令和8年8月5日(水曜日)13時30分~15時30分
山下主査、尾﨑委員、小菅委員、塩﨑委員、竹原委員、武村委員、藤田委員、村松委員、脇元委員、和田委員、渡邉委員
今回の議事は、座長・副座長の選任等があったため、開会から議題(1)までは非公開。
1.議題(1) 主査・副主査の選任及び会議の運営について
山下委員が主査、和田委員が副主査に選任された。
事務局より、資料2「今後の国立大学附属病院施設の在り方に関する調査研究協力者会議の運営について(案)」について、事務局より説明があり、承認された。
2.文部科学省文教施設企画・防災部長による会議冒頭挨拶
蝦名 大臣官房文教施設企画・防災部長より冒頭の挨拶があった。
国立大学附属病院は、医学教育、臨床研究、高度医療、災害医療など、大学病院ならではの機能を担い、我が国の医療の発展に貢献してきた。
近年、医療を取り巻く環境は大きく変化しており、各大学では「大学病院改革プラン」に基づく経営改革が進められている。
また、2040年を見据えた新たな地域医療構想のもと、医療機関の機能分化や連携を一層推進していくため、大学附属病院の役割や機能についても検討していく必要がある。
一方、病院施設やライフライン設備の老朽化も進行しており、病院再開発や老朽改善を着実に進めるうえでも持続可能な施設整備の在り方を検討していく必要がある。
2040年を見据え、大学附属病院が教育・研究・診療機能を持続的に発揮できるよう、今後の施設整備の在り方について審議願う。
3.議題(2) 国立大学附属病院をとりまく現状と課題について
早田 大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長より資料3「国立大学附属病院再開発整備の進捗状況等について」に基づき説明があった。
国立大学附属病院は、医学部または歯学部を設置する大学において、教育研究に必要な施設として整備されるものであり、現在、全国42大学に44病院が設置されているが、施設やライフラインの老朽化が進行しており、安全性、機能性、経営面への影響が生じている。
また、1980年代から再開発事業を進めてきたが、建築または改修後25年以上が経過し、未改修のいわゆる老朽施設は面積ベースで約25%に上る。
令和8年3月31日に策定した第6次国立大学法人等施設整備5か年計画の中で、令和8年度から令和12年度までの5年間で改修整備も含め約25万平方メートルを整備することを予定しているが、近年は建設資機材価格の高騰や技術者不足により、整備が一時中断するなどの影響が出ている。
附属病院の施設整備は国立大学法人施設整備費補助金を通じて支援しているが、診療収入を有することから補助率は約1割となっており、残りは財政融資資金による借入金を充てている。そのため、附属病院の施設整備にあたっては、施設整備後の返済を見据え、将来の医療需要や経営戦略を踏まえた計画策定が重要である。
国立大学附属病院は医療人材の育成や高度な医療技術の開発等の教育研究機能、最先端医療の提供、地域の中核拠点医療機関としての役割、国際医療水準の実現といった、国立大学附属病院ならではの機能を担ってきた。
2040年に向けて、附属病院がこれらの教育研究、高度医療、地域医療の中核拠点としての機能を持続的に発揮できるようにするとともに、今後の再開発整備の参考となるような病院施設整備の在り方や施設整備の推進方策について議論を深めてまいりたい。
日比 高等教育局医学教育課長より資料4「大学病院を取り巻く諸課題について」に基づき説明があった。
国立大学病院は法人化以降、診療収入を中心に収益を拡大し、令和6年度の収入は約1兆6,000億円と法人化当初から倍増しているが、一方で、医薬品・医療材料費、人件費、光熱水費なども増加しており、増収減益の傾向にある。
コロナ禍前は年平均約320億円の利益を確保し、施設・設備更新の原資としていたが、コロナ禍以降急激に経営が悪化し、令和6年度には国立大学病院全体で286億円の赤字となった。
現在の経営悪化の主な要因として、医薬品・医療材料価格の高騰に加え、エネルギー価格の上昇、人件費の増加が影響しており、これらは業務委託費や保守費にも及んでいる。
経営悪化により、本来必要な設備投資を先送りしながら経営を維持している状況が生じており、限界を超えた老朽化施設・設備への対応が必要となっている。
また、医療従事者の給与水準、人材確保、研究時間の減少、診療参加型臨床実習への対応など、教育・研究・診療の各面で課題が生じている。
各大学病院では「大学病院改革プラン」に基づく改革を進めているが、経営環境は依然として厳しい状況にあり、令和7年度は、厚生労働省による支援に加え、文部科学省としても令和7年度補正予算において349億円の予算を確保し支援をおこなっている。
大学病院運営の構造転換を図りながら経営基盤を確立し、持続可能な運営につなげていただきたい。
大学病院は、医師養成、高度医療、新たな医療技術の創出、地域医療への貢献など、重要な役割を担っており、今後も地域社会の中で医療を支える拠点となることが期待されている。
地元自治体からも大学病院を支えていただく関係を築けるよう、都道府県と大学等との協議の場(プラットフォーム)を設け、共通理解をもったうえで取組を進めていただきたい。
施設整備への投資は極めて大きな費用を要するため持続的・効率的な進め方について議論する必要がある。
塩﨑委員より資料5「国立大学病院の現状と課題」に基づき説明があった。
大学病院改革プランについて、秋田大学病院を例にあげると、今後、秋田県全体の高齢者人口の減少が見込まれるため、入院患者数が地域全体として減少していく中でどのような役割を果たしていくかが「大学病院改革プラン」の重要な論点になると考える。
一方で、福井大学病院の場合は、福井県では患者が集まる病院と集まりにくくなっている病院との二極化が進むと想定されるため、福井大学病院は患者が集中する病院となる可能性が高く、秋田とは異なる役割が求められると考えられる。
地域ごとに他の医療機関との関係性が大きく異なるため、大学病院が果たす役割も異なってくると考えられる。
岡山大学病院では、他の医療機関との役割分担を踏まえた機能分化が進められている。一方で、機能分化を進めるうえで建替え等に必要な財源確保が課題となり機能分化が進みにくくなっているという実情もある。
現状、国立大学病院の現金収支は悪化傾向にある。収益と費用はいずれも増加してきたが、その差となる利益は年々減少し、令和6年度には赤字に転じた。
国立大学病院は非常に高額な薬剤・材料を使いながら高難度医療を担っていることから、特に医薬品・医療材料費の負担が大きく、国立大学病院では医療収益に占める割合が一般病院平均の約2倍となっている。
これまで大学病院は、平均在院日数の短縮などにより診療の回転率を上げるといった経営努力を重ね、借入金の返済と施設整備を進めてきたが、近年は、十分な利益を確保できず、新たな借入も難しい状況に陥っている。
また、教育・研究の時間を削った過重な労働によって経営を維持してきたため、大学病院としての長所が損なわれつつある可能性がある一方で、収益が得られず施設・設備更新が滞ることで、建物や医療機器の老朽化が進んでいる。
大学病院では教育・研修や高度医療への対応のため、一般病院以上に広い手術室や教育・研究スペースが必要であるが、借入金返済や建物更新に必要な財源不足を補うために教育・研究時間を削り、過重な診療負担に依存してきた結果、若手医師が大学病院を離れるという負のスパイラルが生じている。
今後は、地域医療需要を踏まえた適正な施設規模への見直し、財務の適正化、固定費削減により、教育・研究機能へ資源を振り向ける戦略的スパイラルをつくる必要があり、そのためにも、施設・設備更新に係る新たな支援の仕組みを検討いただきたい。
教育・研究に関する部分は文部科学省、地域への医師派遣機能については自治体や地域医療介護総合確保基金等の活用を含め、関係機関による支援を検討いただきたい。
当然、大学病院としても自己収入の確保に努めるが、事業継続に必要な資産の維持・更新に対する支援が不可欠である。
議題(2)に関する委員からの意見
【竹原委員】
大学病院を取り巻く財政状況は非常に厳しく、地域ごとに特定機能病院として求められる役割も異なっている。今後は、都市部と地方部の違いも踏まえ、地域医療構想と整合的に基本構想・計画策定を進める必要がある。
その中で、情報インフラ整備は重要な論点である。電子カルテなどの医療情報システムは、一般的に6年から7年程度で更新が必要となるが、更新費用や保守費用が病院経営の大きな負担である。
また、魅力ある病院づくりとして情報インフラの整備は非常に重要である。電話環境については、現在、PHSからスマートフォンへの移行を検討すべき時期に来ており、あわせて医療DXをどこまで進めるのかという論点もある。
個別のシステムや端末を導入すること自体は比較的容易である一方、それらを安定的に運用するためのWi-Fi環境をはじめとする基盤整備には多額の費用を要する。
今後の大学病院施設の在り方を検討する際には、建物や医療機器だけでなく、情報インフラの更新・維持についても重要な課題として位置付ける必要がある。
【武村委員】
現在の病院施設は、整備当時には想定されていなかった医療に対応しきれておらず、施設更新は喫緊の課題である。
たとえば、ロボット手術は患者にとって有用である一方、手術支援ロボットには大きな設置スペースを必要とし、発熱も大きいため、現場では環境面の課題が生じている。
また、大学病院ではDXが十分に進んでおらず、多くの業務が人手に依存している。今後は、自動化やロボット化を見据えた施設・設備整備が必要である。
病室についても、多くの医療デバイスを装着する患者が増えており、従来以上の空間が求められている。多床室中心の運用では、病室移動が多くなり、患者安全上のリスクや職員負担につながっており、業務効率化や患者安全の観点から、個室化を進める必要があると考える。
さらに、病床の増減に柔軟に対応できるよう、複数フロアや複数病棟を一つの看護単位として運用できる設計も重要である。患者数の変化を前提に、柔軟に使える施設整備が求められる。
加えて、職員や実習・研修者の多様化を踏まえ、ロッカー、トイレ、休憩室、仮眠室などについても、多様な働き手に配慮した環境整備が必要である。
国立大学病院として、今後の病院施設整備のモデルとなるような対応が求められると考える。
【小菅委員】
自身のこれまでの研究では、技術や政策によって変化する病院建築の施設計画的状況を調査してきた。なかでも近年の病棟個室化の動きは、多くの病院で関心の高い事項である。多床室中心・個室中心の病棟運用が看護業務にどのような違いを与えているのか、また個室化によって患者の転室がどのように変化するのかについて、過去に調査を実施した。また病床のダウンサイジングにより生じた建築の空きスペースの活用を調べた調査では、倉庫やベッド数の調整など、政策に合致するよう工夫を凝らす医療施設の現状も見ることが出来た。
時流に沿った医療提供体制や運用の変化を踏まえ、建築空間の在り方を見直す必要がある。例えば人手不足を背景にロボット搬送などの導入が進めば、建築側に求められる計画条件も変化する。今回の委員会では、大学病院で言うならば、診療参加型臨床実習の拡充により、病院内で教育に必要な空間を十分に確保できるかも重要な課題である。
施設更新にあたっては、今後の医療の在り方を踏まえ、必要面積や空間構成が従来からどのように変化しているのかを明らかにしたい。
【尾﨑委員】
今後の病院施設整備にあたっては、病棟や手術室について、日本の医療の在り方そのものが変化していく可能性を前提に考える必要がある。10年後、20年後に病床数や平均在院日数がどのように変化するのかを見据えた整備が求められる。
手術については、海外では人工関節手術の在院日数が2日未満の国もあり、日帰り手術も広く行われている。日本でも今後、同様の方向に進む可能性があるとすれば、手術室周辺に十分なリカバリー室を整備するなど、日帰り手術に対応した施設が必要になる。
また、がん治療、特に化学療法は今後さらに外来へ移行すると考えられる。そのため、病床削減により閉鎖した病棟を将来的に外来化学療法室へ転用できるよう、あらかじめ柔軟な構造や部屋の構成とすることが重要である。
また、長崎大学附属病院では、RI治療に対応する病棟の不足も課題となっている。ルタテラや前立腺がんに対するRI治療などは今後増加が見込まれるが、現在は対応可能な部屋が限られている。こうした施設は、将来的に原子力災害時の対応などにも活用できる可能性があり、多目的利用や機能転換を視野に入れた整備が必要である。
建築費の負担に関して、長崎大学附属病院では再開発後の返済として年間23億円を支払っており、非常に大きな負担となっている。
今後、建築費の高騰やインフレにより、次回の建替え時にはさらに大きな負担が見込まれる。現在は補助金1割、借入9割という仕組みであるが、今後は補助率を2割に引き上げることなどを検討いただきたい。
【脇元委員】
これまで複数の大学病院を経験し、再開発が円滑に進んだ事例、途中で頓挫した事例、ほとんど着手できなかった事例のいずれも見てきた。再開発が進まない場合、最終的には財源の問題に行き着くことが多いと考える。
地方によっては、すでに入院患者、外来患者ともにピークアウトしている地域があり、今後、大学病院が収入を大きく伸ばすことは難しく、病床を集約して高度急性期に重点化し、診療単価を引き上げる取組にも限界がある。
建築費が高騰し、再開発費が800億円、1,000億円規模となる中で、現在の「補助1割・財政融資資金9割」という枠組みでは、そもそも借入自体が困難になる場合がある。実際に、基本計画を立てても借入が難しく、計画段階で頓挫する例もある。
したがって、財政融資資金の仕組みを見直すのか、あるいは別の補助制度を設けるのか、新たな支援の仕組みを検討する必要がある。
また、病床を削減しても、単純に余剰スペースが生まれるわけではなく、臨床研究、スキルスラボ、がん医療、ゲノム医療、職員環境の改善など、必要となる用途は多岐にわたる。減床によって生じたスペースも、比較的短期間で別用途に活用されると考えられる。
こうした点を踏まえ、次の再開発につなげることが重要である。
【和田委員】
現在の状況を踏まえると、大学病院には新たな戦略が必要だと考える。
大学病院は、教育・研究に加え、高度先進医療の提供や地域医療の最後の砦としての役割など、幅広い機能を担っている。そのため、施設整備の視点と、そこに備えるべき機能の視点の両面から検討する必要がある。
今後は、より開かれた大学病院として、社会との共創、国際化、災害対応拠点としての機能も視野に入れる必要があり、多様なステークホルダーと協働し、新たな価値や社会的インパクトを生み出す視点が重要である。
診療面では、地域医療構想に基づく機能分化や医療機関相互の連携強化が求められる。研究面では、基礎研究から臨床研究へとつなげ、その成果を患者に還元する拠点としての役割が重要である。
また、実践的な教育の場としての機能も不可欠であり、さらに、医工連携による医療機器開発や実証の場としての役割、DX、AI活用、遠隔医療を支えるインフラとしての機能など、大学病院に求められる役割は今後さらに変化していくと考えられる。
2040年に向けた推進方策も含め、引き続き議論を深めていきたいと思う。
4.議題(3) 新たな地域医療構想を踏まえた今後の国立大学附属病院の在り方について
堤 厚生労働省医政局地域医療計画課地域医療構想推進室長より「資料6「新たな地域医療構想について」に基づき説明があった。
令和7年度の医療法の改正を踏まえ、地域医療構想について2040年に向けてどのような医療提供体制を構築していくかという観点から議論を行い、取りまとめを行ってきた。
現在、都道府県において地域医療構想を策定するためのガイドラインの見直しを進めている。
まず、2040年頃に向けた医療の課題について、人口動態を見ると、85歳以上を中心に高齢者人口は2040年頃にピークを迎える見込みであり、それまでは増加傾向が続くとされている。年齢階級別の要介護認定率は、80歳、85歳と年齢が上がるにつれて加速度的に上昇しており、85歳以上人口の増加に伴う医療需要の変化と、それに対応する医療提供体制の構築が大きな課題となっている。
特に、高齢者の救急搬送と在宅医療の需要は今後さらに増加すると見込まれている。一方で、その進み方は全国一律ではない。生産年齢人口はほぼすべての地域で減少する一方、高齢者人口は大都市部では増加するものの、人口の少ない地域では減少していく見込みであり、地域差は一層拡大する。そのため、地域ごとに抱える課題や求められる医療提供体制の在り方も異なる。
また、生産年齢人口の減少に伴い、医師をはじめとする医療従事者の確保は、特に地方において、今後さらに困難になると考えられる。
こうした課題を踏まえ、2040年以降においても、すべての地域、すべての世代の患者が適切に医療・介護を受け、必要に応じて入院し、その後は日常生活へ戻ることができる体制を維持するとともに、医療従事者にとっても持続可能な働き方を確保することを目指し、新たな地域医療構想の議論を進めてきた。
これまでの地域医療構想は、団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年を目標年度として、主に入院医療における病床の機能分化や病床数の適正化を進めてきた。
これに対し、新たな地域医療構想では、入院医療に加え、外来医療、在宅医療、介護との連携、人材確保まで含めた地域医療全体を対象とする包括的な構想へと発展させることとしている。
この中で、入院医療については、2040年およびその先を見据え、地域の実情に応じて「治す医療」を担う医療機関と、「治し支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、医療機関の連携や再編・集約化を進める。
また、地域ごとの機能に加え、広域的な観点で整備すべき医療機関機能を位置付け、その中に大学病院を位置付けており、医療機関機能については、地域ごとの機能として複数の類型を設けている。
特に、高齢者救急や在宅医療を受け止める役割を重視し、これに対応するものとして「高齢者救急・地域急性期機能」や「在宅医療等連携機能」などを位置付けている。
また、「急性期拠点機能」は、より高度な救急、手術、急性期医療を担う中核的な病院機能として整理している。
これまで、日本では多くの医療機関が、がん手術等を含めたさまざまな診療を担ってきた。しかし今後は、人材確保や医療の質の観点から、こうした医療を一定程度、急性期拠点機能を有する医療機関に集約していくことを想定している。
大学病院については「教育及び広域診療機能」として位置付けている。大学病院本院には、都道府県と連携しながら、症例数が少なく専門性の高い医療など、広域的な観点からの診療を担うこと、地域で多様な症例に対応できる人材を育成すること、さらに、常勤医師や大学病院から派遣される医師による支援を行うことが期待されている。
また、卒後教育をはじめとする診療従事者の育成や、広域的観点が求められる診療を総合的に担うこと、これらの機能が地域全体として確保されるよう都道府県と必要な連携を行うことも、大学病院の役割として整理している。
地域医療構想の策定については、2028年度末までのおおむね3年間をかけて、地域ごとに議論を進める予定である。
まず現状と課題を把握し、医療計画における二次医療圏の区域設定の見直しも含めて検討を行い、2028年度末までに新たな地域医療構想を策定するスケジュールとしている。
大学病院からの医師派遣について、今後、手術等の多くの医療資源を必要とする医療については、若年人口の減少に伴い、症例数の減少も見込まれているため、症例や診療体制を集約し、医療従事者の働き方を確保するとともに、医療の質を向上させていくことが重要となる。
医師数が多いほど手術成績が良い傾向が見られることなどを踏まえると、急性期拠点機能を有する医療機関に、外科医や麻酔科医などを重点的に確保していく必要があり、大学病院には、これまでの医師派遣の取組を踏まえつつ、今後は地域医療構想に沿った形で、急性期拠点機能を担う医療機関への外科医等の派遣についても検討・対応いただきたい。
都道府県と大学病院との関係については、地域全体の医療機関における医療資源の状況を踏まえ、両者が連携し、地域において必要となる医師の確保について調整していくことが期待される。
大学病院が所在する地域だけでなく、他の地域に対しても医師派遣を行い、医師の年次や経験すべき症例等も踏まえながら、人口が相対的に少ない地域にある急性期拠点機能を有する医療機関を支援していくことも重要である。もちろん、大学病院には、これまでどおり広域的かつ高度な診療機能を担うことも期待している。
地域医療構想を推進するためのインセンティブについて、すべての医療機関を対象とした仕組みとして「地域医療介護総合確保基金」を設けている。これは消費税財源を活用したもので、予算規模は全体で1,390億円、そのうち医療分は960億円となっている。
都道府県がこの基金を活用し、地域の実情や特色に応じた地域医療構想の取組を進めることとしており、この基金では、地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設整備や病床のダウンサイジングを支援している。また、病床数適正化支援事業として病床削減への支援制度も設けている。
村松委員より資料7「新たな地域医療構想における浜松医科大学医学部附属病院の役割」に基づき説明があった。
静岡県は東西に広く、県内でも医療需要の状況は大きく異なる。たとえば、伊豆半島南部の賀茂医療圏では、すでに医療需要が減少局面に入っている一方、浜松を中心とする西部医療圏では、今後もしばらく需要の増加が見込まれる。
静岡県では現在、二次医療圏と同一の8構想区域を設定しているが、今後、人口20万人未満の区域や急性期拠点機能の確保が困難な区域については、構想区域の見直しも検討する必要があると認識している。
本県唯一の医育機関である浜松医科大学は、西部医療圏に立地し、1,000人以上の常勤医師を地域に派遣している。本県は医師少数県であり、特に病院勤務医の不足が課題であることから、浜松医科大学は県の医療提供体制にとって不可欠な存在である。
静岡県では、平成19年度から医学修学研修資金貸与制度を開始し、浜松医科大学には修学資金利用医師の配置調整等を通じて、医師確保、偏在解消、定着促進に大きく貢献している。また、県として7つの寄附講座を設置し、周産期専門医や病院総合診療医の養成にも取り組んでいる。令和7年3月には、地域医療提供体制の確保に向けた協定を締結した。
浜松医科大学医学部附属病院は、年間約5,000件の救急車受入れ、約4,700件の全身麻酔手術を担っており、高度医療の提供に加え、実質的には急性期拠点病院としても重要な役割を果たしている。また、災害拠点病院として、能登半島地震などにおいても病院支援などの役割を担っていただいた。
県の広域診療機能に関する事業として、施設・設備整備への支援も行っている。たとえば、周産期医療施設等の設備整備、照明器具のLED化、高度医療機器の導入支援などがある。
地域医療介護総合確保基金を活用した事業として、がん診療連携拠点病院への高度医療機器整備支援を行っている。令和8年度には新たに「地域医療機能最適化推進事業費助成」を創設し、地域医療連携推進法人に参加する複数医療機関の情報連携体制整備や診療科再編等を支援している。
医療機関の経営悪化や建設費高騰により、大規模な施設整備が困難になっていることは十分認識しているが、現状では、単独病院の建替えそのものに対する支援メニューは限定的である。医療機関の連携、再編、集約化など、地域医療構想の推進に資する施設整備であれば、都道府県や厚生労働省との協議を通じて、地域医療介護総合確保基金を活用できる可能性が広がると考えている。
5. 議題(2)及び(3)の内容に関する自由討議
【藤田委員】
近年の建設費高騰は極めて深刻である。特に病院建築では設備費の占める割合が高く、その影響は一般建築以上に大きいと認識している。
かつては1平米当たり100万円という水準は特別な案件だったが、現在では一般的な水準になりつつあり、このような状況では、新築による全面移転は現実的に難しくなっている。
そのため、大学病院施設の計画・設計の考え方に加え、「いつ、誰が、何を行うのか」というプロセス自体を見直す必要がある。
資金調達だけでなく、施設計画や設計の進め方についても新たな仕組みが必要である。
重要な視点の一つは、長期的なマスタープランの策定である。今後は部分的な増築や改修が中心になると考えられるため、医療の将来像や社会状況の変化を見据えた、実効性のある長期的なマスタープランが必要である。また、社会情勢や医療ニーズの変化に応じて継続的にマスタープランをメンテナンスする仕組みが必要である。
もう一つは、施設整備の優先順位付けと専門家の早期関与である。診療機能、地域医療の需要、社会的要請に加え、建物や設備の老朽化状況を踏まえ、どこから整備するかを判断する必要がある。いわば施設整備のトリアージが求められる。
そのためには、現状を正確に把握する調査が重要であり、従来のように基本設計や実施設計の段階から専門家が関与するのではなく、調査段階から設計や施設整備の専門家が参画し、長期的な視点で計画を組み立てる仕組みが必要と考えている。
【渡邉委員】
これまで病院再開発にも関わってきたが、物価高騰や人件費の上昇などにより、計画段階で止まった事例も少なくない。現状として、整備を進めたい意向があっても、財政面の制約から、計画を立てること自体が難しい大学も多いと聞いている。
また、施設の現状を的確に把握できる人材が不足している、あるいは現状把握に十分な時間をかけられない大学もある。その結果、老朽化した施設を日々維持管理するだけで精一杯という状況も見受けられる。
こうした状況を踏まえると、マスタープランと、それに連動した長寿命化計画を着実に作成・推進していく必要がある。また、こうした計画づくりに対する国の支援も重要である。
加えて、インフラの老朽化も深刻な課題であり、報告書の中にしっかり位置付ける必要がある。さらに、病院施設は特殊性が高いため、それに対応できる施設職員の人材育成も大きな課題と認識している。
【塩﨑委員】
静岡県は、地域医療介護総合確保基金の運用において、大学病院に対して非常にサポーティブで貴重な事例と認識している。一方で、地域によっては、同基金の主眼が大学病院以外の医療機関に置かれており、大学病院には十分な支援がないところも少なくない。
大学病院は広域的な役割を担いながら地域医療を支えており、その機能を維持するためにも、各都道府県において大学病院への基金活用を積極的に進めることを願う。
建物整備の観点では、建替えや大規模改修など、一時的に多額の資金が必要となる局面がある。その際、3年から5年程度の一定期間にわたり支援を受けることができれば、大学病院の教育・研究機能を損なわずに維持する上で大きな意味がある。
介護、地域移行、再編・集約化といった観点も重要であるが、教育・研究を担う大学病院ならではの事情にも配慮が必要である。
大学病院には若手医師が一般病院より多く在籍しており、その育成には教育・研究のためのスペースも必要である。
今後は、大学病院の教育・研究機能を維持するための支援メニューについても支援願う。また、基金を十分に活用できていない地域においても、大学病院への支援を期待する。
【脇元委員】
各県の地域医療構想調整会議などに参加する中で、課題認識は一定程度共有されている一方、具体的な方策については議論が深まりにくいと感じている。
会議には、医師会、大学病院、公的医療機関、三師会など多様な主体が参加しており、それぞれの立場や方向性が必ずしも一致していない。そのため、統廃合やダウンサイジングといった具体的な議論に踏み込むことが難しい場面がある。その点、静岡県の「地域医療機能最適化推進事業」のように、連携や病床機能の調整を後押しする補助制度や支援策があれば、議論を進めやすくなると考える。
各医療機関の経営判断や裁量のみに委ねていては、地域医療構想の策定は難しいと感じている。また、地域医療構想の将来像が明確でなければ、大学病院の再開発において担うべき機能も定まらない。そのため、地域医療構想をどのように具体化するかは、大学病院の施設整備を考える上でも重要な課題である。
【山下委員】
この会議のお話をいただいた際、以前の病院リニューアルに関する調査を思い返した。阪神・淡路大震災の頃、東北大学の菅野實先生が日本医療福祉建築協会の課題研究として実施した調査では、病棟、中央診療、外来といった部門ごとに、求められる更新周期が異なることを示された。中央診療部門は20年程度、外来部門は30年程度、病棟は50年程度であった。
その後、免震構造の普及により、病院全体を一体的な建物として整備する傾向が強まったが、その場合、寿命の異なる部門を同時に更新する必要が生じ、整備が進みにくくなる面がある。
一方、大学病院では部門ごとに棟が分かれている場合も少なくない。その特性を踏まえ、中央診療機能は比較的短い周期で建替えを行い、病棟は改修により高機能化や療養環境の向上を図るなど、部門ごとに更新の進め方を変える考え方が重要と考える。
全部門を一括して建て替えるには多額の資金が必要である。したがって、マスタープランを持ちながら段階的に整備するという考え方は、今後の病院整備において改めて重要になると考える。
これまでの考え方も踏まえつつ、新しい病院整備の在り方を検討していく必要があると考える。
6.議題(4) その他
事務局より、資料9「今後のスケジュール(案)」について、説明があった。
了
企画調査係
電話番号:03-5253-4111(内線3247)