令和7年5月29日(木曜日)10時00分~11時50分
文部科学省 旧庁舎4階 文教施設企画・防災部会議室(オンライン併用)
(委員)
荒木康弘(主査)、垣野義典、川原重明(Web)、草野崇文、篠田文彦、田尾玄秀(Web)、野島直樹(Web)(敬称略)
(特別協力者)
益居綾(Web)(敬称略)
(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)
瀬戸課長、梅崎企画調整官、扇谷課長補佐
(大臣官房文教施設企画・防災部施設助成課)
藤井課長補佐
・事務局より、「JIS A 3301改正の方向性(案)について」資料1 1-1~1-4に基づき説明が行われた。 その後、委員等によるJIS A 3301 改正の方向の討論が行われた。主な意見は以下の通り。
1.高さについて
・建築基準法的には、2階建ては最高高さ16mまで可能となるので、JISの適用範囲は16mでいいのではないか。
・変えない理由はなにか。
【事務局】
・最高高さの基準を16mとすると部材寸法が大きくなり、コストがあがる可能性があるため。
・適用範囲としては、広くしておきたいと考えている。
・部材サイズまで設計・規定しているのか。
【事務局】
・部材サイズは、附属書で規定していたと認識している。
・JIS の適用範囲が2階建てまでであれば 、16mまで引き上げなくてもいいのではないか。
・大きめの階高の2層に、4.5寸の屋根をかけた時の最高高さぐらいを想定したところで、区切っておけばいいのではないか。16mまであげなくても。
・最高高さを高くしても、耐力壁が適用できなければ設計できないし、使えない 。
・建築基準法では、軒高の規定はなくなり、最高高さだけ規定されるようになるので、JIS も最高高さを13mにするか 16mにするかは今後検討するとして、軒高の規定はなくしてしまっていいのではないか。
2.軒の出について
【事務局】
・バルコニー設置に伴い、バルコニーの先まで軒を伸ばしたいと考えている。
(現行JIS では軒の出は1.2m以下までだが、1.8m以下程度に変更したい)
・現行のトラスで、軒を1.8mまで伸ばすことは可能か。
・現行のトラスの構造だけだと600㎜程度しかもたないため、1800㎜まで 持ち出すと、方杖を出すなどの他の構造を考えなければならない。
・多雪地域ではバルコニーを設けない場合が多いため、地域によって分けてはどうか。
・1.8m飛び出すには、力技が必要になる。303ピッチや225ピッチで120角を並べるような構造となる。
・多雪地域だとより大変となる。基本的に、多雪地域ではバルコニーを設けるのか。
・多雪地域ではバルコニーを設けない場合が多いと思う。雪が積もって落雪の危険性があるので。
・地域によって分けてはどうか。
・参考資料4に、バルコニーや多雪地域の情報を追加してほしい。
【事務局】
・次回までに、調べて追加したい 。
3.屋根勾配について
【事務局】
・現行のJISの屋根勾配が、10/3~10/4.5となっている。金属屋根をメインで考えた場合、3/10程度の勾配にして、コストダウンを図ることはできないか。
・ハイサイドライトは、この勾配の範囲でおさまっているか。
【事務局】
・細かな断面の検討はできていないが、張弦トラスにしたときに屋根勾配がどれぐらいになるかは検討しないといけない。
・張弦トラスを導入した際、可能となる勾配の範囲で検討することで宜しいか。
・いいと思う。
・多雪地域も含めて全般的に適用させるなら、ある程度の勾配を想定しておかなければなない。
・コストのことを考えると高さを抑えたいこともあり、より緩勾配とすることも考えられるが、3/10勾配は張弦トラス も前提に考えられた数値であると理解した。
・参考資料4を見ても3/10を切っているのも結構ある。張弦トラスの検討に応じて変更したらどうか。
4.階高等について
【事務局】
1階の階高が現行のJISでは、3,650㎜と大変厳しい設定なので、もう少し拡大したいと事務局では考えている。
・階高の基準を上げるのは望ましいが、高さ3,800㎜程度の耐力試験をする必要がある。
・杭の引き抜きや、柱の断面も厳しくなる。
・基礎の立ち上がりを高くして、耐力壁そのものは高くしない設計もある。
・2階は 3,800mmとして、1階の階高はもっと高くしても良いのではないか。
・外周部の基礎はGL+300㎜で、雪国ではGL+1,400㎜もある。GL+ 3,800㎜でかまわない。
【事務局】
・2階からの遮音や振動を考慮すると 、1階の階高を増やす検討が必要だと考える。
・断面構成(荷重の想定)として、1階の天井は張るイメージか。仕上げは前回のJISと同じ荷重条件を想定するか。
・荷重条件は、木造を設計する上で、一番キーとなる。壁量も小さくする要望に対しては敏感となる。
・設備的には今の階高では厳しい。天井を下げれば可能だが、自由度が狭まってしまう。
・設備の確認だが、梁貫通はしない条件での高さ設定で良いか。壁は貫通しても補強できるが、梁は貫通しないことで良いか。
【事務局】
・梁貫通せずに、天井内に設備を収めた時に、どのくらいの階高が適切かを検討したい。
・設備機器を収めるためには、梁から有効400㎜程度空間が必要となる。
・天井は張らずに、梁と梁の間に設備機器をあらわしで設けて、遮音は上の階で対策している設計もある。
・天井を張らないと遮音や吸音の話がでてくる。そこもセットで考えなければならない。
・階高は上げる方向性で進めたい。その際、床仕様と設備の納まりも検討する必要がある。
5.トップライト型の屋根架構について
【事務局】
・ハイサイドライトを設ける場合、張弦トラスが最も合理的な形式か。
・合理的とはどのような意味か。
【事務局】
・合理的とは、部材が一般流通材で組めてコストが安いという意味。
・現状 のトラスにトップライトを設置してはどうか。
・トップライトは教室に設けるのか。中廊下に設けるのか。両側に教室がある場合は片方の教室にだけ設けるのか。
【事務局】
・イメージパースでは、教室に採光が入るイメージで作成しているが、中廊下に採光を取り入れる考えもある。急勾配の方の屋根を張弦トラスで描いている。
・ハイサイドライトであれば、張弦トラスで良いと思う。
・トラス下で天井は張らない荷重条件で良いか。
・下弦材に沿って天井を張るタイプもある。
・その場合はトラスの下弦材に荷重をかける前提で計算することで良いか。
・配線は露出か。
【事務局】
・屋根の架構は、天井を張らずに見せたいと考えている。配線は露出で、トラスの裏側にはわせるイメージ。
・イメージパースの梁はダブルで、その間に照明を収めるイメージか。その上部を設備スペースや配線ルートに使用できるので、設備は収めやすい。
・荷重条件として、最初から天井は張らないと決めつけずに、天井を張ることもできるようにした方が良いと考える。
・ハイサイドのときは張弦トラスが使いやすく、トップライトではキングポストトラスで十分できる。
・ハイサイドのときは張弦トラス、トップライトでは現状のキングポストトラスで十分できる。
6. 教室まわりの耐力壁(改正案)について
・通常の実務では、ユニットの中で完結しないため、教室前の耐力壁を減らすなら、他の所で耐力壁を設置する。柱だけにしてフリーにもする設計を求められる。
・ユニットで設計してしまうとこのような不合理となる。全体で建物を見れば考えやすい。
・そういった意味では、ユニットの中だけで計算している今のやり方はあまり合理的でない。
・厳しい条件を与えて、成立するようになるのが標準とするのはどうなのか。目安にはなるが。
・それもあってユニットの考え方が 、何かみんな違和感を持っているのではないか。
・ユニットで完結しない部分は技術資料で示したらどうか。
・上下階が一緒の条件の連層条件で計算するのか。1階は必要だが、2階は半分でいいはず。
・偏心もある。
・JIS 本体ではなく、技術資料に示したらどうか。
・教室周りの耐力壁の問題については、建物全体で考えれば問題なくできるため、その考えをどこかに示す必要がある。
7. ユニットタイプの整理・統合(案)について
・大きい側で包含する考えであれば、最も大きなプラン1つで良いのではないか。
【事務局】
・最も大きな教室サイズのプランと、教室整備におけるボリュームゾーンのプランを標準として残す考え。 地方によっては、子供の数が少なく、小さめの教室サイズで整備している事例もある。
・Cタイプの中廊下の4,550mmを残す考え方もある。
・AタイプのLx1:8 ,190mm、Ly2:6,370mmみたいな長方形の教室は地方で建てられているのか。それとも30人学級が増えても対応できるような、正方形に近い教室が多いのか。文科省では35人学級を目指しているのか。
【事務局】
・文科省では35人学級を進めているが、JIS規格の机のサイズが大きくなっているので、35人学級となっても、補助基準面積は74㎡のままとなっている。
・教室が長方形がいいか正方形がいいかは色々な考えがあると思う。
・8m×6mは使いにくいプロポーションではないか。
・前回のワーキングで意見を述べた、一対一対応のユニットプランを決めるよりは、何メートルから何メートルに対応 できるトラスや梁で決める方が設定しやすいのではないか。
・地方だと狭い敷地で長さを自由に変えたいという要望があるため、ユニットというか標準プランの幅を示すという考え方もあるのではないか。
・構造的に考えると荷重を想定して、壁量計算ができれば良い。例えばAタイプだと、何㎡当たり壁が何メートル必要かわかれば、壁については良い。
・今まではプラン上、Y方向に梁をかけているが、Lxが短い場合、短辺方向に梁をかける。
・柱も同様で、120角は㎡当たり何キロまで支えられ、そうでなければ150角とする。階高が3,800mmで決まれば柱長さが決まる。今、実務でやっていることを書いた方が自由度が高いと考える。
・昔のJISは 、たしか幅をもたせた記載だった。
・ユニットプランの考えは一回置いておき、梁間方向、桁行方向は何メートルから何メートルまでという昔のJISに戻したらどうか。
・設計するときは、ユニットプランありきで形を作っているわけではなく、設計したものに対して構造的にどう成立させるかの思考の流れで行くと、古いJISの考え方がしっくりくる。この範囲で設計して、最終は構造設計者が計算して確認する。
・昔のJIS は、7.4~8.5mとか、柱間を1.8~2mというような書き方をしている。
・一番小さい数字と大きい数字で、Lx:7.28~9.1mという書き方をして、各タイプ1~2つで作成するイメージ。
8.イメージパースについて
・パースの木育のイメージを入れた意図は何か。
【事務局】
・学校施設を木造とする意義の一つに、環境教育があるため。
・(2)のパースの教室側は柱だけ、(5)のパースの教室は壁があるが、どちらをイメージしているか。
【事務局】
・できるだけ教室とオープンスペースはオープンにしたいが、(5)は張弦トラスのため、垂れ壁が必要と思い、壁としている。
・(2)は耐力壁がもう少し必要かもしれませんが、オープンに描いている。
・2階なので 、耐力壁は やりようはある。
・(2)のパースでは、トラスの下には耐力壁(筋交い3段)がついているが、JIS の中でこういった使い方はしないと記載している。 公表するなら書き換えた方がいい。
・トラスのピッチは、JISでは2m程度までで、このパースでは4m程度に見える。こんなに粗くはならないはず。 屋根の水平構面は合板で取るので、合板のモジュールに合わせたトラスのグリッドになっているはず。参考資料3の写真 は、柱のピッチが1,820㎜だろうと思い、イメージはこちらに近いと思う。
・事務局より、報告書(素案)の説明が行われ、意見がある場合は後日、事務局へ連絡いただくように依頼した。
・垣野委員より、木造校舎の木架構がオープンスペース活用に与える影響について説明が行われた。
その後、委員等による自由討論が行われた。主な意見は以下の通り。
【事務局】
・非常に示唆に富む研究だと思い聞かせて頂いた。先程、普通教室とオープンスペースの間の耐力壁の議論があったが、耐力壁はいろいろな活動を制約する面がある。
・それを構造的に柱で代替えすることによって、その柱が活動を誘発したり、領域を新たに作り出す効果が期待できるという感想をもった。
・8,000mmぐらいの広いオープンスペースにおいても、その中に柱があれば、また違った活用の仕方が期待できると思った。
・木架構がオープンスペース活用に与える影響については、技術資料の中で紹介させていただくように検討する。
・木の柱が小学生がもたれかかるように子供たちにとって優しい素材であり、その周りにアクティビティが広がっていく意味では、木の柱があると良いと思った。
・木造は子供たちの体のスケールになじみやすいため、柱もその構成要素だと思う。そうした構成要素を、事例を通して示しても良いと思う 。
・事務局が用意した資料以外で、 委員等による自由討論が行われた 。主な意見は以下の通り。
・前回、ワーキングではなく、委員会に出席した際に、木造JISの標準を使った事例があるのかどうかの意見があったが、文科省で把握しているのか。
・施設助成課で毎年木造の調査をしており、JIS利用の概要のデータはあるが、詳細までは把握できていない。
・去年度、アンケートを取ってヒアリングする話があったため、ヒアリングできればしてはどうか 。
・事務局より今後のスケジュール等について説明が行われた 。