木造校舎の構造設計標準の在り方に関する検討会(令和6年度~)(第4回)議事要旨

1.日時

令和7年9月10日(水曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省 旧庁舎4階 文教施設企画・防災部会議室(オンライン併用)

3.議題

  1. 報告書(案)について
  2. イメージパース(案)の修正について
  3. 今後のスケジュール(案)について
  4. その他

4.出席者

委員

(委員)
   荒木康弘(WEB)、大庭拓也(WEB)、草野崇文(WEB)、後藤章子(WEB)、長澤悟(座長)、堀場弘 (敬称略)
(特別協力者)
   百瀬智史(WEB)、石毛史恵(WEB)、下野恵理子(WEB)、久保寿斗(WEB) (敬称略)

文部科学省

(大臣官房文教施設企画・防災部 施設企画課)
   瀬戸課長、梅崎企画調整官、扇谷課長補佐
(大臣官房文教施設企画・防災部 施設助成課)
   藤井課長補佐

5.議事要旨

議題1:報告書(案)について

・事務局より、「報告書(案)」について、資料1に基づき説明が行われた。その後、委員等により報告書(案)について、討論が行われた。主な意見は、以下の通り。

・17ページに、学校設置者、設計者、木材生産・加工業者等、施工者それぞれにとってのメリットになるようにと書いているが、この中で「効率化」という言葉が、それぞれにとって、効率化の内容が違うと思う。これはそれぞれの立場の人にとって、この報告書の意義というのを伝えるところだから、もう少し具体的に書ければ、より伝わる力があると思う。
・特に、木材生産・加工者の活性化・効率化だが、様々な状況の地域で、木造化に取り組みやすいようにするのが、この調査研究の趣旨だとすると、木材生産・加工者については、地域の木材産業の活性化、地域の森林の保全、地域の木に関わる力、木を通した地域の経済・産業の活性化につながるという内容に踏み込んだ記述ができると、より伝わるのではないか。効率化につながるというのが機械的なので、少し相手の顔を見ながら、表現を少し追加していただけるといいのではないかと思う。
【事務局】
・文章を修正する。

・このJISが、一般流通材で地域産材の活用に結びつけられればいいという話があった。木材生産と加工者側の話の部分で、生産システムの活性化・効率化というようなところは、ぴんとこないところがあるのではないか。
・木材生産者から見ると、JIS規格というよりは、JASのほうが密着しているという考え方が強いため、生産システムの活性化と言われたときに、JASではなくてJISでというような感じに捉えられるのかなと感じた。
・学校設置者や発注者の立場から言うと、木造で地域の公共施設や学校施設を建設するのであれば、自分たちの地域から切り出された木材を活用して整備したいというのがあると思う。
・地域の山の循環とか、森林整備という観点で、メリットになると思う。
・木材納入者側から言えば、決まったパターンの寸法を幾つか決めた上で、それを大量生産して納品するというような形での生産効率化がある。その前段階である設計の一般流通寸法材を活用した加工の組み方とかトラスのパターン化とか、そういった工夫があった上での効率化に結びつくと思う。
・効率化というところで言うと、施工者の施工効率というところにつながってくると思うので、より具体なイメージになると感じた。
・この検討会の狙いも踏まえながら、記述の仕方を検討していただきたい。経験の少ない設計者にとって、木造JISを前提にすることで、材の調達やストックの検討等を効率化できる。
・材の伐採時期も、繁忙期でないときに製材ができるというのが全体のコストにも関わってくる。木造の構造設計標準をつくるということの意義にもつながると思うので、検討いただきたい。
【事務局】  
・ご指摘の内容は、学校設置者のところの括弧書きで書いている。JIS規格の技術資料の中で、JISを使ってこの規模の建物を建てる場合、例えば杉材だと、このサイズのものが何㎥とか、概算数量を公開することになる。設置者に見ていただければ、企画段階でどれぐらいの材がどれぐらい要るかということが把握でき、材の発注や、乾燥等を検討する学校設置者にとって、有益な情報になると思っている。

・「効率化」という文言が気になった。
・生産という意味では、効率化はポジティブに捉えられるが、設計の部分について言えば、効率化につながるのは、何か質が下がるのではないかというニュアンスを抱かせると思う。設計について言えば、効率化することは悪いことではなく、効率化によって、より創造的な部分に工夫ができるとか、その先を見据えて効率化というような言い方が良いと思う。
・効率化の意識をもっと高めるというのも、木造に関してはあるかもしれない。木造の場合には、シンプルに構造をつくるということが、割と単調でつまらない空間になるというより、木材の良さ、木の豊かさを感じさせるような効果もあるので、少し表現の仕方を検討していただきたい。
 ・基本的に、皆さんの今の議論と同じようなことを考えていた。
 ・それでは、報告書(案)については、こういう方向ということでよろしいか。この後、お気づきのところがあれば、事務局のほうに寄せていただくということでお願いしたい。


議題2:イメージパース(案)の修正について

・事務局より、「イメージパース(案)の修正」について、資料2に基づき説明が行われた。その後、委員等によりイメージパース(案)の修正について討論が行われた。主な意見は以下の通り。

・事前にワーキングで資料を拝見させていただいている。文案もパースも一通りチェックし、それも反映していただいているので、特段意見はない。細かいところで、可動机のところのパースが少し分かりづらいので、何か文言等で追加していただければありがたい。
【事務局】
・可動机のパースを修正する。
  
・今回のJIS改正で現れてきている部分と、実際の教育の場としての学習環境のつくり方という観点で言うと、窓側に耐力壁を入れるようになっている。これは構造的に耐力壁が必要ということだが、計画的には、むしろ、この側にいい壁面があると考えられる。掲示をしたり、ホワイトボードにすればそこに文字を書いたり、その前にグループが集まったり、収納の棚を作りつけることもできる。ここに耐力壁を造るということが、「今までの学校では、ここが窓だったのに」とマイナスイメージに捉えられないように、むしろ、この壁を積極的に生かせる可能性があるということに触れられるといいと思った。
・もちろん、パースの趣旨は、構造的な骨格を表すということは分かるが、この図だと、車椅子の子供が書いてあり、これからの学びの環境ということを併せて表現しようとしているので、少しそんなこともあっていいと思った。
・ブレースの後ろがガラス表現になっているが、本当は壁面の表現というのもあっていい。そうすると、ブレースが消えてしまうから難しいかもしれないが。示さなければいけないということではなく、向こうに壁があるのは悪いことじゃないというのを計画的には示したいと思った。
・4ページ目の(7)は南西側、(8)は南東側から見たパースか。外壁面の開口の窓の形状が(7)と(8)は東と西で違うので、ここは整合しなくていいのだろうが、ハイサイドの向きが整合しているか。あとは、室内側の外壁面側の開口と、(7)、(8)の外壁面の開口の形状が整合しているのかが気になったので、確認していただきたい。
【事務局】
・整合を取りたいと思う。

・ハイサイドライトを造れるようにというのは、今度の改正の方向性で書かれている7つの項目の中で、今日的に非常に大事なところでもあるので、パースできちんと現れているのはいいと思う。
・南東側の外観イメージパースを見ると、(7)は逆から見ているのかなと思うが、違うのか。
・両方ともハイサイドライト自体の向きは北か。
・北を向いているので合っているのか。(8)を奥に進んでいって、振り返ったのが(7)ということでいいのか。そうすると合っている。そうしたときに、左側の面が同じ向きを見ているとすると、窓の形状が違うのかと思うので、確認してもらえればと思う。
【事務局】 
・(7)と(8)のパースは、別の建物と考えている。

・今の御指摘は、大事なところかもしれない。
・別の建物と分かるようにしてもらいたい。
・上のパースは、窓が小さくて、一般的に言うと、建物の北側ファサードに見える。特に、1階部分は、グランドの前の緑に面しているのに、高窓みたいな感じで、そちらとのつながりがあまりない。これは最初に事務局から説明があったときに、窓の大きさは検討するという発言があったので、そういう中で整理していただきたい。
【事務局】 
・調整する。

・下側のパースで、妻側に大きな開口があるというのは、大変魅力的。学校の妻側は、一般的に壁で閉鎖的だが、このJISの木造校舎では、妻側も開いた校舎ができるというのは、木造校舎の可能性が開けたという感じがあって、とてもいい情報が込められたパースと思いながら拝見していた。
 ・個人的な意見だが、ハイサイドライトを北側から取り入れている外側から見たパースで考えれば、(5)のパースは、南向きに窓を多く取っている普通教室だと捉えた。地域特性的なところもあるので一概に言えないが、学校施設を整備するときは、普通教室はできる限り北側配置にしようと決めている自治体もある。
・なぜかというと、南側配置で普通教室を造ってしまうと、南の窓から入ってくる暑さに対して季節変動が大き過ぎる。窓側の席に座っている子は夏が暑く、どんなにブラインドやカーテンを閉めても、どうしても温度変化が急激になるので北側から採光を取ったほうが、年中平均的だと思う。
・ハイサイドライトを北側にしているからそのとおりだというところであったが、普通教室を北側配置と考えていた。北側からハイサイドを取りたいが、北側で普通教室を整備したいというところで言うと、トップライトの取り出しの方向が逆のほうがいいと思う。ライトウェル等を使って、ハイサイドでなるべく平均的な採光は取りつつも、北側教室配置で窓際の子が負担にならない計画がいいと思うが、若干、無理がある可能性があるので、個人的な意見として聞いてもらえばと思う。
・南からハイサイドライトを取って、遠巻きに廊下を通じて北側の普通教室に光を取り入れようと計画した学校があった。夏場にハイサイドライトから日射が強く入り過ぎて、「まぶしい」と子供たちから言われたことがあり、結局、ハイサイドライトにカーテンをつけて調整してもらっているところがある。
・北側の普通教室配置だと、子供たちは年中安定した光の中で生活しているので、南配置になっている学校の子供たちより、集中力に欠けることが少ないと肌感覚で感じたため、話をさせてもらった。
・そういう話があるというのは承知している。例えば、「ハイサイドライトによる北側採光」の「北側」というのを取ってしまうというのはどうか。ハイサイドライトによる採光ということで。確かに南だと、本当は窓の外側にひさしが欲しくて、この角度だと本当はひさしは書けるはずだけど、入っていない。そうすると、直射日光が入ってきて。日射調整というのは非常に大事なので、パースを書くと狙いとする内容じゃない、いろんな情報がそこに重なってきて、今の指摘のようなことになるわけだが、「北側」という文言を取るということでよろしいか。
【事務局】 
・修正する。

・庇は、追記してもいいような気がする。庇のラインを窓の外に入れればいい話だと思うので。
【事務局】 
・庇のラインをパースに追加する。
 
・パースがあると、イメージが伝わる。例えば、張弦トラスとか、そのようなものも、きちんと示されることになっていて、やはり有効という感じがした。
【事務局】 
・今後、木造JISを活用した設計例を作成していくので、そのときに矩計図、断面図、平面図等をつくっていく。その際、色々御指摘いただければ、もう少し細かいディテールを詰めていけると思うので、よろしくお願いする。
 

議題3:今後のスケジュール(案)について

・事務局より、「今後のスケジュール(案)」について、資料3に基づき説明が行われた。主な意見は以下の通り。

・今後、日本建築学会に、JIS改正原案作成を依頼するということになっている。そのときのポイントについて、検討会、ワーキンググループで御意見をいただいていたと思うが、そういうのも報告書と併せて伝えていただき、作業していただくということになるのか。
・11月、12月は、JIS原案作成の準備会を開催して、1月から8か月間で、JISの改正原案を作成するという計画で、日本規格協会に申請を出している。検討メンバーは、基本、日本建築学会の小委員会のメンバーで構成している。
・小委員会というのは。
・JIS改正に関連した小委員会になる。本検討会委員も入られる小委員会になる。
・要するに、JIS改正のための小委員会ということになるのか。
・学会のほうに小委員会があり、そこのメンバーが入って、JIS改正のための検討委員会のワーキングメンバーを構成している。
・ワーキングでは、実際のJIS改正案を作成する。親委員会的なものがあり、そちらのほうは、生産者、使用者、中立者が加わった形の委員会で、ワーキングから出たJIS改正案を確認するというような体制を予定している。
・本検討会の委員が、中心的にお入りいただくので、ここでの検討の内容が、きちんと反映される形でこれから進めていただくことになると思う。
・承知した。

議題4:その他

・今回のJIS規格に直接的には関係ないが、気になったことがある。文科省のほうで40人1クラスというものを35人1クラスで見直しかけているというお話があった。
・これに並行するような形で、文科省で定めている必要面積の算定に関係する算出式について、若干見直しが入るかどうか、そういったところのお考えがあるのかどうかお伺いしたい。
【事務局】
・35人学級になると、今の必要面積がどうなるかという話はあるが、机のJIS規格が大きくなり、タブレットとか机に置く教材も大きくなってきているため、文科省としては、35人学級になっても必要面積は変わらないという整理をしている。

・必要面積の算出式についての変更はないということか。
【事務局】
・今のところは、そう考えている。

・承知した。
【事務局】
・必要面積を小さくされたら、困るということか。

・小さくされたら、全国の自治体が困ると思う。
・山形県では、独自に「さんさん」プランというものをつくっている。1クラスに33人というカテゴリーで各自治体に検討してもらい、できれば1クラスにいっぱいの人数ではなく、少人数を丁寧に見るという指導ができる体制で児童数・生徒数を考えてほしいという県独自の考え方がある。
・近年、新JIS規格で机等が大きくなたり、コロナの3密対策でパーソナルスペースをもう少し余裕をつけて配置したいが、教室の広さも限界があるというような話も話題に上がっている。
去年の7月に小学校を建て替えしたが、最大で1クラス32人。8m×8.5mのメーターモジュールの中に32人を詰め込もうとすると、ランドセルボックスが手狭になってはみ出さなければいけない。先生たちが机間を巡回するとき、あまり通路寸法を取れない状態があるので、もう少し生活空間的な余裕があるといい。イニシャルコストの関係で、踏み込んだような教室のプランという限界がある。今回の木造JISで、理想的なモジュールプランというのを提示しつつ、今後、少子化でそれ以上増えるということは、よほど人口が増加している都市部でなければないと思う。
・1クラス35人で、5列×7行みたいな形の配列にしたとき、両脇のスペースが50センチ取れるか取れないかとか、机と机の間が40センチで、先生は歩くとき大変なところがある。その辺を考慮すると、教室サイズは寸法的にギリギリなところがある。
・教室面積は、また別の課題として、この場では受け止めておきたい。
本日は、多方面からの御意見をいただき、本日用意された課題についても、議論が進んだので、もしほかになければ、この辺りとしたいと思う。
・本日も色々御意見いただいたが、いただいた御意見の修正、それから細かい語句の修正等については、座長一任という形にさせていただければと思うが、よろしいか。
・異議なし。
・異義がなければ、そういう形で進めさせていただきたい。これまでにいただいた御意見、それから今日の御意見を踏まえて、事務局と検討し、きちんと反映するようにしたい。今後、事務局と最終調整を行った上で、10月上旬に本報告書を文部科学省のホームページで公表させていただく。その後、本報告書を基に、日本建築学会で、JIS A 3301改正原案を作成していただくことになる。

(文教施設企画・防災部 施設企画課)