学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(令和6年度~)(第2回)議事要旨

1.日時

令和7年3月28日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

対面・オンラインハイブリッド開催

3.出席者

委員

<委員>
奈須主査、市川委員、垣野委員、後藤委員、斎尾委員、高橋委員、田邊委員、長澤委員、樋口委員
<特別協力者>
深堀特別協力者
<バリアフリー検討部会>
髙橋部会長

文部科学省

(大臣官房文教施設企画・防災部)笠原部長、金光技術参事官
(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)瀬戸課長、松下企画調整官、田中課長補佐、五十嵐専門官、青山係員

4.議事録

・事務局より開会の挨拶。
・事務局より委員の出欠について説明。
・髙橋部会長より概要説明。
・事務局より資料1・資料2に基づき説明。
 
議題1:学校施設のバリアフリー化に関する検討部会経過報告
 
【市川委員】「バリアを広域に捉える必要がある」とされている個所の記載について、より精緻に観点を整理したほうがよい。また、障害者に対する偏見や差別の社会的障壁における整理が大切。
 特別支援学校の整備目標の設定に関する言及があるが、合理的配慮の観点からバリアフリーを考えたときに、小中学校の基準と特別支援学校の基準が当然異なってくるので、そう意味で、一律の目標設定がなじまないということかと思うが、どうして目標設定することがなじまないのかということを丁寧に説明する必要がある。また、特別支援学校については、教室不足も大きな課題であるため、そこを優先するということも現状ではあると思う。
 
【垣野委員】今建て替えのタイミングが来ている学校、それから、建て替える必要が出てきている学校が増えてきている。このような既に老朽化してしまったものについてバリアフリー化を進めていくというのは無理があると思うので、今後の建て替え等も含めながらバリアフリー化も同時に進めていくというスピード感が適切なのではないか。
 コスト的に安く短期にできるものと、コスト、時間をかけてできるもののグレードが分かるようなものがあると、バリアフリー化を検討する上で、役立つのではないか。
 
【後藤委員】現在、バリアフリーがされているところについては、比較的容易に達成できるところが実施していると思われるので、ここからの達成率というはかなり鈍化するのではないかと想定される。また、そのような中で、土地面積がそもそもないなど技術的な面で、対策が難しいものも想定されるが、バリアフリー化の方法などのアイデア集的なもので整備するとか、相談窓口を強化するという方向性があったので、これらの取組に期待したい。
 エレベーターなどを設置した後の運用について整理されていないように感じる。今後、ガイドライン作成などの計画があれば合わせて整理してほしい。
 
【斎尾委員】障害種などにより必要な整備が少しずつ異なることを踏まえると、新築だからといって、全部フルスペックで整備されるわけではなく、対応できるレベルがそれぞれ異なると思われる。事例の紹介に当たっては、どこまでのレベルを想定した整備なのかがわかるようにしておくと、これから整備する学校設置者の役に立つと思う。
 既存の建築の改修の場合は、改築や新築に10年やそれ以上の期間を要する場合にあっても、最低限どこまでをやっておくべきなのかが分かるようにしたほうがよいのではないか。
 既存学校の場合、特に老朽化した既存施設において、増築、改修を繰り返している中で、複数棟が繋がっていないことが多い。敷地全体として整備されているかどうかといった評価の仕方も必要なのではないか。
 
【高橋委員】認知機能的な障害については、今後、デジタル技術での支援が期待される。これまでは一斉で固定的で、一度つくってしまうと、なかなか個人に合わせた修正、変更が難しかったが、デジタル技術、ソフトウェアで制御するようになると個人の興味や特性に合わせて動的に変化させることができ、非同期・分散的に活動ができるといったことが加速していくのではないかと思う。施設の施錠管理についても、対象の人が近づけば自動的に鍵が開いて施設が付けるようになるとか、案内等のサインが見えづらい場合も、何かカメラのようなものをかざすと見えるようになるとか、翻訳などもカメラをかざせばどのような言語でも日本語に変換してくれるとか、様々な機能がでてきているので、このようなデジタル技術も上手に使って、様々な人にも配慮していくことが可能になっていくと思う。
 
【田邊委員】バリアフリー化の整備計画の未策定が3分の2の自治体、令和7年度までの整備目標の達成が240自治体、全体の15%ぐらいの状況にある。それを踏まえた加速化の対応には、もろ手を挙げて賛同するところだが、実際に自治体としてどう進めていくのかというところには、なかなかもどかしい現実があると思う。先進的な事例のような整備ができればいいが、なかなかそういう現状にないというのが多くの自治体の現状なのではと思う。この現状と目指すべき目標とのギャップをしっかりと示していくということが第一かと思う。
 それぞれの自治体で「令和の日本型教育」の展開を念頭に取り組んでいるところだが、たとえば、教室の面積が、多くの学校では、一クラス64㎡となっているなかで、国庫補助面積としては、74㎡となっていることなどの認識のギャップがありそうである。教室を多目的化するような改築、改修などに合わせて、バリアフリー化も取り入れていくことで、自治体の現状と目標とのギャップを埋めていく手立てになるのではないかと思う。既存の教室の固定概念に取らわれずに、柔軟な発想で、教育環境を考えられるように、新たな学校のイメージについても提示できるといい。
 新築・改築するというより長寿命化改修に進んでいくケースが多いと思うが、バリアフリー化も、新築の場合の目標設定、長寿命化の場合のバリアフリー化の目標設定など、段階に応じて目標を提示してあると、それぞれの学校がどの段階にいるのかの目星をつけやすくなると思う。
 整備計画の策定を推し進めていくような手立てについて整理してほしい。計画を策定し、それを基に整備計画を推進していくような現実感を持って推進していけるような動きになることが必要。整備計画の策定の後押しになるようなアドバイザーの配置支援といったことも提示していってほしい。
 
【長澤委員】各障害当事者団体からのヒアリング内容に、バリアフリー化を考える上で発想を豊かにする視点、あるいは反映しなければいけない視点がたくさん含まれている。これを単にヒアリング結果とせずに、今後の施設整備において、各設置者の施設の実情に照らしながら、計画のヒントとして積極的に読み取り、活かしてほしいということを強調するとよいのではないか。
 学校施設は、単に公共施設ではなく、半分住宅のようなもの、毎日そこで生活をし、お互いを見知って、つながりがある、そういう場であるということ、また、GIGAスクール構想におけるネットワーク環境、デジタル環境が全体として整った施設であるということ、これらを積極的に生かす工夫をまとめていけるとよいと思う。これまでのペースだと整備に時間がかかるような状況で、これを促進することが今回の調査研究の目的ではあるが、一方、それでも現実的には一気に実現しないとすると、その間、上記の学校ならではの特性を活かし、運用上どのように工夫するか、その工夫を示すことで、施設整備が伴わない状況においても、多様な子供たちが一緒に育つ環境をつくれるかといった観点も示せるとよい。
 個別のバリアフリー化の整備課題について、施設全体として、具体的にどう設計していくのか、例えばエレベーターについて、単にエレベーターがあるということだけなく、それを全体の中でどのように配置していくのか、給食の運搬であるとか、ストレッチャーが利用できるなど、他の施設とは違う特色に十分留意し、学校ならではの観点で、今回の検討内容を実現するためのアイデア集がとりまとめられるとよい。

【樋口委員】現状としてうまくバリアフリー化が進んできていないということを受け止めて、その危機意識を全面にだしていったほうがよい。
 目標が達成できない要因をみてみると、必ずしも財政的な面がメインではなく、統廃合があるということを理由にしているところも多いが、標準規模校に限定したときに、整備目標が達成されているかというと、そうではないと思われる。また、大規模改修と合わせて整備するとしても、その改修がいつ頃行われるのかと考えていくと、だいぶ先の話であることもあり、要配慮児童生徒が来たら整備するとしても、避難所としての利用を考えたときに、そのままでいいのかということもあり、意識の問題も大きいと思われる。
 「バリアフリー改修を先行して行うことも必要である」という言い方も、もう少し強いトーンで求めていってもよいと思う。
 GIGAスクール構想のように予算を取って一気に進めていくというようなやり方も参考になると思う。
 特別支援学校のバリアフリー化率が高いというのは当然であるが、設置者が都道府県であることが多いので、学校設置者の抱えている学校の数や体制なども影響しているのではと思う。
 こども基本法で、子供の意見表明権ということも謳われているので、そのことにも配慮したかたちで、ワークショップなどを開催して、子どもたち、どんな学校にしたいのかなどの意見をきくような取組についても整理できればよいのではと思う。
 
【奈須主査】バリアフリー化というのは、視覚・聴覚等も含め、主に身体的困難を持つ子供の学習権・発達権の保障のより十全な実現に資するのだろうと思うが、学習指導要領のほうで言えば、それ以外の様々な発達障害を持つ子供、さらに、不登校や不登校傾向の子供、経済的に困難を抱える子供、海外にルーツを持つ子供、特定分野に特異な才能を持つ子供など、身体的な状況以外の事由により学校での学習や生活に様々な困難を持つ子供についても広く対象として、全ての子供がその子らしく学び育つことができ、現在と将来の幸せを実現できる学校教育ということを目指していくのだろうと思う。
 そのような中、今回の学校施設のバリアフリー化の議論というのは、都市のインフラ整備などとも同様に、はっきりと目に見えるという点、それから、具体的な整備計画や予算措置を要するという点、したがって、それに向けて自治体、議会、地域等でリアルな議論が活発になされる点において、身体的困難はもとより、それ以外の様々な子供の多様性の公正な包摂に向けて、当事者意識を伴う世論の形成、あるいは、自治体の取組を推進する上で、強力に先導的な役割を果たすのではないかと期待している。
 1980年代に、建築の先生方の御尽力により多目的スペースを持つ学校が多数建築されたが、新しい施設の在り方、空間の在り方が、いろんな知恵とかアイデアをもたらし、そこから個に応じた指導、今日でいう個別最適な学びを強力に推進する契機となったということが歴史的にもあった。そのときと同様のことが、今回のバリアフリー化の一層の推進により生じるのではないかと期待している。
 
議題2:事務局より来年度の実施事業等について説明
 
・事務局より参考資料に基づきCO-SHA Platform、木造校舎の構造設計標準の在り方に関する検討会と文教施設における多様なPPP/PFIの先導的開発事業について説明。
・事務局より今後の日程等について連絡。
・奈須主査より閉会の挨拶。
 

 
── 了 ──