学校施設のバリアフリー化の推進に関する検討部会(第6回)議事要旨

1.日時

令和7年3月13日(木曜日)

2.場所

対面、オンラインハイブリッド開催

3.議題

  1. 障害当事者団体からのヒアリング
  2. 視察報告
  3. 学校施設のバリアフリー化の推進に関する検討部会経過報告

4.出席者

委員

髙橋部会長、日本発達障害ネットワーク・三澤副理事長(市川宏伸委員代理)、市川裕二委員、伊藤委員、岩井委員、大関委員、尾上委員、小林委員、下倉委員、竹田委員、根本委員、毛利委員

文部科学省

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)瀬戸課長、松下企画調整官、田中課長補佐

オブザーバー

(大臣官房文教施設企画・防災部施設助成課)下岡企画官
(初等中等教育局特別支援教育課)酒井企画官
(高等教育局私学部私学助成課)島岡専門官

5.議事要旨

・事務局より開会の挨拶。
・事務局より委員の出欠について説明。
 
議題1:障害当事者団体からのヒアリング
・小倉常務理事(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)より資料1に基づき説明。
・全日本難聴者・中途失聴者団体連合会からヒアリング。
・議題1について質疑応答・意見交換。
 
<全日本難聴者・中途失聴者団体連合会ヒアリング>
【全日本難聴者・中途失聴者団体連合会】
・令和4年に障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法というのが制定されている。全ての障害者が、あらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得・利用、円滑な意思疎通が極めて重要ということで、目的としては、障害者による情報の取得・利用、意思疎通に関わる施策を総合的に推進し、共生社会の実現に資するものとなっている。
・内容は、障害の種類、程度に応じた情報獲得の手段を選択できる、日常生活、社会生活を営んでいる地域にかかわらず、等しく情報取得ができるようにする、障害者でない者、健常者と同一内容の情報を同一の時点において取得できるようにするというものである。これはバリアフリー法が主に移動の面で法律が規定されているのに対し、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法は、それに加えて、情報保障の点で、聴覚障害のある障害者がどのようなものを求めているかが規定されているため、参考にしていただきたい。
・設備面について以外に、心理的な面についての対応ということも重要だと考えている。
・聞こえない生徒にとって学校の中にいるときに、本人は自分の聞こえの状況について客観的に把握していない。自分が聞こえないという状態が当たり前のことだと思っていて、ほかの聞こえる人と比べてどうなのかということは、分からない。そのために、例えば先生から、「〇〇君、聞こえますか」と聞かれたときに、そこだけはよく聞こえるので、「はい、聞こえます」と答えてしまう。しかし、実際には先生が授業中にしゃべっている内容の1から10、全部聞こえているわけではない。実際には内容の把握はできていないという状況にあるということを生徒自身が把握してないということが懸念される。そのような点に気をつけた上で、生徒の理解ができているかという面もしっかり把握できるような対応をしていただきたい。
・子どもがグループミーティングするときに参加しやすいように環境設営を考えていただきたい。どうしても取り残されやすい立場にある。
 
 
<委員より質疑応答・意見交換>
(○:委員の発言)
 
○学校施設のバリアフリーの設備がない、あるいは学校の生活の中で配慮がない中で、学校生活や保護者としての子供の参観などにおいて、特に難聴者という立場から、学校施設のバリアフリーの遅れということで困った経験があれば、もう少しお話しいただきたい。
【全日本難聴者・中途失聴者団体連合会】
・授業においては、現在の聾学校などでも導入されているように、FM式の補聴支援システムを導入して、教師の方が首からマイクをかけておいて、発言した内容を聴覚障害にワイヤレスで補聴器に直接声が届くようにする仕組みを学校に導入すれば、授業の聞き取りは比較的よくなると思う。
・私たちは主に情報面での障害と言っていいが、基本的にハード面だけで解決することがあまりないと思う。学校施設バリアフリー化推進指針の令和2年度版の2ページに、運営面でのサポート体制等との連携を考慮という節があるが、こちらのほうに「施設のバリアフリー化のみならず、教材・教具の工夫や、安全かつ円滑に出入りや便所等の利用ができる教室の使用など、ハード面での配慮に加え、施設をより利用しやすくなる運営・管理、人的支援等のソフト面との連携などについて考慮することが重要である」という箇所がある。ハードだけではなく、このようなソフト面で何らかの改善をしていただけないかと思っている。
特に視聴覚教材、ビデオを使用した授業などにおいて、映像があって音声が流れているときに、字幕がなかったら聞こえない人はわからないため、字幕をつけるなど、ソフト面も併せて聴覚障害の支援をしていただきたい。
 教室等に筆談ができる設備や筆談の用具など、情報の交換に資するような設備や機器、機材等も置いていただきたい。また、聴覚障害者が掲示板を見て情報が取得できるといった、工夫をしていただけたら助かる。
 このように、施設、ハード面だけじゃなくて、ソフト面も併せて何らかの改善を加えていただきたいというのが、バリアフリーと併せて情報アクセシビリティーの理念だと思っている。
・聞こえないということについては二通りあると思う。1つは、大きな音でないと聞こえないという聞こえなさ、もう一つは、一つ一つの音の区別ができないので、正確に聞き分けられないという聞こえなさ、この二通りがある。もし授業が、聞こえるということに重点を置いて勧められた場合に、聞こえない子供たちは自分の聞こえについて十分把握していない状態で授業が進められると、どうしても理解が追いつかない面が出てくる。自分の聞こえないことについて説明できないので、周りが聞こえることを前提に授業が進められていると、それが当たり前でそれに従わなければいけないと思い、自分を周りに合わせようとしてしまう状況になる。そのため、私も学校の中では、どうしても周りの様子をうかがいながら、何か自分が出過ぎて、何かに失敗したりすると笑われて恥ずかしいため、引きぎみになってしまい、周りから出過ぎることのないように状況をうかがいながら生活をしており、端的に言うと、リーダーになれない性格になったと思う。これは私だけではなく、聞こえない児童生徒の多くが、聞こえる人の中に1人だけでいたら、このような状況になりがちだと感じているが、この環境を改善するために、聞こえるという前提をやめて、聞こえないことも、聞こえなくても大丈夫という環境をつくっていただくことをお願いしたい。
最近はタブレット、学校教育の中でタブレットの給付、活用の事業も進められているが、その中の字幕を表示する機能、映像に字幕を付与する機能、あるいは音声認識を活用しながら進めるなど、今のICT技術を活用した方法をより進めていただきたい。
 今私も皆さんのお話の内容を補聴器で補いながら、さらに字幕や音声認識も使いながら内容を見て、聞いて、両方で理解している。聞くだけでは十分ではないので、見るということも併せて、両方で理解できれば、私も皆さんの話合いに遅れることなくついていける、この環境をぜひ学校教育の中でも実現してほしい。
 
○電話リレーサービスあるいはヨメテルという設備、あるいはソフト対応の話があったが、この電話リレーサービスが実際の公立小中学校で事例があるのかどうか教えてほしい。また、教室の中やグラウンド、体育館での難聴者への対応として、具体的に通常の学校でどのような対応が必要なのか教えてほしい。
【全日本難聴者・中途失聴者団体連合会】
・ある大学では、運動場の中では、部分的にヒアリングループというものを埋め込んで、そこで補聴器を使って聞いている環境があるというのを聞いたことがある。ただ、現実的には、補聴器というのは汗に弱い部分があり、スポーツをやっているときには、補聴器を外すことが多く、視覚的な情報保障、文字を表示して、文字を見て理解するという方法が必要ではないかと思う。電話リレーサービスなどの活用については、事例は把握していない。
 
○私が所属している学校には聴覚障害教育部門があり、聾学校の部分があるため全ての教室にワイヤレスの補聴援助システムが入っている。そのシステムが入っていると、非常に聞こえやすいと先生から言われている。教室の中でロジャーを動かすときに、よその教室との干渉が入らないよう、教室の中だけでうまくAMが飛ぶような形にしなければいけないと教員から言われている。今、小学校でオープンスペースといった、空間が広がるような教室を設置している学校もあるが、難聴のあるお子さんにとって聞こえにくい環境にならないのか。
○私は公立学校に勤めていた時代に難聴学級というものもあった。そのときには、今のようにインターネットで要約筆記がリアルタイムに表示されるようなものがなかったので、大学生やボランティアの方がノートパソコンを持ってきて、そのお子さんの隣に座って、要約筆記のように、先生の話とか友達の発言を打ち込んで、それを見て授業をしていたということがあった。音を大きくすればいいという問題ではなく、雑音があると区別がつかず聞き取りにくくなるため、椅子などから雑音が出ないように、テニスボールに穴を開けて差し込んだり、雑巾をくっつけたり、いろいろ試して、できるだけ静かな環境で聞き取れるようにしていたというのを思い出した。

【全日本難聴者・中途失聴者団体連合会】
・オープンスペースについては、声が響く場合は補聴器でも聞き取りが非常に難しくなるため、声が響かないように、壁や床に吸音材がついていると非常に有効だと考えている。
 ・私もワイヤレスの補聴援助システムを使っている。マイクが、補聴器とダイレクトにつながっており、マイクに向かって話すと、周りの雑音に影響されずに、マイクの音源が明瞭に伝わり、聾学校の教育などでも使われていると聞いている。実際にこのシステムが活用されている現場を見たことはないが、この補聴援助システムに対応している補聴器を使っている方々が特定の周波数に合わせて、特定のマイクの音だけが入ってくるような環境をつくって利用していると聞いており、混信することなく、特定のマイクの音声だけを選んで聞くことができると聞いている。そのため、オープンスペースであっても、周辺の環境に影響されずに、特定のマイクの音源を明瞭につかむことができると理解している。ただ、聞いて十分分かる生徒ばかりではないため、見て補うようなほかの方法も併せて使う必要があるかと思うが、音の混信については、このシステムでは心配は少ないと思っている。もう一つよく使われているシステムで、ヒアリングループというものもあるがこの場合には、磁気が混信することがある。昭和10年、20年代からずっと長く使われているシステムではあるが、特定の音源を補聴するという点においていうと弱点がある。ワイヤレス補聴援助システムの方が、外部環境の影響を少なく利用できるという点で、一歩進んだシステムだと思っている。もちろんマイクと補聴器が対応していることが前提になる。


議題2:視察報告
・事務局より資料2に基づき説明。
・議題2の学校の視察報告に関して、特別支援学校におけるカームダウン、スヌーズレン室等の利用頻度や活用実態、同一敷地に整備された小学校と特別支援学校の学校教育上の交流について、現状の取組や今後の交流促進に向けた期待、インクルーシブな環境を実現している北欧の学校との比較等について、質疑応答があった。
・主な意見は以下のとおり。
(○:委員の発言)
○11人乗りエレベーターだと車椅子で回転もできず、狭いと感じた。
○昔ながらの学校だと教室の扉のところに段差があることが多いが、今回視察した学校では、教室の扉部分に段差ができないようになっているということや、今回の学校は、全ての階にバリアフリートイレが設置されているということで、どの階でもトイレができるという安心感があり、各階にあるということはすごく大事だと感じた。
○支援学校のエレベーターでは、階によってエレベーター扉や階の色を分けており、どの階にいるのかが分かりやすくなっていてよかった。通常の学校でも取り入れられるとよい。ただ、せっかく併設しているのに繋がっている部分の扉に鍵がかかっていたり、一階の校庭で遊ぶ機会がないというのは残念に感じた。
○事務局で、配慮の必要な児童生徒の情報を早めに入手をして整備につなげている自治体からヒアリングいただきすごく参考になった。事務局でこういった取組をされている他の自治体があれば、さらにヒアリングを進めていただければありがたい。
○小さいときの子供同士の障害のある人たちと交流を持つということは、障害の理解や質の理解、子供同士の支援、サポートという意味で重要な取組になるのではないかと思う。特に、目に見える障害と目に見えない障害という部分の観点からいくと、相互理解が重要なポイントになると思う。バリアフリー法で言われているハード面、ソフト面という観点から考えると、周辺の人たちの理解が今後進んでいくことが重要であるため、これに係る取組事例、取組内容実践の中から御報告いただきたい。
○今、文部科学省が行っているインクルーシブな学校運営モデル事業の1つのモデル的なケースでもあり、一体型あるいは併設するといった考え方は、バリアフリーの学校づくりという意味でも有効だと思う。
○将来的に、ある程度学年の高い児童生徒が中心になって両校を行き来ができるようなことを考えていくのであれば、例えば両校の校務室、職員室をガラス張りでジョイント部分に設けて、その前を通っていくなどという考え方をしていくと、子供の安全なども確保しやすくなるのではないか。
○エレベーターを下りたときに、ストレッチャーのお子さんが天井の表示を見て何階かというのが分かりやすくなっているところなどは、今後、小学校、中学校もとても参考にできるのではないか。
○ノルウェーの小中学校、特別支援学校を視察したが、バリアフリーが進んでいて、普通の学校でも、ドアハンドル、パニックバーが普通の学校でも当たり前に使われており、そこまで日本が到達するのはもう少し先であるとは思ったが、できることから実践していく必要がある。

議題3:学校施設のバリアフリー化の推進に関する検討部会経過報告
・事務局より資料3に基づき説明。
・議題3について質疑応答。

○学校現場では、ソフト対応として、階段昇降機、階段昇降車や人的なサポート、それから、教室の配置の変更、具体的には対象の児童生徒が入学するに当たって、必要な教室であるとか特別教室を1階に持ってくるという教室改修をすることなど、それぞれで取り組んでいるところ。同じ県内の複数の自治体に状況を尋ねたが、少なくとも私が聞いている中では、大規模改修がもう少し先であること等を理由にバリアフリー対応はできない、という話はなく、ソフト対応であっても何とか対応しないと学校の現場が回らないという危機感をもって、それぞれの自治体が取り組んでいる状況と認識している。
最終的にはもちろんハード的には100%整備を目指していくべきだとは思うが、その間でもあってもソフト面を含め丁寧に対応していくことが重要、という考え方を、今後の検討の方向性の中に盛り込むことができれば、バリアフリー化に向けた自治体の取組を促せるのではないか。
○避難所としての学校施設の意味というのも加えるべきではないか。特に、最近では水害が増えている中で、垂直避難の重要性ということが言われる。垂直避難をしようと思うと、バリアフリーになっていないと障害のある者は上の階には行けない。避難所としての重要性、さらに水害が増えている中での垂直避難ができるためのバリアフリー化を入れていただきたい。 
○要配慮児童生徒等の学校のエレベーター整備の重要性・意味を認識されている自治体が少ないのではないか。単独事業としてバリアフリー化を行う意向のある地方公共団体は僅か2割弱であることが問題だと思う。積極的に対応されている自治体もあると思うが、長寿命化計画などを実施しているため、その中でやればいいという形になっている自治体多いことを何とかしなければいけないと思う。3分の2の地方公共団体しかまだ整備計画を持っていない、あるいは単独でバリアフリー事業をやろうとしているところは2割しかないということを何とかするということが必要。8割ぐらいは単独でのバリアフリー化の意向がないという現状を変えていくべきだということで押さえていく必要があるのではないか。
○簡易な昇降機というのが、具体的にどんなものかということをもう少し明確にしないといけないのではないか。キャタピラ式昇降機の場合は乗り込みに時間がかかり授業に遅れたりする、子どもの尊厳、学習権の侵害にもなり得る。「簡易な昇降機」、「ソフト対応」に安易に流れないように、バリアフリーの基本はエレベーター化であることをもう一度記述しておくべきではないか。関係部局と連携して要配慮児童生徒等の入学の情報を把握する体制について、具体に取り組んでいる自治体がいるということを記述できないか。また、学校設置者に、学校における当事者参画の具体的な方法や好事例などを記述できないか。
○法制度の動向に加え、社会情勢の動向についても記載いただくことを検討いただきたい。人手不足や物価上昇の影響で、入札を行っても業者決定に至らず、想定していたスケジュールでなかなか事業を進められないといったケースも散見され、非常に悩ましく感じている。多少の地域差などもあろうかとは思うが、現在このような社会情勢の中にあるという認識を関係者で共有しつつ、困難な状況もある中ではあるが、今後の整備に向けて、前向きな議論や検討を進めていくことが重要ではないか。
既存改修ならではの難しさを念頭に置いた評価についても御検討いただき、大変ありがたい。一方で、きめ細かさの裏返しではあるものの、調査内容が詳細化、複雑化すると、その回答内容の精査に当たって、学校や教育委員会において相応のマンパワーを割かざるを得なくなってしまうことも懸念される。適切な実態把握は大変重要と考えるが、学校にあっては日々の児童生徒への支援、教育委員会にあっては工事など事業の推進というコアな業務にしっかり取り組めるよう、調査や実態把握の方法等については、今後も精査や工夫をいただけるとありがたい。
○バリアフリー化の推進やバリアフリー環境という言葉が使われてソフト面、ハード面の両面からという言葉が出てきている。物理的な環境整備においては、数値目標、数値化ということで、達成率も非常に分かりやすいかと思うが、もう一方で重要なのは、人的環境の整備、障害の理解や相互交流、相互理解が整備されていくということが、学校職員、教職員を含め、そこに通う児童生徒や関係者の理解啓発が一方では重要なので、このような表現もしくは内容等を付け加えていただきたい。
○これからインクルーシブ教育を目指していくときに、どのように環境整備をしていくかという考え方、実はエレベーターができると、車椅子の児童生徒はエレベーターで移動することになるが、これだけではクラスの友達と一緒に教室移動するということにはならない。今の段階では、それでもエレベーターをまず整備しましょうということであるが、一緒に学校の中で生活することということがとても大事だと思う。そういった記述も入れてほしい。
○ソフト的な対応や段階的にという表現が出てくるが、ハード面、施設的な面でのバリアフリーを達成することを強調すべきではないか。「ソフト的対応を考慮しつつ」や、「段階的に整備する」ということを不用意に文言としていれてしまうと、ハード整備を行わなくていい理由として使われてしまうことが懸念されるため、表現については気を付ける必要がある。
 もちろん、先ほどの耳の聞こえの話でいうと、そういうソフト的な装置を使うといった対応は必要であり、心理的なハードルを減らすというソフト的な取組も必要であるが、施設面の話のときに、人が担ぐといった面での対応が、ソフト的対応という枠組みに入ってしまうような表現は避けたほうがいいのではないか。
 
・事務局より今後の日程等について連絡。
・髙橋部会長より閉会の挨拶。
 
 
―― 了 ――