上の問題が多い。学校へのパソコン導入や,市教育委員会と学校間ネットワークに関して,ソフトの関するしては,授業で使用する既存ソフトや新規購入の際の,ソフト選定に関するものである。
・  トラブルへの対応では,ハードに関しては,電源を入れたけど反応しない等,ソフトに関しては,○○ソフトで印刷するにはどうすればよいか,など簡易なもので,直接学校に出向いたり,E-mailや電話にて対処している。

・  各種情報の収集と発信について。発信例としては「ここのところ少年による凶悪犯罪が取りざたされていますよね」など問いかけ,広く意見を求める。ただし,自分の意見はあえて述べないようにしている。



−意見交換−
○  研究所での森さんの立場はどのようなものか。
○  所長1名と所員3名のアットホームな研究所なので,思いついたことはすぐに実行に移せる。
○  学校での受け入れ方はどうか。
○  最初は抵抗が強いが,1度訪問すると,頻繁に要請されるようになる。現在市内30校中25,6校を訪問した。アポイントの取り方は,最初は校長に,「○日に訪問するので日程調整して下さい」と依頼,それ以降は情報担当教員と連絡をとる。
○  経費はどう処理しているのか。
○  消耗品については,市で負担し,給与は市と会社に半々で負担されている。
○  1日のタイムスケジュールはどのようなものか。
○  午前中は役所仕事をこなし,午後2時間研修を行い,その後は各種情報収集に当てている。
○  後任はいるのか。
○  現時点では曖昧である。今後継続していくためには,市で人材を必要とする部署への適切な配置がうまくいき,また,企業から市への貢献がしやすい仕組みが望まれる。
○  森さんはITコーディネータ制度のモデルとして,大変貴重な事例である。1人で対応できる数は学校数はどのくらいだと思うか。
○  学校へのコンピュータ導入開始直後は1人でも対応できたが,今は無理だ。10校に1人ほどの配置がのぞまれる。
○  各学校に情報担当者がいるとした場合,ITコーディネーターの配置割合はどうなるか。
○  25校ほどなら1人で対応可能。教員は学校外の人材の受け入れに抵抗が大きい。派遣されるITコーディネーターの人間性も重要である。各学校に1人ずつまでは必要なく,教育委員会に専門家を置くのでもいいのではないか。
○  ITコーディネーターに必要な素質とはどのようなものと考えるか。
○  学習指導要領や教育現場の理解がどこまで出来るか。教育分野に何らかの形で携わってきた人がよいだろう。
○  技術的レベルはどうか。
○  教員からの質問内容は易しい。むしろ,学校の仕組みを知り,学校の立場に立って経費がかからない方法を提案し,コーディネートできる能力の方が必要だ。
○  教員から求められるアドバイスは,教員養成レベルで学習していれば必要のないものではないか。むしろ教員養成カリキュラム改善の方が必要なのではないか。
○  現場の教員は学校しか知らない。新しいものへの取組が鈍い。社会勉強の機会を与えるシステムが必要だと考える。
○  その際,機器のメンテナンスまでする必要があるか。
○  業者と教育現場での,交渉の橋渡しが出来ればよいのではないか。
○  研修を受けた教員で,コーディネーター的人材になった人はいるか。
○  1,2人はいる。
○  教員の中にはコンピュータについて詳しい人もいるが,リーダーにならない。なぜだと思うか。
○  分かりすぎているので,詳しく説明しようとしすぎる傾向があり,嫌われるようだ。
○  そのような人材を教員としてではなく,ITコーディネーターと位置づければよいのではないか。
○  森さん自身はどういういきさつで,現在があるのか。
○  教育学部で特殊教育を専攻した。卒業後,システムエンジニアとして入社し,会社で研修を受講して,製造業向けのシステム作成をしてきた。現在は,必要な情報は自力で収集している。
○  自分で対処出来ない問題にはどう対応しているのか。
○  自社の技術者やメーカーの営業担当者から最新情報を得ている。
○  コンピュータを使いながら子どもに教えたことはあるか。
○  1,2回程度。来年度からは教員のサポートとして教室にも入る予定。
○  教員の資質を,コンピュータを指導に使うレベルに向上させていくために,自分が出来ることとは何だと考えるか。
○  教員はまず失敗をおそれる。これを取り除くと,あとは自分自身で学んでいける。
○  ITコーディネータに,専門家としての魅力はあるか。
○  楽しい。だが,裏付ける予算がないので,身分が不安定だ。



(主査)  ありがとうございました。本日の議事はこの辺で終了したい。追加のご意見があれば,今月中に事務局あてに電子メール等でお願いする。
  また,次々回会議以降からはまとめの作業に入っていく。高等学校の普通教科「情報」等のカリキュラム案の作成をWGを中心に行う。節目節目で本会議にも意見を賜りたい。

(事務局)  次回会議:第19回  3月9日(月)  10:00〜13:00
                             文部省 5B会議室
                             出欠の連絡は来週末までに。 

(初等中等教育局中学校課)

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