情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議
1997/01/20 議事録情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議 (第3回)議事要旨 |
情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議(第3回)議事要旨 1 日 時 平成9年1月20日(月)14:00〜16:00 2 場 所 国立教育会館203特別会議室 3 出席者 (協 力 者) 相田、赤堀、天笠、加藤、清水、鈴木、中田、中村、長澤、永野、波多野、松野、美馬、棟方、渡邉の各氏 (文 部 省) 加茂川中学校課長、高岡中学校課課長補佐、松田教科調査官、田浦教育助成局財務課教育財務企画室長ほか関係官 (オブザーバー) 吉川通商産業省機械情報産業局情報処理振興課課長補佐、村松郵政省通信政策局情報通信利用振興室課長補佐、三田自治省大臣官房情報管理室課長補佐(代理 菊田事務官) ( 意見発表者 ) 岡本電気通信大学教授、大岩慶応大学教授 4 議 事 (1) 清水主査から議事要旨の確認があり、主査と事務局が確定することが了承された。 (2) 事務局から配布資料の説明が行われた。 (3) 2名の学識経験者からヒアリングを行い、それぞれ質疑応答が行われた。続いて全体討議が行われた。発言内容は以下のとおり。 (岡本教授説明要旨) 〇 情報教育については、 コンピュータや情報そのものを教えるというaboutの教育、 コンピュータやネットワークを介して学習を支援するというthroughの教育、 コンピュータやネットワークを道具として利活用するというwithの教育がある。内容、教具という視点で考えると、内容という点では、情報教育を独立教科として教えるというのはaboutの教育であり、教科教育との総合学習による情報教育はwithの教育である。教具という点では、独立教科としての情報教育では、コンピュータ自体が情報教育の教具であるのは言うまでもないが、教科教育においても、基本的にはコンピュータは各教科の目標を達成させるための教具である。このあたりを整理し考えていく必要がある。 〇 コンピュータは、単なる目的的な道具として利活用する考え方があるが、思考、表現、伝達の手段であるとともに知性、コミュニケーションの増幅器であり、新しい思考の枠組みとか情報文化というものを醸成するようなインパクトのあるものではないかと思う。 〇 小・中・高一貫した情報教育に関するカリキュラムであるが、小学校では、独立教科よりも総合的学習として扱うべきであり、表現、コミュニケーションに関する内容で構成するのがよいと思う。中学校では、情報基礎をさらに発展させ、情報に関する基礎的概念を教えるとともに、総合的な学習としての課題研究を設置するのがポイントである。高等学校では、情報化社会に対応できる国民的素養の学習や高等教育への接続性を考える必要がある。 〇 情報教育を独立教科としたときのキーは、核になる内容は何かということであり、コンピュータの基本的仕組、データ構造、アルゴリズム、プログラミングなどをどのように扱っていくかということである。周辺のことがらについては、他の教科の中でもいろいろな形で充分にやっていけると思う。 〇 クロスカリキュラムの長所は、各教科の中で身近に扱うことができるので情報活用能力の習得がスムーズにいくということと、すべての教科の教員が情報教育の重要性を認識することができるということである。短所としては、情報教育の基礎概念が扱われにくいということがある。 独立教科の長所は、体系的教育ができるため社会の動きに敏感に対応した考え方や新しい知識を積極的に授業の中に導入できることと、将来的に安定した教科としての位置付けが可能になることである。短所としては、専門的教育とみなされるため、各教科における情報の扱いが希薄になり他の教科の教員が横を向いてしまうおそれがあることである。 いずれにしても、教科の中で分散してしまうと、情報技術が家庭の中で日常化していくであろう将来、利活用としての情報教育はもはや必要ないということも起こりうる。 〇 情報教育の手引に書かれている情報活用能力の4つの内容は重要であり、独立教科を設けるとしても、その中に適切に位置付ける必要があると思う。 〇 アメリカ等に見られるコンピュータ・コーディネータ、ティーチング・アシスタントなどによるサポート体制の充実、地域の企業、保護者、学生等が学校をサポートするという地域との連携や、教員養成制度や教員採用試験等の見直しなど、指導体制の充実が不可欠である。 〇 情報教育の実施のためには、誰もがネットワークにアクセスできる環境、マルチメディア教材が作成できる設備、情報資源の電子的手段による公開促進などの条件整備が重要である。 (大岩教授説明要旨) 〇 入試の採点にコンピュータを使うようになり、コンピュータで測れるものだけで人間の能力のすべてを測るようになったため、解き方だけを覚え、論理的な思考ができない学生が増えている。学生に論理的思考を訓練するのは大変難しい。18歳で初めて自分の頭で考えさせるのは遅すぎるというのが実感である。 〇 今後は、本当に必要なものは何かということを考える必要がある。フランスの数学では答案を数式を使わずにフランス語で書かせるし、答えがあっていても説明がつかないと認められない。計算という概念を理解するためには、プログラミングが大事である。具体的な問題の定式化は数式で書くよりも、計算でした方がわかりやすいということであり、計算とはプログラミングであり、プログラミングとは仕事の手順である。プログラミングは作る喜びもある。 〇 プログラミング教育では、これまでの言語などの技術教育ではなく、具体的な問題を解決するために、仕様(何を作るか)、設計(どう作るか)、実現(設計に基づく作成)、評価、評価に基づく仕様や設計の変更という一連の手順を考える力を育成することが大事である。 〇 何を作るかから実際に作って評価することまでを議論することにより、論理的な思考力とコミュニケーション能力を育成することにもつながり、教材としてもプログラミングが有効であると思う。 ○ 小学校では、キーボードを一本指で叩くというような悪いくせをつけないことが大切なことである。中・高等学校で情報科という教科が必要であると考えるが、中学校では、ワープロを使って文書をきちんと作ることなどを取り上げてはどうか。例えば1万字の論文を書かせようとすると構想がしっかりしていないとうまくいかないし、資料を検索するためにインターネットを使うなどの多面的な学習もできる。 〇 プログラミングをきちんと教えれば、コンピュータの原理がわかり、書かれたとおりには動くが思ったとおりには動かないということがわかる。人間の思考を概念化することが大事である。プログラミングなどの情報教育を充実していくためには、教員養成が大きな問題である。教員養成系大学でも、コンピュータ科学などの専門教育を行うような方向で考えてほしい。 ○ 21世紀は、情報教育が識字教育と同じ意味を持つ可能性が高くなる。数学を勉強していない人が数学の教員になることはあり得ない。情報教育をどうするかというときには、コンピュータの専門家の意見を十分考慮してほしい。 (全体討議) 〇 一般的にコンピュータ科学、コンピュータ教育という場合と、学校の教員が言っているコンピュータ教育とは概念的なズレがあると思うが、それは情報教育やコンピュータ教育の定義がきちんとなされていないからではないか。 〇 独立教科とクロスカリキュラムの関係であるが、道徳や体育と同じように、学校全体でいろいろな教科等で扱うとともに、それを補充・深化・統合する教科を学習指導要領に明確に位置付けることにより、お互いの長所が生かせると思う。 〇 現在の教育では、同じようにしないと認められないという状況がある。コンピュータ教育が、ひとりひとりの思考や方法が違っても、答にたどりつければいいんだという考え方でスタートし、そういった考え方が他の教科へも波及していけば、はじめて教育改革ができるのではないか。 〇 プログラミングというと、技術であるという見方になって難しいと思われるが、ある状態を次の状態に変えていくという作業により日常的な問題を解決していく手続きがプログラミングであり、小学生にも教えることができると思う。 〇 教員養成大学でも情報教育学科というものを設置しないと、きちんとした教員養成はできないだろう。そのためには、独立した教科が必要ではないか。 ○ 教員養成は非常に大切であるが、情報科学全体を教えることができる人材は非常に少ない。 〇 プログラミングについて、答えが出ればよいということで解決へ至る糸口の多様性を認めることと、悪い作法を身につけないようにということとは、表裏一体ではないか。 〇 中学校でも、すべての子どもが学ぶものと、興味・関心が分かれてきたときに、ある程度選択して学ぶものがあってもよいのではないか。 〇 総合的な学習活動との関係で、コンピュータと創造性との関わりをどのように整理していくかについても議論していくべきではないか。 〇 プログラミング教育は、一般に、問題の分析能力を養うのに大きな効果があるのではないか。 (4) 今後の日程について事務局から説明。 次回以降の進め方は、当面、 学校における情報教育の基本的な考え方、 各学校段階を通じた系統的な情報教育の在り方について議論することとし、各協力者から検討すべきテーマについて事前に意見を提出してもらうこととした。 |