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少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議

2000/05/31 議事録
少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議(第1回)議事要旨

1.日  時    平成12年5月31日(水)  10:00〜12:10

2.場  所    ホテルフロラシオン青山「クレール」(3階)

3.出席者    
  (協力者)坂本主査、鵜養、榎並、恵美、大野、大日向、尾木、越智、小林、佐藤、佐野、菅谷、杉田、高橋、滝、多田、田村、中田、中原、楢崎、根舛、野口、長谷、秦、花田、藤崎、藤田、前橋、宮川、森田、諸富、若井
  (文部省)御手洗初等中等教育局長、玉井審議官、徳久中学校課長ほか

4.議  事

  ・  御手洗初等中等教育局長よりあいさつがあった。
  ・  主査に坂本昇一協力者が選出された。
  ・  議事の取扱いについては、会議及び議事録については非公開とし、議事要旨を公開することとされた。
  ・  事務局から少年の問題行動の状況等について概要の説明があった後、フリーディスカッションが行われた。その概要は以下のとおり。

○  子どもの意識と行動の変化のテンポが非常に速くなってきているが、それを十分とらえ切れておらず、対応との間にギャップができてしまっている。対応を考えるに当たっては、事件やそれに関わる青少年が訴えているものをとらえることが出発点になるのではないか。

○  最近発生した凶悪事件ばかり注目されているが、新聞が記事として取り上げない、「普通の」事件を引き起こす子どもも、凶悪事件を起こす子どもと同じ問題を抱えていると考える。凶悪事件だけに目を向けるべきではない。

○  学校の先生方の意識自体は「抱え込み」から開かれた「連携」へとずいぶん変わってきていると思う。しかし、関係機関と連携を取ったあとは相手任せになってしまっている。連携とは他の機関に任せきりにすることではないことを認識すべきである。

○  日本も犯罪の激しい国々の状況に一歩近づいた感がある。地域や家庭の機能が子どもたちの意識や行動の変化に対応し切れず、社会が空洞化しているように思われる。様々な地域が持っている教育資源を有効に学校の中に結びつけるリンケージ機能を今一度踏み込んで設定すべきである。

○  最近はちょっとした親子のトラブルで、いきなり失明寸前になるような物を投げるなど、恐ろしくなるようなケースが増えているように思う。

○  最近の少年による凶悪な事件をセンセーショナルにとらえ、特異なものであると見るのではなく、社会に共通した根本的な問題としてとらえるべきである。子どもに今一番やりたいことを聞くと、眠りたいとか大声で暴れたいという回答が多い。また、死にたいと思ったことがあったり、生まれなければよかったと思ったりするところまで来ている。我々が今後取り組まなければならないのは、制度疲労した学校教育システムの修復ではなく、根本的な改革ではないか。

○  最近、体は中学生でも幼稚園児のような、小学生でも2歳児くらいのような子どもがいる。こうした子どもが2、3人いれば学級集団は成立しない。学級崩壊以前に学級集団未成立状態になっている。

○  子どもの社会性が未発達。本来社会性を育むための場で社会性が育まれなくなってきているのではないか。大勢で遊ぶといった社会性を身につけることをしていない。体験を重視した活動など、従来の学校がやってきたような集団の中で子どもが育つという部分をもう一度見直すべき。

○  今回のような事件が起きた場合、短期的な対応と中長期的な対応を考えなくてはならない。問題を引き起こした子どもの更生や被害にあった子どものケアなどの短期的対応は、学校では難しいので積極的に関係機関との連携を図るべきである。しかし、子どもの社会性を育むといった中長期的な対応については学校教育に期待されており、学校をベースに地域や家庭の力を借りつつ社会性を育むことができるよう立て直しが必要。

○  連携協力ということについて、言葉では分かっていても具体的にどうすべきなのかということが学校に浸透していないのではないか。

○  子どもの社会性の未熟さの背景には、自分の子どものことしか考えられないという、親自身の社会性の欠如がある。

○  子どもの急激な変化がある一方で、子どもが求めるものは昔からあまり変わっていない。子どもは、親や先生から一方的に指導されるのではなく、コミュニケーションを求めている。

○  「抱え込みから連携へ」に加えて子どもたちを元気づけるという意味での「多様化」がキーワードではないか。元気づけるコツは本気で子どもの相手になるということである。

○  今の子どもは大人が怖くない。大人にはかなわないということを知らせなくてはならないのではないか。子どもにとって尊敬できる大人が必要である。また、地域の大人が子どもに自然にかかわり合えるシステムを考えていくべきである。

○  凶悪な事件を起こしてしまった子どもに対して、その社会的意味を理解させたり、被害者の痛みを分からせることが非常に重要なことである。

○  重大な非行に発展する前の問題行動段階からの把握と対処が重要である。そのためにも、親であれ、学校の先生であれ、警察の職員であれ、問題行動の初期の段階で子どもたちの話を聞くことが大切である

○  子どもたちに対し、悪いことは悪い、良いことはほめるということがどうしたら徹底できるか考えたい。

○  最近の傾向として、日本人自身が日本をモラルの低い国と感じている。また、大人のマナーが悪いと感じている若者が多い。反面、尊敬できる大人がほしいとも言っている。自分のモデル(手本)となる大人がほしいとということと、近ごろの大人はだらしがないと思うこととは表裏となっているようだ。

○  学校の役割について今一度考え直すべきである。「抱え込み」といわれるが、実際、学校には多くの子どもがいて、時に病院や警察の役目を果たさなければならないのが現状である。

○  学校が家庭や地域、関係機関と連携するに当たって、学校がどこまでやって、その上でどのように家庭や地域、関係機関にアプローチするのか、その後どのように対処していくのかが課題である。

○  非行対策として、社会構造全体を視野に入れて考える根本的なレベル、学校という組織における対策レベル、非行の前兆がある子どもへの対応という対症療法レベルの3つがあると思う。この協力者会議ではどのレベルを念頭に置くのか考える必要がある。

○  現状では、学校や家庭、関係機関は、問題を抱え手に負えなくなった子どもを連携という名目でどこかに任せようとしているように思われる。本当の意味での連携の在り方について考えていきたい。

○  問題行動を起こし、保護処分等の措置を受けた少年を社会がどのように受け入れていくのか。学校がそうした少年とどのような関係を持っていくのか考えるべき。

○  家庭でも学校でも問題のない子どもが問題行動を起こすケースが報道されているが、よく調べると、親が何かを感じていたり、学校が少しおかしいと思ったりといった問題予兆があるように思う。

○  子どもが今の現状をどう憂いているのか、どう考えているのかといった点も提言に盛り込んでほしい。

○  学校教育の中で子どもたちの個性を生かし、夢を持って生きていけるようなシステムにしてほしい。

○  最近の母親は子どものしつけにナーバスになっている。なぜそうならざるを得ないのかを考えてみたい。

○  戦後50年といった長いスパンでの分析が必要ではないか。

○  今の親はどのような形で子育てをしていけば良いのか大変悩んでいるのが現状である。

・  今後、ワーキンググループを設け、最近の少年による事件の実態を分析することとされ、座長に尾木和英協力者が指名された。
・  協力者会議は月1回くらいのペースで開催し、最近の少年による事件の特徴等を踏まえた対応方策についてできるだけ早く検討することとされた。 

(初等中等教育局中学校課)

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