学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(令和4年度~)(第1回) 議事要旨

1.日時

令和4年7月14日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 主査の選任等について
  2. 学校施設を取り巻く現状等及び今後の検討事項について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員) 荒瀬克己,伊香賀俊治,市川裕二,工藤誠一,後藤豊郎,斎尾直子,高橋純,長澤悟,樋口直宏,細田眞由美,吉田純二,吉田信解(敬称略)
(特別協力者) 植田みどり,齋藤福栄(敬称略)

文部科学省

(大臣官房文教施設企画・防災部)笠原部長,野沢技術参事官
(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)磯山課長,小林企画調整官,藤井教育改革調整官,早田課長補佐,栗本課長補佐,芝村課長補佐

5.議事要旨

(○委員の発言、●事務局の発言)

・事務局より、開会の挨拶。
・笠原文教施設企画・防災部長より、挨拶。
・事務局より、資料1、2に基づき、「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議設置要綱」、「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議運営規則(案)」について説明。
・主査及び副主査の選任後、荒瀬主査より挨拶。
・事務局より、資料3、4に基づき、「学校施設を取り巻く現状等及び今後の検討事項について」、「学校施設の脱炭素化に関するワーキンググループの設置について(案)」について説明。
 
〇 学校施設の脱炭素化は極めて重要である一方、その副次的効果を検討することも重要。例えば、教室等の温熱環境については、冬には寒過ぎず夏には暑過ぎないなど、そこで学ぶ子供たちの学習環境を良好にする、そこで教える教職員の健康もよくするという影響も極めて大きい。また、学校施設は発災時の避難所としての機能を発揮することを考えると、エネルギーが途絶したときにも機能を継続させるための創エネの観点とともに、学校施設の脱炭素化は環境教育にも貢献が期待できる。こうした様々な副次的効果も踏まえ検討を進めていきたい。
 
〇 特別支援学校でも、夏の暑さや冬の寒さが課題となっている。昨今の温暖化で、教室の冷房とスポットクーラーを併用してもなお、教室が暑いという状況もある。また、冬は廊下の気温が低く、車椅子の子供は移動に困っている。脱炭素を進めつつ、子供が安心・安全に生活できる学校をどう建てるべきかが重要。
 インクルーシブ教育システムのさらなる実現に向けた学校環境の改善にあたり、小中学校において障害のある子供も共に学ぶ機会が多くなるので、これを念頭に検討が必要。学校全体の運営で言えば、例えば、障害のある方のスポーツ教育の推進の観点からは、特に特別支援学校の体育館等の貸し出し等が今後重要になってくるので、利用の実態も考えて検討が必要。
 
〇 私立学校の場合、施設整備が各法人に委ねられる部分があり、学校において設備の充実度に差が出てしまう。同時に、維持費、例えばICT環境に係るサーバーやWi-Fiは、都度費用が必要となり、大きな財政的な負担となっている。そうしたなかで、私立学校に対しても学校施設の在り方に伴って的確な補助が出されることが重要。
今日的な学校環境、教室で学ぶ子供のニーズをどう捉え、どう教室を設計していくかが重要。それに合わせて電子黒板などの様々な機器が設置されていくことで、子供が1日を過ごす環境がより快適になっていくのではないか。
 また、多くの海外の学校は、子供が授業毎に教室を移動することを前提とした施設が一般的。いわゆる座学の形から、今後、ワークショップなど対話的な学びの形になると、根本的な日本の教室の在り方も論じることも必要。
 
〇 学校施設の脱炭素化に関する在り方及び推進方策について。岐阜県の中学校が、新築でZEB化を達成した全国で初めての学校としてニュースで取り上げられた記憶がある。この事例は、新築という意味では大いに参考になる一方、実際の学校施設はその大半が老朽化しているような状況。この対策のひとつとして予算確保の優先順位を上げていくということも考えられるが、それでも地方自治体の状況によって大きく整備方針に差が出る思う。
 これもまた岐阜の事例だが、昨年か一昨年に、不登校特例校の中学校がニュースで取り上げられていた。この学校は、子供たち自身から出たトイレをきれいにしてほしいという意見を踏まえ整備を実施しており、開校時の予算の3分の1弱トイレに回している。このように、子供たち自身が当事者意識を持てるようにすることも重要。
 
〇 学校施設や地域施設には避難所の機能もあるが、地域施設との複合化や、学校と地域社会との連携関係のほか、都市や農村、離島など、様々な立地に適した学校の在り方にも着目する必要がある。
 
〇 現在、学校では先生方を含め、全員が1人1台コンピューターを持っている状態で、校務も授業も含めて学校教育全体のデジタル化を一体的に検討する必要がある。
 教室の設計と授業との関わりについて、従来の学力試験のような穴埋め問題的な授業は今後長くは続かず、問題解決能力やアクティブラーニングが要求されるような学習になっていくと思われる。こうした指摘は長らくあるが、このような教育の在り方を実現するにあたり、施設整備が大きな要素となるのではないか。
 コンピューターを管理する規制が過剰な学校とそうでない学校で随分状況が異なる様子だが、施設整備の面から言えば、教室が広い校舎だとデジタル化の取組が一層加速すると思う。
 
〇 学校施設の脱炭素化について。老朽化した学校施設は膨大にあるが、学校施設を長寿命化することの効果を数字で示し、新しく造るという場合だけではなく、それを行動目標として共有することが必要。また、カーボンニュートラルに実質的効果があり、循環型社会という観点からも、木材の活用方法や設計上の留意点についても併せて扱うのはどうか。よく造るということにとどまらず、そのための建築的な配慮又は効果が、子供たちや先生方に見え、体験できるような工夫も必要ではないか。
 質的改善・向上に関する方策について。昨年度の議論では、オンライン教育の可能性が認識される一方、実空間の重要性の御指摘が多くなされたが、言い換えれば、誰にでも居場所のある学校づくりが重要。ICTはその可能性を広げる力、施設空間を新たに捉え直す力と捉え直すことが必要。
 その他、教職員スペースの在り方、あるいは多様な特性を持つ子供たちのための学び、生活の場所としての観点も重要。同時に、昨年度はこうした内容について教員の理解が不可欠であり、教育学部のカリキュラムや教員研修のプログラムに施設のテーマを取り入れる必要性にも言及があった。また、学校設置者における人的体制、財政、支援も問題として挙げられていた。これらの諸課題も踏まえた検討が必要。
 
〇 脱炭素化は数値としての評価が重要だが、一方で、実際の子供たちや教員の感覚とどのように関わるかも重要。例えば、涼しいと思えば余りクーラーを入れなくて済むなど、そういうことも想定できる。また、閉じた空間をうまく活用することで神経質な子供たちの良い面を引き出し、あるいは先生の執務空間の質の向上にもつながる。こうした別の観点をどうZEBと組み合わせて受け入れていくかの検討も必要。
 現在の一貫教育は、小中一貫だけではなく、政策的にも保・幼・小接続や中・高接続、高・大接続というように様々な形態がある。小中一貫教育に係る検討では、現在は少子化による統廃合の話題が多いが、それに伴い従来の保・幼・小・中・高・大の枠組みを支えることが難しくなっている。こうしたなかで、職員の組織や学校の仕組みも踏まえて施設の検討を行うことが必要。
 
〇 35人学級を実現するとなると学級増が大きな課題となっている。また、現在でも地域によっては、新設校が必要になってくる状況もある。老朽化対策加えて新設校が同時に必要ということで予算の確保も必要。
 学校施設の脱炭素化について、着眼点として学校施設が脱炭素化にどのような貢献ができるか考えると、自身の市では、全校に太陽光パネルの設置や照明のLED化に取組んでいる。このように、学校施設の整備を通じて脱炭素化に大きな役割を目に見える形で示すのは、子供たち自身が持続可能な社会のために何ができるのかという教育への貢献なのではないか。また、子供たちのSDGsの意識を高めるため、教育プロジェクトを立ち上げ、ホームページを使った情報発信も同時に行っている。 
 学校施設の質的改善・向上について。自身の市では、新設校の建築に着手しているが、保・幼・小の連携にくわえ、アリーナやプールといった市民への解放を念頭に置いた施設も検討している。また、地域によっては人口が増加するなかで、新たな校地の確保も課題となっていることから、同時に人口増加への対応のために義務教育学校を設置することがあっても良いのではないか。
 
〇 自身の市にも学校が多数あり、全校で脱炭素化に取組めば大きな効果になるが、時間もお金も大変かかる。学校を個別に取り上げていくのではなく全体的な底上げが重要。それを達成し得るPFI、ESCO、リース等、効果的な整備手法を効果的に現場に示し、いかに施設整備のための環境を整えていくかが重要。
 学校の質的改善については、自身の市も施設の長寿命化と併せて学校の木質化、壁の断熱化、トイレの洋式化・快適化にも取組んでいるが、十分ではない状況。先般の「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」最終報告に記載の内容にも今後は対応が必要。
 
〇 昨年度の議論でも触れられたが、空間が人を創るという考え方がある。この空間には、タブレットを通じてつながる世界も含め、実空間として学校施設が子供たちの成長に大きな影響を与えると想定される。理想的には、学校は子供たちにとって、「あしたもまた行きたいな」と感じられ、人間関係も含め、様々な観点から子供たちがよりよくなる場所であることが重要。
地元の小学生から話を聞くと、環境について様々な教育を受けていることもあり、環境に対する意識は非常に高い。子供たちにも、施設整備を通じて取組の内容が分かる形で進めることが重要。
 従来から小中学校の整備費については、地方自治体が、新・増築、解体、老朽化、防災機能の強化等の事業を実施できるよう、当初予算において必要額を確保し、速やかに事業採択するなどしてきた。くわえて、対象事業の拡大、補助率の引き上げ、補助単価の実態に即した改善等の財政措置拡充のほか、財務当局に地方自治体の状況を正確に伝達することが必要。
整備が不十分な学校が全国には多くあるが、学習環境の早急の改善が図られるよう財政措置が必要。老朽化による事故を未然に防ぎ、児童生徒の安全・安心を確保する大規模改造事業のための、交付金制度の延長、また代替メニュー新設の検討も必要。
 脱炭素化・ZEB化について。新築が対象になっているということだが、改修・改築等の中で、あるいは長寿命化の事業の中でも脱炭素化が図られるのではないか。木質化や通気性、断熱の向上などの整備と併せて、脱炭素化の方針を打ち出すことが必要。また、基礎自治体に対して支援が必要で、これには予算面だけでなく技術的・人的な支援も含まれる。
 
● 政府の計画の中で、地球温暖化対策計画として、既存建築物の改修・建替えの支援についても進めていく。指摘の通り、公立学校施設おいては、全体の約8割が老朽化している状況であり、ZEB化をはじめとした学校施設の省エネルギー対策の方向性について検討していく。
 
〇 イギリスの学校では、そのCO2削減を測定する機器を学校の改築の際に設置し、そこから得たデータを授業で活用し、授業を行う取組が見られた。教育活動と学校施設の関係は非常に重要な視点。
学校施設の質改善・向上に関する方策について。個々の児童生徒の多様な学びや指導を実現する学習環境の整備やインクルーシブ教育を支える学習環境整備は重要。働き方改革やチーム学校、校務の情報化を支える条件整備といった学校施設の在り方の検討も重要。
 イギリスの学校では、ヘルス・アンド・セーフティーが重視され、学校を取り巻く教育改革でも、サステナビリティやSDGsなどの動向を踏まえ、取組の効果の検証と改善が行われている。本会議においても、学校での取組を改善するために成果を検証のうえで検討する視点が重要。
 また、学校の先生方や児童生徒、保護者、地域住民にも議論の内容や提言内容を分かりやすい言葉で伝え、当事者としての自覚を持った改革の担い手となることも重要。また、国・地方自治体、校長、教職員など関係者の役割を明確にした上で着実な取組の実行を進めていくための最適な仕組みづくりも重要。
 
〇 脱炭素化の推進に当たっては、施設・設備の整備段階が非常に重要である一方、整備後の運用にも留意をしていく必要がある。実際に造られた後の運用の仕方によって、省エネの効果に大きな差が生じる場合もあるので整備後のフォローも重要。
今回の検討の主な趣旨ではないかもしれないが、安全・安心が大きな視点としてあり、質的な改善も含めて留意が必要。実際に起こった事故と、その利用者の意識の間に乖離がある可能性もあるので、それを踏まえて検討が必要。安全・安心に関しては、留意点が現場に届いていないということもある。こうした施設整備のベースにある観点は、継続的な情報発信が必要であり、文部科学省でプラットフォームを作成する際にも留意が必要。
 現在、学校施設に求められるニーズは非常に多いが、これを1つの学校の姿としてまとめるのは難しい。関係者が当事者意識を持って関与するとともに、計画、整備、運営のプロセスがこれまで以上に重要になる。
 
〇 昨年度に議論された「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」最終報告をみると、「Schools for the Future」とあり、「未来思考」の視点として挙げられている柔軟性や可変性、しなやかさがこれからの社会の豊かさを作っていく上で必要なものだと解釈した。
この4月から18歳に成年年齢が引き下げられたが、初等中等教育の最終目標として、1人の人間がどのような大人として振舞うかも念頭に検討を進める必要がある。建築には様々な教育的な効果を期待することができるが、学校施設を検討する上では学校教育の場にどのような機能を持たせるかが、人を育てる上で非常に重要。
 
・事務局より、今後のスケジュールについて説明
 
―― 了 ――
 

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大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

指導第一係

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)