国立大学法人等の施設整備の推進に関する調査研究協力者会議(第3回)議事録

1.日時

令和4年3月22日(火曜日)13時30分~15時30分

2.場所

オンライン会議(Zoomを用いて開催) (事務局:文部科学省旧庁舎4階文教施設企画・防災部会議室)

3.出席者

委員

池田委員、岩村委員、上野委員、片岡委員、倉田委員、下條委員、竹内委員、恒川委員、出口委員、土井委員、西尾主査、浜田委員代理(香川県政策部小瀧次長)、山内委員

4.議事要旨

【西尾主査】 皆さん、こんにちは。それでは、定刻となりましたので、ただいまから国立大学法人等の施設整備の推進に関する調査研究協力者会議、第3回を始めさせていただきます。
初めに、事務局からオンライン会議の注意事項の説明、欠席されている委員と配付資料の確認等をお願いします。
本日の会議の模様は、ユーチューブにてライブ配信いたします。また、会議資料と議事要旨は、後ほど文部科学省のウェブサイトに掲載する予定でございます。

【藤井大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 本日は御多用のところ御出席いただき誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、文教施設企画防災部計画課整備計画室の藤井です。よろしくお願いします。
初めに、事務局からオンライン会議の注意点事項の説明、その後、委員の出欠と配付資料の確認をいたします。
オンライン会議の注意点を説明します。発言時以外はマイクをミュートにしてください。御発言いただく際は、挙手機能を御使用ください。挙手機能をオンにされた方に主査から指名していただきますので、御発言はその後でお願いします。
本日は、委員13名の方に御出席いただいております。金子委員、後藤委員、篠原委員は御欠席と伺っています。また、浜田委員の代理出席者として、香川県政策部次長の小瀧様に御出席いただいております。
配付資料の確認については、各自、議事次第を御確認ください。資料は、事前にPDFでお送りしているものを画面共有しながら説明させていただきます。
よろしくお願いします。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
それでは、議題1に移ります。ワーキンググループの主査をお務めの上野委員より、ワーキンググループからの報告について、御説明をお願いいたします。特に、先導的事例調査などに関しての御説明をお願いできればと思っております。質疑等につきましては、御説明をいただいた後からまとめて行うことにいたします。それでは、上野先生、お願いいたします。

【上野委員】 千葉大学の上野でございます。ワーキンググループでの活動について御報告させていただきます。
前回の11月18日開催の親会議、調査研究協力者会議の後、第1回のワーキンググループを11月29日に開催いたしました。このワーキングでは、親会議の議論を踏まえまして、先導的な事例調査の対象、調査方法について議論を行いました。調査の対象ですが、国立大学だけではなく公立、私立、高専、共同利用機関、民間も含めて、37機関を抽出しまして、対象機関にアンケートを実施しています。
アンケート項目は、主な共創活動の目的とか内容、共創活動を行っている施設の整備手法や工夫、ビジョン等との関連、運用上の工夫、多様な主体との連携の構築方法などを主に調査しています。このアンケートだけではなく、特に先導的な事例を行っているという大学については現地調査も行っています。
その後、第2回ワーキンググループを2月14日に開催しました。調査した事例につきまして、最終的なまとめ方、それと最終取りまとめに向けての骨子案の概要、こういったことについて議論を行いました。詳細につきましては、事務局からお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 それでは、事務局お願いいたします。

【藤井大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】
資料1を御覧ください。上野委員の御説明と重複する箇所がございますが、資料1を説明させていただきます。ワーキンググループでの議論を受けて、先進的な共創活動を実施している大学等を抽出しました。その大学等は、資料1の2ページ目以降にまとめてある37機関となります。この大学等に、12月から1月にかけて、共創活動に係るアンケート調査を実施しました。37機関のうち候補に挙げていました埼玉大学の1機関のみ、調査対象としていた事業自体が既に終了しているという報告がありましたので、対象事業から外しております。
その後、ワーキンググループの委員の意見や、アンケート調査の内容を踏まえ、現時点で4大学等の現地調査を、資料の記載の日程にて行いました。現地調査につきましては、新型コロナの影響等もあり、現時点では4大学ですが、今後も東北大学や信州大学、名古屋大学、広島大学など、あと7校程度を調査していく予定としています。
既に現地調査を実施することができた4機関について事業概要を御報告いたします。ここでは、概要をまとめておりますが、事業の詳細など、正式な事例の取りまとめ方については、資料3のまとめの方向性(案)の後半部分にまとめていますので、後ほど資料3の説明時に御確認いただきたいと思います。現地調査を行うことのできた4校のうち、共愛学園前橋国際大学、千葉大学墨田サテライトキャンパスにつきましては、上野委員、倉田委員にも一緒に現地調査を行っていただきました。
では、概要を御報告いたします。まず、千葉大学につきましては、墨田区と包括的連携協定を締結し、公共資源を生かし、再生するまちと一体となったキャンパスをつくるという基本構想の下、整備されています。墨田区が、旧すみだ中小企業センターを改修し、生活の全てをシミュレートできる、分野横断的な教育研究を展開する環境を整備して、千葉大学がその施設を借用して活動している事例になります。施設内は様々な工夫が施されていますが、この施設を活用して、地元企業等と共同研究、開発を行って、活動内容に応じて自在にアレンジできる家具等の技術開発や、生活に密着した分野の研究支援など、地域産業振興、地域活性化の新拠点として発展していこうとしている事例になります。
また、その右側の大阪大学につきましては、元大阪外国語大学のあった旧箕面キャンパスの移転による整備となります。世界と大学、市民を結ぶキャンパスを目指して、市民のキャンパスを駅前カレッジと併せて、大学の研究講義棟と学生寮、箕面市の図書館と文化施設、駅前広場を一体に整備している事例となります。この事例では、留学生と地域住民の交流の活性化を促進させており、地域の国際化に貢献していること、また、市の図書館を大学が指定管理者となって運営し、大学の図書館機能も施設内に設置したという資産の有効活用、及び、地域住民との交流誘発している場にもなっています。今後、大学発ベンチャー企業等を箕面新キャンパスのある地域周辺に集積してベンチャー育成、実証フィールドとなっていこうとしている事例になります。
次に、共愛学園前橋国際大学については、地学一体という教育理念の下、次世代の地域社会を牽引する人材育成に取り組んでいます。また、前橋市商工会議所と市内の大学で「めぶく。プラットフォーム前橋」を設立し、地域課題解決に向けて活発に議論されています。キャンパス計画については、下の左側の図になりますが、主にアクティブラーニング等を実践する4号館を学生の集まりやすい中央部に配置し、駅から最も近く、大通りに面した大学の顔となる場所に5号館を整備し、キャンパスゲートとして、キャンパスネットワークと地域の結節点となり、大学と地域社会をつなげるための工夫を施しています。施設は、室内の活動が可視化できるよう工夫されており、地域住民が大学の活動に関心を持ち、気軽に大学の活動に参加できるように配慮されている事例になります。
また、その右側の立命館大学につきましては、アジアのゲートウェイ、都市共創、地域社会連携の3つのコンセプトを掲げ、地域社会に開かれたキャンパスとして、大阪いばらきキャンパスを整備した事例になります。キャンパスは下の図のとおり、市民交流の軸と学びの軸を中心にゾーニングを行い、大学施設と市民開放施設、防災公園を一体的に整備しています。防災公園は周辺環境と調和し、市民がアクセスしやすい配置としていることとともに、図書館やホールを含む市民開放施設は、公園に面した1階にレストラン、カフェを配置するとともに、今夜、共通のテーマを持つ人たちが出会い、交流を深めながらコミュニティを形成することができる仕掛けも設けられています。また、大学施設内においても随所に学生同士の交流を誘発する工夫が施されています。また、茨木商工会議所がキャンパス内に入居し、学生と地元企業と結びつき、交流、連携活動を活性化していこうとしている事例になります。
御報告は以上になります。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
それでは、今の上野先生、また、事務局からの説明に対する御質問や御意見、その他全般についての御意見でも御質問でも結構ですが、ございましたら挙手いただければと思いますが、いかがでしょうか。ワーキンググループの倉田委員、恒川委員、竹内委員、下條委員、出口委員から、何か追加の説明等がありましたらいただければと思います。倉田委員、いかがですか。

【倉田委員】 私は今、御紹介のありました、共愛学園前橋国際大学と千葉大学の墨田キャンパス、両方、実際に現地に伺っていろいろ話を伺いました。非常に両方とも、地域とのつながりをかなり意識した取組をしていて、施設自体も非常にそういった考え方に対応した形で、特に開かれた場づくりといいますか、共創の場というのを上手につくり出している事例だったように思います。
それから、細かくはいろいろ、地域のいろいろな組織とのつながりを既に持って、共愛学園あたりは進めていて、なおかつ、共愛学園の場合は、市内の国公立、ほかの大学とも共通のプラットフォームを持って活動しているというところが非常に特徴的なところだったと思っております。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。恒川先生、いかがですか。

【恒川委員】 ありがとうございます。この4つの事例というのは、いずれも地域との連携がすばらしく進んでいて、イノベーション・コモンズとして、まさに紹介すべき事例だと思うんですけども、ワーキングで議論があった中で、今回紹介された4つの事例は、いずれも新しくキャンパスを作ったとか、新しく施設を作ったという事例で、何か新しく施設を作らないとイノベーション・コモンズができないんじゃないかという印象をあまり強く与えてしまってもいけないかという観点もあって、この後、紹介する事例については、そういったことも留意して事例を選定していくべきじゃないかという議論がありました。
また、イノベーション・コモンズで連携していくべきステークホルダーというのも多様で、そういった多様なステークホルダーが、この事例で紹介されているもの以外にもいろいろあるんじゃないだろうかという議論もありました。今後、36の事例の中にはそういうものもあろうかと思いますので、そういったことも含めて、事例を選定していくべきじゃないかという議論がなされました。

【西尾主査】 非常に重要な観点を御指摘いただきました。新しいキャンパス等を整備しないとイノベーション・コモンズはできないのではないか、といった印象を与えてしまうのはよくないということと、社会の多様なステークホルダーを意識して、御説明いただいた以外のステークホルダーとの共創活動が構築できるような事例を、今後、探していくことの重要性をおっしゃっていただきました。どうもありがとうございます。
竹内委員、いかがですか。

【竹内委員】 ありがとうございます。竹内でございます。
先ほどの恒川委員の御意見と少し重複するところではあるんですけれが、今回取り上げられている事例は、地域というキーワードが前面に出ている事例であると思います。しかしながら、国立大学が扱うべき社会的な課題というのは、地域と関わるものも非常に多いわけですけれども、グローバルな観点で人類の様々な課題に取り組むという点もあるわけでございまして、最先端の研究領域ということを視野に入れた共創拠点というのも事例としては取り上げるべきではないかと考えております。そういった点に留意して、候補で挙がっている中から拾い出していくということを心がけていきたいと考えております。
以上でございます。
 
【西尾主査】 先生からも貴重な点を御指摘いただきました。単に地域ということだけではなくて、地元の地域から世界まで、両方を視野に入れて考えるべきではないかということでございました。ありがとうございました。
下條先生、いかがですか。

【下條委員】 ありがとうございます。大体先生方言われておりますけど、あと、もう一つは、ここで書いてしまうと、どうしてもハード中心に見えてしまうんですが、この中のソフト、例えば阪大で言うと、学生中心に、夏に地域の方々とイベントをやったりとか、あるいは立命のいばらきキャンパスで言うと、いわゆる地域共創を課題とするような学部がここにいて、そこが実は中心にやっているとか、そういった、実は見えないソフト面も、また、いろいろな意味で強調されるといいかと思いました。
以上です。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。下條先生からも、ソフト面という、もう一つ別の角度から見ていく必要があるという御意見をいただきありがとうございました。
土井美和子先生、手が挙がっております。どうぞ。

【土井委員】 すいません。ネットが不安定なので、ビデオを切らせていただいております。今の恒川委員の御質問とも絡むのですが、今御報告いただいたところで、例えば、共愛学園ですか、前橋国際大学のところで、いろいろなコミュニティを活性化するための工夫などが凝らされているということなんですが、そういう点を、もう少し具体的に書いていただけると、新しいキャンパスを作らなくても取り入れられる施策があるかもしれないので、ぜひまとめの時には、そのような点も留意していただけるとありがたいかなと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。恒川先生、ここで何かコメントはございますか。

【恒川委員】 そうですね、ぜひ、具体的なことが、よりソフトとかも含めて、きちんと書かれるような形で作られるといいかなという気がします。

【西尾主査】 ありがとうございます。土井先生、恒川先生からいただきましたコメントに配慮して「まとめ」の作成をしていきたいと思っております。
岩村先生、どうぞ。

【岩村委員】 ありがとうございます。私から申し上げたい点は、イノベーション・コモンズというのは、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンということを根幹の精神に据えるべきではないかというポイントでございます。イノベーションというのは、ダイバーシティがあるところから生まれる。特にそういった観点で言いますと、地域、世界など、今、いろいろな方々がステークホルダーとして上がっております。
もう一つの観点は、アクセシビリティです。障害のある方も含めて社会参画をする場というものが大学に生まれるようであれば、そこから新しい気づきが生まれ、学生にとってもよい効果がある、教育効果があるでしょうし、研究者にとっても新しい発見があると思います。ぜひそういった観点を根幹の精神に据えるべきです。
これはハード面でもソフト面でも新しい投資が必要になることでございますので、ぜひそういった観点を入れていただけるとありがたいと思っております。東京大学は、昨年UTokyo Compassというものを発表しましたけれども、そのコアのビジョンの1つとして、世界中の誰もが来たくなる大学を目指すと言っております。いろいろな方が集まることによって、教育、研究へのイノベーション効果が生まれるということを、ぜひ施設面からも実現できるといいと思っています。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。非常に大事なことだと思います。ダイバーシティ、それからアクセシビリティを根幹に据えた、誰もが行きたくなるような空間であるべきだという御意見、どうもありがとうございました。
片岡先生、どうぞ。

【片岡委員】 先進事例の御紹介ありがとうございました。参考になりました。
1つ、調査の観点として入れていただければありがたいと思いましたことは、大小様々な取組がある中で、資金の確保がどのようになされたのかということ、それから、それぞれの先進事例について、もう既に機能していることと思いますが、大学の役割、地域の役割、自治体、あるいは企業の役割、そういう分担がどのようになされているのかというところです。
以上です。

【西尾主査】 分かりました。今おっしゃっていただいたことを踏まえて、今後調査する際に、整備がなされるときの必要経費がどうやって裏づけされているのかということや、様々なステークホルダーと大学が連携していくときに、各々がどういう役割を果たしていくのかという点を、事例の中でもう一段ブレークダウンして調査していただきたくお願いします。事務局、また、上野先生、是非よろしくお願いいたします。

【藤井大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 分かりました。

【上野委員】 上野でございます。今の西尾先生からのお話で、アンケート項目の中には、予算の話、各ステークホルダーの役割分担の話というのも調査対象に入っておりまして、今回の中では紹介し切れていませんけれども、最終的な事例報告の中には、そういったことも入れる予定にしております。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
今まで調べていただいたことに対しまして、他に何か今後についての御意見はございませんでしょうか。よろしいですか。上野先生、また、事務局の皆様、ここまで取りまとめいただき、どうもありがとうございました。

【藤井大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 すいません。出口先生が出席されていますので、出口先生にも御意見を伺えればと思います。

【西尾主査】 どうもすみません。出口先生、お願いいたします。

【出口委員】 東京大学の出口です。私もワーキングのメンバーに入っておりますので、特に改めて申し上げることはありませんが、他の委員の方々の発言と重複するかもしれませんが、それぞれのイノベーション・コモンズのモデルになるような取組が、どのような到達点を目指し、どのようにしてそれぞれの取組の達成度を評価するのかを示す必要があると思います。KPIの設定とも言い換えられますが、各大学が今後の具体の施策を実施していく上でも重要だと思っております。その観点からも、想定される取組を類型化していただくとよいかと思います。また、今後の各大学での施策の実施に向けても重要な点と思います。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。どうかよろしくお願いいたします。
他に御意見よろしいですか。そうしましたら、今、いただきました御意見も踏まえまして、議題2のまとめの方向性について、事務局から案を御説明いただきますようお願いします。

【藤井大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 分かりました。資料2を御覧ください。資料2につきましては、今後、報告書をまとめていく上での骨子案を示させていただいています。
この骨子案については、先ほど上野委員からも、第2回のワーキングで行った審議事項ということで御報告もありましたように、ワーキンググループにおいて御意見をお伺いさせていただきました。本日、さらにブラッシュアップを行いたいと思っておりますので、委員の先生方の御意見をいただきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
また、骨子案を基に本文を落とし込んだものが資料3になります。簡潔に、資料2で骨子の流れを説明した後、資料3にて内容を御説明させていただきたいと考えています。
では、資料2の骨子案ですが、まず、冒頭で、国立大学等キャンパス、施設の目指すべき方向性として、どのようなことが大学に求められ、イノベーション・コモンズを目指すことが必要であるかということを整理しています。
次に、イノベーション・コモンズの考え方として、まだ明確化されていない部分がありまので、少しかみ砕いて、身近に使用する文言等をできるだけ使用し記載していこうと考えています。イノベーション・コモンズの概念に加え、例えば、これまで行ってきた産学連携、地域連携の活動とか、これまで整備してきたアクティブラーニングスペース等をイノベーション・コモンズにするためにはどうすることが必要なのかを整理しています。
この後には、下のオレンジの枠になりますけども、今回、先導的な事例から、どのような取り組み方をしていけば、イノベーション・コモンズの実現に近づけるのかというところがポイントになると考えていますので、何を目的としている事例であるかを整理し、それらの事例から見えてくる主な成果、効果を抽出し、その成果、効果を導くこととなった取組の要点、肝となるものは何であったかを整理しています。
最後に、今後の推進方策として、事例から見えてきた取組の要点を行いやすくするための方策は何なのかを整理したいと考えています。
骨子の流れは資料2のとおりですが、内容について、今回、資料3自体が初めて示しますので、できるだけ細かく説明したいと思います。資料3を御覧ください。
冒頭、「はじめに」を記載いたしました、第5次5か年計画の策定の経緯と掲げられている内容について記載し、目指すべきイノベーション・コモンズは、各大学等の強みや特色など多種多様であることから、様々な形があるということを示すとともに、イノベーション・コモンズ実現に向けた取組を加速するために、調査研究でさらに検討しているところであるとまとめています。
また、4ページに移りまして、国立大学等キャンパス、施設の目指すべき方向性について、親会議の第2回の会議でも御説明しましたように、ほかの関連会議とも連携しつつ本会議を行っておりますので、ほかの会議でまとめられた内容や提言を(1)に整理しています。ここに記載の会議の取りまとめ概要等は、参考資料1から参考資料3に添付していますので、後ほど御確認ください。
この本文には、特に関連性が高い内容に関して記載しており、中教審大学分科会においては、令和3年12月の最終取りまとめについて、地域の中核となる大学の実現が我が国、社会全体の変革の駆動力となるとの認識の下、実現方策が検討され、地域ならではの人材育成の推進やイノベーション創出、大学間や産業界、地方公共団体等との連携のため諸施策について提案されていること、また、総合科学技術・イノベーション会議では、令和4年2月に最終まとめがなされ、世界最高水準の研究大学を形成するため、10兆円規模の大学ファンドが創設されるなど、研究力を抜本的に強化することとしていること。また、それと併せて、トップレベルの研究大学だけでなく、地域の中核大学や特定分野の強みを持つ大学が、その強みや特色を伸ばす方策として、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージが取りまとめられ、この中では、多様な大学が自身の強みや特色を発揮し、研究力向上や人材育成等により、新たな価値を創出すること、また、あらゆる知見を総合的に活用し、グローバル課題解決や社会変革を牽引することを目的とし、今後、改定を行っていく予定であることを記載しています。このように、社会の期待が高まっていることから、第4期中期目標開始に当たり、今後の経営の在り方を多様なステークホルダーとのエンゲージメントを通じて信頼関係を深め、ステークホルダーを巻き込んだ経営モデルへ転換することが求められているということを整理しています。
また、(2)の地方公共団体・産業界からの期待については、前回の会議で、香川県知事の浜田委員より御説明いただいた、全国知事会からの地方大学施設の整備充実に向けた提言や、経団連からも令和4年1月に提言が出され、大学キャンパス全体をイノベーション・コモンズとして整備することの重要性について提言をいただいていますので、その点を記載しています。経団連の提言についても参考資料4に添付していますので、後ほどに御確認ください。
また、5ページの下の部分から始まります(3)に記載している部分が、先ほどの資料2の骨子にも記載していた部分になりますが、まず、これまでも国立大学の施設には多大な投資が行われていること、そのことからも国立大学等のキャンパス施設は国家的な資産を形成するもので、地域の貴重な公共財であるということ、そのため、教育研究の基盤としてだけでなく、人材育成の拠点や産業振興のハブ、医療拠点、防災拠点、脱炭素化の拠点としての役割を果たすことも重要であること。また、人口減少や気候変動など、様々な課題に直面する中、国立大学等は社会の変革の駆動力として、積極的な役割を果たすことが求められ、そのためには様々なステークホルダーとの対話を通じて、各国立大学等がそれぞれの強みや特色を踏まえて目指すべき方向性を定め、キャンパス、施設を最大限活用することで新たな価値等を生み出すイノベーション・コモンズを目指すことが必要であると、目指すべき方向性を整理しています。
次に、イノベーション・コモンズの考え方になりますけども、第5次5か年計画を取りまとめる際の最終報告にも、イノベーション・コモンズの考え方の記述がありますので、再度、冒頭にその記述を取り上げています。また、次のページの7ページの一番上の1ポツ目に記載しておりますが、イノベーションを社会的意義のある新しい価値を創造し、社会変化をもたらすこととして捉えることが必要であることとして、概念を記載しています。また、共創の拠点となるためには多様な主体が集い、交流し、対話を行うことが重要で、これによって、地域社会への貢献のみならず、キャンパス内の教育研究の高度化にもつながる好循環が生まれるものであるとしています。
また、(2)として、実現に向けた整備の考え方として、これまでも産学連携とか地域連携は積極的に行われてきていますし、アクティブラーニングスペースやオープンラボを整備してきています。それらの場や図書館、食堂などの施設、また、屋外空間など、様々なステークホルダーが交流、対話を通じて共創を行う場は重要な要素であるとしており、8ページ目、2ポツ目以降に、これらをイノベーション・コモンズへと転換するためには、各大学等がビジョン等に共創のコンセプトを明確に位置づけ、それを実現するためにキャンパスマスタープラン等の再構築を行うことで重要であると。また、老朽施設の戦略的リノベーション、フィジカル空間とサイバー空間の融合など、整備の重要性についても記載しています。
次に、9ページ目に移りまして、ここからがイノベーション・コモンズの事例になりますが、先ほどの骨子案でも少し触れましたが、事例から見えてくる成果、効果と、その取組の要点という形で整理しています。これらの詳細事例を巻末にまとめていますが、今回、現地調査を行った事例についても、それぞれの強みや特色を生かして様々な取組を実施しています。ここでは、本文にまとめた共創活動の目的、ここでは目的を掲げて共創活動をまとめていますが、共創活動の目的に沿う部分のみを事例の概要として示しています。事例の内容説明については、ここでは省略しますが、1番からいいますと、地域活性化、地域の産業振興の拠点として、千葉大学墨田サテライトキャンパス、地域に密着した教育・人材育成の拠点として共愛学園前橋国際大学、地域貢献、社会貢献に資する拠点として、立命館大学大阪いばらきキャンパス、世界と地域を結ぶ結節点、資産の有効活用に資する拠点として、大阪大学箕面キャンパス、これ以降は、まだ現地調査に行けていないんですけども、産学官の共創による最先端イノベーション創出に資する拠点として、東北大学青葉山新キャンパス、名古屋大学東山キャンパス、キャンパスを実証実験の場として活用している拠点として、広島大学東広島キャンパスをまとめています。
これらの事例から見えてきた主な成果、効果を(2)にまとめています。次世代の地域社会を牽引する人材の育成、日常的に交流できるスペースの確保と活動の可視化により、学生同士の交流や議論の活性化、地域産業振興及び活性化、実証実験の場として活用して、社会実装の促進ということ。あと、異分野研究者等の交流活性化、また、最先端研究促進、地域住民との交流、地域の国際化など、また、資産有効活用、地域との交流誘発ということが見えてきました。
ただし、13ページの上段の丸ポツのところに記載のとおり、調査できた事例から見えてきたものなので、各大学等にとっては目指すべきビジョンが異なるため、必ずしもここに記載のものに限定するものではないと断った上で、これらの成果、効果というものは、各大学等の特色、強みをより一層発揮させ、社会変革を牽引する取組の強化につながるものと期待できると記載しております。
また、主な取組の要点としては、(3)にまとめていますように、ビジョン等に共創が位置づけられ、全学的に取り組まれていること。また、そのビジョンを対外的に、明確に発信されていること。ビジョン等に基づき、ソフト、ハードが一体となった取組の実施、また、ステークホルダーと対話を通じて信頼関係を深めていること。施設の整備において、企画段階から関係者間で徹底的に議論、検討するとともに、企画段階から施設を使用する学生とか教職員、さらには学外のステークホルダーを巻き込んで、整備した後の利活用のイメージが共有されて、ソフト面、ハード面でのそういう工夫が行われていること。施設の整備において、活動の可視化、交流の誘発、フレキシビリティーの確保に配慮されていること。また、運用上の工夫や財源、体制整備についても一体的に検討していること。また、共創を行う各主体において、財源負担や体制整備についても責任を持って対応していることを記載しています。こちらについても、各大学等において、貴重な取組は異なるものですが、参考にできるものであるとして整理しています。
また、最後に14ページになりますが、今後の推進方策として、これらの取組の要点を行っていく上で、国、大学、地方公共団体、産業界が取り組むべき事項をまとめております。国は、イノベーション・コモンズの実現に資する施設の整備に重点的な支援を行うこと、また、予算のより一層の確保、充実を図る必要があること。また、多様な財源の活用、促進。研究プロジェクト等のソフトと施設整備であるハードが一体となった支援の強化や施設整備の企画段階からの支援を行う必要があること、また、共創活動の見える化や情報発信の強化等を行う必要があることなどを挙げています。また、国立大学等は、実現に向けてソフト面、ハード面の一体的な取組を継続的に進めること。また、様々なリソースを最大限活用できるよう、大学と内外の有機的な連携を図ること。また、地方公共団体、産業界においては、まちづくりの観点に大学の知を活用した地方創生の観点として含めることや、都市計画等においてもキャンパスを位置づけて検討すること。また、共創活動に応じて、各主体が責任を持って活動していくためには、必要な予算確保と体制整備が重要であることを記載しております。
次に、先ほどの概要で事例を説明しましたが、最終的に報告書にまとめていく上で、まとめ方について、簡単にポイントのみ説明いたします。16ページ以降になりますが、最終まとめに向けて、事例のまとめ方をワーキンググループでも御意見を伺いながら、構成、項目の立て方、項目に対する内容等を整理しています。今回、示している事例は4ページものですけども、今後、まとめていく事例につきましては、濃淡をつける予定としていまして、事例の内容とか取組の、当然パーツごとの事例等もまとめていこうとしていますので、4ページものや2ページもの、1ページものとしてまとめることを考えています。本資料について、一つ一つの事例については、先ほど概要等を説明しましたので、細かい内容の説明は省略いたしますが、各事例とも構成を統一し、1ページ目に概要、1ページ目の写真の右側にコスト面でどこから負担で出しているかということを公表できる範囲で、現時点でまとめております。また、このキャンパス等がどのような背景、経緯でできたか、また、検討プロセスに関してはどのぐらいの期間をかけて、どのような関係者が関わっていたか。また、2ページ目のほうには大学のビジョンとの関係支援はどのようなものか、キャンパス計画はどのように考えられているか。また、検討された体制はどのような方が入って、どのような検討をしたかという前段部分をまとめています。
また、3ページ目から4ページ目にかけましては、個別の施設などでどのような工夫が施され、どのような活動が行われているのかというものをまとめています。その後、その取組から見えてくる効果、成果、また、その効果、成果がどのような取組の要点によって生み出されているのか、その取組を継続していくための運営方法や体制を行っているか。最後に、今後どのように発展させていくかという構成でまとめています。事例のまとめ方についても御意見等をいただきたいと思います。
少し長くなりましたが、説明は以上になります。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。資料2がまとめ方の方向性(案)ということで1枚ものになっておりまして、資料3が具体的な記述をされたものです。そして、16ページ以降が先進的な取組事例で、最終まとめの一部になります。以上の点につきまして、皆様方から忌憚のない御意見等をいただければと思っております。
来年度に入ってから、再来年度の施設関係の概算要求をしていく上で、このまとめが一つの我々のよりどころになっていくと思います。そのような観点からも是非、御意見をいただければと思っております。何か御意見等ございます場合、挙手をいただければと思いますが、私としましては、今日、せっかく御出席いただいておりますので、皆様に何か一言でもいろいろなコメント、御意見等をいただければと思っております。どうかよろしくお願いいたします。
そうしましたら、こちらから御指名をさせていただきます。池田様、何か御意見ございませんでしょうか。

【池田委員】 経団連、池田でございます。御指名ありがとうございます。

【西尾主査】 真っ先に当ててしまいましたが、よろしくお願いします。

【池田委員】 かしこまりました。今回、示されたまとめの方向性(案)につきましては、特段異論ございません。よくまとまっていると思います。経団連が1月に発表した大学教育改革提言についても御紹介いただきまして、ありがとうございます。
その上で、強調・付言していただきたい点について、何点か申し上げたいと思います。
第1に、案文におきまして、「国民に支えられる国立大学等のキャンパス施設は国家的な資産を形成するものであり、また、地域の貴重な公共財である」と示されております。この前者と後者の両方の視点が大事であると考えています。後者、地域の貴重な公共財であるといった記述に関しまして、経済界では今、我が国経済社会の発展を考える際に地域の創生は不可欠と考えており、その重要な担い手・拠点となり得るのが地域の大学ではないかといった認識が高まっています。後者の記述に関して、地域創生の視点を強調してはどうかと考えます。
第2に、イノベーション・コモンズの施設整備や体制整備等に際しまして、大学の皆様、学生や教職員の方々のみならず、施設の利用が想定されるステークホルダーの方々の意見も聞きながら、進めていただきたいと考えております。
第3に、まとめの方向性の案の15ページ、「(1)国が取り組むべき事項」として、上から3つ目の丸にございますように、国から支援を受けてイノベーション・コモンズとしての施設整備を進める上で、国民の理解は欠かせないと考えます。ただこの点について、国の取組みのみならず、各大学の皆様方におかれても、共創活動の見える化などの情報発信の強化に取り組んでいただくことも重要と考えます。この点は経団連が1月に出した提言でも申し上げておりますが、大学が外部資金の獲得を目指す場合には、自らがどのようなシーズを有して、そのシーズがどの程度社会的価値を持つのか、あるいは創出する見込みなのかについても、外部に分かりやすく説明・発信することが重要だと考えます。
企業は今、財務情報のみならず非財務情報も積極的に開示した統合報告書を開示し、投資家をはじめとしたステークホルダーとの対話のツールとして活用しています。大学におかれてもぜひ、多様なステークホルダーとの対話や連携のツールとして、自らの教育・研究・社会の発展への寄与といった状況を記した、統合レポートを作成・発信して、大学を取り巻くスタークホルダーの理解を求めていってはどうかと考えます。
最後に、問題提起といたしまして、財政等の制約を考えれば、今後、各大学がフルスペックで施設や設備、人員、機能を装備することはなかなか厳しい面があるのではないかと考えます。各大学が自らの特徴的なイノベーション・コモンズを目指す一方で、各大学で相互に補完できる施設や設備、人員、機能等の可能性についても、検討を深めていただければと思っております。
私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。四つの観点から貴重な御意見いただきました。どうもありがとうございました。
特に最後におっしゃった、大学間で施設の共同利用をしながら、いろいろな活動を展開する方法がないのかというあたりは、今後、我々も考えていかなければならないと思っています。どうもありがとうございました。
いただきました御意見をどういう形でまとめの中に組み込んでいくかということについては、事務局等と相談してまいりたいと思います。貴重な御意見ありがとうございました。
それでは、山内先生、どうぞ。

【山内委員】 どうもありがとうございます。高エネ機構の山内でございます。
この報告書を読ませていただきますと、イノベーション・コモンズを実現する目的として、地域に対する貢献というのが非常に色濃く出ているように思います。地域の活性化、産業振興、地域密着の教育といったことが述べられておりますが、これも重要なことでありまして、これに対しては、もちろん全く異論ございません。ただ、地域という点に加えまして、研究の高度化という目的で、イノベーション・コモンズをどう実現するかという観点も、もう少し出てきてもいいんじゃないかという印象であります。
最近の研究振興局の中の資料を拝見しますと、日本全体の研究力強化をいかに推進しましょうかという、もう少し広い考え方で示されているように思われます。ここにはイノベーション・コモンズの実現を目指すということも当然含まれておりますが、幾つかあるキーワードの1つとしましては、大学共同医療機関、共同利用共同研究拠点の機能強化、それから研究基盤の共用促進など、共同、共用の推進ということが挙げられてございます。これは高いレベルの研究を推進していく上で、大学個々の機能を高めていくことはもちろん重要ですが、共同で使える研究施設を拡充するということは大変効果的に、効率的に全体としての研究力向上につながるという考え方があるんだろうと思います。
私があまりこれを申し上げると、我田引水ということになってしまいますので、あまり深入りするつもりはないんですが、こういった観点、個々の大学の機能に加えて、大学共同利用機関や共共拠点の機能強化によって、効率的に日本全体としての研究力効果につなげるということ、これがイノベーション・コモンズを実現する1つの重要なポイントになるということに言及していただくといいんじゃないかと思いました。
以上です。ありがとうございます。

【西尾主査】 山内先生、どうもありがとうございました。イノベーション・コモンズが、大学内のあるピンポイントの建物を言うのではなく、キャンパス全体であり、さらに、今度は日本全体を通じてのイノベーション・コモンズ同士の連携、ネットワーク化により大きく拡大することで、日本全体として学術研究教育の高度化を図っていくということを、方向性としてどこかで記しておく必要があるのではないかという御意見だと考えます。その御意見は、池田様からおっしゃっていただいたこととも相通じるものではないかと思っております。今後、その点を是非考慮していければと思います。
他に御意見等ございませんか。出口先生、どうぞ。

【出口委員】 出口です。よろしいでしょうか。

【西尾主査】 はい、よろしくお願いいたします。

【出口委員】 ありがとうございます。私が気になりましたのは、今回の報告案の中に、「段階的にキャンパス全体をイノベーション・コモンズへと転換していく」といったフレーズが出てきます。その元になるイメージが、現在、国立大学等が所有している既存のキャンパス、要するに境界の中のキャンパスの敷地内をどんどんつくり変えていく、再整備していくイメージのみで捉えられてしまっている点が気になります。
私が第1回目の検討会で申し上げましたが、これからは、むしろ大学の機能がまちにどんどん出ていくイメージを持つことも必要だと思います。例えば、各地域の都心部に立地するサテライトもありますし、千葉大学が進められている墨田キャンパスも、キャンパスという名称をつけて、墨田区内の民間施設を借り上げて、リノベーションして使用されています。既存の国立大学の用地の中をイノベーション・コモンズ化していくという概念だけではなく、都市内の空いているビルなど、これから、地方では空き地、空きビルが増えていくと思いますので、むしろ大学が既存のキャンパスの外にも出ていく機能拡充も考えられると思います。また、これから人生100年時代に入り、社会人対象のリカレント教育に、大学の新たな役割として、積極的に乗り出していくことになると思いますので、その点からも、利便性が高い街なかに大学の社会人教育機能を進出させていくといった考え方やイメージを持つことも必要ではないかと思います。既存のキャンパスをイノベーション・コモンズに変化させることのみをイメージして強調し過ぎると、ある1つの考え方に執着して、これからの社会のニーズに対応できなくなってしまうことが危惧されると思いました。以上です。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。大学全体をイノベーション・コモンズ化することを打ち出していくと同時に、ただ、それだけで閉じてしまうのではないという、出口先生がおっしゃったような機能がより強く求められると思います。そういう点も是非書いていくことが大切かと思います。先生、貴重な御意見、ありがとうございました。
土井美和子先生、どうぞ。

【土井委員】 どうもありがとうございます。今、出口委員のお話とも少し関連すると思うのですが、例えば、全体のPDFのページで言うと16ページ目、報告書のページで言うと7ページ目のトップのところに、キャンパスのどこを誰とどのように使うのかという全体の計画が重要となると書いていただいているのですが、下のページで言うと8です。ここの一番上の段落の一番下のところです。どこを誰とどのように使うのかというときに、キャンパスという意味を今、出口委員が御指摘されたように、既存のキャンパスではなく新たな物理的なキャンパスでもあり、また、今のデータドリブンな社会、特にパンデミックでリアルに対話することが難しいときでも、データをうまく利活用をしてイノベーションを起こしていくというときに、それをどのように使っていくかというのは、物理空間だけではなくサイバー空間での、先ほどの下條委員の御指摘でソフトというお話がありましたけれども、そういう物理的なネットワーク、サイバー空間でのネットワークと、そういう設計が重要になるのかと思います。
パンデミックだけではなく、今ウクライナ侵攻のように、なかなか航空機の運航の安全も脅かされるような、物流の安全も脅かされるような時期になってくると、本当にサイバー空間でのイノベーションをどう図っていくかということが非常に重要になります。一般市民も、そういう意味では自分たちのデータ、地方公共団体が持っているデータを大学が持っているデータとどのように連携させて、自分たちの生活をよくしていくかという意味でも、イノベーションを起こすというのは非常に重要となりますので、もう少し物理的な空間にとらわれず、サイバー空間とうまく組み合わせた、そういうキャンパスネットワークの設計をどうやっていくかという観点が盛り込まれるといいのかと考えます。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。これも非常に貴重な御意見かと思います。サイバー空間を取り込みながら、そのベースとして、我々の委員会の立場からするとフィジカルな空間をどう設計していくのかということの議論を深め、最終的にはサイバーとフィジカルの融合が進むようなキャンパスをどうつくっていくのかということが重要だと思います。非常に重要な御指摘、どうもありがとうございました。
岩村先生が途中までしか御参加できないということですので、先ほどのアクセシビリティのことも含めて、まとめに関して何か、御意見がございましたらお願いいたします。

【岩村委員】 ありがとうございます。先ほど申し上げた点に関して、もう一度、改めて中身を審査していきますと、まず1点目としてアクセシビリティの観点というのはまだ抜けていると思いますので、そちらはぜひ入れていただけると良いと思います。
また、先ほど、どなたか他の先生がおっしゃっていましたが、2点目はリカレント教育です。リカレント教育、生涯教育というものが非常にこれから重要になっていきますので、そういった拠点として、あるいはサテライトも含めて、大学が生涯教育の拠点になっていくことができるかどうか、その提言というのは、ぜひ入れていただけると良いのではないかと思います。
3点目として、これを全般的に見てみますと、「イノベーション・コモンズ」という用語といっているときのイノベーションの定義が大変に広いものであります。皆さんいろいろなことを考えていらっしゃるというところもございますので、果たしてどのようにこのプロジェクトが成功したと言えるのかというところをきちんと絞り込むことが重要なのではないかと思います。例えば、いろいろなステークホルダーが集まる場所にするということであれば、それをきちんとトラックすることが必要となります。今、現状は閉じられたものであるのに対して、外部からのステークホルダーの滞在時間が増えたとか、あるいは外部ステークホルダーとの共同プロジェクトが増えたとか、そういったアウトプットものをきちんと設定をしていく。あるいは、もちろんその先にイノベーションというものが生まれたかどうかということについて、単にプロジェクトを実施したが起こったということだけではなくて、イノベーションをどのように定義して、イノベーションを生み出す拠点になったのかどうかというところまで、もちろんできればいいわけですけども、何をもってサクセスであるかということを、これだけ投資をしていくわけですから、きちんと定義していくことが重要ではないかというのが一番大きいポイントとなります。
とはいえ、サクセスの定義は非常に難しいところでありますので、成功の定義というものは幾つか考えられ得ると思います。幾つかスモールプロジェクトのようなもので実験をしてみるということが、この先、提案の中に入ってくるとより良いと思います。とはいっても実際に、最初から全て決めるというのは、かなり難しい可能性はあるかという印象もございます。例えば、市民参加型、地域参加型、グローバルとのコネクション、社会人のリカレント、アクセシビリティなど、それぞれのプロジェクトがターゲットとするいろいろな観点があると思いますけれども、そういった幾つかの課題について、あるいは目標と設定できるようなスモールプロジェクトによって検証していくといったアプローチを提言に入れるということもプロジェクトのサクセスを見極める上で考えられるかと思いました。

【西尾主査】 岩村先生は、この会議の最初の時から、イノベーション・コモンズを基本コンセプトとする第5期基本計画の最終年度になったときに、どれだけ達成されたのかを測る評価指標を想定することが大切だとおっしゃっていたのですけれども、その点は非常に重要なことと考えます。イノベーション・コモンズをきっちり進めていったときに、どういうものを達成できるのかということを、明確にしていく必要があると思っています。どうもありがとうございます。

【岩村委員】 はい。

【西尾主査】 そうしましたら、上野先生いかがでしょうか。

【上野委員】 ありがとうございます。中身のことについては、いろいろな皆さんがおっしゃっていることを、ぜひ説明していただければと思いますし、よいものになるという予感があります。
ただ、ここで申し上げたいのは、文教施設企画防災部が、こういったことを発信していくというのは、これまでも幾つか事例としてありましたが、往々にして、大学の中での施設担当部署、あるいは大学執行部の学長先生、施設担当理事の方々までは、こういった報告書が上がるんですけれども、実際に共創を生み出す一線で活躍している研究者とか、地域とのチャンネルを持っている研究者、個別の活動は非常にすばらしいけれども、それが大学全体として、情報共有されていないということもありますし、逆に、そういう方々が、こういったイノベーション・コモンズなどの国が推進しようとしているということを、なかなか知る機会が少ないと思います。その部分を、きちっと情報や考え方が伝わるように、今後、少し方法を考えていただければと思っております。
以上です。

【西尾主査】 ありがとうございました。上野先生がおっしゃられるのはごもっともでして、そういうことが気がかりでしたので、この間、国大協の総会で下妻部長より、国大協の全学長に、イノベーション・コモンズの考え方や、施設関係の基本計画が国立大学法人の中期目標期間とはずれているということなどの説明をしていただく、迫力のあるプレゼンテーションをしていただきました。
ところが、今度は上野先生が今おっしゃった、各大学の長からその大学の構成員の一人一人までどう伝えるかということが重要です。事務局にお願いしたいのは、各々の大学の施設部のトップに、学長と一緒になって、各大学の末端まで、イノベーション・コモンズの考え方が浸透するように依頼していただければと思っております。
上野先生、ありがとうございました。
片岡先生、いかがですか。

【片岡委員】 それでは、取りまとめの方向性案を拝見して、思ったことを述べさせていただきます。
全体の大きなくくりについては、これでよろしいかと思います。国が求めている国立大学の在り方から始まって、地域、あるいは産業界がどういうことを期待されているかということが前半に書かれています。それに対して、イノベーション・コモンズがどういうコンセプトのものなのかを書き表した上で、どう整備を進めるか、そういう流れになっていると思います。資料では、イノベーション・コモンズの考え方の(2)のイノベーション・コモンズの実現に向けた整備の考え方が、7ページから記されておりますが、最初のところの幾つかの丸で示されている事項は、先ほどから御意見も出ているところの、共創の場としてどういう機能を期待するかということについて、述べられている箇所だと思います。ここに、先ほどのリカレント、それから研究の高度化が盛り込まれるとよいと思いました。
8ページのところの上の3つの丸の事項、これがマスタープランのような全体計画の必要性をうたっている部分だと思いますが、ここでは学内のマスタープランにとどまらず、共創の場が広がりを持ったものであるとすれば、当初から地域のステークホルダーが関わったマスタープランを想定しておく必要があるのではないかと思いました。
それから、次の中ほどからの、「ポストコロナ社会においては」というところの丸の事項と、それから1つ飛んで、その下の「フィジカル空間等」というところ、これは恐らく新しいつながり方、新しい共創の場のつくり方ということを意味していると思いますので、1くくりにできると思いました。
それから、その2つの丸の間にあるソフト、ハード両面の整備の必要性というところは、1つ、別項で取り出してもよいのではないかと思いました。
それから最後の8ページ目の丸ですが、ここが共用化をどう進めるかというところで、大学がこれまで保有している施設等の共有化に加えて、自治体等が持っている施設との共用化も進めていく必要があるというくくりでまとめていただくと、分かりやすいかと思いました。
以上です。

【西尾主査】 片岡先生、貴重な具体的コメントを本当にありがとうございます。マスタープラン等を地域のステークホルダーと連携して策定する地方公共団体としても、財務省に予算要求を積極的に行っていただける可能性もありますので、そういう点からも、地域を巻き込むことが大切だと思っております。片岡先生、いただきましたコメントを反映していくべく考えてまいります。ありがとうございました。
倉田先生、いかがですか。

【倉田委員】 ありがとうございます。今、御指摘があったこと、それから、その前にも何人かの委員の方から御指摘があったことと関連するんですけれども、私自身、全体の資料を見ていると、まだ単独の、一つ一つの大学が自分のキャンパスの中でというニュアンスがまだ強いという気がしていて、今、御指摘のあったように、もう少し広がりを持ったイメージがないとまずいのかと思っています。
特に、ここで気になっているのは地域という言葉が非常に頻繁に出てくるんですけれど、その対象となる地域というのが、たまたま大学が立地している地元自治体というぐらいの単位なのか、場合によっては、恐らく県とか、そういった広域にわたる対象もあるんじゃないかと思っています。そうしたときに、施設整備という考え方も、特に地域とのつながりで考えていったときに、いろいろな在り方があるんじゃないかと。先ほどの出口先生のお話にあったように、大学が既存のキャンパスから外に出ていくというのもあると思いますし、先ほどお話のあった、特に広域であったりする場合には、よりサイバー的な、そういった空間、ネットワークというものがより大事な場になってくるだろうと思うので、地域というあたりも、もう少し明確に意識した記述になっているといいんじゃないかと。
ただ、今日見ていると、何となく大学が立地している地元自治体というようなニュアンスのほうが強く感じられるので、そこはすごく広く捉えたほうがいいんじゃないかと思っているのと、特に広域的な地域というものを意識すると、単独の大学というよりは、広域の地域に立地する様々な大学との連携とかということが非常に大事になってくると思いますし、それから補完関係、そういったものも非常に大事になってくると思うので、そういった閉じたイメージじゃなく、もう少し広がりを持った広域的なものにも対応できるような施設の在り方というものもあってもいいかと思いました。
それから、あと、それとも関連するんですけども、今回はあくまでも、これは国立大学法人等の施設整備ということなんですけども、事例にもありますように、私立大学のほうにもそういった問題意識を持って、教育研究活動をしているところもあるので、そういうところとの共創というのも、これはあくまでも予算的なことで言うと、どうしても国立大学だけが対象になってしまうように取れるんですけれども、イノベーション・コモンズということで言えば、地域にある私立大学とか、ほかの教育施設機関、場合によっては、海外の大学なんていうのも、そういった対象になってくるんじゃないかと思うので、もう少し広がりのあるイメージでイノベーション・コモンズを捉えているという視点が大事かという気がいたしました。
以上です。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。先ほどもいろいろ御指摘いただいた点を、より具体的に、また、よりインパクトのある形で反映していきたいと考えます。倉田先生、どうもありがとうございました。
それでは、下條先生、どうぞ。

【下條委員】 ありがとうございます。先ほど来、上野先生、あるいは片岡先生、倉田先生が言われていることはもっともで、今回のイノベーション・コモンズはかなり、いわゆる従来の施設整備からは範囲がかなり広がっているんだろうと思います。
それがまた、これは従来の施設整備のような予算のつけ方でいくと、先ほどの広がりとか、あるいは地域性だとかいろいろ限界が出てくるということは否めないので、1つの方策は、特にソフト、ハードということが一体ということを考えると、ソフトのサイクルはかなりハードよりは早いので、要するに25年とかそんなサイクルではなくて、恐らく2年、3年というスタンスで回さないといけなくて、そういう意味では、ある種関連プロジェクトだとか、そういったものを施設整備の中に入れ込んでいく、予算をつけるかどうかは別としても、入れ込んでいくということは1つの方策かと思いました。よろしくお願いします。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。今、おっしゃっていただいた点も、今後の重要な方向性かと思っております。
竹内先生、いかがでしょうか。

【竹内委員】 ありがとうございます。竹内でございます。まとめの方向性、資料3につきましては、現時点では素材を並べた段階という印象を持っておりまして、先ほど、他の委員からも御発言がございましたけれども、もう少しまとめられるものはまとめていって、そこで何を言わんとしているのかというか方向性みたいなものを、もう少し明確に出しておくということが重要かと考えました。
それから、今回のイノベーション・コモンズで非常に重要なポイントだと私が考えておりますことは、資料2のまとめの方向性の案の、「事例における主な成果、効果」というところに、「各大学の特色、強みを発揮させ、社会変革を牽引する取組の強化につながる」ということが記されていることです。このポイントが一番重要であると思っておりまして、各大学等の特色、強みを発揮させるんだということが資料3の中では埋もれてしまっているように思いますので、そこは少し強調していただくほうが良いのではないかと思います。
以上でございます。
 
【西尾主査】 重要な御指摘をいただき、どうもありがとうございます。各大学が全く同じようなことを、金太郎飴みたいに実行するのではなく、大学の強みをさらに強化すること、それがイノベーション創出につながるということでした。その点を、今後気をつけていくこと、また、内容的にまとめられるものは集約していくということについては、今後、考えていきたいと思います。
それでは、恒川先生、どうぞ。

【恒川委員】 ありがとうございます。私どもの大学でも、総長が国大協での報告としてイノベーション・コモンズのことを部局長会等で紹介されました。これで部局長の先生方には伝わったかもしれないけども、それが本当に末端まで伝わっているのかというとなかなか難しいところだと思っています。一方で、ほとんどの大学の施設は、個別の部局が管理したり、整備を要求したりするということで、その要求するタイミングの時に、イノベーション・コモンズということが意識されていない限り、なかなか個別の部局からはそういう形では出てこないということになるんです。なので、もう一つ大事なことは、多分各大学とも、異分野の研究者たちが交流するような拠点とかセンターみたいなものができていると思うんですけども、そういうものが中心的に役割を果たさないと、イノベーション・コモンズはなかなかできていかないのかという気がします。個別の部局に施設をつけることを中心に概算要求をしているという時点で、実はなかなかイノベーション・コモンズはできていかないんじゃないかという気がしました。
そういう意味で、学内の交流を活発化させて、そこから、共創と言うと外との交流のことが重視されているんですけども、実は、特に総合大学などではいろいろな人たちがいるけど、意外と学内での交流によるイノベーションが起きていないということを、もう少し考えるといいかと思いました。
 
【西尾主査】 学内でも、部局の壁というものを低くして、お互いがイノベーション・コモンズの考え方を強力に進めることを、さらに考えていかなければならないという重要な御指摘だと思っております。大学の現状を見据えた上での貴重な御意見どうもありがとうございました。
それでは、香川県の小瀧様、いかがですか。

【浜田委員代理(小瀧)】 ありがとうございます。本日の皆さんの御意見は承りまして、また、こちらのほうでも知事に報告して、いろいろ勉強させていただきたいと思います。ありがとうございました。

【西尾主査】 香川県の考えておられることを、是非、インプットしていただければと思いますし、地方公共団体として、どういうことを今後、望んでおられるか等、また、お話しいただければと思いますのでどうかよろしくお願いいたします。
一通り御意見はいただけたのかと思いますが、さらに追加で御意見はございませんか。今までいただいた御意見をもとに、今後、改訂をしていくという方向性でよろしいでしょうか。例えば、16ページ以降の各々の事例のまとめ方等についても、こういうことを工夫したほうが良いのではないかという御意見はございませんか。
そうしましたら、資料3のイノベーション・コモンズの実現に向けて、まとめの方向性(案)については、本日いただきました御意見をもとに、今後さらに改定をして、また皆様から御意見をいただければと思っております。どうもありがとうございました。
事務局としては、この議題に関してはこれでよろしいですか。

【藤井大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 本日は大丈夫です。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
それでは、続いて、議題3について、事務局から説明をお願いいたします。

【藤井大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 資料4を御覧ください。
効果的な施設整備の方策・多様な財源確保のための方策について、資料4としてまとめたものです。この資料は、1ページ目に関しましては、第5次5か年計画を策定する際の最終報告の多様な財源の活用促進に記載の項目がありますが、そちらを抜粋して、内容を要約して表記しています。この中で、進捗のあった項目について御報告させていただきます。
まず、1つ目の丸のポツの内部留保の仕組みの構築につきましては、当該年度の自己財源で、整備した施設の取替え更新の財源等の内部留保について、施設の取替え、更新の財源等の活用を目的として、内部留保できるように会計基準等が今後、改正される予定となっています。また、4つ目のポツの理解しやすい財務諸表につきましては、これまで業務実施コスト計算書というものに記載されていました、損益外減価償却額というものにつきまして、令和4年度から損益計算書の中に、欄外ではありますが、記載されるように会計基準等を改正する予定となっております。
また、その他、2ポツ目に関しまして、長期借入金の借入れ、債券発行の対象事業のさらなる拡大等と、3ポツ目に関する間接経費収入の活用促進につきましては、現在も引き続き関係部局と連携しつつ、検討していくとしております。
また、下段につきまして、運用改善・事例の周知に関しましては、2つ目のポツの共創的研究資金等の直接経費の活用促進について、直接経費の取扱いについて、今後、情報を収集して、情報提供等を行っていくこととしております。それ以外の3点については現在も実施していまして、引き続き実施する予定としております。
それから、2ページ目につきましては、新たな規制の特例措置として、構造改革特別区域において、国立大学法人等が所有する土地等を活用して、革新的研究開発の社会実装に関わる施設を整備する場合に、土地等の貸付けに係る大臣認可を届出で可能にするということが、推進本部において決定したということを記載しています。
この資料につきましては、多様な財源確保のための方策等を中心に、まとめて記載していますが、本日は、委員の先生方にイノベーション・コモンズの実現に当たって、支障となっていることがほかにないか、規制緩和や制度改正をしたほうがよい点など、幅広く御意見をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
説明は以上です。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。イノベーション・コモンズを実現する上でも、財政的な基盤がないとなかなか実現できないわけですが、その上で、いわゆる規制の緩和などが非常に重要なことになってまいります。今、御説明いただきましたことに対する質問でも結構ですし、また、皆様が現場において、こういうやり方がないのか、こういうことはもう少し規制が緩和できないのかなどの提案等、何なりと結構ですので、お気づきの点をおっしゃっていただければと思いますが、いかがでしょうか。
私の方からお伺いしたいのですが、国立大学等における多様な財源確保のための方策等について、最初のページの4番目に、理解しやすい財務諸表とありますね。ここは、国立大学法人会計基準ではなくて、企業会計的なキャッシュフローが現実に分かるような形の財務諸表に改定されていくのですか。そのあたりをもう少し教えていただけるとありがたいのですが。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 すいません、整備計画室長の西村です。
今、西尾先生の御質問の点なんですけども、ここで書いておりますのは、ここに少し書いておりますが、損益外の情報を含めた表記の工夫等と書いておりますけれども、これまでも、特に施設関係でいいますと、損益外減価償却をするとか特殊なやり方が国立大学法人はありまして、そういうやり方自体は変わっていないんですけれども、次の令和4年度の財務諸表から、損益計算書の欄外に、損益外減価償却額をというのを書いて、損益計算書のものを見れば、いわゆる損益外の部分も含めて、どれぐらい損益が出ているかというのが分かるような形で、国立大学法人会計基準が改正されることになっておりますので、ここでは、その点を書いているということでございます。

【西尾主査】 そうすると、減価償却に関する考え方が一応反映されるようになるということですか。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 そうですね。取扱い自体は、そこが変わるものではないんですが、というのも、いずれ補助金を基本的な財源にするということ自体は変わるものではありませんで、若干名称はたしか変わったと思うんですけども、取扱い自体が変わるものでございません。あくまでも、表記の仕方として見やすくなる、それも1枚の書類で分かるようになるといった形で改正がなされているということでございます。

【西尾主査】 今までの国立大学会計基準での毎年度の収入、支出に関する諸表の作り方、そのもの自体は変わらないんですね。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 そうですね。大きく変わるものではありません。

【西尾主査】 分かりました。何とか減価償却という考え方が導入されて、国立大学をはじめとする諸機関の施設関係が、どれだけ老朽化しているのかということが容易に示せないと、なかなか危機意識を持ってもらえないのではないかとずっと考えていますが、大幅には変わらないわけですね。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 そうですね。これは、会計基準の検討会がまた別にございまして、そこで議論されてきておりました。おっしゃるような懸念点も含めた上で、議論されたと私も承知しておりまして、その上で、国立大学の特殊性を踏まえた会計処理の仕方までを変えることはしないけれども、西尾先生がおっしゃるとおり、それをいかに外のステークホルダーの方に理解してもらえるような財務諸表にするかという観点での議論がされており、結論だけ申し上げましたけども、そういう中で、いわゆる損益の中で行う減価償却と補助金を措置したようなもので、損益外でやるような、損益外というのを1つのものでぱっと見えるような形にすることで、外向けには、それを合算した形ですぐ示すことができるようなフォーマットにしようじゃないかということで、それが今後、新しい令和4年からの財務諸表に適用されると聞いております。

【西尾主査】 そうですか。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 なので、その御懸念の点も含めての一応改正という形になっております。

【西尾主査】 国立大学法人会計基準の減価償却の概念が陽に入っていない会計基準の導入には前提があります。国立大学法人法が審議された国会で、参議院、衆議院の附帯決議において、運営費交付金、もちろん施設整備費補助金も含めたものを、国として十分に手当てするという前提の下で、あのような会計基準になっていますので、先程来、質問をしております。皆様から、こういうことをしたら、より施設整備ができるのではないかというようなことはございませんか。
土井美和子先生、どうぞ。

【土井委員】 ありがとうございます。今、西尾先生が御指摘されたことは常々思っていることです。最近、そういう意味では、調達に関しまして、半導体関係とかパンデミックの影響もありますし、今回のウクライナ侵攻などで、また問題になっているところもありまして、非常にいろいろ民間企業でも難しいところを、国立大学とか国の独法もそうですけれども、それをフォローアップしていくというところはなかなか難しいんです。人手不足の中でどうやっていくかというのは非常に難しく、一度発注してしまうと、なかなか差し替えられず、それが遅れると研究が遅れるということで、特に今、施設と申しましても、そこにネットワークを張り巡らせないといけないわけで、そこに関しての調達は、今後、大変危ぶまれると思います。特に経済安保ということで、中国の製品が難しく、また、実は施設だけじゃなく人材の確保も難しくなってくるわけで、そういうところを何かもう少し、個々の国立大学がやるのではなく、きちんと国全体として担保する仕組みとか、何かもう少し考えていただくことも必要ではないかと思います。
全ての大学がやろうとすると難しい部分が出てくると思うんです。フォローしきれないというところも出てくるので、そこの部分に関しては、特に経済安保というか、安全保障に関しましては、経済産業省のほうの所掌になってきまして、なかなかそちらのほうのネットワークは弱いところもたくさんある。特に国立大学は弱いところもたくさんあるわけで、そういうところを、いかに情報共有をやって、調達を含め、うまくやっていくかというのは、今後、喫緊の課題ではないかと感じております。
ぜひ何かの折に御検討いただければと思います。人材確保の点からも非常に難しいと思いますが、これができないと、予算がついても執行できないという事態が、今後発生してくると考えております。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】 本当に重要な観点だと思います。ありがとうございました。
他に何かございますか。上野先生、大学で建物の整備をしていく上での財源の確保ということで、何か御意見はございませんか。

【上野委員】 施設整備の建物そのものの工事費は、国の予算をお願いすることが多いんですけども、それを計画する前段階の基本構想作業とか、外部のコンサルタントの協力を得たりとか、いろいろなところとネットワークを組んで、大学の中の資金でやるというのも1つの考え方だと思います。しかし、そういった知恵を出すことに対する協力作業などについても、国が補助してくれるといいなということを常々思っています。
これは国にお願いすべきというところもありますし、大学内部でもう少し考えるべきということも、両方側面があると思いますが。

【西尾主査】 ありがとうございます。他にございますか。
1番目の内部留保の仕組みの構築という点については、大学として新しい大きな建物を建てようとしたとき、毎年、内部留保して、一定額を積み上げていくようなことが、今後、より簡単にできるようになると考えてよろしいですか。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 文部科学省、西村です。御指摘のとおりです。こちらも、先ほどの損益外のところと同じく、令和4年度から適用と聞いておりますけども、新しく特定償却資産引当金という項目を、財務諸表に計上することができると聞いておりますので、そういった中で、内部留保できるということでございます。施設、それから設備の取替え更新というものに使えるものと聞いてございます。

【西尾主査】 その場合、我々としては重要なことですが、10年間ぐらいの先のことを計画して、毎年一定額を積んでいくときに、積立額に対する金融機関等での利子は、そのまま大学として使えますか。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 大学、利子で入ってくる分ですか。

【西尾主査】 はい。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 恐らく、財源は特に限定されていなかったと思いますので、現金は裏づけのあったものだったと思いますけども、引当資産という形で計上出来るとは聞いております。

【西尾主査】 そうすると、積み上げた金額プラス、それに付く利子も使えるということですね。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 すいません。利子をそれの財源として充てることができるというイメージかと思います。

【西尾主査】 例えば毎年、1億円ずつ積んでいったとします。それだと10年間だと10億円になりますが、毎年、それをどこかの金融機関で運用するということはできないのですね。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 正確に言いますと、1億を特定引当資産として計上すると。そこで運用した利子分が出たら利子分も、利子はどこに入れるかというのは大学の判断だと思いますけど、その利子も含めて特定引当資産して計上すると。

【西村大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室長】 ということだと思います。それは別に何の財源をという縛りはなかったと思いますので。

【西尾主査】 今後、例えば以前から進めていただいているようなマッチングファンド的なものに、大学側からもそれなりの負担をしていくことになりますが、その財源をどうしていくかという点について、様々な方法を考えなければならないと思っていまして、お伺いしました。
皆様、他にございませんでしょうか。そうしましたら、ありがとうございました。
それでは、全体を通じて、何か御質問や御意見はございませんか。
では、事務局から資料5の説明及びその他の事務連絡をお願いいたします。
【藤井大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 分かりました。
今後のスケジュールを報告する前に、1点だけ施設整備補助金の予算について、御報告させていただきます。参考資料5になりますけども、令和3年度補正予算につきまして、上段に書いていますけども、予算額として646億円が補正予算で決定しております。それで、こちらに関しましては、主に老朽対策とか、あとライフライン更新などの安全安心な教育研究環境の整備に充てることになっております。また、令和4年度予算額、これは案になりますけども、363億円を計上しているところであります。
こちらにつきましては、以前、3本柱とお話ししましたけども、下の主に機能強化等への対応ということで、最先端研究とか、あと、人材育成等に貢献する施設整備、あと、大学附属病院の再生整備、また、一番下にあります、カーボンニュートラルに向けた取組ということで、全体の省エネの取組を底上げするような取組に関して補助することになっております。こちらが令和3年度補正予算と、令和4年度予算額、合わせて約1,000億を使って、来年度、各大学が執行していくという形になっております。
それでは、今後のスケジュール、資料5になります。今後のスケジュールは、こちらに資料5として示しておりますが、1枚後ろの、こちらのポンチ絵のほうで説明させていただきます。4月22日、ちょうど1か月後になりますけども、第4回調査研究協力者会議、こちらは15時からの開催を予定しています。ここでは、本日の委員からいただいた意見を反映、また、修正して、さらにブラッシュアップしたまとめの方向性(案)について、主に議論していただく予定になっております。その後、若干遅れておりますが事例調査等を補完しつつ、6月頃に第3回のワーキンググループを行いまして、全体的にこちらのほうで、順次、全体的な事例をまとめつつ、8月頃に第5回調査研究協力者会議において、事例も含めて、最終まとめ(案)の議論をしていただく予定としております。
合わせて、事務連絡をさせていただきます。本日の会議で意見を十分述べられていない委員の方に関しましては、随時、メール等で受付をしておりますので、送付いただければ、こちらで資料等にも順次反映していきたいと思っております。
また、本日の会議の議事録については、追って委員の皆様に御確認をお願いした後、文科省ウェブサイトに公開したいと思っております。また、第5回会議については、まだ日程調整を行っておりませんが、また、改めて日程調整をお願いいたしますので、よろしくお願いいたします。
以上になります。

【西尾主査】 ありがとうございました。今後の予定以外に事務局の方からは特段ございませんか。よろしいですか。

【藤井大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室室長補佐】 大丈夫です。

【西尾主査】 それでは、本日も多くの貴重な御意見をたくさんいただきまして、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。
それでは、これにて閉会といたします。次回、またどうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

 

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