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情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議

1996/10/18 議事録
情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議 (第1回)議事要旨

       情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議(第1回)議事要旨



1  日  時    平成8年10月18日(金)14:00〜16:00

2  場  所    文部省5B会議室

3  出席者  
(協    力    者)赤堀、清水、中田、中村、長澤、永野、波多野、松野、美馬、棟方、渡邉の各氏
(文    部    省)辻村初等中等教育局長、遠藤大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、加茂川中学校課長、高岡中学校課課長補佐、田浦教育助成局財務課教育財務企画室長ほか関係官
(オブザーバー)吉川通商産業省機械情報産業局情報処理振興課課長補佐(代理  前川係長)、 村松郵政省通信政策局情報通信利用振興室課長補佐、三田自治省大臣官房情報管理室課長補佐(代理  新田事務官)



4  議  事

(1) 協力者会議の発足にあたり、辻村局長から挨拶があった。

(2) 協力者、オブザーバー、文部省関係者の紹介があった。

(3) 協力者の互選により、主査に清水氏が選出された。副主査については、次回会議までに主査が決定することが了承された。

(4) 清水主査から主査就任にあたっての挨拶があった。

(5) 事務局から配布資料の説明が行われた。その中で、議事等の扱いについて「審議会等の透明化、見直し等について(平成7年9月閣議決定)」についての説明の後、協力者に諮り、会議及び議事録の非公開、議事要旨の公開が決定された。

(6) 中学校課長から検討事項の趣旨等の説明があった。

(7) 自由討議が行われ、概ね以下のような発言があった。

○  情報教育については、すべての教科を横断して進めていく考え方と、独立した教科を設け進めていく考え方がある。現状では、独立した教科ではないが中学校の技術・家庭科の「情報基礎」という領域を中心として取り扱われており、これを将来どうしていくかが課題である。

○  コンピュータの活用には、適切なソフトが重要である。教員の関心は、これまでのコンピュータをどのように活用するかというレベルから、インターネットなどのマルチメディアによる多元的な形で情報教育をどのように進めていくかということに移っている。また、教員によりコンピュータに関する指導の力量に差があり過ぎるため、研修会のレベルをどこに置くかが課題である。教員全体のレベルアップを図っていく必要がある。

○  中学校の情報教育は、技術・家庭科の「情報基礎」を中心に行われているが、現在は選択して履修すべき領域となっているので、独立した教科にするか、または領域を充実する必要がある。もし現在の履修方法であれば、すべての生徒が履修すべき領域にする必要がある。また、教科の指導方法は教員の裁量によるところが大きく、必ず選択肢の一つとしてコンピュータによる指導ができることが必要である。そのためには研修の体系化、充実が必要であり、センター等で行う研修もあるが、校内における研修を充実させることが重要である。例えば、情報主任といった研修を支える専門家の位置付けが必要であると思う。

○  情報化への対応の必要性について全般的な意識をどのように高めていくか、コンピュータの活用のイメージをどのように描いていくかなどの情報が求められている。施設面ではコンピュータ室をどう整備していくかが重要であるが、コンピュータがコンピュータ室の中に閉じ込められてしまうという問題もあるので、それを学校全体の情報化にどう位置付けていくかという発想が大事である。コンピュータの管理運営を組織の中でどう位置付けていくかも重要である。

○  小学校に関しては、カリキュラムデザインを示せばうまくいくのではないか。現行スタイルで情報教育をうまく実践している所もある。問題点としては、考え方は分かったが、システム導入の際にコンピュータ室に置かなければいけないとか、とにかく安いものを設置するといった実態がある。学校と行政の認識にずれがあり、この協力者会議として、うまく後押しできる方策を考えていきたい。例えば、インターネットを全国の学校へ導入するということについても、現場の体制が整っておらず動きについていけない。ビジョンが逆の効果となっている。一つのモデル的なものをメディアを使ってうまく見せ、どう機能しているかを評価できないか。
  中学校・高等学校では、現在は教科の中の一部として取り扱われている印象が強い。独立した教科とするのがよいかどうかだが、他の教科との兼ね合いが難しい。
  教員養成については、コンピュータの利用だけの問題ではなく、情報という概念のトレーニングが重要である。

○  情報教育といった場合、現状では操作中心のコンピュータ教育であると思われているなど、情報教育の中味がはっきり認識されていないという問題がある。教科の設置など情報教育に責任をもつ体制が必要である。

○  インテリジェントスクール設置の経験から、コンピュータをコンピュータ室に配置する集中型と各フロアのオープンスペース等に2〜3台を配置する分散型があるが、分散型が慣れ親しむにはよい。
  また、開校当時は、コンピュータを使える教員がいなかったので全教員が相互学習をした。ある先生が実践したのち、他の先生が生徒役になって同じ体験をするなどして、2年くらいで全員が使えるようになった。また、パソコンクラブを作り、地域の人材を活用して教員が学んだということもあった。小学校では教員の年齢が年々高くなり、指導者の問題がますます困難になっている。現職教育に力を入れることが必要である。
  小学校では授業に使えるソフトが少ないことが大きな課題である。教員が実態にあわせて作るのは時間的に大変である。研究機関とタイアップし、子どもの反応を伝えてソフト開発することによりソフト不足を解消した経験がある。

○  コンピュータやネットワークを利用することにより、子どもの思考過程、理解過程にどのような変化が生じるのかということを踏まえて利用を考えていく必要があるのではないか。例えばワープロを使って文章を作成する場合、頭に思いついたものを入力し、それをカット・アンド・ペーストして整理していくという思考過程になってくるというように。その点を踏まえ、授業のどの部分で利用すれば有効かを考えることが必要である。

○  障害のある子どもたちが、ワープロなどの情報機器を使うことによりコミュニケーションをとり社会へ出ていくことができるようになったが、将来社会の中で生活できるためにはどのような教育をすればよいかということが、特殊教育における情報教育ではないかと考えている。

○  情報教育とは何か、どのようなことをするのか、どのような心構えが必要かといった情報教育のための情報が不足していることが課題である。さらに教科の授業の中で使えそうなソフトが少なく、ソフトを自作する時間や予算もない。情報教育の実を結ぶためには、ハードの整備だけでなくソフトの充実が必要である。

○  イギリスでは、モデリング、コントロールといった情報科学に近い考え方が入っており、日本のような教科に完全に密着したソフトは少なく、情報活用能力を育成することにウェイトを置いている。イギリスの中学校では、情報活用という情報科学の基礎を重視した内容となっている。

○  情報教育の考え方については2本立てで動いている。一つは、情報化に対応してコンピュータを道具として活用する万人のための情報教育である。もう一つは、情報科学、情報学といった新しいタイプの学問としての情報教育である。大学ではスタートしているが、高校でも基礎的な学問として行う必要があるのではないか。

○  アメリカでは、コンピュータの使い方から勉強するのではなく、何かを学ぶ過程で目的・活動に応じて必要な技術・能力を身につけるという方法である。日本や韓国では教養として学ぶという「勉強型」であるが、目的があって利用する方が、子どもも教員も積極的に関わっていけるのではないだろうか。

○  アメリカではネットワークが整備されており、アクセスする方法がたくさんある。ハードの整備だけでなくネットワークが利用できる環境づくりが重要ではないか。また、インフラを整備してもソフト面が伴わないということもあり、インフラ整備と共にソフト面の整備も必要である。

○  外国では、教科の教員とは別にIT(Information Technology)コーディネーターという専門職を設け、各教科の教員の相談を受ける制度があり、うまく機能している例がある。人材や組織をどうするかということが重要ではないか。

○  情報処理技術者等委嘱事業は制度としてはよくやっていると思うが、企業で使いものにならない人材を送りこむ例もあり、その制度をうまく機能させるようなプラスアルファが必要ではないか。例えば、最低でも教育に興味がある人でなければいけないなどの資格を設けることなども考えてよいのではないか。

○  これまでの研修は操作中心であり、すぐに授業に結びつかないため、授業に密接した研修を行う必要がある。

○  教員にとっては、子どもの喜ぶ顔がやる気を起こさせる動機付けとなる。そのような取り組みを行っている学校をモデル校として位置付け、そこを教員が参観することが有効ではないか。

○  ソフト開発は、教員のほかに教育学、心理学などの専門家を加え、チームで具体的なものを作り出していくことが必要である。

○  アメリカではボランティアでネットワーク上の教育ソフトを作るグループがあるが、日本においても体制を組んで学習用のネットワークソフトを作成することなどを考える必要がある。また、アクセスして必要な情報が常時出てくるような環境やソフトの作成など、スタートの段階でネットワーク情報をどう構築していくかが大きな課題である。

(8) 次回の日程については、事務局で協力者の日程を調整し、後日、改めて連絡することとなった。

(閉会) 

(初等中等教育局中学校課)

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