国立大学法人等の施設整備の推進に関する調査研究協力者会議(第1回)議事録

1.日時

令和3年10月1日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議(Cisco Webexを用いて開催) (事務局:文部科学省旧庁舎4階文教施設企画・防災部会議室)

3.出席者

委員

岩村委員、上野委員、片岡委員、金子委員、倉田委員、後藤委員、篠原委員、下條委員、竹内委員、恒川委員、出口委員、土井委員、西尾主査、香川県政策部小瀧次長(浜田委員の代理)、山内委員

4.議事要旨

【事務局】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから国立大学法人等の施設整備の推進に関する調査研究協力者会議第1回を始めさせていただきます。本日は御多用のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
事務局を務めさせていただきます、文教施設企画・防災部計画課整備計画室の藤井と申します。よろしくお願いします。後ほど本会議の主査が選任されるまで議事進行いたします。
また、人事に関わる内容がございますので、冒頭の議題1については非公開とさせていただきます。
初めに、本日ウェブ会議ですので、ウェブ会議の注意点を御説明いたします。音声が聞き取りづらい場合がありますので、御発言の際はゆっくりはっきりと御発言ください。発言時以外はマイクをミュートにしてください。御質問などありましたら、その場で発言の御希望があることが分かるよう挙手機能を御使用ください。挙手機能をオンにされた方に主査から指名していただきますので、御発言はその後でお願いいたします。また、会議中は会議をロックするため入室できなくなります。途中で入退室の必要がある場合は、会議につないだままカメラ、マイクをオフにし、戻り次第カメラをオンにしてください。
資料は、事前にPDFでお送りしているものを画面共有しながら御説明いたします。
それでは、会議の開催に当たりまして、文教施設企画・防災部長の下間より御挨拶申し上げます。

【下間大臣官房文教施設企画・防災部長】 文教施設企画・防災部長の下間でございます。第1回の会議の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
委員の皆様方におかれましては、大変御多忙の中、本会議の委員をお引受けいただきましてありがとうございます。また、昨年度までの会議におきまして、第5次国立大学法人等施設整備5か年計画策定に御尽力を賜りました先生方には改めて感謝を申し上げます。
国立大学等施設は、全国的に配置された我が国最大の知のインフラであります。SDGs推進やデジタルトランスフォーメーション加速化、カーボンニュートラル実現などの社会課題に対応しつつ、将来を担う創造性豊かな人材の育成、独創的先端的な学術研究の推進、イノベーション創出や地方創生など、国立大学等が使命を果たし、社会の期待に応えていくための基盤であり、国立大学等施設の整備充実は我が国の未来を開き、我が国を成長発展へと導く未来への投資であるというふうに考えているところでございます。
今後の国立大学等施設の方向性につきましては、本年3月の「第6期科学技術・イノベーション基本計画」や「第5次国立大学法人等施設整備5か年計画」におきまして、教育研究の高度化等への対応はもとより、産業界や地域の多様なステークホルダーとの共創の拠点として役割を果たすため、キャンパス全体がイノベーション・コモンズへと転換することが示されております。
そこで、今後、各大学等におけるイノベーション・コモンズの実現に向けた組織的な取組を進展させるため、この会議におきまして、先進的な、先導的な取組事例を踏まえつつ、現状や課題などを整理するとともに、地方自治体や産業界など多様なステークホルダーとの共創を促進するための国の支援策などを含めたさらなる推進方策を御検討いただきたいというふうに考えているところでございます。ぜひ皆様に忌憚のない御意見を賜りたいと存じます。また、今後、御検討の成果を私どもが発信していく上でも、御助言、御協力を賜れましたら幸いに存じます。
文部科学省といたしましては、本会議における皆様の御議論を踏まえて、速やかに必要な措置を講じますとともに、地方自治体や産業界なども含め広く社会の皆様の理解を得ながら、必要な予算を確保していかなければならないというふうに考えております。その中では、防災・減災やカーボンニュートラル実現といった昨今特に重要な取組もございます。
先生方のお知恵やお力添えを賜りながら取り組んでまいりますので、引き続き御支援を賜りますよう、何とぞよろしくお願いいたします。
以上、開会の御挨拶でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【事務局】 それでは、本会議の委員を御紹介いたします。

     (事務局から委員のご紹介)

それでは、議題のほうに移りたいと思います。

議題1 主査の選任及び会議の運営について

事務局からの提案及び委員の同意により、主査には大阪大学総長の西尾委員が選出された。

議題2 これまでの国立大学法人等施設整備に関する取組について

【西尾主査】 それでは、これから会議を公開としまして、本日の議題2に移らせていただきたいと思います。
それでは、本日は、まず、これまでの国立大学法人などの施設整備に関する取組、課題などについて事務局から御説明いただき、その後、金子委員、上野委員、後藤委員の3名の委員の方々からプレゼンテーションをいただきまして、最後に、皆様の御意見等をいただきながら、幅広い議論ができればと思っております。
議題2として、これまでの国立大学法人等施設整備に関する取組について、事務局から説明をお願いいたします。

【事務局】 では、資料4につきまして説明いたします。
資料4につきましては、委員の皆様御存じの部分も多々あると思われますので、ポイントのみ簡潔に説明させていただきます。
1ページを御覧ください。こちらは施設整備の仕組みを表しています。国立大学法人等の施設整備においては、こちらに示していますとおり、文科省からの施設整備費補助金、大学改革支援・学位授与機構からの財源として2つあります。主に病院事業を行う際の貸付金である財政融資基金、比較的小規模な営繕事業を行う施設費交付金があります。また、大学等が寄附金や他省庁、自治体からの補助金などの多様な財源を活用して整備するものがあります。
2ページを御覧ください。こちらは大学キャンパスがどのような重要な役割を持っており、その地域の中で重要な場をどのように形成しているかということをまとめています。国立大学等は、自ら課題解決を見いだす人材や異分野融合、国際化を見据えた学際的な人材を育成する拠点、新たな産業や地域産業の発展に貢献する地域産業振興のハブといった機能、先導モデルとなるZEB化や省エネルギー化の実現とその成果の地域への波及や、地域の中での自然環境整備、緑地の確保などといった地域のカーボンニュートラル拠点、災害時の地域の避難所や非常用電源を備えた防災拠点となっています。このように、今回、主に4つまとめていますが、大学キャンパスは地域の中で重要な場を提供し、重要な役割を担っているところであります。
3ページに移ります。3ページからは第5次5か年計画に関する資料になりますが、3ページは第6期科学技術イノベーション基本計画に、イノベーション・コモンズの実現を目指し、計画的・重点的な施設整備を進めると示されたことを受けて、第5次5か年計画を策定しています。第5次5か年計画については、資料に経緯を示していますが、有識者会議の中で議論し、報告書を取りまとめています。その中で、今回の新型コロナ感染症拡大の大学キャンパスへ及ぼした影響を踏まえたキャンパスの在り方について取りまとめ、公表しています。
公表した資料については、参考資料2になります。少しこちらのほうを御紹介させていただきますと、1ページにコロナ禍を踏まえた教育研究の方向性を示しており、学生や教職員に対する各種アンケートを取りました。その結果等から、オンラインの有効性が示された一方、実験、実習の場や知的交流機会の場など、対面でなければ対応が困難であるとの意見もありました。オンラインの有効性とともに、大学キャンパスのリアルな教育、交流の場の重要性というものを再認識したところです。
この公表資料のまとめとして、ポストコロナ禍社会においては、オンラインと対面の効果的なハイブリッドを目指すことが重要と示しています。そのため、この後ろのページ、2ページから4ページに、そのためのキャンパス内での取組や環境改善、整備についてまとめたところです。
資料4の5ページに戻ります。そのようなコロナ禍でのキャンパスの在り方も踏まえて、最終報告をとりまとめ。その上で第5次5か年計画を策定したところです。こちらがその概要になります。既に委員の皆様は御存じのことと思いますが、コロナ禍では国立大学等は本来の役割である教育研究の機能強化、地域・社会・世界への貢献が求められており、そのためには様々な人々との連携、この中段の図では特に重要な地方公共団体、産業界との共創を表していますが、その連携により創造活動を展開する共創の拠点、イノベーション・コモンズへキャンパス全体を転換させていくことが重要であるという方向性を示しています。
その実現に向けた取組、また、施設整備の目標等は5ページ、6ページにまとめています。また、7ページ目にイノベーション・コモンズのイメージを図示したものがこちらになります。
では、8ページに移りたいと思います。これまでの施設整備の予算額推移を表しております。令和元年度以降、補正予算と国土強靱化関連予算による臨時特別措置を除けば、約350億前後という数字になっております。また、令和4年度概算要求については、今現在、996億円と、国土強靭化関係業者等を別途事項要求しているところです。詳しくは後ほど資料で御説明いたします。
9ページに移ります。国立大学施設の老朽化の現状を表しています。経年25年以上の建物のうち、改修を要する建物割合が半数を超えている状態です。安全面、機能面、経営面に大きな課題が出ているという現状になっております。
また、10ページ目につきましては、ライフラインの状況になります。建物同様、老朽化が進んでいます。特に経年30年を超えたあたりからライフラインの損傷等の事故発生率が大きくなっているという調査結果にもなっています。
それでは、11ページになります。それら老朽施設を改修する際には、こちらのイメージに示しているとおり、古いものを新しくするだけではなくて、教育研究に対する機能強化を図り改修行うことを推進しております。
12ページに移ります。国を挙げて推進しているカーボンニュートラルに関しましては、徹底した省エネルギー対策を行ったZEB化の先導モデルを他大学や地域に向けて横展開するとともに、大学施設の省エネルギーへの取組を底上げするよう、令和4年度概算要求においても支援することとしています。
13ページに移ります。高専施設に関してですが、機能の高度化に向け、国際寮の整備や老朽化が進行している学生寮や校舎等を集中的に改善整理することとしています。こちらに示していますように、令和4年度から令和6年度においても、施設に対して約420億円、設備に対して約100億円を措置することとしています。
14ページから17ページに関しましては、インフラ長寿命化基本計画の概要、個別施設計画の策定の際に留意するべきことをまとめています。ただ、時間の都合により説明は割愛しますが、ここに示していますとおり、第5次5か年計画にはこれらの考え方も取り入れ、大学等施設の長寿命化のライフサイクルへの転換を推進しています。
18ページ以降に関しましても、施設マネジメントを一層推進することの重要性、これまでの大学等施設に関わる制度改正、大学施設におけるスペースの活用状況、多様な財源と活用状況など各種データをまとめております。説明は割愛させていただきます。御参考にしていただければと思います。
最後に、途中で概算要求についてのお話をしましたけれども、24ページに令和4年度概算要求について御説明いたします。国立大学、高専、共同利用機関における施設整備費に関しては、前年度予算額363億円に対し、要求・要望額として996億円、それと別途事項要求をしているところです。
国立大学等は全国的に配置された最先端の知のインフラですので、地方公共団体、産業界との連携によりイノベーション・コモンズを実現するために既存施設を最大限活用すること、また、老朽改善を行う際には、機能強化とともに長寿命化・脱炭素化を図って、教育研究の高度化・多様化・国際化、さらには、地方創生や新産業創出に貢献する場を整備することとしております。
整備内容としましては、下段に示していますが、事項要求である安全安心な教育研究環境の整備、人材育成や最先端研究等に貢献するための機能強化等への対応、先導的モデルを地域に横展開するためのカーボンニュートラルに向けた取組という柱を元に概算要求を行っています。
少し駆け足になりましたが、説明は以上になります。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。これまでの取組につきまして御説明をいただいたところですけれども、今年度から始まりました第5次5か年計画における施設整備の方向性につきましては、その柱として、キャンパス全体をイノベーション・コモンズ、共創拠点にしていくという方向性の下で、国立大学法人の施設整備を図っていくということが今のご説明でもお分かりいただけたと思います。
それで、今後、この委員会でイノベーション・コモンズに関する議論を展開する上で、我々委員の間でもイノベーション・コモンズとは何かについてコンセンサスが取れていないと、なかなか議論がかみ合わないと思います。そのような観点から、これから資料5と6を用いて、イノベーション・コモンズの推進方策の検討ということで、事務局からまず説明をしていただいた後で、只今、御説明いただいたことも含めて質問をいただきたいと思います。事務局のほうで続けてお願いいたします。

【事務局】 資料5を御覧ください。この資料に関しましては、イノベーション・コモンズの考え方を事務局のほうでより具体的に項目ごとにどのような取組等が共創拠点と考えられるかを再整理したものです。教育研究活動を独創から共創へ変化させ、地域・社会・世界へ一層貢献していくことが必要である、また、各大学等においてはイノベーション・コモンズの実現に向けて絶え間ない取組が各方面から期待されているということを一番上のほうに掲げて書いております。
資料の中心部に図を示していますが、キャンパス全体をイノベーション・コモンズに発展させていくためには、大学のビジョン等に基づき、様々な取組を有機的に連携させ、共創活動を展開させていくといったことも重要であると思われます。各大学等は既に実施している、個々の産学連携や地域連携の取組もあると思います。そういった取組を踏まえて、キャンパスマスタープランや施設計画を見直して大学全体のビジョンにつなげていくということも考えられると思います。そのような考え方を真ん中に図示しております。
各大学等に関しましては、状況も特色も異なると思われますので、どれか1つが正しい方向ということはありませんが、項目ごとに基本的な考え方を整理したものになります。例えば共創拠点に関しましては、ビジョンを共有し、大学、地方自治体、産業界等のおのおのが責任をもって主体的に取り組み、深い対話や共創をもとに、新たな価値を生み出すことということが共創拠点で考えられるのではないか。また、共創のコンセプトの下に大学全体としてのキャンパス環境をどのように変えていくかを検討する必要がある、ということを整理しています。
全項目についての説明は割愛しますけれども、その他、ソフト・ハード一体とは何かということでまとめているのが、大学のビジョンとキャンパスマスタープランなどが連動し、共創活動に係る施設等が考えられているということ。そして有機的な連携について、教育研究や社会実装において、例えば、学年進行による垂直方向への教育面の連携も考えられますし、施設間で研究から社会実装の流れ、そういったものからなる面的な連携というものも考えられる。そういったことを整理しています。
それから、資料6につきまして、今後、この有識者会議で整理していこうと思っているものです。現時点では事務局でこのようなまとめ方を考えているということですが、本調査研究協力者会議において、様々な御意見をいただき、ここに記載の各項目について整理していきたいと考えています。
この(1)、(2)の前段はイノベーション・コモンズの意義や考え方などを整理することを目的とし、その上で(3)として、共創の取組を行う際に、大学、産業界、地域等の果たすべき役割やイノベーション・コモンズを実現するために何を変えるべきか、また、地方自治体産業界との信頼構築や共創活動の取組を継続的に行うための仕組みといったものや、キャンパス等の整備に当たって企画・計画段階での検討や、その体制、プロセスにどのように多様な関係者を巻き込むかといった点などを整理したいと考えております。
最後に、(4)で、それら活動等を支えるために国の支援策とか大学地域産業界への期待といった点を整理したいと考えております。
本日は、この項目のこの点について発言をということはあまり意識せずに、イノベーション・コモンズの実現に向けてという広いテーマに対して、各委員の先生の各お立場から自由に御意見等をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。
説明は以上です。

議題3 「イノベーション・コモンズ(共創拠点)」の推進方策の検討について

【西尾主査】 どうもありがとうございました。資料6を用いてイノベーション・コモンズの実現に向けた論点等については、事務局のほうからお示しいただきました。そこで、今日は、初回ですので、ここに書かれていることに特段にこだわることなく、いろいろと御意見をいただきたく考えております。そのために、実際に関連する取組を既になさっておられる大学、あるいは、高専等からのお話をまず伺って、それから、もう一度皆様から先程来の論点のことも含めて御意見をいただければと思います。
まず、資料7を用いて広島大学における「Town & Gown構想」ということで、金子委員からプレゼンテーションをお願いできますでしょうか。おおよそ15分ということでお願いいたします。

有識者による発表 金子委員(広島大学 理事・副学長)

【金子委員】 広島大学の金子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今お話いただきましたイノベーション・コモンズを我々は意識して取り組んでいたわけではないのですけれども、2年前からこのTown & Gown構想につながる取組をしておりまして、この取組がここで御紹介いただいているようなイノベーション・コモンズに近いというようなことで、今日御紹介させていただきましたが、最初に冒頭ありましたように、私はこれについての専門性というのは恐らくあまり高くないんですけれども、実践を通して、専門的な先生からこの取組についていろいろ課題等を共有させていただいて、一緒に検討させていただくということで、大変ありがたく思っております。
この取組は2019年度、今から2年ちょっと前の文部科学省の「DESIGN-i」という事業で自治体と一緒に地域の課題を再定義して、それに必要な課題解決のための科学技術イノベーションの社会実装を目指す、これはSDGsの解決にも資するものということで、SDGsを担当しております私のほうで、この事業を地元の東広島市と一緒に始めたということでございます。
この中で、市役所だけではなくて、地元の企業と海外のパートナー、後でちょっと出てきますけれども、アリゾナ州立大学、ペンシルバニア州立大学、インドの大学などとも連携しまして、国際化と地域の振興、大学の科学技術の進展というあたりを一緒に取り組むためのビジョンの設定というようなことを始めました。特に、東広島市と広島大学の関係は、総合研究大学の中で比較的メインキャンパスが立地する自治体が総体的に小さいということもありまして、学園都市モデルというのを海外の幾つかを参考にしながら、キャンパスを含めて大学周辺をどのように発展させたらいいかということを議論したということでございます。
市民と自治体、地元の企業等にいろいろ意見を聞いたんですが、特に大学や市が共に目指す国際化というところに注目しまして、海外の非常に優秀なクリエイティブな人たちをここへ呼び込むために大学と町がどう協力したらいいかというところに焦点を絞りまして、特に、この世界の頭脳循環に町と大学が一体となって入っていくための取組や、それに対する市民の反応等についてのパブリックコメントをいろいろ集めたというようなことを行いました。
その中で、アリゾナ州立大学やペンシルバニア州立大学の学園都市モデルを勉強しに行ったんですけれども、これは後で出てきますが、アリゾナ州立大学については、特に本学キャンパス内に新しい学部を共同で設置するというようなこともありまして、アリゾナ州立大学が行っております、町の発展と大学の発展の一体化した経営モデルというのも併せて調査に行きました。これは市の副市長や市の幹部と一緒に行きました関係で、その場で、後で出てきますTown & Gown構想、Town & Gown Officeというのを設置しようということがその場で議論されたということでございます。
そのときに出てきたものが、人口動態に大きく影響が出るような規模で大学と市が一緒に取り組むことというようなことで、科学技術イノベーションを次々と社会実装するためのプレーヤーとして、企業だけではなくて、世界各地から若い起業家を引きつけるための大学の経営モデルと自治体の取組というのを連携させようというようなことで合意して、これのための取組の拠点としてTown & Gown Officeというのを設置しようというのをこの1年間の事業の成果として打ち出しました。
そのときに、アリゾナ州立大学等でやっているような非常にインテンシブな自治体と大学のコミュニケーションですとか人事交流などのモデルを少し参考にしまして、Town & Gown Officeの準備室ということで1年半ぐらい準備期間をおきまして、ちょうど今月の27日にこの準備室を取りまして、Town & Gown Officeということで正式に発足いたします。この1年半を通して、海外のモデルを参考にしながら、我々としてどういうことができるかということを取り組むことにしまして、2人のクロスアポイントメントということで、市役所から2名を派遣して、大学の中のオフィスで常勤で一緒にまちづくりの計画をつくるということを始めました。
これは、今まで個別に分野別で、かつ、かなり属人的にいろいろな関係があったんですが、組織と組織の非常に高いレベルで計画レベルから情報を共有したり擦り合わせるということを日常的には行っていませんでしたので、アリゾナ州立大学などの例に見るように、そういうことを両者で合意しないとお互いに政策を実施できないというようなことを伺ってきまして、我々としても、そのように同じ方向を向いて一緒にまちづくりとキャンパスづくりをやるようなことを始めようということで、取組を始めたということでございます。
同時に、この時期にアリゾナ州立大学が学部をキャンパス内に設置するということで、キャンパスの教室とか施設をどういう形で整備するかというようなこともありましたし、それから、外国人の留学生を大規模に受け入れるための自治体との連携というのも、ここで一緒に同時に議論をしました。その中で、アリゾナ州立大学の経営モデルと、それから、こういう最初の取組ですけれども、学部を設置するというようなところで、さらに長期に、まちづくりも含めた4者連携について合意をしまして、アリゾナ州立大学が位置するテンピ市とアリゾナ州立大学と広島大学と東広島市と4者で共にまちづくりの情報共有をしながら一緒にやっていこうというようなことを合意して、取組を始めたというようなことも同時に起こりました。
大学としましては、自治体からの支援を受けまして、ここにありますような国際交流拠点というのを設置することが決まっておりまして、ちょうどこれが10月、今月の27日にオープンになるわけですけれども、ここにアリゾナ州立大学のオフィスとTown & Gown Officeを同時に設置して本格稼働しようというようなことで取組をしておりましたところ、住友商事がこのまちづくりの取組に全社を挙げて参加したいというようなことで、社員を常勤で派遣していただきまして、三者の包括協定というのを結びました。これはスマートシティやまちづくりのための包括協定ということになります。これは本年度1月でございます。
そのタイミングで準備の議論をしているときに、具体的な取組の目標をお互いに持ったほうがいいだろうというようなこともありまして、それから、その前の年の10月に政府が2050年までのカーボンニュートラル化というのを宣言しましたので、それを受けまして、我々共通の目標として、まず、東広島キャンパスをカーボンニュートラル化しようと。同時に、その取組はDXやデジタル化なども必ず必要になるだろうというようなことで、スマートキャンパス5.0というのを合わせて同時に取り組むような枠組みで宣言を行いました。
この宣言は、国全体として2050年を目標にしていましたけれども、大学のキャンパスで行うので、もっとずっと早く目標年を設定する必要があるだろうということで、かなりアグレッシブな目標ではありますけれども、2030年までにカーボンニュートラルを実現するというようなことで宣言を行ったということでございます。
この取組が、現在、共創コンソーシアムの方向へつながっておりまして、少しずつ参画企業が増えてきているということでございます。
企業のみなさんと大きな長期のビジョンを共有する際に、キャンパスでのイノベーション・コモンズに通じるんですけれども、いろいろな実験をやったものをすぐ隣接する学生街と、それから、そこのさらに外側に、グリーンフィールドでのスマートシティのプランニングを行っているところですけれども、そういう展開ができるような形にビジョンを持ちまして、ここに関心がある企業が、今、いろいろな形で連携をしようということで集まってきている。
1つ重要なことは、スマートシティについては、特に住友商事が既にベトナムの北ハノイでやっていますスマートシティ事業と連結させまして、国際展開を最初から意識した形でスマートシティを行って、その中でキャンパスで最初にどういうことをやるかということを、今、検討しているということでございます。
こういう取組の中で、幾つか非常に積極的に企業が参加を表明していただいているわけですけれども、その中でソフトバンク、これはもともと、キャンパスの中で自動運転の実験をトヨタと一緒にやっているMONETという会社で既にやっているんですけれども、この延長でこの取組に参加して一緒にやるということと、それから、地元のゼネコンのフジタが包括協定の申込みがありまして、こういう形で参画企業が増えているという状況でございます。
現在、カーボンニュートラルやDXの取組としていろいろな企業が少しずつ入ってきていまして、この包括協定を結んだ三者を中心に、いろいろな企業と会話を始めているというところでございます。
今、キャンパスは250ヘクタールぐらいありまして、学生と教職員とそこで働いている人2万人ぐらい、それから、すぐ隣の学生街が5,000人ぐらい、さらにその向こう側に、新しいスマートシティとして新規に5,000人ぐらいの人口を考える新しいスマートシティを構想しまして、この中でどういう実装を目指す新しい技術が必要になるかというようなことを検討している段階でございます。
ちょうどキャンパスを使った取組の第1号として、本日、このPPA事業、太陽光発電の電力調達の契約のための公募型のプロポーザルというのを発表になっていますので、ホームページで見ていただければと思いますけれども、これは大学のキャンパスを利用して10メガワット程度の太陽光発電を設置していただいて、まずは、電力調達をカーボンニュートラル化に向けて、ゼロエミッション、自然エネルギーの電力を調達しようという取組でございまして、これを今から公募を受けまして、事業者を決定して、4月からこのキャンパスに太陽光パネルを設置するというような取組を始めたところでございます。
もう一つは、制度づくりですけれども、準備室をTown & Gown Officeという形で正式に発足するに当たりまして、学内での意思決定や、取組等を連動させるようなステアリングコミッティの準備ですとか、それから、人や予算を扱うための組織をどこに置くかというような仕組みづくりを今ちょうど行っている途中でございまして、10月27日の発足に向けて、制度づくりを最終段階に来ているというようなことでございます。
最後に、一言だけ課題をということでございましたので、これは企業のみなさんといろいろ話をしていて、まちづくりのための取組で、かつ、新しいスマートシティやスーパーシティにはかなりR&D的要素が入るわけですけれども、これの投資に当たりましては、この投資を回収する仕組みが、めどがなかなか立ちにくいというようなことが最大の課題でございまして、投資していろいろなことを実験的にやっても、スマートシティを外へ展開する際に、いろいろな形で入札等の仕組みがそこへ出てきますので、必ずしも積極的に投資したことが回収につながらないということで、かつ、これにかなり大きな投資が必要であるというようなところの意思決定において、ここの見通しがなかなか立ちにくいというのは企業の皆さんが同様に課題として上げていることでございまして、この仕組みを、大学と自治体が一緒になって仕組みづくりを考えるような方向で議論が進んでいるというのが現状でございます。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
【西尾主査】 金子先生、どうもありがとうございました。国立大学における新たな施設の建築について、従来の方法とは非常に異なった方法をTown & Gown構想において進められていることを実感することができたのではないかと思います。どうもありがとうございました。委員の皆様にはご質問はあるかと思いますが、まとめて最後に伺うことにしたいと思います。
続きまして、千葉大学のほうから上野先生、プレゼンテーションをお願いできますでしょうか。

上野委員(千葉大学 名誉教授)

【上野委員】 ありがとうございます。
千葉大学は墨田サテライトキャンパスを4月1日に開設しました。その考え方は、地域の中のイノベーション・コモンズというものです。そもそもの大学の発祥は、イタリアのボローニャ大学と言われています。この大学は、最初は施設を持たずに、都市の中の住居や街路などを使って欧州の法学研究のイノベーションを起こすというような形で始まりました。その後オックスフォード大学が設立され、カレッジ(学寮)の伝統が生まれたり、アメリカに渡ってキャンパスという形になりました。
そういった中で、ボローニャ大学のように、街と一体になった形で、未来の生活をシミュレートするデザイン教育研究拠点ということで、この4月に、墨田サテライトキャンパスを開設しました。
これは築35年のすみだ中小企業センターを改修して、その改修費用は墨田区が負担し、それを賃借して千葉大学が使うというスキームになっています。場所はスカイツリーのそばで、周辺は木造密集地域が広がっている地域で、御覧のように川に挟まれたゼロメートル地域です。
ここにまちづくりに関わるデザインや都市環境、建築、画像工学、ランドスケープというような研究領域がここをサテライトとして、地域の課題解決のために頑張るというものです。さらに予防医学が入っていますが、ここは、生活をしていると自然に健康になるという街はどうあるべきかという研究している部署で、そこも一緒に活動を始めています。
建物自体は地下1階5階建てですが、墨田区が用意してくれたということもあり、地域開放エリアを1階、2階に設け、大学の専用部分は3階から5階になっています。ここからの写真は、改修前と改修後を示したものです。
もともと中小企業センターにあったものづくりのための工房も、新たに改修整備いたしました。ラーニング・コモンズのようなスペースがあったり、体育館をこのようなアトリエに改修したりしています。
これは墨田サテライトキャンパスの場所ですが、もともとこの場所は小学校と中学校があった場所です、児童数の減少等による統合のために他の場所に移りました。墨田区としてはここに大学を誘致したいということを2008年から進めていました。墨田区は東京23区の中で唯一大学がない区でした。それがようやく昨年の4月に情報経営イノベーション専門職大学、今年の4月に千葉大学がこの場所にオープンしたということで、区としては積年の祈願が達成できたということになります。
これは小学校中学校があるときの航空写真です。墨田区の中では割と緑の多い場所になっています。これは工事中の写真ですが、上のほうには情報経営イノベーション専門職大学(iU)が既に開設していて、千葉大学の工事をしている状況です。テニスコート等もありますが、最終的には、ここ全体を緑の多いキャンパスにしていく構想になっています。
これは2017年3月の写真ですが、その前年の2016年度からこの墨田サテライトをつくるに当たっていろいろ相談をしてきました。このときに包括連携協定を結んで、千葉大学がここに出ていくということになりました。その時点では、新しい学部をここにつくろうという計画がありましたが、都内に新設学部が認められないということがこの直後に出てきて、サテライトキャンパスという形で今は進めております。
ここにお示しした資料は、新学部をつくるときに、この建物を造ってどういう教育をしていくかというようなことを文科省に説明したときのものです。現在の形とは多少違っていますが、ものづくりをキーワードにしながら墨田区の課題を解決していく。墨田区はものづくりが盛んな地域ですので、そことデザインや建築の教育とをどうマッチングさせていくかということが大きな課題になりました。
さらに、千葉大学はデザイン系、建築系双方が海外の大学といろいろな連携を進めていますので、その連携拠点にもなるというような形で考えました。
キャンパス計画のキーワードとしては、墨田区や地方自治体が苦労している公共施設の再編や施設のリノベーションなどのモデルケースにしたいということです。また、大学が来る場所をキャンパスと一体化した地域の区民のための広場、ここでは広域避難場所も兼ねていますが、そういう整備をすることです。さらに、自治体と大学だけではなくて、民間企業や区民の方と一緒に地域活性化していく拠点にしようとしています。4番から7番は大学側からみた考えですが、特に4番は国立大学施設整備のモデルの一つにもなるのではないかと考えています。
こういった形で緑の多いキャンパスにしていこうとしていますが、建物を改修するときに、南側の公園と北側の広場を結ぶように、建物の中を貫通する外部通路を設けました。
これは日本建築学会の機関紙です。「都市における大学キャンパスの役割を再定義する」という記事になりました。墨田区の山本区長が、大学を誘致することによって教育と産業の活性化を図ると。千葉大学の徳久前学長が、ものづくりの場である墨田区は、大学として実学のトライ・アンド・エラーをするのに非常に有効な場所であるという話しをしています。
これまで、産学連携、大学と地域の連携など、一対一の連携というのは多かったと思いますが、ここでやりたいのは、市民を共に巻き込んで、公民学連携という形で実証実験を行い、それを社会実装し、最終的には市民科学というようなところまで進めていきたいということです。
墨田区は、東京都の中のゼロメートル地域だというようなこともありますし、ここに示したような様々な課題を抱えております。それを受けて、大学としては墨田区とどういう共同研究をしていくかということで、ここに書かれているような研究課題を考えました。ここでは細かく説明できませんが、後ほど資料をよく見ていただければと思います。
資料には入っていませんが、例えば、千葉大学がCOC+で高い評価を受けたり、OPERAという大型の研究補助を受けていたりすることを発展させながら、墨田区、千葉大学、iUが中心になって、下町全体のリノベーションデザインの実現を目指して、この下に書いてある様々な企業と一緒に研究課題を具体的にどうするかの検討を始めたところです。
例としては、スカイツリーと画像認識とローカル5Gを使いながら災害対応先進都市にするとか、あるいは、ポストコロナにおける地域のウェルビーイングを評価するために、予防医学センターの知見と画像認識の知見などを入れていくというような試みがスタートし始めています。
ものづくりデザイン開発ということで、墨田の町工場と連携しながら、新しいイノベーションを起こすというようなことも考え始めました。これはデザインという感性評価をどのようにしていくのかを考えているプロジェクトです。
あと、やはり将来を担う子供たちの教育です。子供たちにSDGsや、ものづくりを認識してもらうということです。
このページは、「アーバンデザインセンターすみだ」という組織を、公民学連携の拠点として大学の建物内につくったというものです。公民学連携というのは、東京大学の出口委員がさらに詳しいと思いますが、東大、千葉大が千葉県柏市で進めているまちづくりをお手本にしながら、それを墨田で展開するにはどうしようかということで設立したものです。先ほどの断面図の1階にこの拠点を置いています。
ここでは、「キャンパスのようにまちをつくり、まちのようにキャンパスをつかう」ということを大きなスローガンとして、墨田の都市空間をつくり、地域で学び地域も学ぶというような形にして、大学の知見や空間が街とつながることを目指しています。
これは国土交通省が出している補助制度ですが、エリアプラットフォームをつくったり未来ビジョンを策定することに対する補助金があります。UDCすみだはこれを獲得しています。また、東京都のエリアリノベーション推進事業の補助を受けて、活動の原資の一部にしています。
実際は、コロナの時期ですので、地域開放スペースは本来の目的になかなか使われていませんでしたが、墨田区がワクチン接種会場を探しているということがありましたので、それに協力しながら、接種会場の誘導デザインをデザイン学科が中心になって計画しました。さらに、このデザインだけではなく、接種の手助けを学生が行ったり、予防医学センターが中心になって周辺の人流解析などを進めました。
大学側から見ると、キャンパスを生きた実験室にしながら、「まちのようにキャンパスをつくり、キャンパスのようにまちをつかう」。地域側から見ると、「キャンパスのようにまちをつくり、まちのようにキャンパスをつかう」ということが、イノベーション・コモンズでは重要なキーワードになるのではないかと思っています。
コロナの後、キャンパスは不要ではないかというようなこと言う方もいらっしゃいますが、これは昨年日本建築学会で行ったアンケートですが、情報が集まる場所とか、友達に出会う場所、そこで自分自身の視野を広げるということを学生がキャンパスに求めていることが分かります。
これは最後のスライドですが、地域には、経済の再生とか、社会機能の再生とか、環境の保全再生とか、いろいろな課題がありますが、それを大学と連携しながら解決しつつ、上下に書いてある、連携の仕組み、担い手の育成、この部分も併せて大学と地域、企業が連携しながら進めていくことが大事ではないかと思います。
以上でございます。
【西尾主査】 上野先生、どうもありがとうございました。本当にすばらしい内容のプレゼンテーションで、感銘を受けながら伺いました。公民学の連携という言葉も非常に斬新な言葉でした。どうもありがとうございました。
それでは、もう一つ、国立高等専門学校機構の理事の後藤先生から、高等専門学校機構における共創の取組ということでお話をいただきます。よろしくお願いいたします。

有識者による発表 後藤委員(独立行政法人国立高等専門学校機構 理事)

【後藤委員】 ただいま御紹介にあずかりました、奈良高専の校長をしております後藤と申します。国立高専機構の学生支援の担当理事、それから、国立高専以外に公私立高専がございますが、国公私立高専の連合組織であります高専連合会の会長を併任しております。よろしくお願いいたします。
左図を見ていただきますと、国立高専機構は全国に51の高等専門学校を設置しております。大学と同じ高等教育機関でございますが、異なるのは中学校卒業の15歳からの5年間の技術者養成教育機関だということと、あとは、右の写真にありますように実験実習などの体験的な学びを特色としています。高専では地域産業への貢献を教育と並んで二本の柱としてやってきました。
来年度は設立60周年を迎え、人間で言えばちょうど還暦に当たります。各高専は社会実装力をベースに、各地域における企業、自治体、住民をつなぐ共創拠点となり、さらに、51高専のスケールメリットを生かし、点と点をつなぎ、面展開を目指しております。
国立高専機構では施設整備5か年計画2021を策定しております。全国の高専がそれぞれの特性を発揮して高専の高度化、国際化を促進し、安全安心な教育研究環境の整備に取り組んでおります。主体的な学びを創出する場、地域・社会・世界への共創の場としまして、51高専、55キャンパス全体で共創拠点「KOSENコモンズ」の実現を目指します。
「KOSENコモンズ」の具体的な整備例としましては、ハイブリッド授業のための個別学習の場や、ICT環境の整備、学内外の交流促進のためのアクティブラーニングスペース、国際化のための留学生と日本人学生が一緒に住む混住型の学生寮の整備、企業・大学との連携のための研究施設の整備、地域交流・地域貢献のためのスペース整備などがございます。これらの整備を先導的な高専から順次進めているところでございます。
全国51高専ネットワークを活用し、企業、自治体、大学などと幅広く連携した事業といたしまして、高専発「Society5.0型未来技術人材育成事業」がございます。この事業では2つのプロジェクトを実施しております。左にございますが、1つは未来技術の社会実装教育研究の高度化を目標とした「GEAR5.0」でございます。右にありますもう一つは、次世代基盤技術教育のカリキュラム化「COMPASS5.0」です。
GEAR5.0では、1つの学問分野だけでは解決できないような社会課題を取り上げまして、技術者の育成や安全安心な社会の実現を目指す教育研究活動を展開します。昨年度、令和2年度からはマテリアルと介護・医工の2拠点をスタートさせ、本年度、令和3年度からは防災・減災に取り組む2拠点を追加しております。
COMPASS5.0ではSociety5.0時代をリードする人材に必要な知識や技能を高専教育に組み込み、人材育成機関としての高度化を図ります。例えば、AI、IoT、ロボットなどを組み合わせる実装力や、ビッグデータをAIで分析活用できるような能力を育成します。
これらの事業のうち、私どもの奈良高専では、本年度からGEAR5.0防災・減災(エネルギー)分野の中核拠点校としての活動を開始しております。右にございますが、全国高専と超スマート社会実装技術拠点「K-§MART」というのを設置しまして、国立高専の5つのブロックから苫小牧高専、長岡高専、米子高専、都城高専と協力して社会実装技術の開発を推進します。この事業は他のGEAR5.0との連携、文科省やNEDOの採択事業、国際共同研究などを生かして推進しております。
スマート社会で求められているエネルギー、防災・減災生活に焦点を当てまして、分散型エネルギーデバイス、物質変換技術、ICT・AI技術などの開発について連携校と協力して推進しています。各拠点で強みがある燃料電池、二次電池、太陽電池などの総エネルギー技術に加えまして、省エネルギー技術でありますエネルギーマネジメントシステム(EMS)の開発について連携を推進して、高専のスケールメリットを生かした研究拠点をつくり上げます。
奈良高専では、平成29年度に、先端研究基盤設備共用促進事業、新たな共用システム導入支援プログラムが採択されまして、全学的な分析機器の共有化を推進してきました。右上の写真ですが、令和元年度に研究機器総合利用ネットワーク導入実証プログラム、これはSHAREと呼んでおりますが、このSHAREが採択されまして、大阪大学が主管する阪奈機器共用ネットワークに参画しました。さらに、令和2年度に、先端研究設備整備補助事業に採択されまして、研究設備の遠隔化、自動化、リモート化、スマート化に取り組んでいます。
これらの一連の事業の成果としまして、昨年度、全学組織として、下のほうのオレンジ色で書いてありますが、共通機器管理センターというのを学内に設置しまして、学内の多様な機器を一元管理しております。左上、グリーンのところですが、現在は、このようないろいろなサービスとか、マテリアルDX拠点の構築だとか、材料評価体制などを構築しているところでございます。
高専の各ブロックにハブとなる拠点を設置していき、最終的には、5つのブロックのハブ拠点をつなぎまして、全国51高専の機器共用体制の整備を目指しております。
さらに、分析機器メーカーと連携しまして、デモラボ化を進めています。地域のデモラボを持たない機器メーカーと連携しまして、機器の空き時間を利用してデモ測定を実施することを対価として、保守サービスなどについて企業と連携して実施していくものでございます。例えば、メーカーが保有する最上級の機器、例えば、原子分解能の透過型原子顕微鏡などですが、そういう超高真空装置との遠隔接続についても進めております。
以上が研究や技術開発を目的としましたオープンラボ整備の話でしたが、教育面では、物をつくりたいという明確な願望を持った高専生の学びを刺激し、学生同士の共創を促す施設として、図書館のラーニング・コモンズにFABスペースを併設しました。FABというのは、デジタルデータを作成して入力すれば自動で安全に加工してくれるデジタル工作機器です。3Dプリンタやレーザーカッターなどの卓上機器を設置し、全学生が利用可能になっています。
すなわち、奈良高専では、いわいるICTにFABを加えたICFTによりDXものづくり教育の推進を目指しております。FABは授業、課外活動、研究室活動など様々な学内ニーズで使用されており、デジタルデータによるものづくりを実践するに至っております。FABスペースでの公開講座などの実施で、地域住民のものづくり体験の場としても活用を進めます。
奈良高専では、さらなる施設整備の展望としまして、デジタルツインCAE、Computer Aided Engineering、設備によりまして、共創環境の整備をマスタープランで計画しております。高専発イノベーション・コモンズとして、デジタルツインCAE環境、金属3Dファブリケーション装置、試作品評価システムが整備されたデジタルファクトリーでサイバー空間における設計と解析で新たな価値を創造し、フィジカル空間での試作につなげます。すなわち、我が国が求める次世代のものづくり人材の育成を地域、産業界とともに図っていくという共創教育社会実装拠点を目指すマスタープランでございます。
このような活動を、3Dものづくり普及促進会、大阪にありますが、あるいは、奈良県の産業振興総合センターとも連携して進めていく予定でございます。そして、デジタルツイン教育に加えて、アントレプレナーシップ教育を強化するということが今後の展望でございます。
奈良高専の事例のように、各高専が特色を生かした様々な取組を持続的に行うことで「KOSENコモンズ」が面展開され、高専が地域・社会・世界に一層貢献していくものと考えております。
以上、御清聴ありがとうございました。

【西尾主査】 後藤先生、どうもありがとうございました。高専機構で行われております、共創、コ・クリエーションの取組である「KOSENコモンズ」によって、さまざまな設備、施設等を市民、あるいは社会、他の高専、さらには大学ともシェアして、多様な観点から共創活動を活性化されていることに関して、非常に貴重なお話しをいただきました。どうもありがとうございました。

有識者による質疑応答及び意見交換

【西尾主査】 これから、皆さん方からいろいろ御質問とか御意見等をいただきたいのですが、30分という時間しかございません。イノベーション・コモンズということに関して、建物に関しては、広島大学、千葉大学のから好事例についてのお話しいただきました。それらのお話しから、イノベーション・コモンズに関して、ある程度の具体的なイメージ、そして、審議する上でのコンセンサスが得られそうなのかどうなのかということも含めまして、今までの御説明あるいは御発表に関しまして、御質問がありましたら挙手機能を使って教えていただければと思います。なお、お時間の関係で、可能な限り質問等を簡潔にしていただけますとありがたく思います。いかがでしょうか。篠原先生。

【篠原委員】 まず、広島大学の事例はとても大規模で、先進的で、海外との連携もあって、そのイノベーション・コモンズの中でもかなり大規模で先進的なものだというふうに思うのですが、直接建物の関係ではないんですが、そこで、まさに金子先生がおっしゃっておられましたように、コモンズという言葉が割と、大学を開くということではあるんだけど、限られたステークホルダーとの関係とも言えなくもないものなので、企業や何かと連携したときに、クローズドイノベーション、オープンイノベーションなどという新しい形と従来モデルの産学協働研究は、並走が難しいんじゃないかと感じました。どのくらい情報を公開するかなど。また、あるいは、企業が投資したときの回収のプロセスみたいなものもなかなか難しいというお話もありましたが、私も産学連携のプロジェクトをやっていてそれは感じます。海外の事例などで、企業の投資に見合ったリターンを求める、あるいは求めない、あるいはもっと長期的な視点にたつなど、海外ともやっていらっしゃるということでしたので、海外の事例などで、企業との連携の在り方で何か示唆的なものはございますでしょうか。

【西尾主査】 金子先生、今の御質問どうでしょうか。

【金子委員】 ありがとうございます。我々自身もそういうモデルをいろいろ勉強中でありまして、それほど明確にお答えできませんけれども、アリゾナ州立大学はイノベーションをやる非常に大規模な拠点、スカイソングという施設があって、それと大学のスマートシティプロジェクトは両方、別々にあるんですけれども連携しているというモデルがあります。
もう一つ、我々ちょうど勉強中なのは、ミラノの万博の跡地のモデルが、federated innovation modelというのがあるようなんですけれども、これが既に日本でも大注目されている方がいらっしゃるので、我々も勉強中なのではっきりお答えできないんですけれども、そういうモデルが幾つかありそうだなというぐらいのところまでは来ているということでございます。

【西尾主査】 篠原先生、よろしいですか。

【篠原委員】 はい。

【西尾主査】 そうしましたら、山内先生、どうぞ。

【山内委員】 どうもありがとうございます。大変興味深いお話を伺ったと思います。広島大学とそれから千葉大学ですが、非常に特徴的なのは、非常に狭い範囲の自治体さん、東広島市と墨田区ですか、非常に多面的に深く連携しているというベースをつくりまして、そのベースに乗っかって様々な活動を広げたりするというところが、これからイノベーション・コモンズの議論をするのに大変参考になるかなと思いました。
イノベーション・コモンズと言いますと、とかく広い対象を考えがちだと思うんですが、つまり、全国的な展開でありますとか、国際的な展開ばかりに目が行ってしまいがちだと思うのですが、こういった考え方があるんだなと、多様なイノベーション・コモンズがあってもいいんだなということを強く感じました。
1点、広島大学さんにお伺いしたいんですけれども、何ページ目かな、「インタカルチュアラル・シティ」というページがございまして、ここに様々な企業が入ってきている、連携を取っているという説明がございますが、企業が具体的にどういった形で入ってきているのか、キャンパスの中に何かオフィスのようなものをつくっているのか、その点はどうでしょうか。

【金子委員】 ありがとうございます。
多様な形で既に社員を送ってこられている企業もありますし、このコロナ禍なので、オンラインで参加されている企業もあります。いろいろな形で、企業のサイズも大きいものから小さいものまでいろいろありますので、企業との連携は非常に多様です。
一方で、今、御指摘がありましたように、自治体も非常に小さいんですけれども、小さい分、非常に包括的な関係があって、そこと関連している企業も自治体と一緒に入ってくるという形でございます。

【西尾主査】 山内先生、今のお答えでよろしいでしょうか。

【山内委員】 実際に共同研究とか、共同開発みたいなものもなさっているんでしょうか。

【金子委員】 それは、今、交渉中でございます。すいません。まだはっきりしたものは決まっていません。

【山内委員】 ありがとうございます。

【西尾主査】 分かりました。そうしましたら、東京大学の出口先生、どうぞ。

【出口委員】 今日は大変貴重なお話をたくさんお聞きして勉強になりました。ありがとうございます。
私のから質問と意見を含めて4点ほど手短に発言させていただきたいと思います。1つは、今回、テーマがイノベーション・コモンズということですが、この会議の冒頭にイノベーション・コモンズの趣旨の理解が深まっていない、なかなか深まらないという話がありましたことについてです。イノベーション・コモンズという考え方が出されたのが今年の当初ぐらいですよね。昨年度の末ぐらいだと思いますが、何をもって理解が深まっていないというように言われているのでしょうか。
要するに、令和4年度の施設概算要求は、大学側としては昨年の12月ぐらいからもう準備を始めており、このイノベーション・コモンズのコンセプトが出る前から準備をしていますので、そもそもそれには反映させるのが無理なことだったのではないのかと思います。そのため、各大学からの概算要求の内容をみて、理解が深まっていないというのは無理があると思いますので、何もっていまだに深まっていないというふうに言われているのかということを共有させていただけると有難く思います。もう少し時間をかければきちんと理解が深まっていくものなのかどうなのかを見極める必要がないでしょうか。
それから、2点目は資料の25ページ目のところです。資料5というものに関係する部分です。イノベーション・コモンズをピラミッドの絵が描かれ、ここにイノベーション・コモンズの考え方がまとめられています。このページに書かれた項目を1つ1つ見ていて、一番重要なのは、この一番左下に書いてあることではないかと思います。一番左下のところに「ソフト・ハード一体」と書いてあり、「共創活動の運営に伴う組織人員体制を整備」と書いてあります。
要するに、施設や空間、箱だけつくってもやはり駄目で、それら施設や空間を使って本当にキャンパスをひらいていく、あるいは、地域と連携していくための共創活動の組織の整備や人の配置を施設整備に伴うようにして、セットにしないとうまくいかない、ということを本日ご説明頂いた事例をお聞きしていて思いました。
即ち、「イノベーション・コモンズ」というのは、施設だけを指すのではなく、人・組織、仕組み、施設とが、三位一体になったものを「イノベーション・コモンズ」と呼ぶことになるのだと強く感じた次第です。それが2点目です。
そういう意味では、今日の広島大学のお話は、仕組みをつくろうとされていらっしゃる。千葉大学の事例は、墨田に新たな拠点をつくられるということですが、この拠点の運営を担う仕組みや組織をどうされているのかをもう少し補足していただければと思いました。
それから、3点目は、千葉大学が墨田に新しい拠点をつくられることについてですが、千葉大学は西千葉をはじめ、松戸など幾つかキャンパスを持たれていますが、また新たに墨田に拠点を持たれる、その戦略の基本的な考え方を教えていただければと思いました。
お話を伺っていて、典型的な社会課題が現れる地域に大学が出ていくという考え方で墨田に拠点を創られたのかと思いました。ただ、別の意味として、20歳代前半の若者を教育するのが大学のこれまでの中心的な機能でしたが、人生100年時代となる中、人生の中で10年、20年のサイクルで大学との関わりを繰り返し持ちながら、その都度、新しいスキルを身につける社会人リカレント教育の場として大学のイノベーション・コモンズを捉えると、墨田などの都心部に大学が出ていくサテライトを持つことの意味は大きく、非常に重要だと思いました。
最後に、4点目ですが、国立高専の後藤先生のお話を、高専が全国でネットワーク化しているというお話が私は非常に印象的だったのですが、このイノベーション・コモンズは、1つの大学が占有するようなコモンズをつくるということなのか、それとも、国立大学の複数がネットワークを形成し、1つのイノベーション・コモンズを共有するという発想でつくることも想定されているのか。その辺もお話を伺えればと思いました。
以上です。

【西尾主査】 只今の御質問の1番目について事務局に伺います。イノベーション・コモンズがまだなかなか浸透していないということですが、これは何をもってそのようにお考えなのか、お答えいただけますか。

【事務局】 ありがとうございます。事務局のほうから御質問に答えたいと思います。
令和4年度概算要求に上がってきた個々の事業と、各大学にヒアリングした内容に関しまして、これまでも各大学は個々の産学連携とか地域連携をやっていますと、言われます。その現時点で行っている取組と「イノベーション・コモンズ」とは何が違いますか、という質問が一番多くあります。5か年計画で申し上げている「イノベーション・コモンズ」は、キャンパス全体を共創拠点化していくということなので、その各大学の個々の取組をビジョンに基づくものにするとか、あと、ばらばらの取組を行っている施設であってもキャンパスマスタープランや個々の施設計画とかを見直して、キャンパス全体でビジョンに基づく取組を推進していく、ということが重要であると考えています。そのようなところまでまだ結びついていないということが今回の概算要求やヒアリングで分かったところです。

【西尾主査】 そうしますと、なかなか浸透していない要因の1つは、今後の5か年計画でキャンパス全体をイノベーション・コモンズ
化していくということが、文部科学省としてはその意向を考えているけれども、大学、あるいは関係機関になかなか浸透していないという意味でよろしいですか。

【事務局】 そうです。はい。

【西尾主査】 分かりました。
2つ目におっしゃっていただきました、箱だけをつくっても意味がないということは、先生のおっしゃることに全く同感です。その拠点で、どのような共創活動を展開していくのか、そういうことを明確にした上でのイノベーション・コモンズだと私も思います。そこで今後は、イノベーション・コモンズを議論するときには、単に箱物だけではなくて、その箱物を有効に利用した活動も含めて議論していくということでコンセンサスを取っておきたいと思います。
3つ目の質問は、例えば、都心の墨田区に進出ていくということも含めて、大学内でのコンセンサスを得るとか、共創的な活動の展開をうまくしていくための仕組みとして、どういう工夫をされているのかについて伺いたいという御質問だったと思いますが、それについて、広島大学、千葉大学のほうから簡単なコメントをいただけないでしょうか。

【金子委員】 先ほど御説明しましたように、大学の意思決定の仕組みの中と、市役所の仕組みの中に今入れているということと、行政の活動と我々の活動を完全にリンクしながら企業と一緒にやるということで、人は企業から、今、住商2名、ソフトバンク1名、フジタ1名と4名人を送っていただいて、一緒に同じオフィスで常勤でやっているというようなことでやらせてもらっています。
今のお答えでよろしいでしょうか。人はそういう形で外から集めて一緒にやるということで人材を確保しようとしているということです。

【西尾主査】 上野先生、いかがですか。

【上野委員】 千葉大学が墨田に出たというのは、もともとここで活動を行おうとしていたデザイン学科と建築学科は、研究論文というよりも、実学、実物のものづくりが非常に重要な要素になっています、そこと墨田区の目指すところが一致しているというのが1つございます。
千葉大の工学部は、もともと東京工芸学校が発祥で、田町にありましたが、今年で100周年になります。そういったことも併せて墨田に行くきっかけになりました。
墨田にキャンパスがあると、実学を学生たちに教える講師として、各界で活躍している方々をお招きするにしても、都心にあると非常にやりやすいこともあったと思います。千葉大が東京に攻めていくような形にはなっていますが、ということですね。
あと、その仕組みですが、先ほどお話ししたUDCすみだという組織がかなり重要な役割を担っています。墨田区は企画経営室と千葉大学の企画政策課が密接に連携を取っていましたが、今もUDCすみだでは、墨田区の企画の方々と、私をはじめとしたdri(デザイン・リサーチ・インスティテュート)というか、墨田サテライトキャンパスの教員、それと隣の情報経営イノベーション専門職大学の教員がかなり密接に情報交換しています。地域の課題を墨田区から大学にぶつけてくれることもあります。大学でこんなことを考えているということを、墨田区の企画経営室と産業振興課が、企業とマッチングしてくれるような仕組みも少しずつですけれども、実現し始めています。
以上です。よろしいでしょうか。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
最後の4つ目は、1つの機関で行うのか、後藤先生からおっしゃっていただいたように、複数の機関イノベーション・コモンズ的な活動を展開するのか、どちらなのかということについては、ケース・バイ・ケースではないかと思います。1つの機関と社会の様々なステークホルダーと組まれる場合もあるし、複数の機関で社会の多様なステークホルダーと共創活動を展開する場合もあり、イノベーション・コモンズとしては両方あり得ると考えおります。
それでは、手を挙げていただいている委員は、岩村先生、土井美和子先生、片岡先生ですので、まず、岩村先生、いかがでしょうか。

【岩村委員】 ありがとうございます。大変貴重なケースをお伺いして、刺激を受けているところでございます。
私からの質問は2つございまして、1つは、このイノベーション・コモンズというものの成功はどのようにしてどうなったら成功と言えるのかということをぜひ教えていただきたいということです。皆さんでこれからディスカッションするのでも構わないですけれども、それがとても重要ではないかと思います。そこが定まってくると、イノベーション・コモンズとは何かということが非常にはっきりしてくるのではないかと思います。
もう一つは、先ほどの出口先生のお話にも刺激を受けまして、この有識者会議でもしも本当にイノベーション・コモンズというものを浸透させ、これをきちんと推進していくのであれば、そちらを名前として掲げたほうがよろしいのではないかと思いました。
なぜなら、おっしゃるとおり、箱物を建てるということではないと思います。まさに課題をデザインし、それを空間と中に入ってくるソフトとともにデザインしていくのであるということを伝えるのであると、どうしても今の「施設」という言葉のイメージからすると、そこから少し遠いように思います。せっかくですので、発信力を高めるという意味でも、そういうことを検討なさってもいいのではないかと思いました。

【西尾主査】 貴重な御意見ありがとうございました。
2つ目の御質問に対する答えとして、事務局には僣越なんですけれども、私の考えを述べさせていただきます。今回の施設整備の促進に関する調査研究協力者会議は、この前の第4期で策定された第5期の5か年の施設整備計画を全般的にフォローアップしていく会議であるということです。確かにイノベーション・コモンズはその中核ではあるのですが、それ以外の部分もあると考えます。そういう意味で、この名前が使われているんじゃないかと思っています。なお、御質問いただいたことについては、事務局の方でも今後考えていただくことにしましょう。
もう1つの御質問である、イノベーション・コモンズという施策は何をもってサクセスしたと見るかですが、事務局いかがでしょうか。

【事務局】 事務局です。
「イノベーション・コモンズ」の成功、結局は終着点ということだと思いますが、我々が考えているのは、「イノベーション・コモンズ」というのは常に発展すべきことであって、終わり自体はないと思っています。結局は、1つ1つの個々の取組、先ほど申し上げた産学連携とか地域等の連携、各大学等が行っている個々の取組も、1つ1つが大学のビジョンに合っていれば、それは「イノベーション・コモンズ」だと思います。それをいかにほかの個々の取組と結びつけていきビジョンに基づく取組として成立させていくかということなので、毎年その1つ1つの取組をビジョンに基づく取組にしていけば毎年常に発展させていけるものだと思っています。ですので、なにをもって成功かというのは申し上げにくく、各大学の特色とか各大学の地域性などを考えつつ、「イノベーション・コモンズ」を常に発展させていければと思っております。

【西尾主査】 どうもありがとうございます。
岩村先生のおっしゃられたところは非常に大事だと思います。これも僭越ながら、私のコメントを述べさせていただきます。現在、イノベーション・コモンズを一つの主要なコンセプトとして概算要求がなされております。ですから、第5期の5か年計画の中で、イノベーション・コモンズという概念をこの会議の議論を通じながら我々が発展させ、それが社会にきっちり浸透して、財政当局をも動かすことができて、最終的にどれだけの予算額が獲得できたか、というのも成功の1つの評価指標になるかもしれないと思っております。これは全くの私見です。事務局の方々も頷いておられますので、今申し上げたことも指標の1つとして考えられるのではないかと思います。
ただし、今日いただいた重要な課題として、イノベーション・コモンズの成功を何によって評価するのか、ということについては、本会議できっちり考えていきたいと思っております。貴重な質問ありがとうございました。
それでは、土井美和子先生と片岡先生のところまでしか多分時間がないと思うんですが、まず、土井先生、どうぞ。

【土井委員】 ありがとうございます。今のお話とも関係すると思うのですが、今日御説明いただいたものは、そういう意味では、広島と千葉大の例は地域密着型ということで、奈良高専は、地域密着型と物理的に分散しているものをネットワークでつないでイノベーション・コモンズとして連携していくという、ある意味両極端のお話があったと思うのですけれども、大学にとってもその地域との連携も大事ですし、他大学との施設の共有も大事ですし、一方、研究大学としては国外とのイノベーション・コモンズが大事ですよね。なので、ある1つのパターンで押し込めようとすると、非常にキャンパス設計と言ってもキャンパス1つではないので、すごく難しいと思うんです。
だから、そういうところの中の多様性を踏まえつつ、今、御指摘のあったイノベーション・コモンズのゴールイメージをつくっていくというのは、結構なかなか大変だなと今日のお話を聞いて感じました。
もう一点。広島大学の例ではDXとカーボンニュートラルというお話があるんですけれども、カーボンニュートラルのお話でも、先ほど出口先生からもお話があったように、ハードだけ、太陽光発電を設置するだけでは駄目で、それをキャンパス内に行き渡らせるためのエネルギーマネジメントシステムが必要なわけですよね。だから、そういうところまできちんと投資できるような、そういうことがここの中でどこまでできるのか、ここでできなかったら、それを別の経産省とかいろいろなところも担保して実現していくという政策的な在り方はどうあるのか、そこが非常に重要ではないかなというふうに感じました。
今後ともよろしくお願いいたします。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
最初の件は、おっしゃるとおり、なかなか難しいところだったと思うんですけれども、国立大学の法人化以降、各国立大学が他大学との間で切磋琢磨していく関係にあると同時に、国立大学の総体として国際競争力をきっちり増していく上では、連携が大事になってきます。最終的に、2つの両極端なことを我々はどううまく捉えながら、日本の国立大学法人の国際的なあるいは世界的な競争力を高めるための施設あるいは設備ということに関しての根本となる考えとしてのイノベーション・コモンズというのが考えていけたらとは思っております。土井先生にいただきましたご意見についても今後議論を深めてまいりたいと思います。ありがとうございます。
最後に、片岡先生、どうぞ。

【片岡委員】 それでは、私が最後になりましたので、今日いろいろお話をお伺いして、私が全体理解したことを少しお話しして、それで合っているかどうかまた御意見をいただければと思います。
まず、イノベーション・コモンズというのは、資料5の最初の囲みで、御説明にありましたように、取組の方向を示しているものであるということですので、このイノベーション・コモンズそのものがハード的な実体とかそういう具体的なものを示すというわけではない。ハード面それからソフト面の整備拡充に当たっての包括的な考え方であると理解いたしました。
従前のコモンズ、例えば、ラーニング・コモンズとかリサーチコモンズもそれぞれ整備は進めてきているところかと思います。ただ、それに関しては学内に閉じた感があったのではないかというところも反省点としてあるのではないかと思います。そういう意味では、社会とのイノベーションの共創の場としてここで捉え直すということと理解いたしました。
また、イノベーションの源泉というのは、研究室とか研究施設とか特定の施設だけではなくて、多様なプレーヤーと出会うことによって様々なイノベーションが萌芽してくるということかと思いますので、基本的に、この考え方をきちんと共有するということが大事と考えます。
それから、各大学、その実施部署に全体のビジョンがないと単なる寄せ集めになってしまいますので、そこが重要なポイントになると考えます。これにはマスタープランもそうですけれども、ここでもう一回イノベーション・コモンズという考え方に基づいたビジョンを練り直す必要があるんじゃないかと思いました。
あとは、大学と企業、大学から企業、自治体にアクションを起こす、あるいは、企業、自治体から大学にアクションを起こすという、バイラテラルな関係ではなくて、これはマルチラテラルな関係をつくっていこうという話だろうと思いました。
それから、もう一つは、私のところは地方の大学ですので、特に地域をキャンパスとして捉えるということで、先ほどの東広島市あるいは墨田区はそのような事例でもありましたが、香川県辺りになりますと県域全体を考える必要がありますので、実証の場として考えられるところ、それから、ある意味サービスとしても考えていかないといけませんので、少し幅広く対応していく必要があるのではないかと感じました。
成功の指標はやはり究極的にはステークホルダーからの評価になるのかなと思いました。それから、コモンズ間のネットワーク展開というのも将来的にはあるのではと感じた次第です。
感想のようになりましたけれども、私の理解でよろしいのか御意見いただければと思います。
以上でございます。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。片岡先生におっしゃっていただきましたように、今日の御発表からも、国立大学の施設整備の有り様が新たなフェーズに入ってきたのだということをグッドプラクティスの中で感じました。それで、先生がおっしゃっていただきましたことを今後我々は十分に考えながら、今後の議論を展開してまいりたいと思います。貴重な御意見、コメントありがとうございました。
それでは、もう一度申し上げますけれども、資料6でイノベーション・コモンズの実現に向けた検討の論点というのが①、②で示されておりますので、これを今後の議論の中での主要なテーマとしながら議論展開をしてまいりたいと思っています。

議題4 その他

【西尾主査】 時間が来ておりますので、事務局の方で最後のまとめに行ってください。議題4につきまして、説明をお願いいたします。

【事務局】 分かりました。
資料10、今後のスケジュールになります。第2回会議に関しましては、委員の先生方には既にお知らせさせていただいておりますが、11月18日の木曜日、10時から12時を予定しております。第2回会議においては、本日いただきました意見の取りまとめ、第2回会議で予定しています各委員の御発表を踏まえ、さらに議論を深めたいと考えております。
それから、2回目の会議以降については、来年6月頃を目途に、あと3回程度の開催を予定しています。よろしくお願いします。
事務連絡もまとめてさせていただきます。本日の会議の議事録につきましては、追って委員の先生方にお送りしますので、御確認ください。御確認いただいた後に、文科省ホームページに公開させていただきます。
本日、先生方で意見を述べられていない方も多々いらっしゃいますので、特に資料5、6に関して意見等がありましたら、メール等でも受け付けておりますので、この後でも結構ですので、メール等でいただければと思います。よろしくお願いいたします。
以上になります。

【西尾主査】 どうも事務局ありがとうございました。
今日、皆さん方に一言ずつは御意見いただければと思ったんですけれども、とても時間がなかなか取れませんでした。ぜひ、今日御意見いただけていない方におかれましては、できましたらメール等で事務局の方にコメント、御意見等を寄せいただきますとありがたく思います。手間を取らせて申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いいたします。
それでは、本日、貴重な御発表また御意見等をいただきまして、大変勉強になりました。どうもありがとうございました。心よりお礼申し上げます。今後もどうかよろしくお願いいたします。


―― 了 ――

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室

企画調査係
電話番号:03-5253-4111(内線3247)

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(大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室)