令和7年1月17日(金曜日)13時30分~15時30分
オンライン会議(Zoomを用いて開催)
西尾主査、五十嵐委員、上野委員、金子委員、酒向委員、塩﨑委員、下條委員、恒川委員、鶴見委員、出口委員、土井委員
【西尾主査】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議(第4回)を開催いたします。
本日は、皆様、御多用のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。また、新年になりましてからの初めての会議でございます。皆様、本年も何とぞよろしくお願いいたします。
初めに、事務局からオンライン会議の注意事項の説明、欠席委員と配付資料の確認などをお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】 事務局を務めさせていただきます、文教施設企画防災部計画課整備計画室で室長補佐をしております松田と申します。本年もよろしくお願いいたします。
初めに、ウェブ会議の注意点を御説明いたします。
1.音声が聞き取りづらい場合がありますので、御発言の際はゆっくりはっきりと御発言ください。
2.発言時以外はマイクをミュートにしてください。
3.御質問などありましたら、その場で発言の御希望があることが分かるよう挙手機能を御使用ください。挙手機能をオンにされた方に主査から指名していただきますので、御発言はその後でお願いいたします。
また、本日は、伊香賀委員、大村委員、木部委員、高橋委員、両角委員が御欠席でいらっしゃいます。なお、大村委員の代理として愛知県政策企画局企画調整部長の河合泰様に御出席いただいております。また、酒向委員、恒川委員は、都合により途中からの参加を予定してございます。
資料は、事前にPDFでお送りしているものを画面共有しながら御説明いたします。配付資料の確認につきましては、各自、議事次第を御確認ください。
会議の開催に先立ち、昨年12月27日に閣議決定されました令和7年度予算案について簡単に御報告させていただきます。参考資料1を御覧ください。
令和7年度予算案における国立大学法人等の施設整備に係る予算としましては、昨年度とほぼ同額の364億円を計上しております。また、昨年12月17日に成立しました令和6年度補正予算案では、国立大学・高専等施設の整備に係る予算として624億円を計上しており、令和6年度当初予算363億円と合わせて987億円となり、令和5年度から21億円の増額となっております。
報告は以上になります。
それでは、西尾主査、議事の進行をよろしくお願いいたします。
【西尾主査】 ありがとうございます。また、予算の獲得に関しましては、事務局に多大なる御尽力をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。
それでは、議題に入ります。本日の議題は、五つを予定しております。議題1が「過去の大規模地震災害における被災地の国立大学法人の対応事例について」、議題2が「有識者(鶴見委員)による発表」です。議題2については、前回、ご事情により発表いただくことができなかったものを、本日発表していただくことになり、大変ありがたく思っております。議題3が「第6次国立大学法人等施設整備5か年計画策定に向けた中間まとめ(素案)について」、議題4が「各ワーキング・グループによる検討結果の報告」です。議題4のワーキング・グループにつきましては二つございます。一つ目が上野委員に多大なる御尽力をいただいております共創拠点化の推進に関するワーキング・グループ、もう一つが戦略的な施設マネジメントに関するワーキング・グループで、こちらは出口委員にまとめ役として御尽力をいただいている案件でございます。それに加え、議題5にその他を予定しております。
なお、資料に沿って、まず議題1から4を一通り御説明いただき、最後にまとめて議題1から4に対する質疑応答の時間を設けたいと思っております。
それでは、議題1でございますが、過去の大規模地震災害における被災地の国立大学法人の対応事例について、事務局より説明をお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】 それでは、資料1、過去の大規模地震災害における被災地の国立大学法人の対応事例について、事務局より御説明させていただきます。
なお、こちらの資料の位置づけとしましては、この後の議題3で御説明させていただきます次期5か年計画で目指すべき方向性の大きな2つの柱のうちの一つとして考えております国立大学法人等における地域の防災拠点の実現が、今まさに求められてきている背景等について御説明させていただく資料として考えております。
資料1の1ページ目を御覧ください。
まず初めに、災害発生時に国立大学法人等の施設に求められる機能と対策について御説明させていただきます。
背景としまして、この後御紹介させていただきます過去の大規模地震災害など、近年の激甚化・頻発化する大規模自然災害において、国立大学法人等では実際に多くの避難者や帰宅困難者などを受け入れてきました。これは、資料中央のPointに記載しておりますとおり、多くの避難者等を受け入れられる広大なキャンパスですとか、ライフラインの途絶にも強い非常用発電機や井戸水利用施設などのインフラ設備、災害拠点病院など、地域の避難所等としての役割を担えるだけのポテンシャル(特性)を国立大学法人等が有していたことから、近年の大規模自然災害においてこれだけ重要な役割を果たしてこられたものと考えております。
今後、国立大学法人等においては、激甚化・頻発化する大規模自然災害時における災害対応がますます求められることが考えられることから、次期5か年計画では、災害発生時に学生・教職員や多様なステークホルダーなどの安全や教育研究活動の継続性を確保するとともに、地域の避難所等としての役割を果たせるよう、地域の防災拠点の実現を目指していくことが必要であると考えております。
そのための取組としまして、資料下側に記載しております施設・設備やライフラインなどの耐災害性の強化を図るとともに、その上の避難所等としての防災機能の強化を推進していく必要があると考えております。
なお、今後、国立大学法人等が地域の防災拠点としての役割を果たしていく上では、平時より避難所等の運営を担う市町村の防災担当部局等と連携し、国立大学法人等が担うべき役割について確認しておくなど、ソフト・ハード一体となった取組を進めていく必要があると考えております。
資料1の2ページ目を御覧ください。最後に、過去の大規模地震災害における国立大学法人の対応事例について御説明させていただきます。
まず、資料左上に記載しております東京大学の事例では、東日本大震災の際、文部科学省が各国立大学法人等に対して帰宅困難者を受け入れるよう協力要請をしたことを受けて、東京大学では、附属病院の待合室をはじめキャンパス内の施設を開放し、2日間にかけて帰宅困難者を受け入れるとともに、備蓄していた毛布などの提供を行ったとのことです。また、透析患者や人工呼吸器装着患者等を受入れ、医療提供体制の継続に貢献したとのことです。
このように、東日本大震災では、複数の国立大学法人等が帰宅困難者の受入れなどで災害対応に貢献したことから、国立大学法人等が地域の防災拠点として世の中により認識されるきっかけとなった出来事だったのではないかと考えております。
また、資料右上に記載しております熊本大学の事例では、平成28年熊本地震の際、熊本大学では、熊本市から一時避難場所として指定されている5施設に加え、附属学校の教室などを避難所として開放し、4月14日から5月8日までの間、最大で約2,800名の避難者を受け入れるとともに、避難者に対して備蓄倉庫から毛布やマットレスなどの物資や非常食等を配布したとのことです。
さらに、資料下側に記載しております北海道大学の事例では、平成30年北海道胆振東部地震の際、北海道全域で大規模停電が発生したにもかかわらず、北海道大学では自家発電設備により電源を確保できたことにより、札幌キャンパスの体育館に設置した避難所において計624名の避難者を受け入れたとのことです。
説明は以上になります。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。本日は阪神・淡路大震災からちょうど30年に当たる日でございまして、そのことも含めまして、今の御報告を心に刻みながら拝聴させていただきました。
それでは、次の議題2について、鶴見先生に御発表いただきたいと思っております。何とぞよろしくお願いいたします。
【鶴見委員】 北九州高専の鶴見でございます。まず、このような機会をいただきまして誠にありがとうございます。
それでは、私の発表に移らせていただきます。資料の共有をさせていただきます。
皆様、国立高専は御存じと思いますがかもしれませんが、大分大学とは違いますので、まず、高専に関する一般的な話から始めさせていただきたいと思っております。
国立高専は、高度経済成長の時期に技術者不足が叫ばれまして、急遽、大学を出てからでは遅いということで、即戦力のある技術者を育成するため設置されました。昭和36年に制度としてはスタートしましてちょうど2022年に60周年を迎えたところでございます。令和4年ですね。その間、国立高専は全部で51校が設置されております。この図の右側にありますように、通常の中等教育から大学コースと異なりまして、5年間で大学と同等の技術者としての教育を行うというような制度設計になっております。15歳から入ってきますので、やはりそれなりの課題も抱えておりますけれど、逆に言うと非常に能力の高い理系に適した若い子たちを早期から教育できるという、非常にユニークな教育機関でございます。
これが全国の高専の配置の図なのですが、これを見ていただくと大体分かるかと思いますが、ほぼ全県に1校ずつ、ないしは2校から3校ある県もあります。逆に高専がない県もございます。ない県のうち、今、滋賀県に滋賀県立高専をつくるということで動いております。国公立では58あるのですけれど、最後に設置された私立の高専が徳島にあります神山まるごと高専でございます。
まず、国立高専の地域性とか特徴と課題を少しまとめさせていただきました。先ほど言いましたように、ほぼ各県に設置されているということが1つと、それから、実は地方都市、県庁所在地というよりは、どちらかというと第2、第3の都市に置かれていることが多いです。それから、地域課題を解決するというミッションを与えられています。これは大学も行っていることではございますけれど、学生を巻き込んだ産学官連携が非常に盛んです。それから、進路としては、大体就職6割、専攻科も含んでおりますけど進学が4割というような進路が選ばれています。地元定着の期待はありますが、やはり今の状況というのは大都市に就職の目が向いているということで、一旦、東京、大阪等の大都市に出て、それからまたUターンしてくる学生が一部いるというような感じでございます。それから、女子学生に関しては、今、全国の平均が25%で微増しております。実は高専は工業高専のイメージが強いかと思うのですが、文系の学科を持つ高専も幾つかございます。例えば富山の国際ビジネス学科のようなところでは、8割から9割が女子学生です。もう一つ、これも大きい特徴になりますが、全高専に寮がございます。ただし、寮の規模は高専によって異なりまして、150人規模から600人以上の規模の高専もございます。当然、15歳から入って、就職・進学しますときに20歳ですので、非常に年齢幅のある学生が一緒の寮で生活をしているということになります。専攻科生を入れている寮もありますので、場合によっては22歳までの学生もいるということになります。それから、場所が避難所に指定されている高専が比較的多いと思います。
課題としては、先ほどもお話ししましたように、設置から60年たちまして、校舎、学生寮、体育館等福利施設ですね、この辺りの老朽化が非常に著しいということです。また体育館につきましては、空調設備はほぼないと言っても過言ではないと思います。防災機能強化への対応というのは全般的に遅れているのではないかなという印象でございます。それから、女子学生が非常に急増していることから、例えば女子トイレ、更衣室、休憩室、女子寮定員等の不足といった部分が非常に課題ということであります。またLGBT対応は全く進んでいないと思います。あと、カーボンニュートラル対応もあんまり進んでいないと思います。福利施設では寮食堂と学生食堂がありますが、規模が非常に小さいですので、実は業者を募集してもなかなか手が挙がってこない。挙がっても、人件費、物価高騰で維持が厳しいと言われておりまして、なかなか難しい状況でございます。施設整備の補助金については、新増設とか改築というのが非常に難しいです。大体が小規模の改修が主で、やっぱり老朽化で一気に新しく改修、新増築しようとしてもなかなかこれができないという状況でございます。
こういった課題を踏まえまして、どのような対応状況かということをお話ししていきたいと思います。
この資料は、第1回の会議のときに資料3として既に出されているものでございますけれど、こういった老朽化に対応するために、令和新時代高専の機能高度化プロジェクト計画というものが策定されて実施されております。第1期、第2期と事業費として480億円、420億円の事業費を積んでいただきまして、施設等はかなり整備されてきています。設備についても180億円という予算を事業費として積んでいただいているということで、非常に助かっています。それからもう一つ、高専には商船高専というのがございまして、その商船高専では自前の練習船というものがあります。その練習船も老朽化が大分進んでおりまして、今、順次、練習船を新しくしているという状況でございます。
この令和プロジェクトは非常助かっており、老朽化が、実施前は41.4%だったものが、令和5年5月1日時点では38.4%に改善されております。大分大学の老朽化状況に近づいてはおりますが、私の現場の高専の校長としての見立てとしては、まだまだ程遠いのではないかなという印象がございます。
実際の成果というのはこのようになっていますけれど、次のスライドでもう少し具体的な内容をお見せします。
学生寮に関しては、このように、昔、4人部屋あるいは五、六人部屋なんていうのがざらだったんですけど、それを個室にしたり、あるいは壁を取り払ってフロアとして広く使えるようにしたりするとか、それからシャワー室ですね、そういうのを別途用意して、留学生にも対応するようにしているとか、こういったところは大分改善されたと思います。
一方で、実は高専のキャンパスを作るときに、多くの高専が急傾斜の場所に、山を崩して、そこを平らにして建物を造ったりしているところが結構多くて、土砂災害の危険性がある高専が見受けられます。いくつかの高専につきましては、予算をいただきまして移転する等の措置を取ってやってきていると思います。ただ、このところの大雨、それから台風、異常気象というのは予想を超しています。実は本校の場合でも、すぐ裏山霊園があり、そちらも大雨で崩れるんじゃないかと心配しております。
それから、女子学生等の配慮については、こちらのスライドのように今改善されてきているという状況でございます。
一方で、防災関係、先ほどもちょっとお話がありましたけれど、防災関係についての情報ですが、高知高専が南海トラフで多分一番影響を受ける高専かなと今思っているところです。このように高知高専は高知龍馬空港のすぐ北側にありまして、ここはもし仮に地震・津波等が起きれば間違いなく完全に浸水するところでございます。実際に学寮の避難訓練も実施されていますけど、全て垂直避難で、寮の屋上にみんな避難するような訓練をしていると聞いております。
それからもう一つ、和歌山高専の例をお見せしますと、この右側の写真を見ていただくと分かりますけれど、高専の敷地の海側はもう波が打ち寄せています。ここも浸水、それから津波の影響を受けると言われていまして、南海トラフが起きたときにさっと避難できるようにというような訓練をしています。実は和歌山高専の体育館は既に浸水領域から少し上がった高台のほうに新設されて、そちらには空調設備が入っていると聞いております。全国の高専において、体育館に空調設備とか、あるいは断水時に使用可能なトイレなど、要するに避難所としての必要な機能というのがほとんどないという現状であること、こういったところはやはり改善していかなくてはいけないのではないかなと思っております。
続きまして、コモンズ関係のまとめを少しさせていただきます。
高専も、イノベーション・コモンズを整備するということでいろいろな整備を進めているところでございますけれど、役割としては、やはり地域との連携・支援活動を行う施設ということと、その活動に関する情報発信の拠点としての位置づけ、こういったものを求めています。やはり地域社会の課題解決をするというミッションがありますので、そういった実証実験の場に使えること。それから、学生によるベンチャー企業のオフィスですね。今、高専はアントレプレナーシップ教育に非常に力を入れているところでございまして、要するにその実践の場としてコモンズを活用できるのではないかなと考えているところでございます。ほかにも、高専の枠を超えて日常的に交流できる空間、例えば地域住民、企業の人たちとの交流の場、そういったことができる場をコモンズとして備えるべきではないかなと考えております。ICTを活用した遠隔教育環境というのは、コロナ時に我々もどこの高専もICT環境は整備して、できるようにしてあります。こういったものもコモンズに活用していく。それと災害時の被害を最小限とし、速やかに復旧できるための情報インフラ、ライフライン等の整備、こういったものも必要ではないかなと思います。さらに、今これも力を入れているところですが、STEAM教育の実践の場としてコモンズを活用できるのではないか。高専教育のSTEAM教育は各高専ともにやっていますが、本校も小中学生を巻き込んで展開するSTEAM教育を実際に今進めているところでございます。そういった場としてコモンズが活用できると考えております。
一方で、やはり主体的な学びを創出するということで、今の個別最適な学びを実現するような場、それから協働的な学びを実現する空間、こういった場が必要です。、高専は実験・実習というものも非常に重視した教育を行っておりますので、こういう体験重視型の教育を実施できる場、そういった環境を整備する必要があります。異学年、異分野、つまり専門に一つの固まった学生だけが交流するのではなくて、学齢を超えたり、あるいは専門分野が異なる学生が交流して活動できるような空間として整備すべきです。あと、留学生、日本人との交流できる場。高専の場合は外国人の研究者が来て滞在するという割合は割と少ないのですが、それでもやはり一定数、外国人の研究者が来て滞在しながら研究を一緒にするというようなこともありますので、そういった宿舎の環境を整える。あと、やはり障害のある学生、教職員、それから地域高齢者も使えるような校内のバリアフリーを実現したほうがいいのではないかなと考えているところでございます。
こちらのスライドは、この辺りを具体的に、先ほどの令和プロジェクトで一部実現していることについての御紹介になります。やはりアクティブラーニングを実施して、創造的な、あるいは実践的な学習を進めること、あるいは、以前のように、席固定で、パソコンが最初から設置されていてほかの活用ができないようなところから、非常に多目的に使えるような空間に変えるといったような、そういったものをつくっているということです。それから先ほどもお話ししましたアントレプレナーシップ教育、それからサイバーセキュリティー関係の教育、こういったものにも対応できるような最先端の機能を持たせられるような改修も進めているところでございます。産業界との共創の場につきましては、名前はいろいろなのですが、地域協働創造室とか、産学官連携ラボとか、地域連携エリアとか、こういったものを整備していくことで、地域の人たちとの言ってみれば共創の場をつくっていくということを進めているところでございます。
次は、実際にイノベーション・コモンズの事例、アウトカムズの一つかなと思っていますが、これは実は第2回に上野委員から発表で既に紹介されているものでございます。長岡市と長岡市内の4大学1高専で、まちなかキャンパス長岡というものを運営しています。ここではいろんなことをやっていますけれど、大学と高専が市と一緒に協働しながら、まちなかにコモンズをつくって、交流スペースをつくって、そこを有機的に使っていくという、そこの部分は非常に参考になるかなと思っております。これ、もともとは、市が民間の力を借りて国土交通省の都市構造再編集中支援事業を活用して整備したと聞いております。このようなやり方も、整備するときにお金がない中でつくるときの一つの参考になるのではないかなと思っております。
もう一つの事例としまして、函館高専が行ったものですが、函館高専はもともと産学連携をかなり活発にやっていますけれど、そこの場としてKOSENコモンズ函館というものを整備したと聞いております。こちらは、もちろんオフィスとしての機能もあるのですけれど、この中でちょっとお話ししたいのは、実は改修のときにもともと福利厚生施設があって、それを改修してこのようなコモンズにしたわけです。そのときに、通常の運営費交付金、営繕費ですね、こういったものだけではとてもではないですけど改修はできなかったと。自己財源を投入したということで整備できたと聞いておりますけど、この自己財源をどうやって確保するかということがもう一つ課題かなと思っております。できればこういった運用、貸出しをしたり、お金を取ったりすることで運営をしていくという道筋ができるわけですけれど、ここに持っていくまでにやはり通常の予算だけではできない。本校も今、非常に頭を悩ましているところでもございます。この自己財源については次でお話しいたします。
その整備費用、財源の課題について一つの事例ですが、この左側の図にありますのは佐世保高専です。佐世保高専は、実は佐世保市に働きかけましてふるさと納税を活用したのですね。最初は、佐世保市からは「何で国立の高専の手伝いをしなくちゃいけないんだ」ということで、全然相手にされなかったと聞いています。粘り強く話を進めていく中で、高専にこういうふるさと納税を使うことで、実は佐世保市にとってもメリットが大きいのだということを納得していただいたということで協力を得たと聞いております。
また、右側は私のところなのですが、北九州市と今、包括連携協定を結びまして、その協定の中で地域連携した研究開発を促進しましょうということで、北九州学術研究都市に高専の活動拠点を整備して、そこで一緒にリスキリング等、地元の企業さんたちの学び直しなんかをサポートしていくということをやっていこうと考えています。やはり、これも町なかのコモンズが整備できてくると、要するに単独で高専だけ、あるいは大学だけでやるのではなくて、地方自治体、それから地元企業、こういったところが連携することでやはり実現していけるのではないかなと思います。自己財源につきましては、クラウドファンディング、ふるさと納税等、そういったものもどんどん活用していく、ありとあらゆるものを活用していくということ、これが大事なのかなと思います。ただし、やはり安定した財源確保をしていくというのは非常に課題でして、いっときはできるかもしれませんが、これを定常的にやっていくというのはやはりもう一つ課題かなと思っています。
いずれにしましても、高専、それから青森大の下條先生もおっしゃっていましたけれど、地方大学がハブとなって、地域活性化のハブとして機能するように協力をしていく、そして防災拠点としての役割も担うことによって、その役割も非常に重要視されていくと考えております。そういったところを今後、課題とともにいろいろを進めていけたらいいと思っております。
私からの発表は以上になります。
【西尾主査】 鶴見先生、御自身が校長を務められている北九州高専の事例を含め、貴重な情報を御提供いただきまして、ありがとうございました。後でまた皆様と一緒に議論をしたいと思っております。心より御礼申し上げます。
それでは次に、議題3、第6次国立大学法人等施設整備5か年計画策定に向けた中間まとめ(素案)について、事務局より説明をお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】 それでは、資料3-1及び資料3-2について御説明させていただきます。
なお、これから御説明いたします議題3では、中間まとめ(素案)の全体像について資料3-1の概要資料を中心に御説明させていただき、資料3-2の本文資料の第3章から第5章部分の詳細につきましては、この後の議題4で御説明いただくこととなっております。一部、議題4に含まれない附属病院と国立高等専門学校につきましては、議題3の御説明の中で資料3-2の本文資料で御説明させていただきたいと考えております。
それでは、資料3-1の1ページ目を御覧ください。
まず初めに、資料上側に記載しておりますが、次期5か年計画における国立大学法人等の施設整備の方向性としまして、国立大学法人等の保有施設を最大限活用した戦略的なリノベーション等を基本とした、キャンパス全体のイノベーション・コモンズ(共創拠点)の実現に向けた取組の更なる推進(実装化)と、耐災害性等の強化による国立大学法人等のキャンパスの特性を活かした地域の防災拠点の実現を目指していく必要があると考えております。
この方向性を導いた考え方としまして、その下に記載しておりますとおり、まず、背景等としまして、本文資料の第1章部分ですが、国立大学法人等を取り巻く状況としまして、急速な少子化や生産年齢人口の減少による地域社会の疲弊や、大規模自然災害の激甚化・頻発化など、多様化・複雑化する社会的な課題に対する取組が国立大学法人等に求められてきていると考えております。
また、本文資料の第1・2章部分ですが、国立大学法人等の施設の役割としまして、「知と人材の集積拠点」である国立大学法人の役割を発揮するための基盤であると考えております。
このことから、本文資料の第2章部分ですが、これまでの方向性としまして、現行の5か年計画では、キャンパス全体の「イノベーション・コモンズ(共創拠点)」への転換を掲げ、昨年度取りまとめました第2次報告書で整理したその下の5つの施設整備の考え方などを踏まえ、共創拠点の実現に取り組んでまいりました。
こうしたこれまでの主な取組の状況としまして、本文資料の第3章部分ですが、共創拠点への転換につきましては、第3回協力者会議で御紹介しました名古屋大学や三重大学などの事例のように、各国立大学法人等の施設を核とした共創活動の効果が見られることから、共創拠点への転換は段階的に進展してきているものと考えております。
また、老朽化対策につきましては、単純推計ですが、現行の5か年計画における老朽改善の整備目標約785万㎡に対し約465万㎡の進捗見込みとなっており、大規模改修等による一定の改善は見られますが、性能維持改修等で整備が遅れる見込みとなっております。
さらに、省エネの推進につきましては、エネルギー消費原単位の5%以上の削減目標に対して、現時点では削減目標は達成する見込みとなっております。
こうした社会的な状況や、これまでの方向性に基づく取組状況を踏まえ、本文資料の第4章部分ですが、今後の国立大学法人等における施設整備の目指すべき方向性としまして、冒頭申し上げた2本の柱をお示ししております。
まず1つ目の柱として、こちらは地方創生にも関連すると考えておりますが、キャンパス内の連携活動の核となる施設をきっかけとして有機的なつながりを生み出し、地域との共創活動を活性化し、その成果を地域に還元することで、地域と共に発展するキャンパス全体の共創拠点の実装化。また、2つ目の柱として、こちらは国土強靱化にも関連すると考えておりますが、災害発生時、多様なステークホルダー等の安全確保や教育研究活動を継続するための耐災害性の強化や、災害拠点病院や地域の避難所等としての防災機能の強化による地域の防災拠点の実現を目指していくことが必要であると考えております。
あわせて、この後の議題4に含まれない附属病院と国立高等専門学校の目指すべき方向性についても御説明させていただきます。
資料3-2の本文資料の36ページ目を御覧ください。まず初めに、附属病院の機能強化としまして、24行目に記載しております、長期経営的な観点から改修や一部分の増築による既存施設の利活用を改めて検討すること、27行目に記載しております、地方公共団体や企業等からの支援や寄附金なども含めた財源の多様化を図ること、30行目に記載しております、病院全体の病床数のみならず、病床機能別や診療科別の病床数等について、事業規模の適正化に向けた取組を検討すること、などが必要であると考えております。
続きまして、国立高等専門学校の機能強化としまして、同じく37ページ目を御覧ください。23行目に記載しております、令和プロジェクトにより高専の老朽化率につきましては一定の成果を上げてきましたが、引き続き老朽化対策や高度化などの教育研究環境の整備を推進していくこと、次の38ページ目の9行目でございますが、人材育成や新産業創出や地方創生の実現等を促す魅力ある地域社会の実現に向けて、共創拠点の実装化に取り組むこと、13行目の、高専の多くは地域の指定避難所となっていることから、トイレや体育館の空調整備などの耐災害性・防災機能の強化を推進することが重要であると考えております。
改めまして、資料3-1の2ページ目を御覧ください。こちらは、先ほど資料3-1の1ページ目において次期5か年計画で目指すべき方向としてお示しいたしました2本の柱の実現に向けた具体的な取組を整理しております。
まず初めに、本文資料の第4・5章部分ですが、具体的な取組方針としまして、戦略的な施設マネジメントを推進する必要があると考えております。具体的には、上から2つ目のポツに記載されておりますとおり、急速な少子化が進行していく中での施設総量の最適化ですとか、保有施設を最大限活用した戦略的リノベーションや性能維持改修に取り組むこと、上から3つ目のポツの、カーボンニュートラルの実現に向けて、現行の5か年計画では、省エネの推進、削減目標は達成見込みではありますが、長期的には厳しい状況であることから、中長期的な視点に立った省エネ・創エネ等の取組をさらに推進していくこと、上から5つ目のポツの、財源の多様化について、国費による地方創生やカーボンニュートラル関連予算のほか、地域や産業界からの投資の呼び込みなど、今後、多様な財源を獲得する方法等についてより具体的な検討を進めていくことなどが必要と考えております。
続きまして、本文資料の第5章部分ですが、次期5か年計画における整備目標の現時点における目安の考え方としまして、次期5か年計画で目指すべき方向性として掲げている2つの柱の実現に向けて、その基盤となるキャンパス全体における安全・安心で質の高い教育研究環境の確保等に取り組む必要があることから、国立大学法人等で既に保有している大量の老朽施設の戦略的リノベーションや性能維持改修による老朽改善整備を推進することにより、長期的に、ここでは25年程度を想定しておりますが、安全・安心な教育環境を確保する必要があると考えております。そのためには、現行の5か年計画期間において、老朽改善整備が真に必要な最低限の施設は改善できる見込みである、すなわち、次期5か年計画開始時には施設の安全性は最低限確保される見込みであることから、最低でも、次期5か年計画開始時に見込まれている施設の老朽化率約31%以下に抑制する必要があり、これを最低限の目安とすると、今後25年程度で約1,800万㎡以上の整備が必要と考えております。
一方で、今後10年間で老朽改善整備が必要な施設量がピークを迎えるとともに、大規模自然災害に早急に対応するためには、直近10年間で老朽改善整備の加速化を図る必要があることから、次期5か年計画における老朽改善整備の整備目標を約360~740万㎡と試算し、そのほかのライフラインの更新などを含めた全体の整備目標金額としては、次期計画開始時までの物価高騰等を加味した上で、多様な財源を含め、約1兆300億円から1兆4,000億円を現時点の目安として試算しております。
なお、こちらの試算につきましては、文部科学省としても国費の獲得・増額に向けての最大限の努力をしてまいりたいと考えておりますが、これだけの財源を確保するに当たり、多様な財源も含め、国と国立大学法人等で協力していければと考えております。
最後に、資料3-1の3ページ目を御覧ください。こちらは中間まとめ(素案)本文の目次になりますが、この後の議題4で御説明いただくことになっております各ワーキングによる検討結果の報告における該当箇所を示した資料になります。なお、前回会議でお示しした骨子案から一部表現等を変更したところもございますが、御了承いただければと思います。
説明は以上になります。
【西尾主査】 これから策定する基本計画の対象期間が、いかに重要な期間になっていくかということも含めて御説明いただき、どうもありがとうございました。
続きまして、議題4に移ります。二つのワーキング・グループから御報告をいただきたいと思います。
それでは、上野先生、出口先生、御説明をお願いいたします。なお、時間が少し遅れておりますので、各々15分間で御説明いただけましたらありがたく存じます。
それでは、上野先生、何とぞよろしくお願いいたします。
【上野委員】 上野でございます。共創拠点化の推進に関するワーキング・グループの主査として発表させていただきます。
この有識者会議の委員、金子先生、下條先生、恒川先生以外に、今、画面共有していますグループ委員の方々に御協力いただいて検討してまいりました。
説明は、資料4-1の一部を使って説明させていただきます。
先ほど松田さんからのお話もありましたように、共創拠点化の推進に関するワーキング・グループは、第3章の施設整備5か年計画の取組状況をきちっと評価するというところから始まっております。黄色いハイライトをつけている部分は、皆さんに着目してもらいたい点を私がマーキングした部分でございます。
報告書が資料4-2にありますけれども、それの1ページ目の部分に該当するのがこのページになります。「イノベーション・コモンズ」への転換に当たっては、経営層や施設担当部署を中心に一定程度進んできているというような評価はできるのですけれども、まだまだ一般の教員・職員まで浸透していない面もあるのではないかということがワーキング・グループでも議論されました。そういった意味で、引き続き普及啓発を図っていくことが重要であると考えます。
それと、この3つ目のポツにありますが、それぞれの国立大学法人等のビジョンは多種多様にわたっていて、個々のビジョンに応じた共創拠点実現に向けた取組の効果を評価していかなきゃいけないだろうと思います。ソフトとハードが連携した取組というのは様々な局面から考えられるということですね。この資料4-1の10ページ以降には、ここにある事例調査、名古屋大、三重大、岩手大、愛知教育大、九州工業大学等が入っていますので、今日は詳しく説明できませんけれども、後で目を通していただければと思います。
キャンパス全体の共創拠点への転換に向けて社会へ一層貢献していくためには、共創拠点の実現に向けた取組の推進が必要だということでございます。
整備の状況ですが、現行の5か年計画では860万㎡を目標値としていましたが、先ほども御説明ありましたように、582万平方メートル、68%程度の進捗率になる見込みでございます。100%にはまだ大分遠いですが、その内容としては、老朽改善整備のうち、施設整備費補助金等をかなり使える大規模改修等は100%ぐらいになっており、各大学の自己財源といいますか、運営費交付金の中から支弁することの多い性能維持改修というのがなかなか進まなかったということが一つの原因になるのではないかと思っております。各大学、経営環境の厳しさもあって、大学の中ではやっぱり優先度が低かったということが推察される状況になっています。老朽改善整備に当たっては、さらにこの性能維持改修という部分もしっかりと取り入れて、今後、反映し評価していく必要があるとなっております。大規模改修等及び性能維持改修による耐災害性と機能の強化、これが重要ではないかということで、先ほど御説明のあった共創拠点と災害対策の2本立てが重要だとなっております。
ライフライン更新あるいは新築・増築整備、附属病院整備というのは、ここに示したとおりでございますので、目を通していただければと思います。
今回、ワーキング・グループの中で議論した中で重要な部分が、地域と共に発展する共創拠点の実装化に向けた課題と方向性についてでございました。これに関しては、共創拠点(イノベーション・コモンズ)は、地域の課題というところから世界的な課題まで社会が抱える様々な課題の解決に向けた取組を進めて、その成果をいかに社会に還元していくかということかと思います。次期の計画では、共創の場をキャンパス全体に拡大し、個々の活動とか相互の連携による相乗効果によるさらなる成果の創出が実現できるように、共創拠点の実装化を目指していくということが重要だと考えています。
この実装化に向けた課題ですが、キャンパス全体にそれが広がる動きが必要ではないかと考えました。キャンパス全体の共創拠点の実現に向けた取組のさらなる推進、これを「キャンパス全体の共創拠点の実装化」という言葉で表しております。社会の期待に応えるためにもこの実装化が不可欠であるということでございます。
次のポツですけれども、共創拠点ともう一つの2本立てということで、地域の防災拠点としての役割も担っていることから、安全性・耐災害性の強化がやっぱり最重要課題ではないかということでございます。キャンパス全体を共創拠点化していくためにも、安全性・耐災害性の強化は最重要課題だと考えられると思います。
最後のポツですけれども、共創拠点、防災拠点をつくっていくにしても、既存施設の戦略的リノベーションや性能維持改修による老朽改善整備、ライフラインの更新、これがやはり非常に重要で、取り組む必要があるということにしております。
この共創拠点、災害対策の拠点をつくっていくには、やはり短期間でぱっとできるものではなく、長期的スパンでつくり上げていく必要もあるので、社会変革等にも柔軟に対応できる、成長できるように工夫していくことが重要と考えました。
共創拠点の実装化に向けた方向性ですが、キャンパス内の共創活動の核となる施設をきっかけにして、それらが有機的につながっていくということで地域との連携活動を活性化して、その成果を地域に還元するということが重要だと考えております。
共創拠点の実装化の段階に進むことによって、さらに様々な有機的な連携が活性化する、数多くの多様な効果が創出されることが期待できるということになります。
次のポツですけれども、ここは社会からの理解が非常に重要であるということ。
さらに、その次の丸では、施設マネジメントの重要性ということを記載しております。
この最後の丸ですけども、ここについては、好事例をピックアップして、それを横展開していくような試みが重要であると考えました。
中間まとめの第5章の部分、共創拠点の実装化に向けた整備目標等の部分ですが、耐災害性と機能強化が重要であるということは先ほどの御説明にもあったとおりでございます。
数字的な話は先ほど松田さんにしっかりと説明していただきましたので、ここではあまり詳しくは説明いたしませんが、老朽改善整備の目標としては、やっぱり長期的、25年程度で耐災害性を強化できるように、次期計画開始時の老朽化率を31%以下に抑制する、これを最低限の目安とするというのが重要じゃないかと考えております。
あと、改善の目安、面積的には小さい数字から大きな数字までありますが、これにつきましては今後さらに検討を進めていきたいと思っております。
ライフラインの更新等についても、ある程度の目安がここに示してあるように、検討を進めているところでございます。
附属病院等もここに書いております。
私の説明としてはこのページが最後になりますけれども、ここも先ほど松田さんが説明してくれましたが、現時点での次期5か年計画の所要額の試算1兆4,000億円程度というようなことが、なぜそうなっているかというのをまとめた表を右に示しております。文教施設整備のいわゆる施設整備費補助金だけではなくて、地域中核や地方創生のような他の国の部局・省庁による財源とか自治体からの財源とかを獲得できるようにいろいろ努力していく必要があるのではないかということで、これらについては、社会からの投資を呼び込むために、国立大学法人等が社会と一緒になって考えていく、このための体制をこれからさらにつくっていく必要があるのではないかということでございます。
資料のこれ以降は、名古屋大学の事例ですとか三重大学の事例、釜石の事例、なかなかすばらしい事例だと思いますので、お目通しいただければと思います。
大変簡単ではありますけれども、ワーキング・グループ1の報告は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
【西尾主査】 上野先生、どうもありがとうございました。
先ほど松田さんから御説明がありましたように、次期の5か年計画は、地域と共に発展するキャンパス、いわゆるイノベーション・コモンズの実装化と地域の防災拠点の実現が大きな二つの柱になります。この二つの柱が、財政出動を積極的に促す上でも非常に有効であるという観点の下、上野先生のワーキング・グループで、数値的なエビデンスも含めまして本当に深く議論をしていただいていることに、心より御礼申し上げます。これが次の5か年計画の中で根幹となっていくものと考えております。
それでは、続きまして、出口先生、よろしくお願いいたします。
【出口委員】 ありがとうございます。それでは、私から戦略的な施設マネジメントに関するワーキング・グループの報告をさせていただきます。
このワーキング・グループの座長を務めております東京大学の出口です。資料5-1と5-2を使用しての説明になりますけれども、このワーキング・グループの構成員に関しましては、資料5-2の16枚目の資料に掲載しております。今御発表されました上野先生と私を含めて7名が委員を務めておりまして、大変活発に議論させていただきました。特に事例を御紹介したり、あるいは板谷先生という方がファイナンスの専門の方でもいらっしゃいますので、むしろ民間企業のファイナンスの観点からこの大学のアセットをどう考えるかというようなことも事例を紹介したりしていただきながら議論させていただきました。
それでは、戦略的な施設マネジメントに関するこのワーキング・グループとして報告させていただきます。資料は5-1の概要を用いて説明させていただきたいと思います。
まず、現行5か年計画は、キャンパス全体をイノベーション・コモンズへと転換していくために、文科省による計画的・重点的な整備の支援を基本とした上で、その実施方針において、国立大学法人等の取組として「施設マネジメントの更なる推進」ということが掲げられています。この報告では、文科省と国立大学法人とそれぞれの取組状況について整理をしまして、次期の5か年計画における戦略的な施設マネジメントに関する方向性あるいは取組等をまとめさせていただきました。
まず、ワーキング・グループ報告の本体の1ページ目から9ページ目、資料5-1になりますと2ページ目から4ページ目、本体報告のほうは1ページ目から9ページ目に該当しますけれども、まずは今の5か年計画の取組状況についてまとめて報告をさせていただきます。
資料の2ページ目を御覧いただきたいと思いますけれども、最初の項目は、1としまして、「第5次国立大学法人等の施設整備5か年計画」の取組状況になります。この項目は、中間まとめ第3章の一部に相当します。
まず、大きい(1)文部科学省の取組ですけれども、マル1として必要な予算の確保からマル5の理解増進まで、様々な支援を行ってきたことをまとめています。
まず、最初のマル1の必要な予算の確保についてです。このページの右上段の棒グラフに記載のとおりですけれども、施設整備費補助金につきましては、令和6年度の補正予算までの時点で現行5か年計画期間中の平均額は1,134億円と、全計画期間の平均より増加していますけれども、1,000億円程度にとどまっています。また、施設整備費補助金において、共創環境強化事業やZEB化先導モデル事業などの新たな支援の取組を構築しまして、イノベーション・コモンズへの推進やカーボンニュートラルの実現に向けて支援を行ってきております。
続いて、マル2の高等教育・科学技術政策等との連携推進についてですけれども、成長分野を牽引する高度専門人材育成に向けた大学・高専機能強化支援事業や、研究力向上のための地域中核・特色ある研究大学の連携による施設整備事業など、ソフト・ハードが一体となった取組が推進されてきております。
続いて3番目、マル3の長寿命化に向けた取組の推進についてですけれども、こちらについても、施設整備費の補助金において新たな支援の仕組みである長寿命化促進事業というものが新設されまして、長寿命化を促進する支援を行ってきた意図がまとめてあります。
続いて、マル4の多様な財源の活用推進についてですけれども、こちらも留学生受入れ環境整備における個人寄附について税制改正を行いまして、税額控除の対象拡大を図ってきたということをまとめています。
それから、マル5の理解増進についてですけれども、昨年度、一昨年度とイノベーション・コモンズの実現に向けた報告書、こちらは西尾先生が主査を務められてまとめたものですが、こちら、2回にわたり取りまとめが行われておりまして、様々な機会を捉えてこの周知を行っているということでございます。
続いて、資料の3ページ目を御覧いただきたいと思います。大きい(2)の国立大学法人等の取組についてです。これは、マル1の戦略的な施設整備から、次の4ページのマル4、地方公共団体や産業界との連携まで、様々な取組を実施しているということをまとめております。
まず、マル1の戦略的な施設整備についてですが、こちらは保有面積について、特に自己整備による保有面積が増加傾向にありますが、右上段の棒グラフにありますとおり、整備に合わせて共同利用スペースの面積は着実に確保しているという状況でございます。また、維持管理の財源確保については、スペースチャージの拡充や、右側の下段の円グラフのとおり、ネーミングライツを活用する機関が年々増えてきているということでございます。
続いて、マル2の施設マネジメントの更なる推進についてですが、こちらは学内の施設整備計画策定の際に外部有識者の参画が増えてきています。また、学内外の共通理解を得るために施設情報のデータベース化や見える化が進められていますけれども、施設の使用率についてはさらなる対応が必要な状況ということです。続いて、資料の4ページ目を御覧いただきたいと思います。先ほどスペースチャージの実施状況について報告しましたが、右上段の円グラフにありますとおり、徴収料金については、約64%が施設の維持管理や修繕に充当されているという状況です。省エネルギーの推進につきましては、現行計画ではエネルギーの消費原単位を5年で5%削減することとなっていますけれども、右の棒グラフのとおり、令和4年度の実績では、昨今の光熱費の高騰によりまして大型機器の稼働を抑制するなどする法人があったということから、6.8%減と大幅な削減となっております。
それから、マル3の多様な財源の活用についてです。こちらは、他省庁の補助金をはじめとしまして、長期借入金の活用や債券発行による調達、それからあと賃料収入、寄附金等、様々な財源が活用されております。また、引き続き安定的・継続的な確保が必要だということでございます。
最後にマル4、地方公共団体や産業界との連携についてですが、地方公共団体や地域産業界等との連携の下で、教育研究活動の場を確保したり、また、キャンパスを社会実験の場として活用するなどの取組が行われてきているということでございます。
続いて、この資料5-1の5ページ目になりますが、大きな2番の地域と共に発展する共創拠点の実装化に向けた課題と方向性について簡単に報告させていただきます。
5ページ目を御覧いただきたいと思いますが、次の項目はこの課題と方向性についてですけども、中間まとめ第4章の一部に相当します。これまでの取組状況を踏まえまして、この戦略的な施設マネジメントに関する方向性について整理をしています。
まず、1つ目の○ですけれども、国立大学法人等は自らの使命に基づいて施設マネジメントの取組を実施しているわけですが、今後、共創拠点の実装化を図っていくためには長期的なスパンの対応となっていくことから、施設マネジメントをより経営活動として明確に捉えていく必要があるということです。
あと、2つ目の○ですけれども、その際に、多様なステークホルダーとの有機的な連携によりまして、さらなる投資を呼び込む戦略的な運営が必要となるということをうたっております。
3つ目の○では、一方で、昨今の急激な物価高騰等の影響によって、計画的な整備や教育研究環境の維持保全に大きな支障が生じております。これは全国的な課題だと思いますけれども。このため、財源の確保や、より一層の施設マネジメント取組が必要ということをうたっております。
それから4つ目の○ですけれども、財源の確保の観点からは、国は充実かつ安定的な施設整備予算の確保や施設整備に活用できる新たな制度等の情報の提供、そして運用改善の検討が必要となるということをうたっております。また、国立大学法人等においても多様な財源の確保を図ることが必要となってきているということを明記しております。
以上が今後の取組の方針としてうたっている部分です。
続いて、資料の6ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは、大きい3番の地域と共に発展する共創拠点の、今度は実装化に向けた整備目標等ということになります。こちらは中間まとめの第4章の一部に相当します。今後の具体的な取組について体系的な整理を試みております。
まずは(1)ですけれども、全学的な体制の構築についてですが、施設マネジメントは、施設整備や維持管理、また有効活用、それからカーボンニュートラルに向けた取組、そしてあと財源の確保など、施設全般に関わる取組になります。このため、学長等のリーダーシップの下、全学的な体制の下で、多様なステークホルダーとともに質の高い施設を確保していくことが重要となります。施設情報のデータベース化、見える化をさらに推進しまして、ベンチマーキング手法を用いた戦略的な施設マネジメントを実施していくことが重要となるということをうたっております。
それから、(2)が保有面積の総量最適化についてです。施設整備や維持管理には大変多額の経費が必要となります。特に施設の保有面積の増大は影響が大きいことから、長期的に必要となる施設と将来的に不要となる施設を峻別する、いわゆる施設のトリアージということですけれども、こちらの峻別を行ってメリハリをつけた整備や維持管理が必要となるということをうたっております。
それから、(3)が施設の有効活用についてですけれども、基本的な考え方は、既存施設を最大限活用して戦略的リノベーションによって施設整備していくことをうたっております。また、性能維持改修を進めて長寿命化に向けたライフサイクルを構築し、施設に係るトータルコストの縮減や経費の平準化を図ることが必要とうたっています。さらに、スペースについては必要以上の専有とならないよう全学的に適切に管理していくことが重要ということもうたっております。
続いて、資料の7ページ目を御覧いただきたいと思います。(4)のカーボンニュートラルに向けた継続的な取組についてということになります。カーボンニュートラルに向けた取組については、国立大学法人等は先導的に役割を果たすことが求められております。ただ、その一方で、昨今の急激な光熱費の高騰の影響を受けまして、一部では実験機器の稼働を抑制するなどの対応によって省エネルギー化やCO2の削減が図られているという現実がございます。今後は、教育研究を活発化させつつ、中長期的な視点から省エネルギー・創エネ等の取組のさらなる推進が必要となると。また、既存施設の運用性能を分析しまして性能検証するプロセス、これはコミッショニングと言っていますけれども、こういったことを通じた省エネルギーへの取組も大変有効であると考えられることからこちらにうたっております。
それから、(5)が財源の確保についてです。先ほど申し上げましたとおり、国は、充実かつ安定的な施設整備予算の確保や、施設整備に活用できる新たな制度等の情報の提供、運用改善の検討が必要となります。また、国立大学法人等におきましては、例えば、地方創生やカーボンニュートラルの実現の観点から、様々な補助制度やふるさと納税も含めた企業や個人からの寄附金等の活用を検討していくことが必要となります。また、直接的な財源の確保ではありませんけれども、都市計画制度を活用して、例えば高さ制限や容積率の緩和など施設整備に係る要件緩和ができるよう、地方公共団体等との協力体制を形成していくことも重要となります。その他、内部留保の計画的な活用や民間資金の活用、施設の有効活用等により得た収入を施設整備や維持管理へ充当する好循環の取組を引き続き進めていくことが必要ということをうたっております。
あと、最後になりますけれども、(6)の施設系の職員に期待される役割についてですが、長期的な視点で施設マネジメントを学内で中心的に計画立案し、イノベーション・コモンズの実装化、そして理想的なキャンパスをつくる施設系職員の育成や確保の必要性について、こちらに整理してうたっております。
以上が戦略的な施設マネジメントに関する本ワーキング・グループの報告となります。
以上で報告を終わります。よろしくお願いいたします。
【西尾主査】 出口先生、本当にありがとうございました。先ほどの上野先生の御説明と表裏一体となるマネジメントの観点で、包括的にまとめていただきましたことを心より御礼申し上げます。
それでは、これから議題1から4の説明について皆様方から御質問、御意見をいただきたいと思っております。資料3-2に本日御説明いただいたことをまとめた中間まとめの素案がございますが、本日の大きな論点としましては、この素案について、現在のような方向性で良いのかという点を確認させていただくことが第一です。その観点から、委員の皆様方に本日の説明内容について御質問、御意見をいただければと思います。
お時間が相当押しておりますので、これから各委員に3分間を目安に御質問、御意見等をお話しいただくことにしたいと思います。
まずは五十嵐様からお願いします。
【五十嵐委員】 ありがとうございます。方向性はすばらしいと思いますので、特に異論があるわけではありませんが、気づいたところを2点ほど申し上げます。この文面の中に、「ステークホルダー」という言葉が25回出てきます。多様なステークホルダーとの連携ですとか、社会の様々なステークホルダーとの共創だとか、これは非常に意味がある重要な言葉だと思います。それぞれの大学側が、そうした多様なステークホルダーの人たちと形式的でない実のある交流・連携を実際に行っていただくことが重要です。この実効性が上がるようにするためには、誰がどのようにすべきなのか、という具体的な進め方をこのまとめの中にも入れていただけるといいのではないかと思います。
それからもう1点、41ページにPPP/PFIを取り上げていただきまして、ありがとうございます。私が発言したことを盛り込んでいただいたものと思います。さらに望めるものならば、「ローカルPFI」というワーディングを使っていただけないかと思います。「ローカルPFI」は、行政側の財政負担を軽減することに加えて、民間の創意工夫を入れた官民連携の手法ということであると、内閣府でしっかり定義されておりますし、政府として推進していく意思も示されているものです。ぜひこの「ローカルPFI」というワーディングを入れていただきたいと思います。
以上です。
【西尾主査】 五十嵐様から2点、重要な御指摘をいただきました。最近、「多様なステークホルダー」という言葉が一つの流行語になっているような感じもしますが、具体的に何を意味するのかということを、もう少しきっちりと記述する必要があるのではないかということで、事務局で対応をぜひお願いいたします。
次に上野先生、どうぞ。
【上野委員】 私は両方のワーキング・グループに入っておりましたので、特に付け加えることは今のところありません。
【西尾主査】 ありがとうございました。
次に金子先生、どうぞ。
【金子委員】 ありがとうございます。非常に前向きで、時宜にかなった内容で、大きな方向については私も賛同するものであります。かなり高度な要求をこれからしていくことになるという理解なのですれけど、特に先ほど出ましたステークホルダーの中で、大学の執行部といいますか、経営という観点が非常に重要になってきています。そのため、大学全体の経営の中にこの施設の整備やマネジメントがきちっと組み込まれるような、そういう形がこれからますます重要になると感じています。大学経営の中でこの施設整備やマネジメントをきちっと位置づけられるような観点での記述を入れていただけると良いと考えます。
以上です。
【西尾主査】 金子先生、いつも貴重な御意見をありがとうございます。今後、中間まとめの案をもう一歩踏み込んで記述していきますが、その折にもぜひ先生から経営の観点での記述について御指摘いただければと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。非常に重要な観点と認識いたしております。
次に酒向様、よろしくお願いいたします。
【酒向委員】 ありがとうございます。先ほどのワーキング・グループの先生方の御説明を伺いまして、大変丁寧に御議論されて今回の取りまとめに至っているということをよく理解することができました。皆様方のこれまでの御尽力に感謝いたします。ありがとうございます。
気がついた点といたしまして、本文はとても丁寧にまとめてありますので、何か追加ということではないのですが、今、産業界で議論する中で特に言われていることとして2つぐらい紹介させていただければと思って発言いたします。
1つは、今回、共創拠点という形で御議論いただきましたが、地域ごとに様々な形があります。それぞれの大学で持っている資源が異なるうえ、地域性も異なるため、それぞれが同じものを目指すのではないという点について、産業界の皆さんがこだわりとして持っています。産業界の人たちは、それぞれの良さを発揮していただきたいとよく発言されることを御紹介したいと思います。
もう一点述べさせていただきます。特に産学の連携をかなり強調されておられまして、先ほどの高専の事例でも連携しやすいスペースも設けていらっしゃって、いろんなお取組があるということで大変良い方向性だと思います。一方で、その地域までリアルに参加できない産業界の方もおられます。リカレント教育等々の観点から、この議論は土地に根差してリアルの施設をどう整備するかという話ではある一方、産業界との結びつきという点でいうと、サテライト的な結びつきや、オンライン等もう少しオープンな形での開放を期待する声もあることも付け加えさせていただければと思います。
以上になります。
【西尾主査】 ありがとうございました。特に共創拠点については、地域ごとの特徴を活かした拠点形成を目指していくことが非常に重要だという御指摘かと思っております。全く同感です。中間まとめの折に、個性的な拠点の形成についての重要性を強く記していきたいと思います。どうもありがとうございました。
次に、塩﨑先生、病院の観点等含めまして御意見いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【塩﨑委員】 ありがとうございます。今回の内容の中、とても今後の病院の在り方にとっても重要な点を指摘していただいているかなと思っています。3つだけお願いしたいと思っています。
1つは、実は災害対策のことはかなり書き込んでいただいております。ただ、国土強靱化の中にはやはり感染対策もございます。感染対策も、実はかなり施設の皆さんでICUの陰圧とかそういったこともしていただいているので何とか対応できたところでございますけども、こういう新しい機能についての公的支援というのは、これは当然、厚生労働省とか自治体とかいったところも必要かなと思っていますので、それは新たな財源が必要なんじゃないかなというのはぜひ御指摘いただけるとありがたいなと思っています。
2点目が、病院の(整備目標について)今回の計画が20万㎡と挙げていただいています。これは一連の各大学病院のそれぞれのところが進んだのかなと思っています。というのは、第2次国立大学法人等施設整備計画が60万㎡、第3次が70万㎡、第4次が70万㎡、第5次が48万㎡(を整備目標として掲げてきた)ということで、今回20万㎡ということでかなり整備面積が小さくなっていますけども、実はこれ自体が別に上限になっているわけではなくて、第5次のときに48万㎡のところを58万㎡まで拡張していただきました。これは、その当時、その当時において大学病院が果たすべき役割が必要になっているということで施設整備をしていただけたかなと思っています。この点はありがたいと思っていますので、それは誤解がないように、ぜひ根拠を書いていただければありがたいと思っています。
最後、3点目でございます。今みたいな公的な部分として、やっぱり教育研究の部分が文科省であるし、地域貢献は自治体とか厚労省、災害対策とかも、同じく感染対策もそういった病院収益でカバーできないところがございます。そういうところは今までは低金利でインフレのない世界でしたけども、今後はやはり金利が上がってインフレのある世界になっていくというところでございますので、ぜひこういうところは公的支援として当然のことながらそれなりの予算措置の充実が要るのかなと思っています。そのところを病院収益ではとても稼ぎ出せないなと思うので、その点もぜひ書いていただくとありがたいかなと思っています。
以上3点でございます。ありがとうございました。
【西尾主査】 本当に貴重な御意見ありがとうございました。文部科学省のみならず、厚生労働省等も含めた国からの多様な財源を何とかこの基本計画をベースに獲得していく方向性が出てくると非常に良いと思っています。また、20万㎡というのが誤解を招かないように、根拠をきっちりと記述として補っていただきたいという点については、私も同様に思いますので、事務局には対応をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【塩﨑委員】 ありがとうございました。
【西尾主査】 次は下條先生、お願いいたします。
【下條委員】 ありがとうございます。方向性としてはこの方向でいいかなと思うのですけども、先ほど酒向さんもおっしゃっていましたが、各地域ごとにやはり課題は違っていて、特に東京とか大阪とか福岡とか大都市への一極集中の流れというのは多分止まらないだろうと思っています。その中で地方が多分在り方をこれからどんどん変えていかないといけない。自治体においてもう維持できない公共施設がいっぱい出てくるというふうな現状があります。そのときに、先ほど鶴見先生もおっしゃっていましたが、地方と、あるいは地方自治体と大学が連携してイノベーション施設を一緒につくっていくとか、地域が何とか踏みとどまろうとする中で、高専あるいは国立大学の役割というのは非常に重要だと思っています。その辺り、まさに地域の変貌のハブとして国立大学あるいは国立高専を位置づけていただくということがもうちょっと強く出るといいかなと思いました。
以上です。
【西尾主査】 ありがとうございます。地方におけるさらなる発展や様々な意味での変化を今後より強力に先導していくような拠点の重要性をもう少し強く打ち出してほしいということだと思います。これも大賛成でございます。事務局には何とぞよろしくお願いいたします。
続いて恒川先生、お願いします。
【恒川委員】 今までの中でも話があったかと思いますが、1つは、財源の確保のことです。結構強調して書いていただいていると思いますが、やはり昨今の物価高騰に対して、単価を上げていただいている一方、まだまだ十分ではないなというのが現場の実感としてあります。その辺りについて「確保していく」というようなことを、国からか、大学からの要望か、意気込みとしてもう少し重点的に書いていただけるといいなと思います。また、その使いやすさですね。実際に補助金等を使うときの使いやすさ、年度をまたいでの使用や、ソフトに対しての使用とか、設計監理・工事監理にお金が使えるかとか、そういった観点での使いやすさの自由度についても、もう少し書いていただけると良いなと思います。厳しい中で「何とか工夫しよう」ということは書かれていますが、その工夫のしやすさとして自由度を上げていただくというような方針も示していただけるといいなというのが1点です。
もう1点、これもワーキングで申し上げたのか、記憶が定かではありませんが、「整備面積のうち新築・増築の整備が5年間で15万㎡」という点です。もちろん改修が大事で、あるいは既存の建物を減らしていくという方針自体は大事だと思いますが、一方で、共創拠点として整備されているものの大半、特に外からの財源で整備するものの大半が新築・増築というのが実績だと思います。それを踏まえたときに、今後の新築・増築の整備目標の設定にはもう少し上積みがあるとありがたいなと思います。これはなかなか難しいことなのかもしれませんが、ご検討いただければ幸いです。
以上です。
【西尾主査】 ありがとうございました。過去の第1次から第5次の基本計画は、昨今の激しい物価上昇が起こっていなかった時期の基本計画ではないかということは私も十分認識をしておりまして、今般、第6次の基本計画の中では、現在、非常に深刻になっている物価上昇の問題を基本計画の中にどう盛り込むのかということが特段重要な観点になるのではないかと思っております。そのことに関しては、事務局の方でも非常に気にかけていただいておりますので、基本計画の記述の中でどのように明確に入れていくのかをぜひとも工夫してまいりたいと思っております。皆様方からも、事務局の方に積極的に御意見等いただければと思っております。
また、様々な新しい機能を持った拠点をつくる上では、新築の面積も確保していく必要があるのではないかということについて、私も同様に思いますので、その点も中間まとめに向けて鋭意検討してまいりたいと思っております。どうもありがとうございました。
続いて鶴見先生、いかがでしょうか。
【鶴見委員】 私はもう大分お話ししたとおりで、それが全部組み込まれているなと思いましたので、意見としてはあまりないのですが、資料3-2の38ページですかね、高専施設整備の留意点というところで幾つか書かれています。私が先ほど説明した資料の中にもSTEAM教育の実践の場としての役割というのもちょっと触れていましたが、2つ目の○で「地域の産業界を支える人材育成」という部分の始まりがありますけれど、アンダーラインの引いてある「地方公共団体や産業界」の次に「教育委員会」も入れておいていただければありがたいなと思っています。こういうイノベーション・コモンズで産業界の人たちの力も借りて一緒にSTEAM教育を実践したり、あるいはリスキリング等で協働したりしていけるといいと思います。そうすると、それを一緒にやっていくという方向性が出せますので、さらによくなるのではないかなと思っております。
以上です。
【西尾主査】 ありがとうございました。今の御意見もしっかりと反映していきたいと思っています。
出口先生、いかがでしょうか。
【出口委員】 どうもありがとうございます。ワーキングの報告の中でも申し上げたのですが、改めて強調させていただきたい点が何点かあります。1つは、カーボンニュートラルの時代に向けた大学のキャンパス施設のマネジメント、これはやはり各大学に新たな取組をしていただかないといけないと思っています。新築の建物についてはZEB化が基本になりつつあり、ワーキングでも恒川先生に名古屋大学の大変すばらしいコミッショニングの取組について、主に新築の建物を対象にしたコミッショニングの取組について、仕組みづくりとともにご説明いただきました。このワーキングの報告の中にも盛り込ませていただいておりますが、ほとんどの国立大学・高専のキャンパスは古い建物で構成されていますので、現在使っている古い建物をどうやってカーボンニュートラルに貢献させていくか、要はエネルギー消費量を減らしていくかということ、それが光熱費の削減にもつながっていきますので、大学経営上の負担を軽減していくことにもつながっていきます。そういったコミッションニングについて、各大学が取り組んでいただくことを改めて強調させていただきたいと思います。
それから、やはり若い学生が魅力を感じないと大学は成り立っていきませんので、若い学生が魅力を感じる大学キャンパスをどうつくり上げていくのかということを地域性とともに考えていただきたいと改めて思いました。
以上です。引き続きよろしくお願いいたします。
【西尾主査】 先生もおっしゃったように、カーボンニュートラルに関することは、経費や光熱水料の削減、ひいてはマネジメントの負担減にも関係してきますので、ぜひこの中間まとめの中でその点を強く出したいと思います。また、先生がおっしゃったように、学生がわくわくするようなキャンパスをどのように創っていくかというような記述があると、中間まとめを読む側としても非常に親しみやすいものになると思っておりますので、事務局には先生のコメントを活かしていただけるようお願いします。どうもありがとうございました。
土井先生、お待たせして申し訳ありません。どうぞよろしくお願いいたします。
【土井委員】 ワーキング・グループの皆様はじめ討議の下にここまでよくまとめていただいて、本当にありがとうございます。今思うのは、やっぱり地方の拠点は特にそうだと思うのですが、イノベーション・コモンズであり、かつレジリエントのインフラの拠点であるということで、その両輪をうまく経済的に回していくかということが今後重要になるのだと思います。そういうところをどう経営していくかというところも、そういう点での運用のベストプラクティスとか、そういうところが分かりやすい形で共用できていくことが大事かなと感じました。
もう一方で、今のカーボンニュートラルの話に絡むのですが、生成AIとかでGPUを使うとものすごい電気量になりまして、もういろいろな研究所がデータセンターを創り、そして特別高圧をやりという形になって、本当に電力が逼迫するというところがどんどん出てきていて、そういう意味では、生成AIでどんどんやろうとするとカーボンニュートラルと相反するというところになってきてしまいますので、そのような点も先進的に世界に追随していくためにどうしていくかという観点も一方では必要かなと。どういうふうに盛り込んだらいいのかなというところはなかなか難しい問題ではあるのですが、そういう課題もあると。それで生成AIなどを使いこなす話は情報系に限らず全ての部門が使っていただく方向になると思うので、どこかのところで、今回の中間まとめには入れられないとしても、何らかの検討が必要かなと感じております。
以上です。
【西尾主査】 ありがとうございます。後半部分でおっしゃっていただきました件について、やはり情報通信分野に関する電気の消費量が、電気消費量全体の中でますますパーセンテージが上がっていっておりまして、このような状況で社会システムがきっちり回っていくのかというのは非常に気になるところです。
また、先ほどの出口先生の御報告における光熱水料関係の推移のところで、光熱水料の高騰により、大型の研究施設の稼働をできるだけ控えているために提示されたようなデータになっているという御説明がありましたが、国力の源である研究活動において、それで良いのかというところが、非常に気になっております。まさに今、土井先生がおっしゃったように、電気使用量の問題については、トータルに考えてどのように対処していくのかを検討していかなければならない課題であると思っております。この点について、今回の中間まとめでどのように記載するか、あるいはどのように課題提起していくのかということは考えていく必要があると思います。重要な観点を御指摘いただきましたことに心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
それでは、愛知県の河合様、本日の議論を通じて何かお気づきのところはございませんでしょうか。
【大村委員代理(河合部長)】 ありがとうございます。愛知県の河合でございます。大村知事に代わりまして代理で出席させていただいております。
今回、取りまとめということで、地域との連携や、共創といった言葉もたくさんいただきまして、私どもとしては大変心強いという思いがいたしております。いろいろと連携していけることもたくさんあるのだと、心を新たにいたしましたので、今後ともよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。
そうしましたら、皆様には1回は御意見いただいておりますが、今思い返して、これだけは絶対にお話ししたい、質問しておきたいということを思っておられる委員の方はおられませんでしょうか。よろしいですか。
どうもありがとうございました。今、皆様方から御意見を伺った限りでは、今後、資料3-1、3-2をベースとして中間まとめの策定を進めてもよいという御判断をいただいていると考えております。皆様、特段御異議ございませんでしょうか。よろしいですか。どうもありがとうございました。
また、この段階までのワーキング・グループで本当に深く議論いただきました。二つのワーキング・グループをおまとめいただいた上野先生、出口先生、また、そのワーキングの下で、非常に貴重なお時間をいただきながら委員をお務めいただいた皆様方、そして、この段階まで資料をまとめてくださいました事務局の皆様に、心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
それでは、最後に、議題5のその他について、事務局より御説明をお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】 今後のスケジュールについて御説明をさせていただきます。資料6、今後のスケジュール(案)を御覧ください。
資料左下に記載しておりますとおり、本日開催しました協力者会議が令和7年1月17日の第4回調査研究協力者会議となります。次回の第5回調査研究協力者会議は、令和7年3月26日(水曜日)10時から12時の開催を予定しております。
なお、第5回調査研究協力者会議前の令和7年2月頃に、パブリックコメントを実施させていただきたいと考えております。
次回の第5回調査研究協力者会議におきましては、中間まとめ(案)について御審議いただきたいと考えております。その後、恐らく、年度明けの令和7年4月頃になろうかと思われますが、審議いただいた結果を踏まえた中間まとめの最終版を公表したいと考えております。
なお、次回の第5回調査研究協力者会議の開催方法はオンラインを予定しております。
説明は以上になります。
【西尾主査】 どうもありがとうございました。
今の御説明につきまして、皆様方から何か御質問等ございませんでしょうか。
それでは、事務局から連絡事項等ありましたらお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】 事務局でございます。
本日の会議の議事録につきましては、改めて委員の皆様へ御照会させていただきますので、御確認いただければと考えております。委員の皆様に御確認いただいた後に文部科学省のホームページにて公開させていただきたいと考えております。
また、本日の議論を踏まえ、主査と相談の上、もし修正を加えた資料がございましたら、改めて御報告差し上げたいと思います。
以上になります。
【西尾主査】 それでは、本日も、皆様方から本当に貴重な、また様々な観点からの重要な御意見をいただきましたことに対しまして、心より御礼申し上げます。
本日はこれにて会議を終了いたしたいと思います。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
企画調査係
電話番号:03-5253-4111(内線3247)