学校施設のバリアフリー化の推進に関する検討部会(第1回)議事要旨

1.日時

令和7年1月29日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

対面・オンラインハイブリッド開催

3.議題

  1. 学校施設のバリアフリー化の推進に関する検討部会の設置について
  2. 学校施設のバリアフリー化の推進に関するこれまでの取組と検討の方向性について
  3. その他

4.出席者

委員

髙橋部会長、市川宏伸委員、市川裕二委員、伊藤委員、岩井委員、大関委員、尾上委員、小林委員、下倉委員、竹田委員、根本委員、毛利委員

文部科学省

(文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)瀬戸課長、松下企画調整官、田中課長補佐

オブザーバー

(文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部施設助成課)下岡企画官
(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課)酒井企画官
(文部科学省高等教育局私学部私学助成課)島岡専門官
(国土交通省住宅局参事官(建築企画担当)付)土佐課長補佐

5.議事要旨

・事務局より開会の挨拶。
・事務局より委員の出欠について説明。
・瀬戸課長より挨拶。
・髙橋部会長より挨拶。
 
議題1:学校施設のバリアフリー化の推進に関する検討部会の設置について
・事務局より資料1-1・資料1-2に基づき説明。
 
議題2:学校施設のバリアフリー化の推進に関するこれまでの取組と検討の方向性について
・事務局より資料2に基づき説明。
・竹田委員より資料3-1に基づき説明。
・小林委員より資料3-2に基づき説明。
・議題2について質疑応答。

(○:委員の発言)

〇 今日の話では、障害の中でも盲・聾・身体障害の方中心だったが、発達障害は、外見から分からない人たちが多いので、そういう方についても、お金はあまりかからないので、ぜひ配慮いただければと思っている。
 先日、ある学校に行ったら、壁がない構造の教室が三つ並んで廊下で全部つながっていた。それを見て、この壁がない教室は発達障害の子にとっては相当きついだろうと思った。普通、壁のところに隠れてクールダウンする、カームダウンするということをやるので、それがなくなってしまうのは大変だと思った。少し今日の話とずれてしまって申し訳ないが。学校は大変進んできていると改めて感じた。
 
〇 壁のない学校について、様々な障害のある児童生徒にどのように対応するかというのは非常に重要なテーマだと認識しているので、今日の発表事例の中では紹介はなかったが、今後の議論でいろいろと経験を教えていただければと思う。
 
〇 障害のある児童生徒がどの学校でも安全に、課題なく、楽しく生活するためには、施設設備は大切なことなので、ぜひ進めていただければと思う。
 今日の事務局の説明の中で、特別支援学校のバリアフリーがまだ100%になっていないという話があったが、やはりこれは大きな問題だと思うので、まず特別支援学校は100%を目指すべきであろうと思う。その内容について、特別支援学校に限らず、バリアフリートイレ、スロープ、エレベーター、車椅子と、肢体不自由のお子さんのことがメインになっている。ただ、やはり他の障害はどうなのかということを考えていく必要はあると思う。障害はいろいろ多様である。視覚障害のお子さんにとってのバリアは何か、聴覚障害のお子さんにとってのバリアは何かを調べた上で、今後、バリアフリー化をどこまで進めるかを考える必要があると思っている。
 災害時には、やはり電源の問題が結構重要になってくると聞いているので、その辺りももう少し検討いただけるとありがたい。
 どこまでバリアフリーにするかが大きな問題。障害は非常に多様なので、全てのお子さんに対応できる施設ができるのかと言うと、そこまでは難しいだろうと思っている。車椅子一つとっても、非常に大きな車椅子もあるので、その方が入れるトイレはどれほど大きいトイレになるだろうか、という話もある。
 オープン教室は、多様な学びが推進されるからとてもいい、という声をいろいろなところで聞く。一方、発達障害のお子さんにとっては、非常に困った状況になると思う。ある事例で、お子さんが教室に入れないということで混乱していたのだが、見たら、そこはオープン教室で、教室で行われていた勉強は、まさに今話題になっている多様な学びだった。一人一人の個別の学習があり、集団の学習があり、グループの学習がある、というところだと、なかなか適応できないお子さんがいる。どこまでバリアフリーにするか、という議論は必要なのかなと思っている。
 インクルーシブな学校運営モデル事業をしている学校はとても重要。特別支援学校と地域の小学校・中学校が一緒に運営されている中で、施設の観点からも、インクルーシブな学校運営はどうあるべきかという議論が必要なのかなと思っている。
 実際の学校の改修は、非常に大変だと思う。今ある学校を改修するのはお金もかかるし、場所の問題もあるし、いろいろ大変なことが出てくるので、ご苦労なさっているんだろうなと思う。だから、目標や理想はあるが、経過措置や代替措置も考えないと、実際は難しいかなと思う。なかなかこれは言いづらいが、障害のあるお子さんがどこでも楽しく生活できるのが理想だが、例えば、区市町村立の小学校・中学校の場合には、障害の状況に応じて、ここの学校ならば十分対応できる、ということも、一つの検討の余地なのかと思ってはいる。そういった広い意味での視点の検討も必要かなと思う。
 
〇 今日の話を伺っていて、やはり建物だけで考えるのには限界があると思った。階段を上り下りする機械を使って対応している場合がある、一足制にすると乗り換えなくていいからバリアフリーの観点からはよりいい、といったように、施設面での対応以外に、ソフト面での対応との関係も非常に深く、そこも見ていかないといけないと感じた。特に、理想であれば、バリアフリーは100%がいいが、何でバリアフリーをやるかというと、移動できるようにするためなので、例えば、暫定的かもしれないが、ほかの手段と組み合わせて移動手段が確保できている、施設は完全にバリアフリーではないけれども何らかの形で移動はできている、あるいは可能である、という評価指標があってもいいのかなと思った。やはり全ての学校が、どのような人が来てもOKにならなければいけないとは思うが、そうできるまでに時間がかかるので、その際に、学校選択みたいにして、いろいろな対応の仕方のオプションがあって、どの学校が一番自分には良さそうかという選択制で対応する部分も、おそらく必要なのではないかと思った。
 
〇 今日の話を伺って、バリアを解消する工事のやり方が随分進んできたと感じた。やはり全国的に改修に苦労している学校が相当あるのではないかと思うので、新しい工法でこのようにやったという事例等を、最終的には事例集みたいなものに載せていくことで、ではやってみようかということにつながるのではないか。もちろん、補助を3分の1から2分の1にするといった財政的なことは当然として、方法についてもやり方を紹介いただければと思った。
 障害のある方にとってバリアとなるのはどのようなものか、ある程度まとめていかないと、それにどのように対応していくかが出てこないのではないかと思う。もちろん、施設的なハード面だけではなくて、ソフト面で解消できるようなこともたくさんあろうかと思う。
 今日の話を聞いて、当事者参加や、障害者差別解消法に基づく合理的配慮にどのように対応していくかという観点があると受け止めたが、ここはぜひ当事者にいろいろなことを伺いながら進めるのがいろいろな意味で大事だと感じた。
 オープン教室の話があったが、発達障害の方の中でも感覚過敏の方で、接触過敏で制服が着られない、匂いがすごいので給食のときは教室に入れないといった方もいらっしゃるのを見たことがある。だからすぐに学校の建物をどうすればいいか、ということではないが、そういったいろいろな子がいることを分かった上で物事を進めていくのが大事なので、そういった紹介も大事なのかなと思った。
 
〇 地域の特別支援学校との交流などもあるので、小学校・中学校の場合は様々な障害種に対応していく必要がある。地域の方たちが学校施設を地域に対する施設開放で利用するケースもあるので、なるべくマルチにフレキシブルな対応ができる状況が必要だと現場では感じている。オープンスペースについても、様々な意見を伺っているので、状況に応じてパーティションを使ってうまく区切ったり、あるいは逆に個別に配慮するケースではそのオープンスペースをうまく利用して少し落ち着くスペースを特設して使ったり、といった見方もできるかと思う。
 現実として、トイレは地域の方の声もとても大きい。どんどん洋式化を進めようという声が多かったのがこれまでの実情だと思う。自治体によって差があろうかと思う。バリアフリートイレは当然必要だが、それ以前に、まず洋式化を進めてほしいというのが、議会や自治体などのレベルで現実問題になっているところもかなり多い。様々な地域の実態に応じて、どのバリアフリー改修が現実的に進められるかという部分を含めて、いろいろなやり方の参考事例をいろいろ広めていくのが重要と思う。
 
〇 バリアフリーに長年取り組み、自治体での学校バリアフリー義務づけなどに取り組んできた。障害者差別解消法にも関わる立場から言うと、既に合理的配慮が義務づけられているわけで、学校のバリアフリーは合理的配慮のための環境整備として極めて重要なものだと考える。2025年度末までの計画としては、先ほど事務局から説明があったとおり、要配慮児童生徒等のいる学校全てにエレベーター整備を目標として掲げている。これは極めて大きな意味があると考えている。しかし、このことが、学校設置者や関係者に伝わっていないのではないかと思う。
 具体的に3点申し上げる。
 1点目、親御さんからエレベーター設置に関して相談を受けることがあるが、学校設置者からは長寿命化計画に沿って順次整備をしていっていると一般論の回答をもらうだけで、具体的に要配慮児童生徒が入学・進学予定の特定の学校について対応してもらえない自治体が極めて多いと感じる。実際に学校で学ぶ児童生徒の合理的配慮のために、緊急性が高いところは、優先順位を上げて定期計画の順番を入れ替える等の対応が必要だと考える。長寿命化計画等の中長期的な計画と別に、要配慮児童生徒等の在籍状況に対応したエレベーター整備計画を別途策定するよう課すことを考えていただきたい。そうしたことをせずに、一緒に学んでいた友達が、なぜバリアフリー化が進んでいないからと別々の学校に行かなければならないのか。それは、選択ではなく分離の強要である。2025年度末までの目標として、要配慮児童生徒がいる学校のバリアフリー化、エレベーターの整備を掲げたことの意味をしっかり押さえた検討をぜひ頂きたい。
 2点目、子どもたちの時間はとても早い。例えば、中学校に入学が決まってから整備を始めると、実際にエレベーターがつくのは中学二年の終わりぐらいになったりする。一方、保育所や幼稚園などと連携して、小学校入学予定の子どもを把握して、早くからエレベーター整備を進める工夫をしている自治体もある。このような取組がスタンダードになるようにできないか。
 3点目、先ほどの事務局からの説明で、今後の検討課題の一つとして当事者参画という話があったが、ぜひ進めていただきたい、期待したいと思う。良い事例も全国に広がればなと思うが、当事者参画に関連して、国土交通省のバリアフリーの検討の会議に多数の障害当事者が参加しているのに、文部科学省のこの検討部会の委員は、正直、極めて障害当事者が少ない。当事者参画は隗より始めよということで、ぜひこの部会でも、障害当事者の団体からヒアリングの機会を設けていただけないか。この検討部会でも当事者参画を進めていただければ。
 
〇 やはり年々法律も改正されて、車椅子の大きさも大きくなり、毎年毎年レベルアップしていかなければならない中で、どのようにしてバリアフリー化を進めていくかというのが課題になっているので、委員の皆さんの意見をこの場でいろいろ聞けて本当に今日は参考になった。
 
〇 今日はいろいろな事例の話も聞いて、現場ですごく苦労されている方に敬意を示したいと思った。
 欧米の学校等に行くと、トイレの提案としては、省スペース化を図るために、男女共用でブースだけを設けて男女を分けないのが欧米ではかなり一般化している。ジェンダーレストイレがすごく進んでいて、そういう試みもだんだん日本で始まってもいいのかと思う。そのときに、結構建築家の方が児童生徒と一緒に話し合って「どうしたい?」みたいな感じでちゃんと議論を進めてからやっている事例もあったので、そういったものが日本で少しずつ始まってもいいのかなと考えている。
 バリアフリーに関しては、やはりエレベーターや段差解消だけではなくて、クオリティーを上げていく、心理的バリアも取り除く、といったことまでやっていかなければいけないかなと思っている。例えば、教室等の中で、机がぎちぎちだと、車椅子の人は全然自由に動けなくて、もう端っこに座っておくみたいなことになってしまうので、そういったところも解消していく。遊具等もそうで、例えば、砂場やブランコは車椅子の人は使えない、そういうところも解消していく。少し砂場を上げている欧米の学校も見たことがあるが、多分、車椅子が乗れるブランコがあるところ等、日本にも少しはあると思うが、どこまで込めるかというのが課題かなと思った。
 
〇 令和7年度の整備目標の達成に向けて取り組んでいるが、課題は多い。例えば、災害時に避難所となる体育館へのバリアフリートイレの設置に関して、内閣府防災担当の「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(平成25年8月(令和6年12月改定))では、障害者等については要配慮者スペースないし個室を利用できるよう考慮することとされており、自治体においては体育館とは別の場所を指定していることもある。そのような場所の近くにバリアフリートイレを設置することも有効ではないかと考える。また、エレベーターの設置については物理的に困難なケース等もあり、その中で階段昇降車等による対応は児童生徒のバリアを解消する現実的な手法であると考えており、そういった選択肢があれば取り組みが進みやすくなるのではないか。
 実際には、学校現場の先生方等が、一人一人の子供の状況に合わせていろいろと対応していて、ハードの部分とソフトの部分、トータルで底上げしていく視点が大事。
 今後、少子化の局面の中で、長期的な視点から施設への投資の判断がより慎重になっていくことも考えらえる。その意味で、ハード面で改修していく際は、できるだけ安価に、できるだけ柔軟に対応できるような手法も含めて認めていければ、全体としてバリアフリー化を底上げしていけるようになるのではないか。
 
〇 バリアフリー化は内容が多岐にわたるため、学校施設において、どの水準で整備していくか、考え方が難しいと感じることがある。例えば、スロープの勾配について、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)に基づいたものを採用したいが、整備を実際に行おうとすると、対象範囲が広くなったり、収まりが悪くなったりする場合もあり、既存改修ならではの難しさもある。これらは唯一正解のない問い。今後、バリアフリー化に取り組む全国の自治体もおおむね類似の状況があろうかと思う。これらの唯一の正解のない問いに自治体が向き合う際に、本検討部会の議論が参考になるようなものになると心強いのではないかと思い、課題意識として発言した。
 
〇 全国では、廊下がなくてベランダを通らないと教室に入れない学校がある。雨が降っていると傘を差さないといけなかったり、体育館に行くのに通路がフラットではなくてコンクリートの凸凹があったりする学校もたくさんある。要配慮児童生徒がいる学校にエレベーターを設置するとのことだが、いきなり車椅子の子が転入してきて必要になる場合や、突然の病気やけが等で在校生が要配慮者になることもある。そこから整備しようと思っても、計画している間にその子は卒業してしまうこともあるので、やはりエレベーターは必要な整備なのかなと思う。
 また、エレベーターをつければいいというわけではない。今、働き方改革で休み時間が5分という学校もあるが、エレベーターを使って教室から移動する際、時間や距離によっては間に合わない子どもたちもいる。設計する場合、そういった検討も必要なのかなと思った。近年、教職員についても障害のある方の採用も進んでいるので、必要かと思った。
 身体的障害だけではなくて、発達障害等の方がほかの障害者の方と一緒に避難所で過ごすのは本当に大変だと思うので、やはり学校の避難スペースも含めて学校での居場所づくりは大切だと思った。
 
〇 今日紹介してもらった好事例は、この後の議論にいろいろな意味で有効に活用できるのではないかと思う。
 2025年度末までの整備目標値がどの程度達成されているのか非常に興味がある。100%は行かないまでも、何とかできる限り前向きに、地方公共団体に対してどのようにアプローチしていけばよいか、と感じていた。特に、それぞれの技術相談、都道府県単位での指示・指導、あるいは助言をどこまで生かしていけるか、ということは、展開していくときに、地域差はやむを得ない部分もあるが、やはり重要なファクターではないかと思う。設置者と、それを支援する側の関わりを、できれば何らかの形で進めていく必要があるのではないか。全て同時にというのは難しいが、一歩一歩、確実にクリアしていく。新築、改修で有効に活用していくときに、どこにポイントを置くかというと、そこで学ぶ児童生徒、災害時に避難してくる人たち、地域住民ではないかと思う。絶えず、設計者あるいは施設設置管理者は、そこの部分について意識をしながら、次の整備指針あるいは目標を掲げて、それを前に進められるかどうかがとても重要。
入学してから、あるいは要配慮児童生徒が編入してから、あっという間に卒業してしまう、という状況が出てくるので、そういった点では、長寿命化計画を立案しながらも、場合によっては柔軟に対応していくことも、それぞれの設置者に発信していく、発出していく必要があるかと思った。
 さらに、今後の議論で事例をいろいろと拝見しながら、その場での議論を踏まえて、よりよい目標値の達成、必要に応じて整備指針の見直しに対するアプローチをしていければと思う。
 
・事務局より資料4に基づき今後の日程等について連絡。
・髙橋部会長より閉会の挨拶。
 
―― 了 ――