学校施設等の防災・減災対策に関する調査研究協力者会議(第1回)議事要旨

1.日時

令和3年12月9日(木曜日)10時00分~11時30分

2.場所

新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 学校施設等の防災・減災対策の推進に関する調査研究について
  2. 学校施設の水害対策検討部会の設置について
  3. その他

4.出席者

委員

木内望,清田隆,楠浩一,佐藤健,清家剛,中埜良昭(敬称略)

特別協力者

齋藤福栄(敬称略)

文部科学省

大臣官房文教施設企画・防災部

下間文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官,野口参事官,小林参事官付災害対策企画官,早田参事官付専門官、田中参事官付参事官補佐

5.議事要旨

(〇:委員発言)

(1)学校施設等の防災・減災対策の推進に関する調査研究について

・下間文教施設企画・防災部長より挨拶。
・事務局より、資料1に基づき本会議の設置要綱、資料2に基づき本会議の運営、資料3に基づき主な検討事項について説明し、原案のとおり決定した。
・委員の互選により、中埜委員が主査に選任された。
・中埜主査から、清家委員が主査代理に指名され、了承が得られた。
・事務局より、資料4に基づきこれまでの学校施設の防災対策の取組について説明を行った。
・各委員及び特別協力者より、自己紹介を行った。
 
【木内委員】
 私は、都市計画を専門としており、5、6年前からまちづくりと水害に関して、研究をしております。その中でも、浸水のリスクと、建築での対策についての費用対効果等から、リスクに応じて、どのような対策をするのが効果的かということを検討しています。また、浸水想定区域と浸水リスクの関係についても、研究しているところです。
 私自身、学校については、必ずしもよく存じないところもありますが、学校はコミュニティの中心であり、いざというときは町中の避難所として使われるということで、教育だけでなく、重要な機能を担っています。敷地を含めると広い面積を持っており、浸透や貯留、グリーンインフラ等、地域の中で水害を防ぐ役割も大きいと認識しています、
本来の機能である、そこに通う児童・生徒の生命の維持についていえば、甚大な水害が予想されるところについては、場所によっては1、2週間と長期に避難せざるを得ないこともあると認識しています。
 一方で、最近、被災想定がインフレ化していると感じています。生命の安全ということでいえば仕方はないですが、財産の保全を考えると、5mや3mの大きな浸水想定にだけ目を向けてしまうと対応できません。例えば、外水よりも内水の方が浸水の頻度が高いということであれば、頻度の高いものから順に対策をしていく、あるいは重要な機能から守っていくといったような、段階的な取り組みが重要であると考えています。また、立地という観点からいえば、本当に危ないところであれば、そもそも、そこに立地していることがどうなのかという問題もあろうかと思います。
 
【清田委員】
 専門は地盤工学です。実験や現場をベースに、ハード的なアプローチから研究をしています。主に、地盤防災や減災に関する研究を行っています。研究のタネは現場から得られるということを信条としており、地震や豪雨による地盤災害調査を積極的に行っております。
 どちらかと言えば、主には地震の調査をしております。最近は、中小の地震が頻発しておりますが、あまり大きな地震は発生していないので、緊急的な調査の機会はあまりないのですが、北海道や熊本地震の継続的な現場調査は頻繁に出かけております。また、海外では地盤災害等、災害の規模も大きくなりがちですので、それらのメカニズムの解明に関するプロジェクトも行っておりますが、現在のコロナのため渡航できないので、ややフラストレーションを起こしている、そんな最近であります。
 私の研究の対象は、実験をベースに地盤改良や地盤の風化に起因する斜面の不安定化のメカニズムなど、幅広くやっております。地盤工学の中の分野内では、地震時の液状化の専門家として名前が通っております。液状化した地盤の特性を私の研究室にしかないような特殊な試験機で解明したり、また既往の現場調査技術を有効利用したりして、新しい液状化予測法を開発するという実績があります。
 今後の関心事としては、豪雨や地震の複合災害への取り組みが重要になってくると考えており、衛星情報やそれらの技術や航空ライダーの情報との融合で、将来の地盤災害を予測したいと考えています。途上国の利用を見越した簡易的な調査技術や調査技術など複雑なものからローテクなものまで、色々考えているところです。
 
【楠委員】
 研究所の名前は地震研究所ですが、私は地震学が専門ではなく、建築構造、特に鉄筋コンクリート構造が専門になります。現在、木内委員がいらっしゃる建築研究所にも7年くらいおりました関係上、耐震設計法や、そうしたものの高度化、現在の問題点の議論にも携わっています。
 中埜先生、清家先生、清田先生とも同じですが、地震が起きれば、国内外問わず、被害調査に赴いて、その原因の究明と、耐震設計法の改善に取り組んできました。東北の地震や、学生の時に神戸の地震から、大きな地震では被害調査に参加していました。最初に調査に行ったのは、北海道東方沖地震で、それ以降、被害調査を行っています。最近ではセンサーを用いて、応急危険度判定、被災度区分判定を自動化して早急に地震後の対策に生かすというシステムの開発をしております。
 文部科学省関係ですと、中埜先生が主査をされている学校施設の耐震化等に係る技術的事項に関する協力者会議にもご協力させていただいております。東北や熊本の地震の際に、文教施設の被害調査として、文科省さんのお手伝いをさせていただいています。
 風水害に関しては、元々は地震が専門で、対象外のところもありましたが、最近はSIPの国家防災で、中埜先生ともご一緒させていただいておりまして、風水害対策の大型プロジェクトにご協力させていただいております。今後は、日本の技術を国際的にも生かすために、SATREPSのプロジェクトを開始して、今後、ペルー等の中南米に日本の耐震技術を広げていくということにも興味を持っております。

【佐藤委員】
 現在、東北大学災害科学国際研究所で担当している分野は防災教育実践学分野です。工学部工学研究科も兼務しており、学生の教育や研究指導も担当しています。先ほど事務局から紹介がありました、災害に強い学校施設の在り方の部会に以前参画させていただきました。
 私は、比較的学校現場に関わらせていただくことが多い大学教員だと思っています。例えば、地元宮城県では今年度から新規事業として、学校防災アドバイザー派遣制度という制度を動かしており、私も学校防災アドバイザーの一員として、学校が悩んでいるハード・ソフト様々な悩みに対して、アドバイスをするという活動しております。その取り組みの中で、例えば洪水の時に指定緊急避難場所に校舎が指定できない学校について、立ち退き避難が必要になるため、避難確保計画の作成を一緒に学校と悩んだり、そのことをテーマにした子供たちの防災学習を教室で支援したり、防災主任の先生方の研修の企画・運営にも教育委員会と連携して、取り組んでいます。
 私も、建築の構造が元々研究的なバックグラウンドですので、雨や津波のことは勉強をしながら、関わってきております。少しでも今回の会議にお役に立てればと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【清家委員】
 私は、元々建築構法の外壁を専門としています。阪神・淡路大震災の被害調査を行った頃から、外壁や天井といった非構造部材の耐震の調査をし、その後の対策をまとめるということに、学会、国交省等で関わってきました。
 文科省では、東日本大震災の前年である平成22年に、非構造部材の耐震化ガイドブックが作成されましたが、その作成には関わっておりません。その後、東日本大震災で学校の体育館の天井が落ちた事例がかなりあったことから、被害調査を行い、その後の文部科学省の天井の対策をまとめる際に協力をさせていただきました。また、先ほどのガイドブックについても、改訂に関わらせていただきました。ほかに耐震診断の協力者会議にも参加しておりました。熊本地震の後に「避難所として体育館のバージョンアップを」という話題が出た際には、「避難所になることが目的ではなくて、教育施設として早く避難所ではなくなることが大事なのではないか」とはっきりと苦言を呈させていただきました。
 非構造部材の耐震であれば、お任せいただければというところではございますが、水害の調査は一度もしたことはございません。ただ、建築構法、外壁や屋根といった部分を研究していた手前、水が建物に入らないようにすることは専門であります。最近水害が増えているので、そうした会議にも呼ばれるようになっており、木内委員とも会議でご一緒しております。建築にとっての水対策のプロではあるかもしれませんが、水害のプロではありません。しかし、建築レベルの水害対策というのは、今まで誰も考えてこなかったところでもあるので、そこを一緒に考えていくということに関しては、やぶさかではないと考えております。
 
【齋藤文教施設研究センター長】
 当センターでは文部科学省と連携しまして、文部科学省の政策の形成に資するような調査研究、あるいは学校設置者、教育委員会等の具体的な整備の時に役に立つような調査研究として、学校施設・文教施設全般に関わるその時々の課題に対する研究をしております。当然、安全・安心の確保のため、防災対策についても研究を行っており、先ほど御紹介がありました避難所となる学校施設の防災機能調査も、初期は国立教育政策研究所が行っていたものが、文部科学省で継続されているものになります。
 個人的に今回の協力者会議の立ち上げに当たって大事だと思っていることが3点ほどございます。
1点目は東日本大震災以降、防災・減災対策と並んで、事前に復興を考えておこうという、復興事前準備、あるいは事前復興計画の策定ということが言われてきていますが、水害対策について考える際には、こういう発想が必要だと考えています。ある程度の被害を前提として、その後にいかに早く立ち直るかということを平時に考えておく。そのためにハードをどう整備するかという発想が必要だと思っております。
 2点目は他の文教施設施策との整合性です。具体的には、全国的に老朽化対策、長寿命化対策が、喫緊の課題として挙げられていますが、それと一体的に整合性を持って、水害対策等を考えていくことが大事だと考えています。これまで耐震化対策は命に関わるということで、緊急的に進められてきた部分があります。その中で、一緒に老朽化対策や高機能化対策もやっておけば良かったと思う部分もあります。今後、これらの防災対策を、高機能化等の教育の要請に応じた施設整備と一体的に考えていくことが長期的には効率的な整備につながるのではないかと思っています。
 3点目は海外に対する情報発信への期待です。先ほど、耐震化技術の他の国への展開というお話が先生方からありましたが、日本の耐震化対策というのは、学校施設についても、世界の中で注目されている取組であると考えております。一方で、世界的に見れば、耐震化対策というのは地震国だけの問題という面も否めません。そういう意味で、今回対象としようとしている水害対策は、気候変動問題もあり、より世界各国に関係する広い影響力を持つ課題だと思います。今回の取組が最終的には日本の学校施設だけではなく、世界の学校施設の水害対策に貢献できればと期待を持っております。
 
【中埜主査】
 楠先生と同じく、建築物の耐震構造、主に地震の揺れに対する安全対策に長年取り組んでまいりました。先ほど、冒頭のところでお話があったような、新潟地震や十勝沖地震というのは大学の時に習い、その後の神戸の阪神淡路の地震以降は直接関わってきました。神戸の地震以降は、学校建築の被害の調査や、復旧の技術支援に、深く関わってきました。特に、神戸の地震以降の学校施設の耐震改修については、色々お手伝いをさせていただきました。その後、2004年にスマトラで大きな地震・津波があり、その頃から少しずつ津波の調査研究をするようになりました。まさか日本ですぐに関係する事態になるとは、当時は思っていませんでしたが、そのころから津波の対応をしてきました。
冒頭にもございましたように、水害に関する復旧費が近年増えていることを考えた場合に、その特徴的な要因や因子は何なのか、単にハザードが激甚化しているだけなのか、建物側にも脆弱性が潜んでいるのかどうかも、丁寧に見ていく必要があると思います。
 また、コロナも含めて複合災害も色々考えていかなければならないと考えております。建物がつぶれなければ良いという時代ではなく、防災に対する意識や、建物に対して期待する機能のグレードも大変上がってきていますので、機能維持をどうやって担保していくか。あるいは周辺技術、IT関係等も含めて、周辺技術も大変発達しておりますので、そのような技術も使わない手はありません。一方で、ロバストなシステムにしておかないと、諸刃の剣になってしまいます。いざというときに使えなくて困ることがないよう、合わせて考えていく必要があります。
齋藤センター長が先ほど、3つ重要な点を挙げ、3つ目に海外への情報発信ということを挙げていただきましたが、私は大変素晴らしいことだと思っております。つい先日、9月に世界地震工学会議を、33年ぶりに日本で開催しました。日本で国際会議を開催するということは、日本の技術を色々なところにアピールするのに良いチャンスであると感じました。楠先生も世界地震工学会の事務局長をされているということで、世界に情報発信をするには、我々もノウハウを持っているつもりではございますので、ぜひ協力をさせていただきたいと思います。日本の文教施設の防災対策を、諸外国にも使っていただけるようなことがあれば、積極的にアピールしていければと思います。

(2)学校施設の水害対策検討部会の設置について

・事務局より、資料5に基づき本会議に学校施設の水害対策検討部会を設置し、部会は非公開の下、専門的に検討を進める旨を確認し、原案のとおり決定した。
・事務局より、資料6に基づき学校施設の水害対策の検討について説明を行った。
・部会長に木内委員を選任することについて、了承が得られた。
・学校施設の水害対策における論点について、各委員より発言があった。
 
〇 水害後の復旧の判断を、この機会に検討してはどうか。湿気が残り、カビが発生すれば、児童生徒の健康が害されるのではないか。今回は、あくまで水害の被害を受けないことをメインで検討するとのことだが、被害を受けた際にどう対処するか、学校を再開するに当たり、手順の確認や不足している部分について、議論を進める機会にしてほしい。
 
〇 「水害」という言葉の定義について、今回の水害対策の部会はあくまで浸水のみを検討するのであれば、表現を再考するか、豪雨による浸水という断りを入れた方が良いのではないか。水害は水による災害全般を指す言葉であり、土砂災害も含まれるので外部の方に勘違いされる可能性がある。
 
〇 検討の全体像について、子供たちの安全の確保と、学校教育活動の早期再開の実現の2点を掲げられているが、命を守るということはもちろん、もう一方の学校教育活動の早期再開というのは重要な観点だと思う。例えば、宮城県教育委員会では、学校再開ハンドブックを作成しており、学校管理者がどのタイミングで何をすれば、早く学校再開につながるかをまとめている。今回のこちらの会議体での成果物は、全国の学校現場にとって、学校の早期再開のために、大変意義のある成果物になると思う。

(3)その他

・事務局から、今後のスケジュールを説明し、会議を終了。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部参事官(施設防災担当)付

電話番号:03-5253-4111(内線2239)

(大臣官房文教施設企画・防災部参事官(施設防災担当)付)