国立大学法人等の施設整備の推進に関する調査研究協力者会議(第6回)議事録

1.日時

令和4年12月14日(水曜日)13時30分~15時30分

2.場所

オンライン会議(Zoomを用いて開催)

3.出席者

委員

池田委員、上野委員、片岡委員、倉田委員、後藤委員、下條委員、竹内委員、恒川委員、土井委員、西尾主査、五十嵐委員、佐々木愛知県副知事(大村委員代理)

4.議事要旨

【西尾主査】 皆様、こんにちは。
それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第6回国立大学法人等の施設整備の推進に関する調査研究協力者会議を始めます。
初めに、事務局からオンライン会議の注意事項の説明、欠席されている委員と配付資料の確認をお願いいたします。
本日の会議の模様は、YouTubeにてライブ配信いたします。また、会議資料と議事要旨は、後日、文部科学省のウェブサイトに掲載する予定でございます。
事務局、よろしくお願いいたします。

【宮城大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 ありがとうございます。
本日は、御多用のところ、委員の皆様におかれましては、御出席いただき誠にありがとうございます。事務局を務めます文部科学省の宮城と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
オンライン会議の注意事項の説明、委員の御出欠について御説明させていただきます。オンライン会議の注意点でございますけれども、発言時以外はマイクをミュートにしていただけますようお願いいたします。また、御発言いただく際は挙手機能を御使用ください。挙手機能をオンにされた方を主査から御指名いただきますので、御発言はその後でお願いいたします。
本日は、岩村委員、大村委員、金子委員、篠原委員、出口委員、山内委員におかれましては御欠席でございますが、ほかの委員の皆様には御出席いただいております。
配付資料の確認につきましては、議事次第を御確認いただき、資料につきましては、事前にお送りしているものを適宜、画面共有しながら、本日、御説明をさせていただきます。
それでは、主査、よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 それでは、今回から新たに大村委員、五十嵐委員に御参画いただくこととなりましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。

【宮城大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 紹介させていただきます。
まず、日本商工会議所理事・企画調査部長であられます五十嵐克也委員でございます。

【五十嵐委員】 よろしくお願いします。五十嵐です。

【西尾主査】 よろしくお願いいたします。

【宮城大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 続きまして、愛知県知事、大村秀章委員でございますが、大村委員におかれまして、本日はご欠席で、代理出席といたしまして、副知事であられます佐々木菜々子様に御出席いただいております。

【佐々木副知事(大村委員代理)】 知事が本日出席できませんでしたので、代理で出させていただいております。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 どうかよろしくお願いいたします。
本日は、まず、これまでの議論、および今後の検討事項についての事務局からの説明の後、上野委員よりプレゼンテーションをいただき、皆様の御知見や御意見を幅広く伺うことができればと考えております。
それでは、事務局、よろしくお願いいたします。

【廣田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 失礼いたします。事務局の整備計画室長をしております廣田と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。私のほうから、これまでの経過も含めて御説明をさせていただきたいと思います。
本日、テーマといたしましては、イノベーション・コモンズの実現に向けた新たな検討事項案についてということで御提示させていただいております。今、画面に表示しておりますのが、先般10月に取りまとめていただきましたイノベーション・コモンズ実現に向けた報告書の概要でございます。
これまで、この有識者会議におきまして、第5次5か年計画で提示した共創拠点化をどう進めていくのかということについて、多岐にわたる御議論をいただいております。これが全体の概要でございますけれども、全国国立大学はじめ他大学も含めて、46事例を収集し、また、それを整備する中で、イノベーション・コモンズの実現に向けた具体的なプロセス、あるいは留意すべき点、推進方策などをおまとめいただきました。
今、表示させていただいているのは、その中での取組のポイントというものでございます。ソフト・ハードが一体となって共創拠点化を進めていく必要があるところ、それぞれどのように関係性を築いていくのかということを示した図でございます。施設整備を進める前から、競争の前段階から、そして企画・計画、あるいは施設整備、運営活用というところに至るまで、一貫してそのソフト・ハードの体制をつくっていくということが重要であることをこの委員会の中でも確認し、御意見を賜ったところでございます。この体制を築きながら、具体的な整備として、まちづくりとキャンパスとの関係を意識しながら進めていくことなどなど、御意見を賜って、この10月に報告をまとめたところでございます。
まとめたこの報告につきましては、各大学において、大学に対して周知をするとともに、また、各ブロック会議なども通じまして丁寧にこの報告書を御紹介をし、各機関の取組に生かしていただくように、今、周知を図っているところでございます。
関連の情報といたしまして、参考資料の2でございます。政府各団体からの施設整備に関する主な提言というものでございますが、この後、御紹介いたしますけれども、教育未来創造会議の第一次提言におきましても、このソフト・ハードが一体となった教育環境の整備を促進するということなどが盛り込まれておりまして、また、全国知事会様、また、日本経団連様、日本商工会議所様、それぞれこの有識者会議の委員にも参画いただいている各団体の皆様におかれましても、このイノベーション・コモンズ、共創拠点の整備促進に向けて大きな後押しをいただいているという状況でございます。
次のページには、全国知事会と、そして国立大学協会、これが連携に向けた意見交換を実施しているという旨の資料でございますけれども、このようなことも11月に設けさせていただいたところでございます。
続きまして、参考資料の4に移りますけれども、予算の状況について御説明を申し上げます。国立大学・高専等の施設整備ということで、当初予算の要求を、今、進めておりますけれども、先に、11月8日に令和4年度の第2次補正予算が閣議決定されたところでございます。国立大学あるいは高専等施設の耐震対策や防災機能強化という安全・安心の側面、そして、それと一体的に行われる機能強化、イノベーション拠点の整備などにつきまして、582億円を計上させていただいているところでございます。
次のスライドでございますけれども、地域中核・特色ある研究大学の振興ということで、研究力の強化ということを考えていくときに、国際展開あるいは社会実装の加速、レベルアップなどを進めていくためにも、ソフトとハードが一体となって環境を構築していく必要があるということで、振興パッケージに基づく予算でございますけれども、この補正予算額として2,000億円を計上しているところでございます。
そして、次に、成長分野を牽引する大学・高専の機能強化に向けた基金による継続的支援ということで、これは教育未来創造会議における提言も踏まえまして、大学あるいは高専等において、デジタル・グリーン等の成長分野を牽引するような、そうした高度専門人材の育成を図っていくために必要な転換等への支援ということで、全体として3,000億の補正予算が計上されている状況でございます。
予算についての御紹介は以上でございますけれども、次に、参考資料の5に移りたいと思います。本日より、この有識者会議におきまして、共創拠点の実現に向けた新たな検討事項についてお願いをするということを考えております。それの背景になる提言などについて、御紹介をさせていただきたいと思います。
教育未来創造会議、岸田総理をはじめ官邸に設置されているこの会議におきましては、まず、第一次提言といたしまして、我が国の未来を牽引する大学等と社会の在り方について、提言がまとめられているところでございます。この提言の中で、今後の育成すべき人材像ということをお示しした上で、具体的な柱として、次のページ以降に提言がまとまっております。
未来を支える人材を育む大学等の機能強化ということで、多岐にわたる議論がされておりますけれども、特に環境整備、ソフト・ハード一体的な対応が必要な部分について御紹介申し上げますと、1つ目の進学者等のニーズも踏まえた成長分への対応といたしまして、デジタル・グリーン等の成長分野への対応という側面、そして、その下に丸2とありますけれども、高専等の機能強化、そして、7番目にも、地域のニーズに合う人材育成のための産学官の連携強化、そうしたところにつきましてより一層の促進を図っていくための提言がなされたところでございます。
また、その下、(2)というところで、学部・大学院を通じた分離横断教育の推進というところが提言がされております。STEAM教育の強化・分離横断による総合知の創出に向けて、ソフト・ハード一体的な議論を進めていただきたいと考えております。
(3)番、理工系や農学系の分野をはじめとした女性の活躍推進、また(4)にはグローバル人材の育成・活躍の推進、そして(5)にはデジタル技術を隠したハイブリッド型教育への転換、こうしたことが未来創造会議の提言として打ち出されております。この打ち出されている提言も踏まえまして、どのような環境で側面的に支援をしていくのか、整備を促進していくのかということについて、この会議体で御議論いただきたいと考えております。
次のスライドでございますけれども、先ほどの資料の次のページでございます。新たな時代に対応する学びと併せて、学び直し、リカレント教育を促進するための環境整備ということも示されております。大学キャンパスというものも有効に活用しながら、リカレント教育にどのように対応していくのかということも議論の中心になると考えております。
また、現在進行形で教育未来創造会議で御議論いただいているテーマといたしましては、次の参考資料の6でございますけれども、コロナ後のグローバル社会を見据えた人への投資ということについて、集中的な議論がなされているところでございます。卒業後の留学生等の活躍に向けた環境整備、あるいは教育の国際化、こういったことを通じて人材交流の活性化、イノベーション人材の育成強化を図っていくということで、現在、議論がされておるところです。
次のスライドですけれども、主な論点の案を見ますと、コロナ後の新たな留学生受入れ、あるいは派遣計画、丸3番には教育の国際化の促進ということで、国内の大学をどのように国際化を図っていくのか、ここには外国人教員、学生の住環境の整備ということも含めて、多様な論点が示されているところでございます。
こうした状況も踏まえながら、この会議体といたしましてどのような議論を進めていくのかということについて、資料1を用いまして御説明を申し上げたいと思っております。
資料1でございますけれども、改めて国立大学等の老朽化が深刻化し、その機能強化を図ることが急務であると。このような中で第5次5か年計画で打ち出したイノベーション・コモンズ、共創拠点の実現に向けて事例を整理し、この10月に提言をまとめたところでございます。さらに、このイノベーション・コモンズがより社会の要請に応える充実したものになるように、本日よりこの会議体におきまして御議論を賜りたいと考えているところでございます。
そこの下に検討事項というものを並べさせていただいております。以下の視点を踏まえた、これからの大学施設整備の推進についてということで、まず1つ目、何を目指し、どのように整備を進めていくのかという整備の考え方、2つ目に、整備に際しどのようなことに留意すべきかという取組のポイント、3つ目に、整備を推進するためにどのような方策を講じるべきかという推進方策、これらについても、老朽改善の加速化と機能強化の両面から検討いただきたいと考えております。
その下に視点の例がございますけれども、これ、先ほど御紹介をいたしました教育未来創造会議における提言の中に含まれているものの中で、環境整備の側面からさらなる議論が必要なところをピックアップしたものでございます。例えばDXやGX等の成長分野に対応した環境整備という側面、地域人材育成に資する産学官連携強化のための環境整備という側面、多様な主体に開かれた魅力あるキャンパスということで、女性活躍推進の視点も含めてどのようにキャンパス・施設を魅力化していくかということ、学び直しに対応した環境整備を進めていくかということについても御議論賜りたいと考えております。
また、グローバル化への対応ということで、留学生、外国人研究者等、優秀な人材をどのようにして日本に呼び込んでいくのかといったときに、魅力ある教育研究環境を整備していく必要性も感じております。また、宿舎等の生活環境ですとか、国際交流・発信拠点の整備、こういったことも含めてグローバル化にいかに対応していくのかということが議論賜ればというふうに考えております。
それで、今回の検討に当たっては、これまで10月までに御議論いただいていた内容と一部重複してくる部分がございます。これにつきましては、今回の検討というのは前回の報告書の続編としての位置づけというものでありまして、イノベーション・コモンズの実現に向けて、より重点テーマの深掘りを行っていくものだというふうに御理解いただければと考えております。この共創拠点が、今まさに差し迫っている社会の要請というものに対してしっかりと応えていくようなものになっていくようにという視点から、個別の論点を御提示させていただき、御議論賜りたいと考えておるものでございます。
なお、こうした議論を進めていくに当たっては、当然のことながら、これまで議論をし、重要視してきた自治体ですとか産業界等との連携協働というものはこれまで以上に不可欠なものになると考えておりますので、そういった視点からも委員の皆様から御意見を賜りたいと考えております。
今、お見せしているのは資料1の別紙でございますけれども、先ほど御紹介した各論点に対して、関連する事例なども交えた形で御紹介をさせていただいております。例えば、DXやGX等の成長分野に対応した環境整備ということで、これは、以前、後藤委員のほうから御発表いただいた資料の中にも掲載されておりました、高専におけるオープンラボ・ネットワークというものを少し御紹介させていただいております。他の高専から遠隔操作を実施することによって研究でDXを推進しているような事例ですとか、あるいは右側、岡山大学の共育共創コモンズでございますけれども、CLTを活用した地域産業活性化のための交流競争の場を整備していくことによって、生きた教材となっていくというようなことでハードの整備を進めているような事例を御紹介しております。
その下、STEAM教育、分野融合研究等を支える環境整備ということで、例えば分野を超えた教育研究を実現するために、各分野の機能を近接させたりとか、分野相互の往還を意識した配置構成にしたりするなど、共創を生む仕掛けを有する環境整備、こういったことも議論の中で出てくるかと思っております。東京大学の例、名古屋大学の例をそこに記載しておりますけれども、多様な人が集い、そして共創活動が展開されているような、そうした施設の整備ということについても、この分野融合という視点からも重要なものだと考えております。
そのほか、次のページには、デジタル技術を駆使したハイブリッド型教育への対応ということですとか、その次のページには、地域中核を担う大学等の教育研究環境整備ということで、様々な論点、あるいは事例というものが想定されると思います。
その下、多様な主体に開かれた魅力あるキャンパスということで、女性活躍推進の視点から、そこには女子学生の入学者増に対応した女子寮の整備という高専の例ですとか、あるいは、パウダールーム併設女子トイレというような形で、どのような形でキャンパス・施設の配慮を行い魅力化を果たしていくのかということも論点の一つだと考えております。
次のページには、学び直しに対応した環境整備ということで、様々な、信州大学ですとか滋賀大学におけるリカレント教育における現場の写真を入れさせていただいております。多様な方々が学び直しの場、機会に参画しやすいような環境ということで、デジタル環境の整備ですとかサテライトキャンパスにおける対応も含めて、どのような環境整備を進めていくのかということについての御議論を賜りたいと考えております。
最後に、グローバル化への対応ということで、留学生、外国人研究者等にとって魅力ある環境の整備を進めていくということで、そこにはスタンフォード大学の例をお示ししております。研究室間の隔てる壁を設けない大部屋方式ということで、オープンな環境の中で人々が集い、また交流し活動を展開するような、そんな環境をキャンパス内に設けているような例がございます。世界中から優秀な人材を引きつけていくということを考えたときに、どのような魅力あるキャンパス整備を進めていくのかということが論点の一つだと考えております。
宿舎の生活環境の整備ということで、これも諸外国の実例ということで、デンマークのコペンハーゲン大学ですとかシンガポール国立大学の例を掲載しておりますけれども、諸外国においては、学修スペースとの一体的な整備を進めていったり、生活を通じて多様な交流が促進されるような空間を整備していくということなどの工夫がなされております。これらについては、大学キャンパス内で全てを整備し切るということにとどまらず、まちとの関係性も考慮した上で留学生の生活環境をどのように考えていくのかということが論点の一つかと思っております。
そのほか、国際交流・発信の拠点の整備ということで、どのような整備をより一層進めていくのか、多岐にわたる議論がございますけれども、これらについて御意見を賜りたいと考えております。
もう一つだけ、資料を御紹介をさせていただきたいと思います。資料の2でございますけれども、あくまで参考でございますけれども、海外の大学におけるキャンパス整備の状況を少し拾わせていただきました。これまでの国立大学の整備に係る有識者会議におきまして集めてきた事例を整理をさせていただいたものでございます。1つ目が、教育研究施設に関する諸外国の状況として、研究者や学生同士の交流や協働を生むような様々な空間の仕掛けの事例をそこに掲載しております。日本の国立大学の多くの研究室というのが、非常に小割りにされていてタコつぼ化しているという状況の中で、どのように分野融合、あるいはイノベーションを生み出していく環境を整えていくのかということも重要な視点だと考えております。
その下、学生寮に関する諸外国の状況ということで、先ほど申し上げたように、様々な学修スペースとの一体的な整備ですとか、多様な財源の活用によって整備が進められているという状況を踏まえながら、日本の状況をどう捉えるのかということが考えられます。
以下、10ページ以降は、オーストラリア、カナダ、中国、オランダという形で幾つかの大学をピックアップいたしまして、その環境整備に関しての情報を整理をさせていただいたというものでございます。これらも参考にしていただきながら、主に資料の1にお示しをしました論点に対して、ぜひ忌憚のない御意見をいただきたいというふうに考えております。
事務局のほうからの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、上野先生よりプレゼンテーションをいただければと思います。皆様方からの御意見につきましては、上野先生のプレゼンテーションの後に、今、いただきました事務局からの説明内容への御意見や御質問と併せて伺いたいと思っております。
上野先生、よろしくお願いいたします。

【上野委員】 上野でございます。それでは、早速、資料を共有させていただきたいと思います。見えていますでしょうか。
先ほど廣田室長から御説明のありました、成長分野や多様な主体への対応とか、グローバル化などの個別具体の検討事項に対しましても、今後の検討に当たって重要な視点について、都市や建築を専門とする立場からお話しさせていただきたいと思います。キャンパス全体を様々なステークホルダーによる共創拠点とするために、キャンパスに都市的な場所が必要であるという考え方を御紹介したいと思います。
倉田委員、恒川委員もメンバーであります日本建築学会のキャンパス研究では、キャンパスを都市の縮小モデルとして捉えて、地域と大学の共創まちづくりに関する出版を行ってまいりました。また、計画者目線の空間づくり、スペースメーキングという観点から、学生や教職員のための場所をつくるというプレイスメーキングという考え方に展開していくことが重要である。これを、『まちのようにキャンパスをつくりキャンパスのようにまちをつかう』という書籍にまとめました。
左の写真はブラジリアの写真ですが、最近の都市計画の分野では、このような大きなスケールの美学に基づいた計画者目線による景観づくり、いわゆるスペースメーキングは、持続可能性から見ても多くの不都合があるということが指摘されています。一方で、右の写真のように、まちの中で様々な交流が生まれ、人々の生活の息遣いを感じられる場所をつくるには、小さなテーブルや椅子代わりとなる箱を持ち寄るだけでも実現できることがよく分かります。これがプレイスメーキングという考え方です。
現在の都市計画やまちづくりの分野では、計画者中心ではなくて、都市の生活者、市民が主役のプレイスメーキングによってまちを活性化する取組が世界中で行われ始めました。これはニューヨークのマンハッタンの街路空間のビフォーアフターの写真です。車中心の都市計画から市民目線のウォーカブルな街路への転換が実現しています。かつては車であふれ、歩行者は狭い歩道を歩くしかありませんでしたが、今、市民が憩える歩きやすいコモンスペースに変わっています。
これは、全米で一番住みたいまちとして常に上位になるポートランドのパール・ディストリクトという街路空間です。至るところが市民のコモンスペースとなっていることがよく分かると思います。これもプレイスメーキングの実例です。
10月に公表されましたイノベーション・コモンズ実現に向けた報告書では、ここに挙げた活動の可視化、相互交流の誘発、空間のフレキシビリティの重要性というのを記載してもらいました。これらの言葉は、実は先ほどお話ししたプレイスメーキングに不可欠なことでもあります。イノベーションを生み出す場所、イノベーション・コモンズをデザインするということは、そこで生活、活動する学生、教職員、市民のためのプレイスメーキングだということだと思っております。
ポートランド州立大学では、先ほど御紹介したパール・ディストリクトと同じ大きさの街区が集合して、そのまま大学になっているキャンパスです。それぞれの街区には必ずコモンスペースがあって、学生や教職員が交流できる場所をつくり上げています。キャンパス全体はエコディストリクトという都市のイノベーション計画の中心地にもなっていまして、世界中から注目を集めています。
イギリスのシェフィールド大学でも、同じように複数のラーニングコモンズをうまく配置して、交流の場を生み出すキャンパスマスタープランをつくっています。キャンパスの中心部にあるインフォメーション・コモンズという場所では、立体的な空間構成によって活動の可視化と交流を誘発するプレイスメーキングが行われています。
これは、シェフィールド大学の東側、キャンパス東側の工学部ゾーンにあるザ・ダイヤモンドと名づけられた共用実験室が集合したラーニングコモンズです。真ん中の吹き抜け空間を、工学部の様々な分野の共用実験室が取り囲む空間構成になっています。中心にあるコモンスペースからは、機械工学、電気工学、情報工学、航空工学などの様々な分野の実験の様子を、誰でも、学生誰でも眺めることができます。まさに活動の可視化と交流を誘発する場所、フレキシビリティのあるオープンラボが実現していると言えます。こういった場所での体験から、領域を横断したイノベーションを生み出す人材が生まれるということを感じました。
同じくイギリスのマンチェスター大学の事例です。ここでは、老朽化した研究棟を他の場所に移転させ、キャンパスの中心に、屋外空間とラーニングコモンズが一体となった全学共用のコモンスペースを生み出して、象徴的なキャンパスの骨格をつくっています。ラーニングコモンズは、研究棟の全てを解体するのではなくて、一部を残して、それを改修して実現させております。このラーニングコモンズでも、見る、見られるという関係が生まれる空間構成によって、活動の可視化と交流の誘発を実現しています。
グローバル化への対応という視点で少しお話ししたいと思いますが、最近、オックスフォードやケンブリッジのようなレジデンシャルカレッジの仕組みが見直されています。先ほど廣田室長の説明にもありましたけれども、シンガポール国立大学のU-Town、左上の赤い丸の部分です。ここでは、キャンパスの一部を一つのまちのように計画しています。住居としての高層棟の足元に学生生活に必要な施設が配置されていて、グローバル人材の育成に取り組んでいます。緑の多い中央広場の周りに、福利厚生施設、自習室、コンピュータールーム、体育館、講堂などがあって、ここだけでキャンパスライフを十分に楽しめる場所になっています。さらに、ここではスイス連邦工科大学やイエール大学との共同研究用の建物も建設されていまして、グローバルな共同研究と人材育成が行われています。
前の第4次施設整備5か年計画の際に設置された調査研究協力者会議では、ノーベル賞を受賞された山中先生が、イノベーションを推進する研究施設の在り方として、オープンラボ、交流スペース、フレキシビリティが不可欠であるということを力説されました。山中先生が話されましたイノベーションを推進する研究施設の3つのキーワードは、キャンパス計画に当てはめますと、活動の可視化、相互交流の誘発、空間のフレキシビリティということであって、今回のイノベーション・コモンズ実現の報告書でも重要視されております。
MITのメディアラボは、まさにそれが実現できている場所になっています。フィンランドのアアルト大学でも同様な取組が実現しております。コロナ直前の2019年に見学することができました。繰り返しになりますけれども、活動の可視化、相互交流の誘発、空間のフレキシビリティというのは、イノベーション・コモンズ実現のための最重要キーワードだと思っております。
ここからは私の私見になりますが、もう少しお付き合いいただきたいと思います。コロナ禍によって大学での生活は大きく変わりました。アフターコロナの教育研究をどのように行っていくかは、現在、全ての大学が直面している大きな課題になっています。これを解決するために、デジタル技術をどのように活用していったらよいか、電気通信大学の田野学長や教員の皆さん、施設課の皆さんとディスカッションを現在しているところですが、今日はその一部を御紹介したいと思います。DX時代のイノベーション・コモンズはどうあるべきか。デジタルの世界とキャンパスというフィジカルな場所をうまく使いこなしていくために何が大切かという議論をしております。
インターネット上の仮想空間では、場所や時間を選ばず様々な情報にアクセスすることが可能になっています。メタバース・キャンパスという言葉も使われ始めました。ラーニングコモンズやリサーチコモンズ、地域との接点となるゲートウェイコモンズ、これに似たスペースを仮想空間の中につくることも可能になっています。でも、フィジカルなキャンパス空間でデジタル空間と同じように瞬時に情報にアクセスするには、まだまだ多くの障害が存在しています。
一方で、リアルな場所では、仮想空間では行うことのできないことがたくさんあります。偶然の出会い、雑談やこそこそ話、アイコンタクト、これらはZoomでは実現できないということを、皆さん、実感しているのではないかと思います。イノベーションを生み出そうとする現実のキャンパスで、活動の可視化、交流の誘発、フレキシビリティの確保によって様々な情報にアクセスするための障害を極力減らすにはどうすればいいか。電通大の皆さんと議論してきました。DX時代のイノベーション・コモンズはどうあるべきかというモデルを考えているところです。
それが、地上レベルをフィジカルな制約から極力解放するというキャンパスモデルです。地上レベルを学生、教職員、地域住民の共用の場所として、フレキシビリティを確保しながら、誰もが自由に行き交いキャンパスを見渡すことができ、様々な出会いを誘発しようというものです。建物の上の階では、大学が目指す様々な教育研究の場が展開します。こうすることで、活動の可視化、交流の誘発、フレキシビリティの確保をさらに強化することができるのではないかと考えました。
既存のキャンパスで今すぐこれを実現することはとても難しいことです。大学には地上レベルに置くしかない実験室もあることは確かです。でも、地上レベルの制約を極力なくしていくことを意識してキャンパスマスタープランをつくっていけば、少しずつこのモデルに近づけていくことが可能ではないかと考えております。
この写真は、ケンブリッジ大学のシドウィックサイトというキャンパスになります。建物の地上レベルがほとんどピロティになっていて、キャンパス全体が見渡せますし、移動の経路も自由に選ぶことができます。地上レベルのフレキシビリティが高く、気持ちのよい外部空間やGX、グリーントランスフォメーションに役立つ場所を生み出すことも可能になります。さらに、今のデジタル技術があれば、この場所に海外協定校の様子をリアルタイムに出現させて、グローバルなつながりを常に意識させることも可能ではないでしょうか。
こういったイメージです。今、出現した写真は、この写真ですが、千葉大学の図書館、アカデミック・リンクの写真になります。建物の内と外が一体となるように造られています。ここにケンブリッジ大学のキャンパスが出現したり、国内や海外の学生たちと気軽にコンタクトができる場所、それを生み出すことができれば何かが変わるような気もしております。
もちろんこれは一つのアイデアにすぎません。これ以外にも、DXによってできることはたくさんあると思います。DX時代のイノベーション・コモンズはどうあるべきか。委員の皆さんの御意見を頂戴できればと思っております。
以上となります。ありがとうございました。

【西尾主査】 上野先生、どうもありがとうございました。アフターコロナにおけるキャンパスについての新たな可能性、魅力的な方向性を御示唆いただきました。これは後で皆様に御意見等を伺うときに、様々な御質問やコメント等があるのではないかと思いますが、そのときはよろしくお願いいたします。

【上野委員】 ありがとうございました。

【西尾主査】 それでは、先ほど事務局のほうから御説明いただきました内容と、今、上野先生からいただきました御説明につきまして、御意見や御質問などをいただければと思います。その前に、これからの議論においてどういうことを議論していくのかという点に関して、特段の御質問がもしあれば事務局に再度確認をすることができますが、その点はよろしいでしょうか。報告書は既に出しておりますので、その内容のさらなる深掘りをしていくということ、また、同時に、グローバル化を意識したキャンパスの在り様について検討していくことが、今後、我々の議論の中心になっていくのではないかと考えております。
それでは、事務局及び上野先生の御説明に対しまして、御意見や御質問がある方は、挙手をしていただければと思いますがいかがでしょうか。
五十嵐様、どうぞ。

【五十嵐委員】 ありがとうございます。本日、初めて参加させていただくことになりました。既に報告書を10月に取りまとめられた際に、皆様のほうで御意見が様々出たんだと思いますので、ある意味では重複した意見になってしまう部分もあろうかと思いますがお許しいただいて、ちょっと商工会議所、地域というような視点でお話をさせていただきたいと思います。
大学は、教育と研究の機能の発揮を通じまして地域課題の解決、地域の産業振興といった面で重要な役割を担っていただいておることは言うまでもありませんし、今後ともその役割に大いに期待しているところであります。このたび打ち出されておられるイノベーション・コモンズという概念は、商工会議所の考え方とも合致する部分が多いと思いまして、今後、国立大学等を地域のイノベーション・コモンズとして整備していくに当たって、主に機能面から何点か申し上げたいと思います。
まず1点目ですが、順不同で申し上げたいんですけども、起業・創業スタートアップといったもののエコシステムの核となるリアルかつ効果的な拠点になっていただけるのではないか、あるいはなっていただきたいということであります。一例で言えば、滋賀県の彦根では、滋賀大学と彦根商工会議所などが連携しまして、INSPILAKEというテレワークオフィスを設置しておられて、滋賀大学のデータサイエンス学部の学生さんなどがアソシエイトとして参画されて、県内からの企業誘致や地元企業とのマッチング、あるいは学生自らの起業支援などを実施されています。こうした地域課題の解決を図る動きがありますけども、こうした取組が横展開、全国で展開できればというふうに思います。
2点目ですが、事業を実施する際には、事業の構想から製品化、あるいは販売までを一貫してサポートする伴走型の支援の体制というのが必要でして、それを構築していただきたいというふうに思います。各地の商工会議所に聞いておりますと、産学官の連携などの取組において、技術があって製品化することまではできると。でも、その後の商品化ですとか販売に大きな課題があると。要するにプロダクトアウトではなくて、構想の段階から、金融機関ですとか、マーケティングの専門家だとか、そういう方々との協働をしていただいて、マーケットインの発想、思想で事業を推進していく、これを一緒にやっていただければというふうに思っております。
それから、3点目ですが、国立大学等が有しておられる研究資機材の利活用を拡大していただければということであります。例えば、大学ではありませんけれども、東京都の産業技術研究センターですとか、新潟の燕三条産業振興センターといったところでは事業者が研究機器を利用することが可能となっております。中小企業は、なかなか研究資機材を自分で持てない部分がありますので、そういうものを利用させてもらうというのは非常に良いことなのかなと考えます。
頂いた資料の中にも、例えば高専の間で機器の共用が進められている事例というのが出ていましたけども、こうした取組は、中小企業の支援として、あるいは学校側のリソースや予算の効率的な活用という意味において非常に重要ですので、大いに進めていただければというふうに思っております。
4点目ですけども、国内外の優秀な人材を呼び込むためには、学生や教員の生活環境の整備を推進すべき、ということであります。これは先ほど上野先生からもお話がありました。一例で言えば、沖縄のOISTでは、日本語、英語の2つの言語によって、保育サービスですとか学童保育サービスが提供されているというようなことも聞いております。多様な人材が活躍できる環境の整備というのは、非常に重要だというふうに改めて思います。これは、ただ、学内に限らず、学内の施設整備に限らず、地域として支えていくような形もありますので、その辺も連携が取れればというふうに考えます。
最後に、各大学における産学官の連携体制について一言だけ申し上げたいと思います。文科省さんのホームページに、全ての国立大学に産学連携の窓口というのが設置、公表されているということは承知しておりますけれども、先生方と事務室の方々との間では本当にきちんと連携が図られていることが必要だというふうに思います。以前、うまくサポートいただけなかった、産業界側からちょっと連絡したらうまくサポートいただけなかったという事例などを耳にしたこともあります。ぜひとも学内における円滑な連絡・連携体制の充実というのをお願いしたいなというふうに思います。
ちょっと雑駁ですが、以上でございます。ありがとうございました。

【西尾主査】 五十嵐様、ありがとうございました。イノベーション・コモンズについて、建物だけではなくソフト面のことも含めて言及いただき、また、グローバル化のことにつきましても、生活環境の整備といった面からコメントいただきました。いただいた御意見を生かしてまいりたいと思っております。
下條先生、どうぞ。

【下條委員】 大阪大学、下條です。ちょっと電波が心もとないんです。聞こえておりますでしょうか。

【西尾主査】 聞こえております。

【下條委員】 ありがとうございます。
私、先ほどの上野先生の御提案、大賛成で、特にメタバース、あるいはデジタルツインまで含めてイノベーション・コモンズというのを考えておられるというのは非常に感銘を受けました。我々の分野でも、今、例えば東大の工学部が有名ですけれども、教育、あるいは研究の分野でのメタバースへの取組というのはどんどん始まっておりまして、それがインクルージョンとか、あるいはダイバーシティにも非常に効果を及ぼすということは既に分かっております。先生のおっしゃるように、デジタルの世界と、それからリアルの世界をうまくつなげていくということが非常に重要だというふうに思っております。
実は、そのためには、一つ、やっぱり建物側のいろいろな情報を共有したり、あるいは建物自体がほかの建物、あるいはキャンパスとつながっていくということが必要でして、それは例えば、先生方御存じのBIMだとか、いわゆるビルディング・インフォメーション・モデルだとか、そういう建築の情報を共有していくということもありますし、それから、実は、今、IPAのほうでデジタルアーキテクチャ・デザインセンターというのがあるんですけども、そこで、実はスマートビルのアーキテクチャを、今、考えているところです。
そこでは、ビルOSという形で、ビルが支える、例えば空調ですとか、あるいはセンサー、例えば人感センサーですとか、そういうものの情報をうまくほかと共有して、例えばエネルギーマネジメントをするだとか、あるいは建物の管理をするということが考えられています。そういう意味では、実はイノベーション・コモンズというのは、デジタル的にもほかとつながっている、先ほどのいわゆる開放空間とありましたけども、ある種、開放された空間であるということが必要かなというふうに思いましたので、ちょっとアドバンスドな話ではありますけれども、今から手をつけておいてもいいのではないかというふうに思いました。
以上です。後でちょっとチャットのほうに貼っておきます。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
下條先生がおっしゃったように、キャンパスは、デジタル技術を駆使して、サイバーとフィジカルの融合に関するある意味での総合的な実験場であり、フィージビリティスタディを先駆け的に行っていく空間でもあるのではないかと思っております。どうもありがとうございました。

【下條委員】 先生御存じの大阪大学の箕面キャンパスの3階、4階というのはそういう形になっています。

【西尾主査】 そうですよね。

【下條委員】 大阪公立大学も、今、そういう構想で、新しいキャンパス造ろうとしていますんで。

【西尾主査】 新たな方向性へのチャレンジとして、是非、先生からおっしゃっていただきましたことを進めていきたいと思っています。ありがとうございました。イノベーション・コモンズが、一つのキャンパス内で閉じるのではなく、デジタル技術で他の大学、ひいては世界ともつながっていくことを実現できていければと思っています。
片岡先生、どうぞ。

【片岡委員】 いろいろ御報告ありがとうございました。ちょっと感想じみたことになりますけれども、話したいと思います。
一つは、これまでの検討の中でのイノベーション・コモンズというものの位置づけは、基本的には多様なイノベーションの起点となる場づくりだと思います。それに基づいて基本的な事項は前回の取りまとめの中に網羅されています。先ほどのお話ですと、その続編として、これから、先ほど説明のあった教育未来創造会議等で出されている主要な整備の必要性があるもの、これから国として進めていこうというものを中心に、それらについての少し踏み込んだ整備の方向性をまとめていくものと理解いたしました。
それに当たっては、一番分かりやすくまとめやすいのは、先ほど御説明もありましたけども、成功事例といいますか、既に事例があって、そこからうまく抽出できるものも確かにあると思いますので、そういう情報の整理が必要というのが一つです。
それから全体としてこれから検討していく内容としては、先ほどからもお話が出ていますように、イノベーション・コモンズというものをベースにした上でのお話だとすれば、一つは空間の共有です。これは文理の共有であったり、学内外の共有であったり、いろんな職種の方々の共有であったり、そういう空間の共有というのが一つ大事なことであろうと思います。そういうものを機能として加えていくことになります。
それから、複合性というのがあのではないかと思いました。というのは、例えば今までですと、学生が、食堂といいますか、カフェテリアとして使っているような場を、形を変えることで、特にDXを取り入れることで、その場が一転して学びの場になったり、交流の場になったりする展開も可能ではないかと思いました。そういう複合的な活用の方法というのも一つありかと考えておりました。
それから、もう一つ、これはベースになる話だと思うのですけれども、デジタル技術とかデジタル空間というのは、あらゆるところで活用すべきなので、これだけを取り出すというよりも、それぞれのところで、こういう視点でこれからの整備計画を立ててほしいという、方向性として位置づければよいと思いました。
そのような観点で、先ほどお話がありましたように、これは、続編ということでしたので、今、出されているような視点に合わせて、それぞれどういう方向で進めるかということの議論の中でお話しさせていただければと思いました。
以上です。

【西尾主査】 片岡先生、どうもありがとうございました。共有性や複合性という視点で御意見いただきましたことは非常に斬新でした。海外の大学の寮やコモンズの状況を見ながら、前回の報告書ではあまり深く立ち入っていない、グローバルな観点からも優れている空間をどのようにつくっていくのかという点について、我々としても今後探求していきたいと思っております。
恒川先生、それから後藤先生にお伺いしたいと思います。恒川先生、どうぞ。

【恒川委員】 ありがとうございます。私からは、上野先生と同様に建築の専門家、あるいは施設整備の現場に近いところにいるという立場から発言させていただきます。
ちょっと今までの話よりは狭い話になるかもしれませんけども、私はやっぱり魅力的なコモンズとかプレイスというのを実現するためには、企画づくりが非常に重要であるというのと同時に、優れた設計者とか建築家、あるいはITの技術者といった方々と適切に進めていく仕組みづくりというのが極めて重要だというふうに思っています。これは、文科省は、昨年、総務省や国交省とともに、小中学校については、学校の施設と設計者選定をプロポーザルで適切にやるべきだということをうたっているんです。その中には、建築家を含む審査委員会をちゃんとすることとか、入札の金額によらない提案を重視するとか、外部空間とかデジタルアーキテクチャとか、そういうものを含む提案をできる人たちを選ぶとか、そういうことが含まれると思うんです。そういった仕組みを、ぜひ、小中学校以上に大学では進めるべきじゃないかなというふうに思います。
これは、優れたそういう建築家とかそういう方々は、ハードだけじゃなくてソフトも含めたアイデアというのを持っている可能性は非常に高くて、こうした方々と企画から設計、それから計画を含めて進める仕組みというのをぜひつくっていくべきじゃないかなということを思っています。
もう一つは、そうして選ばれた設計者、建築家あるいはIT技術者が、プログラムをつくるというような段階、基本構想段階、基本計画段階から、設計はもちろんですけども、工事監理という段階ですね。今、工事監理というのは各大学、施設部というところに委ねられていると思うんですけども、やっぱりそこに設計者がちゃんと入るということが重要だと思います。役割が違うと思うんです。大学の施設部と工事監理をする建築家とでは役割が違うので、それらの方々が実際にどうやって運営されるのかということを見据えて工事監理まで関わらないと、よい場、プレイスというのはできないだろうというふうに思います。
そういう意味で、それらを潰してしまいかねない制約というのを取り払う自由さというのか、予算とか制度とか体制とかって自由さが、なかなか自治体とか国立大学にないので、そのことを含めて、工事監理もぜひ建築家、設計者ができるような仕組みというものを取り入れていただきたいなというふうに思っています。
これ、今、まさに私ども名古屋大学でつくっているプラットフォームというところで、設計者の選定まではうまくいっているんですけども、その後のことも含めてぜひ考えていくということが、まさにイノベーション・コモンズを実現することになるかなというふうに思っておりまして、そういったことも含めてぜひ考えていただきたいなというふうに思っています。
以上です。

【西尾主査】 恒川先生、本当にどうもありがとうございました。大学の予算の状況では、新しい建物を幾つも建てられるわけではないので、限られた範囲で建てるときに、先ほど上野先生から御紹介いただいた海外の素晴らしい建物のようにしたいのは当然です。その際に、恒川先生がおっしゃったように、制度の面で、柔軟性を持たせ、新たな仕組みを入れることができないと、なかなかあのレベルの建物はできていかないのではないかと思います。恒川先生のおっしゃられた御意見に対して、例えば、制度緩和の方向性などについて、事務局の方から何かコメントをいただけますか。

【廣田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 恐れ入ります。事務局でございます。
恒川委員のほうから御紹介いただきましたけれども、先般、国土交通省、総務省と連名によって、プロポーザル方式における契約のさらなる促進ということなどについて通知を出させていただきました。主に小中学校等の学校施設を中心としたものとしてお示ししたものでしたけれども、大学以上にそうしたプロポーザルにおける対応が各自治体ではなかなか進んでいないと。特に教育委員会における発注においては、その取組がかなり不十分な状況にあるという背景を踏まえて、また、さらに学校施設というのは、より魅力的な、子供たち、あるいは地域の方々が集い、そして交流していくような重要な施設としてより魅力的なものになっていかなければならないという思いの中でこの通知を出させていただいたという背景がございます。
おっしゃるように、このような魅力的なキャンパス、魅力的な建物、環境を整えていくという視点は、公立小中学校のみならず大学キャンパスにおいても重要な視点だというふうに考えております。こうした取組がどのようにしてより一層進んでいけるのかどうか、どのような阻害要因があるのかどうかということについて事務局のほうで整理をさせていただく中で、今後の議論を進めさせていただきたいと考えております。
御意見ありがとうございます。

【西尾主査】 今のことは、今後、新たな報告書を作成する場合には、是非、重要な項目として含めていけたらと思っております。ありがとうございました。
後藤先生、どうぞ。

【後藤委員】 ありがとうございます。
先ほどからサイバーの話が出ているかと思いますけれども、これはこの会議で何度か出てきたことだと思います。私もソフトとハードが融合したリアル空間、これを一つのハブとしてサイバー空間でつなぐことで共創の無限の広がりが可能になり、新たな価値の創造につながるのではないかと考えており、回が重なるごとにその思いを強くしております。これが1点です。
あと、もう一つ、今日の資料の中にSTEAM、文理融合教育というのがありますが、例えば物事を複眼的に捉えて課題発見、解決していくような力を育成するということかなと思います。私どもが勤めております高専機構では、理工系人材の早期発掘ということと、STEAM教育強化ということを事業の課題にしております。奈良高専では強さと柔軟性を持つエンジニアの育成を目指しており、感性と表現力を涵養する正課外のプログラム、しなやかエンジニア教育プログラムというのを4年前から実践しております。今から考えますと、これ、STEAM教育の先取りかなというふうに感じております。
このプログラムの中では、異分野の学び、例えば文理融合型のPBLによる問題解決型のワークショップを行っています。例えば藍染め、陶芸、プロダクトデザインとか、感性を養うプログラムを入れております。そのプログラムは、地域を中心とした公開講座とか科学教室、それから外国人留学生との異文化交流、企業との協働教育、リカレント教育などへの取込みが可能な内容になっています。実際、企業の社員さんに来ていただいて、学生と一緒に授業をしたりもしています。
このような教育の実施には、例えばワークショップスタジオ、ラーニングコモンズ、あるいは交流スペースなんかが必要になりますが、これを、例えば学生寮と一体的に整備することで、宿泊することによる参加者同士の交流とか活動が加わってきますので、そこで非常に価値あるプログラムが可能になるのではないかなというふうなことを考え始めているところです。
以上です。

【西尾主査】 最後の学生寮に関する御意見については、学生寮にコモンズを設けていくことは非常に重要な試みですし、海外にない特色を出せる可能性もあると思います。どうもありがとうございました。
それでは、倉田先生、どうぞ。その後、竹内先生、お願いいたします。

【倉田委員】 ありがとうございます。
先ほどのちょっと上野先生のお話に少し加えたいということがございます。実は、私自身が、ほぼ40年ぐらい前にアメリカのカリフォルニア大学のキャンパス計画に関わる機会がありまして、以来、カリフォルニア大学のバークレー校のキャンパス計画、ほぼ10年くらいで更新されているんですけど、それを見てきて、その中に、ある程度、ある意味で時代を反映した変化というのが見てとれるわけです。
そういう中で、まず、先ほど上野先生のようから話もありましたように、まちのようにキャンパスをつくる、それから、キャンパスのまちを使うというお言葉があったと思いますけど、まさにキャンパスのようにまちをつくるというのが、私自身がカリフォルニア大学のキャンパス計画に関わったときに、キャンパス計画のリーダーの方からまず教えられたことでして、キャンパスというのは、ある意味では都市のスケールモデルだよという話がまず最初にありました。それは何かというと、特に海外のキャンパスは、キャンパスの中で、その周辺も含めてですけれど、学生、教員の生活というのはそこでほとんど行われているという現実があります。今も学生寮の話がありましたけども、やはり実際に学生、教員が生活する環境というのはほとんどキャンパスか、キャンパスの周辺も含めてあるということです。
その中で、ちょっと今回の話を伺っている中で、もちろん今回はイノベーション・コモンズというところに焦点を当てた議論になっているんで、そういう意味では、そこ、それを中心にいろんな議論が展開されるのはある意味では仕方がないし、そうだろうというふうに思うんですけれども、キャンパスの変化を見ていると、やはりどちらかというと、今、お話にあったような研究開発とかということに焦点を当てた施設の充実というのはもちろんありますけれども、併せて学園生活の環境として、いかにそれを豊かなものにしていくかというようなことにすごく力を入れていると。そのバランスがよく取られているという気がしているんです。
それで、今回も、やはり海外のキャンパス、上野先生なんかとも一緒にいろいろ、いろんなところへ出かけてっていろいろ調べてきたりしていますけれども、見ていますと、やはり施設そのものだけじゃなくて、キャンパス自体の環境が非常に豊かであると。その環境の中で、ある意味でいろんな形で学生同士、教員同士が交流している場面が見受けられるわけです。それは、やはりまだ、多分、日本のキャンパスに欠けている、もちろん敷地の制約というのがあってなかなか難しいところがあると思いますけれども、やはりそこを非常に大事にしていると。
特に都市もそうですけども、いろんなところで人々の交流が生まれるような、それは施設の中だけじゃなく生まれるような、そういう環境づくりがされているということで、やはり日本のキャンパス、大学キャンパスにおいては、ある意味ではその辺がちょっと欠けているんじゃないかと。生活を支えるところの環境というところが欠けているんじゃないかと。学生や教員間のいろんな交流、地域との交流もそうですけど、必ずしも施設の中だけじゃない。いろんなところでいろんな人との接触機会というのがあって、そういう出会いがあったりする、交流機会があるというんで、それをキャンパスの中にどれだけつくっていくかというのはすごく大事なところだというふうに思っているんで、そういう意味では、その辺の充実というのも非常に大事じゃないかなというふうに思っていて、それが最終的に、結果としてまさにイノベーション・コモンズにもつながっていくんじゃないかなというふうに思っています。

【西尾主査】 先生、どうもありがとうございました。世界から優秀な留学生が多く来るようにするためには、倉田先生がおっしゃったようなグローバル環境での魅力あるキャンパスにすることが必須です。先生がおっしゃったことは、先ほどの上野先生からの御紹介も含めて、今後の方向性として非常に大切であると思っております。上野先生からは「地上レベルをフィジカルな制約からは解放する」という、非常に素晴らしいキャッチコピーをいただきましたので、今後、我々としては、そのような観点をベースに議論を深めてまいりたいと思っています。
竹内先生、どうぞ。

【竹内委員】 ありがとうございます。
既に何名も先生方からの御意見ございまして、皆もっともだと思って聞いておりましたし、また、私の話すことは下条先生や後藤先生とかなり重複しておりますけれども、御容赦いただきたいと思います。
イノベーション・コモンズにおいて、上野先生が先ほどおっしゃいましたように、活動の可視化でありますとか、交流の誘発、そしてフレキシビリティの確保ということは非常に重要でございまして、これはもう10年以上前から、ラーニングコモンズが始まったときからもう言われてきたキーコンセプトであって、これは変わってないんだということを確認いたしました。
また、これにつきましては、物理的な場所を持つ強みというふうにこれまでは理解されてきたところでございまして、物理的な場所には独特の強みがあるということもそのとおりなんですけれども、ただ、今日、我々は、それに甘えているわけにはいかないのではないかと思っているところです。と申しますのも、コロナ禍の下で、我々はもう誰も来ないキャンパスというのを経験をしてしまったわけでございまして、そのような中で活動の可視化、あるいは交流の誘発、そして、フレキシビリティの確保というコモンズのキーコンセプトをバーチャルな空間でどのように実現していき、特にそれを学びや研究の環境として生かしていくかということは非常に大きな課題であると考えております。
ただ、これにつきましては明確な答えがあるわけではまだないだろうと思っていることでございまして、やっぱりそういった環境で学生たちがどのように学び、また、学びの様式がどのように変わってきているのか、あるいは研究についてもどのように変わってきているのかということについて、まだ我々は十分な情報を持っていないのではないかと思っております。ですので、こういった面についても、ぜひ調査研究が進むということが具体的なイノベーション・コモンズの計画とともに行われる必要があるのではないかなと思っております。
先ほど西尾先生が、フィージビリティスタディということをおっしゃったと思いましたけれども、これは、鶏が先か卵が先かみたいなところがございまして、難しいところでございますけれども、ぜひそういった実験的な試み、そして、そこで様々なデータを取って、それを生かしていくといったような試みというかチャレンジについては、手厚い支援をいただける環境をつくっていただけるといいのではないかと思っているところです。
また、バーチャルの問題、空間なんですけれども、よく時間や場所を選ばずに、ということが言われているわけでございまして、これについては確かに文献等へのアクセスということを考えればそのとおりなんですけれども、実際には必ずしもそうなってないように思っております。と申しますのも、例えばバーチャルな空間に対するインターフェースということを考えたときに、学生の自宅に十分なものが備わっているのかというと決してそうではないわけでございまして、やはり物理的なキャンパスがまさにそのインターフェースになるということかなというふうに思っております。
また、物理的なキャンパスは、物理的な環境とバーチャルな環境の行き来が自由にできるという利点があるというふうに思っておりますので、その利点を最大化するということが、短期的にはこのイノベーション・コモンズが目標とすべきことなのではないかなというふうに思っております。
以上でございます。どうもありがとうございました。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
竹内先生からは、コロナ禍の経験を踏まえ、キャンパスに学生が来られない状況において、キャンパスの役割をどう考えたらよいのか、という問題提起を以前にいただいております。そのような状況下で、今、竹内先生からご指摘いただいた、キャンパスをどれだけ魅力あるものにするか、本来のキャンパスの機能を果たしていくためにどうしたらよいか、という観点は重要かと思っております。その点の議論を、今後、展開できればと思っております。
それでは、池田様、土井先生、それと佐々木副知事にも御意見をいただければと思います。まず、池田様からよろしくお願いいたします。

【池田委員】 ありがとうございます。
10月に取りまとめていただいた報告書は、イノベーション・コモンズの考え方を整理した上で、各大学がそれぞれの強みや個性を生かしてイノベーション・コモンズを目指していくという方向性が示されていて、とても良い報告書をまとめていただいたと思っております。基本的には、各大学がSociety 5.0時代の大学の在り方をハード・ソフトの両面から考え、追求していくことが根本であると理解しています。そして、各大学が、社会の要請を捉えて価値を創造していくという意味では、真の意味で社会に開かれた大学を実現していくことが大事であり、とりわけ産と学がウィン・ウィンの形で連携・協働して、研究活動や教育活動を展開していくことが重要だと思っております。産学が連携・協働することによって、大学も、世界や地域が求めている最先端のニーズをより理解しやすく、実践しやすくなるのではないかと思っております。
そうした意味で、大学の個人と企業の個人といった関係ではなく、組織対組織で産学が連携していく環境をどう整えていくのかについて、ハード・ソフトの両面から考えていくことが一つの課題と考えています。
昨年も紹介しましたが、経団連と国公私立大学トップが対話する産学協議会では、リカレント教育について、どのように産学連携していくのか議論していますが、企業からは大学のシーズが分からない、大学からは企業のニーズが分からないといった声が非常に大きく聞かれ、マッチングの必要性が指摘されているところです。
先ほどの千葉大学の上野先生の整理で言えば、それぞれの活動の可視化ができていない、相互交流を誘発できていないということかと思います。そういった意味で、大学のシーズと企業のニーズをマッチングしていく機能が大事ではないかと思っております。この会合ではハードが中心の議論かもしれませんが、ハードだけを整備しても、ソフトの部分が伴っていないと魂が入らず、うまく機能しないのではないかと懸念しましたので、私からコメントをさせていただきました。
また、皆様方からも御意見があったように、地域内の課題はもちろんですが、地域や国境を越えて様々な主体が連携していくという意味では、デジタル技術を駆使していく、場合によってバーチャル技術を駆使していく環境整備が必要ということは論を俟たないと思っています。
私からは以上でございます。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。組織対組織の産学連携をどう進めていくのかという点については、先ほど五十嵐様からも、なかなか企業と大学側のマッチングや、連携がうまくいっていないということを御指摘いただきました。産学連携を効果的に進めていくためには、ハード面も大事ですが、今、池田様がおっしゃったように、ハードとソフトを一体にして考えなければ課題は解決しません。その観点から、最近、特に文教施設企画・防災部の方でも、ハードとソフトの一体化した施策ということを強く打ち出しておられます。我々としても、今、池田様がおっしゃったことは十分に認識して、今後、議論してまいりたいと思っております。ありがとうございました。
土井先生、どうぞ。

【土井委員】 どうもありがとうございます。今までのお話の中で、重ならない部分だけコメントさせていただければと思います。
ハード・ソフトということで、その両立というのは非常に重要だと思います。イノベーション・コモンズをつくって、単発にならないように継続性を持たせるということが非常に重要かと思います。そういう意味では、カーボンニュートラルとか、電力料金の削減とか、あともう一つはそれを支える人材ですね。なので、イノベーション・コモンズ使うのは、主として学生が前面に立つのかもしれないんですけれども、やはりそこを支える教職員がきちんとリスキリング、ITに関してリスキリングの教育を受けて、いろいろなソフトを活用して、カーボンニュートラルとか電力料金の削減とか、そういうところを成り立たせていくということも重要かと思います。
そういうリスキリングを例えばイノベーション・コモンズのところで行うことで、教職員と学外からの市民企業からも一緒になってやるところで、お互い、一体、どういうニーズ、どういうシーズを持っているのかというところをそういうコミュニケーションの中から見いだしていくということも重要だと思います。そういう意味では、ソフトとハードをうまくかみ合わせるためには、人材というのも非常に重要ではないかというふうに考えております。
以上です。

【西尾主査】 ありがとうございました。
リスキリング教育は、政府としても非常に重要視しているところです。カーボンニュートラルやDXに関わる人材の育成は非常に重要な課題だと考えます。土井先生がおっしゃるように、そのような人材の育成をしておかないと、イノベーション・コモンズをどのように構築していくかを考えるときに追いつかないのではないかと考えております。貴重な御意見、どうもありがとうございました。
佐々木様はいかがでしょうか。お願いいたします。

【佐々木副知事(大村委員代理)】 ありがとうございます。
本日からの参加なもので、皆様方の御意見といいますか、コメントをいろいろ勉強させていただいておりました。かなり重複してしまうかもしれないですが、全国知事会の政策提案の中でも触れさせていただいているところでございますし、先ほど五十嵐委員ですとか池田委員からも御指摘があったことだと思いますけれど、施設を整備していただいて、その上でその施設をどういう思いで、どういう狙いで、そういう狙いなりがあって整備されている中で、その狙いを実現していただく、やっぱり人材というのが大変重要だというふうに思っております。
地域の産業界、企業、それから地方公共団体とどうコーディネートしていただくのか、教員の方もそうですけれど、職員の方も含めた人的支援、そちらも御考慮いただければありがたいというふうに思っておりますし、その中で、本日もデジタルの話がありました。デジタル人材、なかなか地方では人材自体が非常に不足しているというところもあります。そこをどう乗り越えていくのか、ここの議論にはとどまらない議論なのかもしれないですけれど、その辺り、もう少し地方での整備もここ、入っているんだと思いますので、御考慮いただければありがたいなというふうに思っております。
以上です。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。どうか、今後、知事会の方からも様々な御支援をいただけますよう、何卒よろしくお願いいたします。
一通り御意見はいただいたと思いますが、その上で、何か追加の御意見等がございましたら挙手をお願いします。
上野先生、皆様の御意見を聞かれて、何か御意見はございませんか。

【上野委員】 ありがとうございます。今回、恒川委員から出た、優秀な設計者と大学関係者が企画段階からコラボレーションしながらイノベーション・コモンズというか、キャンパスを実現させていく仕組みづくりというのは、本当にまさに私も大学でキャンパス計画の現場にいた立場からすると、本当に実感したところでございます。ぜひその仕組みづくりを、今後の提言の中にも入れていただければなというふうに思いました。
それと、デジタルの空間の中に、リアルのコモンズで考えている3つのキーワードをどう実現させるのかという竹内委員からのコメントも、本当にぜひともチャレンジしたい課題だなというふうに思っております。
今日、あまり出なかった話題で、学生寮とか留学生寮をどういうふうに大学に造っていくかという問題に関して、一言、ちょっとコメントさせていただきたいのですが、最近、学生寮を大学の中で持つのはなかなか難しいというような話が出てきていて、ともすると、PFIにして産業界から援助といいますか、協力を得て造っていくという話がありますが、それもやはり事業性がちゃんと成り立つかということが重要で、事業性がないところには企業の参画もなかなか得られない。その問題を解決していかなければならないと思います。
一つの解決策としては、やっぱり地域全体で学生寮や留学生宿舎をどう実現していくかということを、自治体の方々とも一緒に考えていくということではないかと思うんです。そういった意味で、ちょっと違うキーワードを考えているんですけれども、先ほど倉田先生からお話もありましたが、まちのようにキャンパスをつくるというキーワードがありましたけども、それをちょっと主客逆転させて、キャンパスのようにまちをつくり、まちのようにキャンパスを使うという言葉というのも、日本の状況を考えると考えていかなければいけないんじゃないかなというふうに思いました。
自治体全てに大学があるわけではないので、全ての自治体にそういうことを考えていただくということとは限らないのですが、一方で、まずデジタル技術を使うと、大学と地域が離れている場所でもうまい連携ができて、新しい日本全体のイノベーションみたいなのが生まれるんじゃないかなというようなことをちょっと考えました。
ちょっとまとまりがありませんでしたが、以上でございます。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。グローバル化という点で、海外の大学と比べた場合に、日本の大学が貧弱であるのは、やはり学生寮ではないかと思っております。グローバル化の観点の一環として、留学生を呼び込むために、学生寮の問題をどう解決していくか、という点は重要な検討事項であると考えています。また、例えばジェンダー・ダイバーシティの観点からは、女性の研究者、教員の方々が、ライフイベント等があっても、できる限り大学等での勤務を続けていけるような環境を整備することを考えますと、本来は大学の周りにそういった方々に優先的に入居いただける大学の宿舎等があることが望ましいと考えています。そういった観点から、大学が有する宿舎や学生寮をどのように捉えるかということは、トータルな意味でイノベーション・コモンズを考える上で必要な審議事項ではないかと考えております。今後、それらの点についても是非議論していきたいと思っております。
他に、御意見はございませんでしょうか。
そうしましたら、今日は、報告書が出ました以後の初回の会議ということで、皆様から貴重な御意見を多々いただきましてどうもありがとうございました。
それでは、笠原部長より是非御意見等をいただければと思います。

【笠原大臣官房文教施設企画・防災部長】 本当に今日の議論、どうもありがとうございます。御案内のように、今日から新しく加わっていただいた委員の方もいらっしゃいますけども、第1弾として、10月までに、一度、報告書をおまとめいただきました。さっきリスキリングという話がありましたけども、まさに次の段階としてリスタートということで、本日、本当に活発な御議論をどうもありがとうございます。
まず第1弾、私、最初に担当のほうから説明ありましたけども、私の理解としても、まず第1弾としては、大学自体を産業界だとか地域の方々とどう共創する場につくり上げるかという視点を中心にキャンパスをどうつくるかということを整理をしていただいたというふうに思っています。ここでの議論が報告書としてまとまるということだけではなくて、まさに政府の未来創造会議の議論ですとか、あと、今日、御参画いただいております経団連とか日商のほうからも、ソフト・ハードで一体となって物事を考えていかなきゃいけないという話ですとか、イノベーション・コモンズの重要性というものを訴えていただいたということだというふうに思っています。それらの議論が、まさに今回12月に成立しました補正予算の中で、ソフト・ハード一体となった支援ということで情報系人材での政策だとか、地域中核のキャンパスの整備なんかについても、ソフト・ハード一体となった支援策というのが政府としても決定できたということだというふうに思っています。
それで、第2弾については、今日の最初の説明にもありましたけども、さらにDXだとか、GXだとか、ある意味、新しい分野に対してどうリスキリングなり教育をしていくか、研究をしていくかという面ですとか、あとはまさにリカレント教育の問題、そういうものをこのデジタル化が進んでいる社会の中で、また、グローバル化も見据えながらどうしていくかということが、まさに我々の大きな課題だというふうに認識をしています。それに対応したキャンパスを考えていくということだというふうに思っています。
今日、議論をお聞きしていて、改めてまず整理をしなくてはいけないなというふうに思ったのが、そもそも産業界、地域の方々にとって大学というものは何を求めているのかということだというふうに思っています。今日、幾つかキーワードが出ていたというふうに思っているんですけども、いろんな意味で、これ、ハブになるという言葉ですとか、いろんなものの核になるということですとか、あとは、例えば海外とのつなぎ部分、ゲートウェイということなのかもしれませんけども、ゲートウェイという言葉だとか、そういうようなことが出ていたというふうに思っています。
なので、いろんな課題が複雑化している中ですので、やっぱり大学が社会だとか産業界をうまくつなぎ合わせたりするということが必要でしょうし、いろんな課題解決をしていくに当たっては、大学にはいろいろなシーズがあるわけですので、そういうシーズを外のニーズとつなぎ合わせたりするということも必要でしょうし、キャンパスの場というものは、まさにサイバーとリアルを組み合わせる、つなぎ合わせる場になってくるんじゃないかなというふうに思いますので、そういうハブになったり、核になったり、ゲートウェイになったりする場としてキャンパスをどう考えていくのかということを考える必要があるのかなというふうに思った次第です。
その際に、やっぱり忘れてはいけないのは、倉田先生、西尾総長もおっしゃいましたけども、生活環境というのもあるのかなと思います。生活環境というのは、単に住むとか食べるとかということだけではなくて、いわゆる教育研究を進めるに当たってのベースとなる、ベースとして、当然、生活があるわけですので、生活の場として充実をしていくということがまずは必要なのかなというふうに思っています。それも含めての議論を忘れてはいけないのかなと感じております。
その際に、当然、我々は様々な制度とか場をまず考えていくことは必要だというふうに思いますけれども、恒川先生だとか、何人かの先生からも出ておりましたけども、やっぱりソフト・ハード一体となって物事を考えていかなければいけないわけですので、考えるための仕組みづくりとか組織づくり、あとは、そのための人材をどうするかということも一緒に併せて考えていかないと絵に描いた餅になってしまうし、実現したものが継続していくのが難しいということになってしまうのかなと思いますので、そういうことも併せて考えていかなければいけないかなというふうに感じた次第です。
本日、本当に様々な御意見をいただきましてありがとうございます。引き続き、この議論をきっかけに、我々としては、外に対して訴えかけつつ、政府の中の様々な政策の中に打ち込んでいければというふうに思っておりますので、今後とも御支援いただければと思います。
本日はありがとうございます。

【西尾主査】 笠原部長、どうもありがとうございました。また、補正予算の件では、本当に多大なる御尽力をいただきまして誠にありがとうございました。
それでは、皆様方に貴重な御意見、コメントの数々をいただきましたことに感謝しつつ、事務局から今後のスケジュールについての説明と事務連絡をお願いいたします。

【宮城大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 資料4を御覧いただければと思います。本日、第6回ということで開催させていただきました。次回は2月9日に第7回会議といたしまして、本日いただきました意見を踏まえて、考え方、また整理しまして、まとめの方向性の素案についてもお示しして御議論いただければと思ってございます。
本日、幾つか論点に関する事例をお示ししましたが、今後、検討事項により適宜ワーキングも開催させていただきながら、事例収集等を進めていき、令和5年3月に、第8回の会議といたしまして、まとめの方向性の案について御議論をいただき、3月中、年度中にはまとめの方向性を取りまとめさせていただきたいと思ってございます。こちら、3月の日程調整は改めて事務局よりさせていただきます。
以降、令和5年の夏にかけて2回程度会議開催いたしまして、最終的に夏に報告書を取りまとめ予定ということで進めさせていただければと思いますので、引き続き御協力をよろしくお願いいたします。
また、本日の会議の議事録につきましては、追って皆様へ御確認いただいた後に、文科省のホームページ、ウェブサイトに公開させていただきます。
事務局からの説明は以上となります。

【廣田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 すみません、西尾総長、1点補足をさせてください。

【西尾主査】 どうぞ。

【廣田大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 こちらのスケジュールに関してですけれども、3月にまとめの方向性というものを取りまとめるということと、夏に報告書を取りまとめるということの意味合いですけれども、例年5月、6月頃に骨太の方針というものがまとめられております。その前に、一旦、有識者会議での報告の方向性を出していきたいということで、3回の3月のタイミングで一時的にまとめの方向性をまとめると。その後、骨太に打ち込みをしました後、夏にはまた概算要求というタイミングがございますので、この概算要求の前には最終報告を取りまとめていくと。そんな段階で2段階の構成になっておりますけれども、皆様に御協力いただきながら発信をしていきたいと考えております。
補足は以上です。

【西尾主査】 今、おっしゃいましたように、国の施策にきっちりと反映していただくべく、事務局の方で御尽力いただけるということですので、我々もしっかりと議論していきたいと思っております。
それでは、これにて閉会といたします。本日は誠にありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室

企画調査係
電話番号:03-5253-4111(内線3247)

(大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室)