学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(令和4年度~)(第6回)議事要旨

1.日時

令和6年6月18日(火曜日)14時00分~16時00分

2.場所

ウェブ会議

3.議題

  1. ウェルビーイングに向けた学校施設づくりのアイディア集(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

  <委員>
  荒瀬主査、伊香賀副主査、市川委員、伊藤委員、倉斗委員、後藤委員、斎尾委員、長澤委員、中埜委員、樋口委員、細田委員、吉田委員
  <特別協力者>
  植田特別協力者、深堀特別協力者

文部科学省

  (大臣官房文教施設企画・防災部)笠原文教施設企画・防災部長、金光技術参事官
  (大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)松下企画調整官、遠藤課長補佐
  (初等中等教育局)鈴木企画官

5.議事要旨

・荒瀬主査より開会の挨拶
・事務局より委員の出欠の説明と人事異動の挨拶
 
議題1:ウェルビーイングに向けた学校施設づくりのアイディア集(案)について
・伊藤委員(学校施設の質的改善・向上に関するワーキンググループ座長)及び事務局より、資料1-1・資料1-2(委員限り)に基づき説明後、質疑応答。
 
【樋口委員】 資料1-1の7ページのコミュニティという話について、私は前回細かいところまで質問したが、大変よく分かるようになった。柏市立土小学校の地域交流棟の役割、資料1-2の19ページの図面ではサロンと書いてあるが、具体的にその地域の方がどのような形で使用されるのか、地域の方が来られる等何らかの役割なり働きかけをして、その機能を持たせて使っていただくのか。どのようにここを使えば、コミュニティ・スクールの拠点として実質的に機能するのか、について教えていただきたい。
柏市立土小学校に限らず、児童館、公民館、図書館等を校地内に複合化したり、建て替えたり、近接した場所に置き換えたり、といった発想があるが、コミュニティ・スクールの拠点になる場、地域づくりの中でまさにコミュニティ・スクールや関連施設をどう位置づけるのか、という視点が、このアイディア集の中になくて良いのか。
【遠藤補佐】柏市立土小学校は、実際、地域開放で地域の方々が活動される際に使う部屋を1か所にまとめて整備した事例。実際にそこに地域住民の方に来ていただき、子どもたちに対する講座・勉強会を開いていただく、ということもあると伺っている。また、地域の側からも、そこは自分たちが特に使う場所だという意識がしっかり根づきつつあるところで、まだまだこれからの運用次第というところはあるかと思うが、地域の側からも、土日に、そこに寄ってみようという動きが生まれていると伺っている。
複合化についての指摘もいただいたが、まさに複合化という視点でのアイディアは、今回、今のところ掲載はできていない。文部科学省としては、複合化については別途事例集を提供しているので、そちらと併せて見ていただければ良いかと思っている。今回のアイディア集においては、まずは、地域との協働という視点で学校をどうしていくかを、示している。
 
【樋口委員】資料1-1の11ページの「コラム 令和6年能登半島地震への対応」について、掲載している石川県七尾市の事例では、例えば何人ぐらいこの避難所にいるのか、今避難所はどうなっているのか、等、分かる範囲でもう少し細かい情報があった方が良いのではないか。何百人と押し寄せている避難所なのか数十人がいる避難所なのか、学校規模等が分からないと、一概に、1か月経って学校の教室機能と避難所機能を分離したという話だけではあまり参考にならない部分もある。他の地域で当てはまるのかどうかが分かりにくいのではないかと思うが、その辺りを書き足せるかどうか伺いたい。
【遠藤補佐】避難所利用者数等の情報をどこまで具体的に書けるか、記録を見返しながら少し検討したい。
【荒瀬主査】避難所の利用者数は分かるのか。
【遠藤補佐】確認を取れば分かると思うので、確認する。
【荒瀬主査】何人くらいの方がここに集まったのか、現在避難所としてはどうなっているのか、等については事務局で確認し反映させていく、とのことなので、樋口先生、それで良いか。
【樋口委員】承知。
【遠藤補佐】なお、現在は、既にこの学校に関しては避難所が閉鎖されている。
【樋口委員】いつ閉鎖されたかを書いていただけると良い。
 
【斎尾委員】アイディア集のタイトルが「ウェルビーイングに向けた」となっているが、「ウェルビーイングの実現に向けた」「ウェルビーイング向上を目指した」等の言い方でなくてよいか。
【伊藤委員】ウェルビーイングの用語の使い方は、表記の揺れもあり、私自身も気になっていたところで、最終稿のところで調整しなければと思っていた。「ウェルビーイング」の後に、「向上を目指した」や「実現」等の一語をつけることは必要だと思う。文科省の報告書なので正しく使いたい。ウェルビーイングの向上なのか、実現なのか、寄与なのか、というのは、これから事務局と相談して決めていきたいと思う。
 
【斎尾委員】例えば改修・改築するときに複合化する場合も多いと思うが、資料1-1の6ページの図を見ると、学校のことしか書いておらず、子どもたちが生活している地域の環境に何も触れなくて良いのかという印象を持った。特に例えば国公立の小・中学校の施設は学校だけでは成立せず、地域あっての学校だと思うので、改修・改築する学校が地域の中で持つべき機能の検討、要するに、将来、複合化されるかもしれないといった観点から、学校が地域の中でウェルビーイングを実現できる拠点施設として持つべき機能を確認していくプロセスがある、ということを書いても良いのではと思った。
【伊藤委員】 資料1-1の6ページの図は、今日の説明のために事務局が作った図で、資料1-2の4ページの図は、「学校施設の質的改善・向上に関するワーキンググループ」で検討中の、事例の位置づけを示す図。資料1-2の4ページの図について、「学校施設の質的改善・向上に関するワーキンググループ」では、ここが少し分かりにくい、様々なアクターがきちんとカバーできているのか、といった指摘があったので、そこは今から直すべく作業をしているところ。作業中だが、資料1-1の6ページの事務局作成の図がぱっと把握しやすいと思っていて、これをベースにアイディア集の概要を示すのが良いのではないかと考えている。
 その中で、地域の観点が少ないのではないか、という指摘については、確かにこの資料1-1の6ページの図の部分ではどうしてもそうなってしまっている。施設をつくるという観点から報告書・アイディア集をまとめると、どうしても、学区の地域環境等、建物の形になってこない部分が取り上げにくいというのは正直ある。このアイディア集の事例としては直接には登場しないかもしれないが、地域との連携も大事であるという観点は何らかの形で取り入れようと思う。今から項目は増やせないと思うので、カバーできなかったところがあるという部分をきちんと示すという対応が良いかと思う。
 
【斎尾委員】 災害に遭った地域の学校の仮設校舎の質を向上していただきたいと強く思っている。東日本大震災のときの事例を振り返ると、多くの子どもたちが仮設住宅と仮設校舎で何年も過ごすことになるのはまずいだろうと思っていて、能登半島に限らず、今後の被災地域の仮設校舎の空間の質向上は、まさにウェルビーイングの向上になると思う。学校が、避難所を設置しながら同時に学校を再開することが結構あり得るが、そのときにどう空間を割り振るか。災害の規模が大きい場合は多くの人が長期間にわたって避難所に来るということがあると思うので、災害の規模の大きさや来る人数等によっての空間計画の事前復興計画が必要で、それが結果的にウェルビーイングが達成される、というようなことかと思った。
【伊藤委員】 仮設校舎について、大分古い事例になってしまうが、東日本大震災のときに公民館に間借りしていた学校と、オープンスペースを持つ小学校に6校の学校が集まった学校を調査した。それらは、施設やいろいろな空間をうまく使っていた。公民館等、そのときに使えた公共施設を使った結果、良い活用ができるのではないかというヒントにはなるかと思う。その辺りの扱い方は検討させてほしい。
【遠藤補佐】今回掲載している事例の中では、例えば、資料1-2の82ページに、計画中の和歌山県串本町の小学校を統合し高台移転するケースがある。こちらのコラムで斎尾委員からの指摘全てに答えるのは難しいかもしれないが、避難所となったときにどこを使うのかを、発災後からのフェーズごとに計画しているような事例もある。また、資料1-2の90ページの群馬県前橋市の事例で、避難所が開設される全ての学校について、それぞれ今ある既存校舎をどう使っていくのかしっかり計画をつくっているので、そういった事例で伝えていければと思う。
 
【長澤委員】今回のアイディア集については、伊藤委員の説明が資料1-1の5ページの大樹の絵から始まったのもそうだが、令和4年3月に取りまとめた「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について 最終報告」を受けて、その具体的なアイディアをビジュアルに示すということが大きな目標、趣旨になっているのかと思う。学び、生活、共創、安全、環境という説明があったが、学びが後の方に来て、共創、生活、学びという並び順になるのがどうも私にはしっくりと来ない違和感がある。ただ、それに対して、このアイディア集の狙いがきちんと示されれば良いと思う。例えば資料1-2の2ページの本文案でも、最後の段落で、目指すものの順序としては、学習、生活、環境、安全、共創という順に並んでいて、やはり学びは、ウェルビーイングを実現する上でも大事な課題だという捉え方になっていると思うので、その辺りを整理する必要がある。
共創について、「最終報告」の中で使われている共創の中身と、今回のアイディア集の共創の中身が少し違っていて、そこをきちんと示していくと、今回のアイディア集でこの並び順にしていることの特色がよく伝わるかと思う。「最終報告」のときの共創の意味で使っているのは、資料1-1の7ページで言うところの共創の03、04、05で、学びを地域とともに生み出す学校づくり、複合化、共用化だったが、今回のアイディア集の最大の特色は、資料1-1の7ページの共創の01、02だと思う。それは、「最終報告」の中には書かれていなかった。つまり、「最終報告」で目指している目標だけではなくて、それをいかに実現するか、実現しようとするときに参画が大事だ、というところが、今回のアイディア集の非常に大きな特色になっている。そういう意味では、共創の概念が「最終報告」とは違っているので、そのことを前文できちんと示していただけると良いと思う。資料1-2の3ページの「アイディア集検討の背景とねらい」の文章の中に「参画」という言葉が出てきて、そこにこのアイディア集の特色がうかがえるので、資料1-1のような形で概要を示すときにも、あるいは資料1-2の2ページ・3ページのところでも、いかに実現するか、そのためには参画のプロセスが大事であること、共創という概念を大きく広げてここでは取り扱っていること、を明確に示していくと良いのではないか、その必要があるのではないか。ご検討いただきたい。
【遠藤補佐】今回の共創、生活、学び、環境、安全の並び順について、このアイディア集の特徴だと思うので、全体・本編に入る前のところでどういった形で示していけるかというところを、伊藤委員とも相談して、うまく伝わるように工夫したい。
 
【長澤委員】 資料1-2の20ページから22ページについて。共創-03-04「ICTで世界とつながる」の中身を見ると、まさに学びに関する内容が書かれている。それに対して、共創-03-03の「学校内で社会人も仕事ができる」で、特に企業のコワーキングスペースとして学校の空いているスペースを使うという記述があって、これはこれで意味があることだと思うが、順番としては、ICTが学びを世界に広げるということの方が、コワーキングスペースとして学校のスペースを使う、ということより先に来てしかるべきではないかと感じたが、いかがか。
【遠藤補佐】子どもたちの学びそのものが前にある方が良いのではないか、ということかと思うので、その方向で検討させていただきたい。
 
【後藤委員】資料1-1の11ページの「コラム 令和6年能登半島地震への対応」について、PTAの関係でも、情報を共有したい。能登半島地震に際しては日本PTA全国協議会としても支援金を募り、辞退された福井県を除いて、石川県、富山県、新潟県の3県に渡した。この支援金の活用にあたって、石川県教育委員会と石川県PTA連合会との間の相談の中で、教職員が避難所に避難している場合、仮設住宅の入居や救援物資の受け取りについて遠慮されるということが起きているため、PTAの支援金で何かサポートできないかということだった。石川県から又聞きした内容なので、事実確認の必要があるとは思うが、学校が避難所になることで、そのように避難所での生活と職場が一緒になることで教職員が抱える問題について、もしかしたら施設の在り方の中でも多少サポートができることがあるのかなと感じた。
 
【吉田委員】このアイディア集には、全国の様々な事例が掲載されている。それぞれの事例の背景には、それぞれの学校や地域が抱えるいろいろな課題を解決しようという思い、様々な先生方や地域の方も交えて子どもたちの意見も聞きながらみんなで地域に愛される学校をつくっていくんだという背景・動機・意志が非常に感じられる。大変な少子化の中で、学校の統廃合が現実に様々な地域で起きている。私たちの本庄市でも、統廃合しなくても良いところもあるものの、非常に子どもの数が少なくなっていてこれから統合していかなければならないという方向性を住民の方々と共有していく状況のところもある。学校は150年もの歴史の中で地域に非常に愛されてきた。今を生きる子どもたちだけではなくて、これまでその学校で学んできた地域の方々の思いが詰まっている場所であり、一つの文化がそこにはある。それらの統廃合は簡単な話ではなくて、地域の方々の思いをくみ取りながら、今後の子どもたちの学びを保障していくべく行われる選択である。もちろん、統廃合せずに小規模のままやっている学校も地域によってはあるが、事実、学校というものが非常に大きな岐路に立っており、統廃合という大きな波が来ている。そういうときに、ただ子どもの数が少なくなったから統廃合しましょうというだけではなくて、将来に向けてどういう学びの環境を整えていくかについて、まさにこのアイディア集にヒントが大きくあるのではないか。多くの学校がこれから統廃合に直面するときに、ぜひ全国の好事例をみんなが学べる機会をこれからも保障していただきたい。ぜひこれからも継続して、地域の総意、先生方やお子さん、地域の皆さんの総意で新しい学びの場としての学校をつくり上げていく事例を、どのような思いでその人たちが頑張ってきたかということも含めて、事例集やアーカイブも含めてしっかり記録を取っておくことによって、これから統廃合という課題に直面する方々にとって貴重な参考事例にしていくことが必要ではないか。新しい学びの場をみんなでつくっていこう、良い学校にしていこう、良い学校をつくろう、ということが、統廃合という、ある意味、非常に厳しい選択をせざるを得ない中でも、積極的に、前向きに、未来に向けて良い学びの場をつくろう、ということが非常に大事だと思う。そういった意味で、このアイディア集は、全国の統廃合という課題に直面する学校関係者や首長たちにとってより良い指針であってほしい。
 
【荒瀬主査】今日も大変貴重なご意見、力強いご支援の言葉も含めて、頂戴した。ご意見を踏まえて、最終的に修正したもので世に出したいと思っているが、「学校施設の質的改善・向上に関するワーキンググループ」座長の伊藤委員及び事務局と十分に相談しながら、最終的な文章を作っていき、具体的な事例集を仕上げていくことにして、最終的には本調査研究協力者会議主査に一任いただくということでよろしいか。
(一同、異議なし。)
【荒瀬主査】それでは、そのようにさせていただく。
 
議題2:その他
・事務局より資料2-1・資料2-2に基づき説明
・事務局より資料2-3に基づき説明
・鈴木企画官より資料2-4に基づき説明
・委員より質疑応答
 
【荒瀬主査】 ただいま鈴木企画官より説明のあった内容は、あちらこちらで大変話題になっている。今後パブリックコメントを受けて、具体的にさらに検討を重ね、文部科学大臣からの諮問によってスタートした議論なので最終的には文部科学大臣に答申という形でお渡しすることになっている。
 本会議は、学校施設の在り方に関する会議だが、一方で教師の在り様というのは、これはいずれも学校教育に関して非常に重要な、大変大切な軸になるものなので、両方がしっかりと進んでいくことを心から期待する。
 
・事務局より事務連絡
・笠原文教施設企画・防災部長より挨拶
・伊香賀副主査より挨拶
・荒瀬主査より挨拶
 
―― 了 ――