学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(令和4年度~)(第3回) 議事要旨

1.日時

令和5年3月14日(火曜日)10時00分~11時45分

2.場所

オンライン開催(事務局:文部科学省旧庁舎4階 文教施設企画・防災部会議室)

3.議題

  1. 学校施設の脱炭素化に関するワーキンググループの審議状況の報告について
  2. 学校施設の質的改善・向上に関するワーキンググループの設置について
  3. その他

4.出席者

委員

  <委員>
  荒瀬主査、伊香賀副主査、市川委員、伊藤委員、倉斗委員、後藤委員、斎尾委員、高橋委員、中埜委員、樋口委員、細田委員、吉田純二委員
  <特別協力者>
  植田特別協力者

文部科学省

  (大臣官房文教施設企画・防災部)笠原部長、野沢技術参事官
  (大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)藤井課長、小林企画調整官、早田課長補佐、芝村課長補佐
  (大臣官房文教施設企画・防災部施設助成課)伊藤防災・減災企画官、亀田課長補佐

5.議事要旨

・荒瀬主査より開会の挨拶。
・事務局より委員の出欠の説明。
 
議題1:学校施設の脱炭素化に関するワーキンググループの審議状況の報告について

・伊香賀副主査(学校施設の脱炭素化に関するワーキンググループ座長)及び事務局より、資料1-1、1-2に基づき説明後、質疑応答。
 
【樋口委員】資料1-2第1章2.に「学校施設そのものが児童生徒の環境教育の教材として活用」とあるが、今回の報告書で取り扱うZEB化を行うことによって、環境教育に影響する新たな視点が出てくるのか。それとも、基本的には令和2年に取りまとめた「環境を考慮した学校施設づくり事例集」と同じ方向性なのか。もう少し具体的に、環境教育に与える影響について議論された内容を知りたい。
また、ZEB化などの取組を進めている学校では環境教育が実現できるという話なのか。それとも、この報告書は、一般的な学校においても環境教育に係る取組を進める際の手がかりになるのか。一般的な学校において、学校施設の省エネルギー性能を確保するためにどのような検討を進めれば効果的か、という点についても議論がされているのであれば内容を知りたい。

【事務局(芝村課長補佐)】環境教育については、資料1-2第1章2.に「環境を考慮した学校施設にこれまでの取組」を記載しているが、以前、事例集を取りまとめた段階から、環境教育への活用の方針について大きな変化は無い。
もう一点について、既にエコスクールの整備を行っている学校施設でも様々な環境教育が行われているので、学校施設がZEB化されなくても各学校に合わせた環境教育ができると認識している。ZEB化を念頭においた整備を実施しない場合でも、省エネの手法としては太陽光発電や断熱化があるので、それらの施設や設備を環境教育に活用することが可能である。
 
【倉斗委員】学校設置者が行うべき検討の方向性について、財源の確保の観点からも示すことが改めて重要だと思った。補助金に関する説明資料を見ても、パッシブな高断熱化などの手法を含む、建物面から省エネ化を図る方法と、設備面から省エネ化を図る方法があると思う。その際、設備面による省エネ化のほうが簡単に実現できる印象を受けた。また、同様に補助金の項目も設備面に関する項目が多いように感じた。
一方、学校施設のZEB化を実現しようと考えた際に、躯体が高断熱化されていたり、適切な位置にひさしが設けられていたり、といった建物面の性能を確保したほうが省エネ化に有効な場合もあるのではないか。こうした観点から、優先順位をつけて整備を行うための手がかりになる情報を示す必要はないか。
 
【事務局(芝村課長補佐)】報告書案の中でも、学校設置者が優先順位を明確にしたうえで検討ができるよう、費用対効果が読み取れるように記載している。優先順位の付け方については、様々な考え方があるが、一番費用対効果があるという観点では、まずは照明の整備になるかと思う。
断熱、日射遮蔽、空調等に係る整備を一例として挙げると、一般的には、断熱や日射遮蔽をして建築面から省エネ化した後に、設備面からエネルギー使用量に合わせた空調機を整備すると効率的に省エネルギー性能が確保できると思う。
一方、各学校の状況に応じて適切な更新時期等も異なってくるため、各学校設置者に適切に判断をしてもらう必要がある。
 
【倉斗委員】避難所として屋内運動場を利用する場合、断熱化がされてないのに空調設備が付加されている事例があると聞く。地域全体が停電してしまうような状況下でも、避難所は使われる可能性があることを考えると、断熱化を優先したほうがいいのではないか。
 
【事務局(芝村課長補佐)】ご指摘の状況も踏まえ、文部科学省の補助を利用して屋内運動場に空調を整備する場合、断熱化が必要になっている。
 
・荒瀬主査より、資料1-1、1-2で扱う報告書案について、伊香賀副主査、事務局との相談のうえ一任として良いか確認。
(一同異議無し)
 
議題2:学校施設の質的改善・向上に関するワーキンググループの進捗報告について

・事務局より、資料2に基づき説明後、質疑応答。
 
【荒瀬主査】先般、日本社会に根ざしたウェルビーイングに関して、令和5年3月8日に中央教育審議会の総会で答申が出されたところ。この「次期教育振興基本計画について(答申)(中教審第241号):文部科学省 (mext.go.jp)」では、「ウェルビーイング」の考え方がよくまとめられているので、この記載を踏まえながら今後の議論を進めていくことが大切だと思う。
 
【市川委員】特別支援学校を含む全ての学校種について、特別支援教育を進める上でどのような施設があったらいいかも検討してほしい。例えば、オープンスペースは全ての子供とってよいかというとそうでもない場合があり、発達障害のある子供は周りの音が入ってくることで、落ち着くことが難しい場合もあると聞いている。
資料2P2の「ほっとする時間や空間」というのはすごく重要な視点だと思う。障害のある子供たちにとって、ほっとする場所というのは我々のイメージとは異なる場合もあり、例えば、少し狭くて1人になれるような空間や、使い方が分かりやすく明示された空間も、安心できる学校の重要な要素であったりする。全ての子供のための施設整備を考えるには、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害などの各障害種に応じたそれぞれの方向性があると思うのでそれを踏まえて検討を進めてほしい。
 
【倉斗委員】資料2P2の「既成概念から抜け出して」というのは、本当に重要だと思う。自身は教室の前後や廊下、オープンスペースにおける掲示物に係る調査も行っているが、我々が子供だった頃から状況は大きく変わってない。そこで、その状況をデータで可視化することができると、「なぜこれまで全員分の習字を掲示していたのか」など、先生方にとっても改めて学校施設の使い方を検討するきっかけにもなる。
また、環境づくりという意味では、ある公立小学校で、先生方と一緒にオープンスペースの使い方を考えるといった取組をしたことがある。学校のオープンスペースの活用方法の検討と言うと、多くの先生方は教育目標や学習目標のような長期間にわたる取組をイメージされるようで、検討そのものに抵抗を感じる傾向があるように思う。一方、「子供たちの居場所として子供が自ら選んで使える場所をつくる」というテーマで検討を始めると、「寝転がっていたい子がいるのではないか」とか、「1人で集中していたい子がいるのではないか」等のアイデアもたくさん出て活発な議論になった。また、子供たちの中からも、「授業を教室以外の場所でやりたい」といった意見も出てきた。
こうした状況を踏まえ、翌年には全学年の先生方が夏休みを1日使って「各学年のオープンスペースをつくる」というテーマでワークショップを開催してくれた。こうした取組を通じて、子供たちが学習する場所を自ら選ぶという考え方を広めるとともに、先生方のオープンスペースに対する抵抗感の払拭もすることができた。 
この取組は、授業の展開に関しても先生方の意識改革になったようで、これまでは教室の黒板で一斉に授業をしていた先生が、教室中央に大きな教卓を持ってきて先生のスペースを作ったり、黒板使わずに全て授業をパソコンでしたりといった、新しい形で授業を展開する先生も出てきている。また、職員室の使い方に関しても、職員室の中に床座で談笑できるようなスペースをつくったり、フリーアドレスにしたりということもあった。
 
【細田委員】さいたま市教育委員会では、子供がとても増えてきていて、都市部に新しい学校を建てる敷地を確保することが難しいなかで検討を進めているところであり、昨日も新しい学校について、教育委員会で議論を行っていた。
先ほど、荒瀬主査からも「次期教育振興基本計画について(答申)」への言及があり、日本社会に根差したウェルビーイングの向上が学校づくりの主題として扱われており喜ばしいと感じている。その中で、学校や地域のつながりや、地域や社会が幸せや豊かさを感じられるものとなるための教育の在り方に関する記載がある。現在、本市は子供がまだ増え続けていているものの、今後人口減少の局面に入ってくると、学校施設が地域の人たちにとっても、あそこに行くと誰かに会えるとか、学校に行けば何かを一緒に学べる人がいるとか、学校に行くと何か研究したりすることができるというような、学校が地域の豊かな学びの場になる可能性もあると思う。
こうした中で、学校施設はどうあるべきかについて考えていくことが重要だと感じており、これから新たな学校の新築・改築・改修を行う際は、皆が集って学べるようなラーニングコモンズのような空間について、議論していかなくてはならないなと思う。
 
【後藤委員】保護者の立場からも、非常にわくわくするアイデア集だと感じた。不登校の子供たちについて話題があったが、不登校特例校で岐阜県に岐阜市立草潤中学校という学校がある。この学校は、閉校した学校施設を改修して不登校特例校として運営しており決して新しい校舎ではないが、子供たちが非常に楽しんで学校生活を送れている。40人ほどの定員に対して、県内あるいは県外から引っ越してでも入学がしたいということで、見学が300名を超えるというような場合もあるとのこと。
通常教室で勉強するのが子供と親にとっても一般的な感覚だと思うが、この草潤中学校では、例えば階段の踊り場や廊下、あるいは大人があまり通らない体育館の隙間なども全て学びの場として開放している。もちろん安全に配慮することは必要だが、実は多くの空間が子供にとっての学びの場になり、最終的にどこで学びたいかを子供たち自身が選べるというのは、意義深いことと思う。
一方、子供たちがどこにいるか常に把握できないのは、先生方からすれば不安であるため「イマここボード」というものを活用している。自分の居る場所や、声をかけていいかどうかなどについて、子供たち自身が意思表示できるようになっており、これを見て先生方は子供たちとの接し方を判断している。
こうした子供たちにとってのストレスやコミュニケーションのハードルを、徹底的に解消する形で学校が運営されていて、保護者からしても子供たちからしても、非常に心地よい学校施設の在り方の1つではないかと思う。先ほど特別支援の話もあったが、不登校特例校に限らず、こうした実践的な経験値から生まれた学校の施設の使い方も、既存のものを問わず、ぜひ拾い上げてほしい。
 
【荒瀬主査】岐阜県の岐阜市立草潤中学校や東京都の八王子市立高尾山学園などの取組は、子供たちを学校の在り方に合わせるのかではなく、学校がいかに子供たちに寄り添っていくかに焦点を当てている。草潤中学校の例は、子供たちに寄り添った学校運営を検討する際に、施設あるいは設備がどれほど重要かを示す取組であったと思う。
また、一例として、愛知県名古屋市は、「子供は有能な学び手」であり「有能な学び手である子供たちがその力を発揮できるような場をどう提供するか」に重点を置いて教育環境の整備を行っているが、こうした観点にも通じる話であったと思う。
 
【高橋委員】GIGAスクール構想で1人1台パソコンが実現されたことで、端末の活用がうまくいっている学校では、とくにここ1年でこれまでとは全く違う形の授業が始まっている。
大抵の学校の授業では、先生が一斉に説明をして、パソコンも先生の指示を受けて一斉に使い始めるパターンが多いが、より効果的なパソコンの使い方もあると思う。例えば、有名な建築家が建てたある学校では、授業中でも子供が1人になれたり、複数人のグループが広がって勉強をしたりなど、子供たち一人一人が様々な勉強の仕方を選べるようになり、本当に授業がよくなったという話がある。
こうした事例は、デジタル空間と実空間の融合に近いと感じていて、端末を適切に活用することで様々な利点が生まれてくる。例えば、校務の情報化の観点でも、一人一人の学習成果だけではなく、子供たちの学習の経過がコンピューターの技術によって非常に把握しやすくなっている。さらに、子供たちの学習のデータが数年にわたって蓄積されたり技術が発展していくと、教室で一斉に授業をしなくても、子供たちは課題を受けとり、適切な場所を選んで、自分なりに学習を進めていくことも可能になる。そうすると先生自身も、子供たち一人一人のペースで基礎基本を身につけさせたり、学習の進捗に応じて探究学習に展開させることもできるのではないかと感じた。
現状、勉強ができる子供たちはどんどん勉強を進めていくという状況がある。一方で、例えば、独り言が多くてこれまでの授業の妨げになってしまう子供でも、このように一人一人のペースがあれば、むしろその独り言が面白い発想につながったりすることもあるし、思考の発露として望ましいと捉えることもできるようにもなる。
コンピューター技術による授業の展開と組み合わせることで、こうしたオープンなスペースや1人になれるスペースをより効果的に活用できる事例がある。これは、自分のペースで勉強を進めていき足りない部分は共同的に学んでいく、といった中央教育審議会で言うところの個別最適な学びが、校舎としての空間とデジタルの融合で実現し始めているので、そうした取組の成果も踏まえて検討していくと良いと思う。
 
議題3:その他

・事務局(小林企画調整官)より、資料3に基づき説明
 
【樋口委員】公立小中学校等施設のバリアフリー化について説明あったが、高等学校も含めてバリアフリー化を推進しているのか。
 
【事務局(小林企画調整官)】文部科学省としては、高等学校も含めてバリアフリー化を推進しているところ。一方、バリアフリー法の改正を踏まえた取組では、義務教育学校を含む公立の小中学校等施設について、整備目標を定めてバリアフリー化を進めていくこととなっている。そのため、現在はとくに公立の小中学校について取組を進めている状況があり、それらの取組について説明した。
 
【荒瀬主査】現在、99%の中学校の卒業生が高等学校に進学しているという実態があるので、高等学校のバリアフリー化を進めていくことも重要。
また、バリアフリー化を検討する上で重要なのは、バリアフリー化の施設整備を実施することで、本当にバリアが無くなったと捉えて思考停止に陥らないこと。例えば、車椅子や松葉杖の利用者が移動しやすいように校舎の段差を完全に無くしたところ、これまで高齢の方が靴の脱ぎ履きをするために使っていた段差も無くなり、別の不便が生じてしまう事例もあった。
他方で、エレベーターの利用が制限されているケースもこれに当たると思う。「生徒は乗らないこと」とか「本当に困っている人がいます」などの張り紙がされていると、本当に困っていても、第三者から見てそれが理解してもらえない人にとっては、結果的にバリアが生じるということもある。こうした整備後の使われ方にも注意を払いながら、整備を進めていくことが重要。
 
・事務局より今後の日程等について連絡。
・笠原部長より閉会の挨拶。
 
―― 了 ――