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情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議

1997/04/03 議事録
情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議 (第6回)議事要旨

   情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議(第6回)議事要旨



1  日  時    平成9年4月3日(木)14:00〜16:00

2  場  所    国立教育会館203特別会議室

3  出席者(協力者)
 (協    力    者) 相田、安彦、天笠、清水、鈴木、中田、中村、波多野、美馬、渡邉、の各協力者
 (文    部    省) 加茂川中学校課長、太田中学校課課長補佐、松田教科調査官、田浦教育助成局財務課教育財務企画室長ほか関係官
 (オブザーバー) 三叉通商産業省機械情報産業局情報処理振興課統括課長補佐、村松郵政省通信政策局情報通信利用振興室課長補佐(代理  西岡事務官)

4  議  事
  (1) 4月1日付人事異動の紹介があった。
       中村祐治副主査:多摩市立西落合中学校長→横浜国立大学助教授へ
       中学校課:高岡課長補佐(職業教育課へ)→太田課長補佐(京都大学から)
                      吉井係長(職業教育課へ)→清水係長(特殊教育課から)
  (2) 清水主査から第4回議事要旨の一部修正及び了承の確認があった。
  (3) 事務局から配布資料の説明が行われた。
  (4) 資料に基づき、概ね以下のような発言があった。

(主査)冒頭、今後の予定及び「審議のまとめについて」の説明
      第7回    4月21日  論点整理1回目
      第8回    5月12日  論点整理2回目
      第10回  6月16日  審議経過のまとめ

(主査)情報教育の在り方を議論する場合に一番重要な点は、学校教育における情報教育の基本的考え方と、各学校段階を通じた系統的な情報教育の在り方の二点である。これらを踏まえた上で、基盤整備、教育研修等の問題に入ることにしたい。
  審議のまとめをどのようにするかということについて、事前に事務局と打合せをした結果、教育課程審議会での検討材料を提供するという観点から、いくつかの考え方がある場合には、それぞれメリットとデメリットを併記するが、本協力者会議としてはこの考え方を推奨するというような書き方にすることとしたい。また、骨子が重要であり、分量的にはあまり大部なものは考えてはいない。
  情報教育の基本的考え方は、「情報教育に関する手引」に一応定義されているのものがあるが、時代の変化に合わせて変える必要がある。まず、情報教育はなぜ必要なのかという点について御議論をいただき、次に小学校、中学校、高等学校の各学校段階における情報教育の在り方等について御意見をいただきたい。

(学校教育における情報教育の基本的な考え方について)

〇  現在正式に学習指導要領に位置付けられているのは、技術科の「情報基礎」だけであり、それも、選択領域になっている。情報教育は、すべての子供達に実施していく必要がある。どう教えるかは別にして、小学校では、基本的操作とか基本的な使い方を指導する必要がある。子供達の精神的な発達段階や情緒的な発達段階を考慮しながら、情報モラルも小学校段階で扱う必要があるのではないか。また、教科内容と関連して、例えば社会科の内容で情報の扱い方を明示するなど、現行の学習指導要領に示されているものよりも克明に示していく必要がある。道具としてのいろいろな活用については、「総合的な学習の時間」がよいのではないか。
  中学校では、技術・家庭科の「情報基礎」を選択して履修させるのではなく、必修の領域にしていく必要がある。技術・家庭科は、社会や産業構造の変化に柔軟に対応してきた教科であり、内容の変更がしやすい教科であると思う。
  高等学校においては、新たな教科の設置が難しければ、家庭科か他の教科に内容として設定していく必要がある。

〇  必要性については「手引」に十分述べられているが、電子コミュニケーションが非常に発達しているので、そのことを踏まえた修正が必要であろう。また、「手引」の趣旨が学校現場での実践に生かされていない点を認識する必要があり、そこをどうするかが重要である。

〇  情報に関する新しい教科ができてほしいと思うが、そのことによって、他の教科において、授業を魅力的に変えることが可能な情報ツールの活用がおろそかになってはいけない。新しい時代にふさわしい新しい教育がスタートするために、情報教育が大きな役割を果たすと思う。

〇  中学校の生徒に何を教えたらいいのか。専門学校で扱うプログラミングなどを教えるのではなくて、情報というのは何か、情報を身につけることが今なぜ必要なのか、そういうことをきちんと教えることが重要であると思う。

〇  情報を広くとらえると、国語や社会などの内容まですべて入ってしまう。もう少し限定して議論する必要がある。小・中学校段階では国語や算数のリテラシーレベルのことを学べばよい。また、小学校低学年においては批判能力というか、基本的な感覚として、間接的に得られる情報には疑いをかけるというような基礎的素養を育てておく必要がある。小学校低学年の9歳位までの子供は理屈ではなくて感覚的に覚える。この時期に身につけたものが曖昧であったり、誤っていたりすると、後で修正するのは容易ではない。

〇  情報教育とは、情報に関する原理を教えることと捉えている。内容的には二つあり、一つは情報機器の使用法であり、もう一つは情報に関する原理についての教育である。後者をさらに、情報機器に関する原理と、情報機器を利用する人間に関する原理との二つに分けることができる。情報機器の使用法については、電話やテレビと同じように今後使い易くなったり家庭に入り込んでくると思われるので、学校教育において扱う必要はない。情報に関する原理については、教えていく必要がある。機器を利用する人間に対する原理を扱うことは自分の考えを表現したり、表現された情報を理解するのに役立つ。また、現代社会を生きていくために、人間に関する原理を扱うことも重要である。もう一つ情報機器に関する原理を扱うということは、情報化社会の仕組みを理解する上で重要である。また、副次的なことではあるが、情報科学の基礎を学ぶことにより、情報科学という専門分野の存在を知ることもできる。

〇  コンピュータの中だけに生徒を閉じ込めてしまうのは間違いである。コンピュータを、子供なりの知的生産の道具として使えるように、使い方を教えていくということが重要だ。

〇  小学校教育においては、自然体験や直接体験を重視すべきであると思う。その中で情報教育をどう位置付けていくかが課題である。小・中・高の発達段階とカリキュラム全体のバランスの中で情報教育をどう位置付けていくかという視点を見落とさないことが大切である。
  山形県の小学校に、国語の教育をずっと熱心にやってきた国語の研究校があり、そこでは情報化社会への対応というテーマを掲げて、その中で国語の在り方を研究している。この実践は、見方によっては、情報教育の一つの具体的な対応だと思う。情報化はコンピュータ対応にすぐ走りがちだが、むしろ既存の教科の中で情報教育を行っている実践研究があり、そういう成果を評価すべきかもしれない。

〇  特別に優秀な先生とか、先進的な学校であれば自然に教科の中に位置づいていくが、日本全国の学校で同じように取り扱えるかというとそうではない。教科なり、何らかの枠組みなどがないと、情報教育は推進されないのではないか。

(独立した教科の必要性について)

〇  教育は各先生方の裁量にまかされているところが大きいが、裁量にまかせてしまうと、レベルが低下するという心配がある。各学校の先生方が創意工夫を生かしながらレベルを維持するにはどうしたらよいかを考えなければならない。その具体的方策としては、既存教科の中に内容として情報教育を位置付けていく方法、表現、コミュニケーションの道具としてなど、教育方法として位置付けておく方法、それとともに、教育内容あるいは道具として、補充・深化・統合させた一つの領域または教科を設定する方法の三本建てで考えていく必要がある。新しい教科・領域は、小学校では「総合的な学習の時間」が適当と思うが、学校の裁量にまかせるのではなく、ある程度拘束できる示し方をする必要がある。中学校では、技術・家庭科の「情報基礎」を必修として位置付けていくことが必要であり、高等学校は、普通教科としても位置付ける必要があると思う。

〇  情報教育は、国民の教養として必要であるとの前提で考えるべきである。一番重要なのは、情報についての正しい理解であり、また、情報活用能力の育成も大切である。
  小学校では、「総合的な学習の時間」を活用するのがよいと思うが、他の教科でも当然実施するような方策をとらないといけない。しかし、あらゆる教科とすると拡散してしまうので具体的に位置付ける必要がある。
  必修として中学校でも高校でも扱うとなると、教員養成の問題、条件整備の問題、授業時数等の問題がある。必修にするには時間をかけて内容を議論していく必要があるので、そうした制約を考慮すると、中学校・高校では選択教科として位置付けるのが現実的ではないか。

〇  現在、各教科の中に情報教育的内容が入っているが、それを実施するかどうかは教員の裁量に任されており、そうなるとやはり、実施されない。教科の中に実施すべき内容として明確に位置付けなければいけない。
  また、中学校は義務教育の最終であるという点と、中学校から高等学校への系統性を念頭に内容を考える必要がある。教員養成とか、いろいろな問題があるが、中学校の技術科をうまく活用して、中学校段階である程度のことはしっかりと位置付け、高等学校へ引き継いでいくこと、既存の教科の中に情報教育を位置付けていくのがよいのではないか。
  理想としては、情報科目というようなものを小学校からできればよいと思うが、人員確保や環境整備の問題があるので、本格的実施は10年後を目指すということで対応してはどうか。

〇  何人かの先生から御意見が出ているように、やはり、各教科で情報教育に取り組んでもらうことは必要である。これからの教育がどうあるべきかという観点の中で、情報教育の位置付けを考える必要があり、中央教育審議会では、「生きる力」ということを言っている。各教科に自己学習力という観点で「情報の収集、選択、整理、処理・・」というような情報活用能力の育成が含まれるべきであり、それを教科の内容として入れる必要がある。「情報に関する原理」の部分については、独立の教科、領域等で教える必要があるだろう。それをどこに位置付けるのかはまだよく分からない。
  情報教育についても、将来はこういう方向に進むべきだという明らかな見通しが必要であり、審議のまとめでもそれを記述することが必要だと思う。

〇  小学校では独立教科は必要ない。小学校における情報教育は、コンピュータを教えるかどうかではないと思う。もっと根源的な教育方法とか教育内容の問い直しが起こっているような気がする。子供たちの主体的な学びを奨励するとか、問題解決能力を育成するとか、表現力を養うとか、論理的思考力を養うということが、コンピュータを導入することによって、その学ぶきっかけができるのではないかと思う。小学校では、操作を教えるとか、コンピュータを使うかどうかということではなく、今の教育が抱えている課題に取り組む際の道具として扱うのがいいのではないか。

〇  問題解決能力を育てるということは、ある意味では一貫して求められてきたことであり、なにも新しいわけではない。情報教育という新しいネーミングで実施するからには、既存教科と「情報教育科」との違いを明確にし内容を決めなければならない。従来の問題解決能力と違うところは、パソコンなどのメディアをうまく使うという点にしかないと思う。もちろん、教科としては小学校はいらない、慣れればいい。情報教育科としての独自性は何かというところをアピールするには、パソコンなりメディアなりを活用するという観点で明確化されなければならない。小学校段階はツールに徹すること、中学校段階になると、仕組みが知りたい、「情報科学」とは何だろうと興味を持つ子が出てくるので、中学校の選択教科でそういう希望に対応することが必要である。高等学校では、さらに専門的にやってみたいという子供が一定数必ず出てくるであろうから、そういう子には専門的な教育を用意していく。そうでない限りは、一般教育として、普通教育の一部としてツールに徹することでよいのではないか。

〇  コンピュータは考えるための道具だということに徹底する。学術分野における学際的な領域もパソコンが自由に使えるようになってこそ実現したのであり、目の前にあるツールが世界を変えつつある。

(主査)  どうもありがとうございました。今回まで自由な意見交換をしていただき、情報教育の基本的考え方と各学校段階における系統的情報教育の在り方の二つに絞って御議論いただいた。これまでの議論を整理して、次回と次々回の二回にわたって論点整理を行い、その後、6月16日の第10回会議までに審議経過のまとめを行いたい。論点整理については、キーワード的なセンスで、大項目があってその下に小項目というような体裁を考えている。論点整理の提案の仕方としては、ワーキンググループで作業をしていただく方法と事務局で案を出す方法と二通り考えられる。作業の手順については、事務局と相談させていただくこととしたい。論点についてこんな項目あるというのがあれば、14日までに、メール等で送ってほしい。


(閉会)

(初等中等教育局中学校課)

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