学校施設のバリアフリー化等の推進に関する調査研究協力者会議(第1回)議事要旨

1.日時

令和2年7月31日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 学校施設のバリアフリー化等の推進について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員) 阿部一彦,岩﨑元,上野淳,古俣和明,菅原麻衣子,髙橋儀平,田原優子,三田村裕(敬称略)
(特別協力者) 丹沢広行(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】山﨑文教施設企画・防災部長,森施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,田中施設助成課課長補佐,木村施設企画課課長補佐
【初等中等教育局】若林特別支援教育課課長補佐
【高等教育局私学部】竹内私学助成課専門官

5.議事要旨

・山﨑文教施設企画・防災部長より挨拶。
・事務局から,資料1に基づき本会議についての趣旨・委員等の説明,資料2に基づき本会議の運営について確認し,原案のとおり決定。
・主査及びその職務を代理する者については,髙橋委員を主査に,上野委員をその職務を代理する者に選任することについて了承。
・髙橋主査より挨拶。
・事務局より資料3に基づき学校施設のバリアフリー化を取り巻く現状等について説明。
・国土交通省より資料4に基づきバリアフリー法の改正について説明。
・岩﨑委員から、資料5に基づき千葉県富里市立浩養小学校のバリアフリー化について説明。
(○委員の発言,●事務局の発言)
○ 体育館に多機能トイレがあることについては、自身の調査研究として、熊本地震の際に避難所として利用された学校施設を現地視察したことがあるが、体育館に設置されていた多機能トイレは、地域の特に高齢者の方々のニーズがあったということも何度か伺い、そういった観点も重要。

○ 体育館の多機能トイレは必要。また、知的の特別支援学級の場合、トイレの失敗を想定した近い位置にあることも重要。

○ 学校教育法施行令の22条の3に該当する児童が地域の小学校、中学校に通学する場合、当該学校にエレベーターや多機能トイレが整備されていれば特段の設備の準備なく引き受けられるというケースがあった。一般の学校でも将来のインクルーシブ教育環境に向けて、基本的なバリアフリー環境が整っていることは重要。学年で階が変わることも考えれば、各階に多機能トイレがあることも重要。

○ バリアフリー法の改正の中でも様々な事業者の連携が重要と言われており、校区内外・市内外で自治体・学校間の連携を進めていくことも重要である。

○ 車椅子の児童が中学を選択するときに、市内の中学校ではエレベーターを設置することは結局かなわず、市外の中学校に進学されたが、その際は、市教委同士で相談した。

・田原委員から、資料6に基づき学校施設に求められるものについて説明。

○ 資料にあるLGBTsの視点やインクルーシブ教育の視点等も重要。加えて、医療的ケア児の視点も検討すべきではないか。昨今は、医療的ケア児の中には障害の程度が重度の児童生徒だけでなく、自立歩行や会話が可能な児童生徒も増えていると聞くため、そういった点も考慮されるとよい。

○ 車椅子を利用する子供のためという視点は大事だが、障害がある保護者や先生、けがをした場合という視点も重要。震災の体験から、障害がある人が避難所を使うときにトイレの利用が大変だったという話を多く聞いた。トイレまでの移動に時間がかかると大変。さらに、洋式トイレしか使えない人が多いため、洋式化率も高められるとよい。
また、障害のある当事者からは、実際、車椅子を利用する方にとって、砂利がある駐車場や雨が降った後の土のぬかるみが大変と聞いた。障害があると可哀そうだという受け止めを先生ですらされていることもあると聞いており、そういう意味でも、障害理解のための学校訪問は重要。
既存の建物でも数値目標をつくってバリアフリー化を考えていくことが重要。

・事務局より資料7に基づき主な検討事項(案)について説明。

○ 昨年からの台風とコロナの関係で、これまでの課題がさらにクローズアップされた。災害時の避難所となる体育館の空調の問題は、これまでは熱中症対策という意味合いが強かったが、コロナに対する要素も関連してきた。
GIGAスクールの関係も、当初は当然、情報化の流れでの対応だったが、最終的には各家庭での対応も含めてスピードアップして対応する必要がある。このコロナ禍でよい方向性を出していけたらいい。

○ 古い学校施設だと、建築当初にはバリアフリーという発想がなかったために、後からバリアフリー化の対応をしたものがかなりあるが、実際、介助がついていても上れそうにないくらい急角度のスロープも少なくない。そういった、バリアフリー化が適切なものとなっているか点検することも重要。
それから、障害のある児童生徒が入ってくることで、急遽施設を一部造り直すということはよくあるが、地域住民の避難所という機能で学校を見たときには十分でないところが多々ある。また、障害のある教員の人事配置が難しいということもある。バリアフリーの対応について、最低限これだけは必要だというマストの基準が具体的にあるとよい。

○ インクルーシブ教育環境に関連して言うと、10年前くらいまでに言われた建物の1階に1ヵ所だけというのではなく、例えば、各フロアに1か所以上は多機能トイレを設けるといった目標設定や水準について、これから議論するのかしないのかというあたりは、この協力者会議の割と大事なところ。
それから、学校というのは災害時の避難所となることに加え、地域の生涯学習の非常に重要な拠点なので、日常的に誰もが学校に来るということが大事な観点になる。

○ 東日本大震災の経験から、避難所関係は、市町村が関係していたため県立の特別支援学校がそのときには避難所になることが難しかった。特別支援学校はバリアフリー化しているから、活用がスムーズになされれば良い。9年半ぐらい前のことなので、今の状況を教えていただきたい。
それから例えば、これも阪神・淡路大震災後、神戸では学校においてもバリアフリー化のための取組が行われたように聞いている。そのような地域の好事例も示していただきたい。

 学校施設の避難所指定状況は、平成31年の防災機能に関する調査の結果であるが、公立小中学校の場合は94.9%が避難所に指定されている一方で、特別支援学校については45.5%で、非常に低い数字になっているという状況。市町村が地域の避難所として指定していくため、設置者の違いも背景事情としてはあるのではないかと推察される。
また、関連して、複数の委員からトイレの洋式化の話があった。平成28年4月現在のデータだと、トイレの洋式化率が43.3%という状況。以降トイレの洋式化は文科省としても進めているため、整備率は上がっている。

○ 資料7の主な検討事項の中の(1)の緊急提言について、その中の学校施設のバリアフリー化の考え方について、どのような考え方で推進していくかという項目が挙げられているが、障害があっても地域の学校に行きたいという希望があれば行ける状況にするのが、1番目標とすべきところ。
そのためには、一つに基礎的環境の整備のボトムアップをどれだけ進められるかにかかっている。これは日本も批准している障害者権利条約に基づいて、積極的に努めていくべきではないか。
また、バリアフリー化の議論を進めていく中で、教室に入れればよいという話で終わってしまいがちである。しかしながら、例えば車椅子のお子さんは災害時の避難のしやすさから、教室出入口に近い一番前の席になりがちである。しかし、子供たちの観点からすると、席替えという楽しみがなくなってしまう。また、昨今、アクティブラーニングということも言われているが、教室内での多様な学び方を障害のない子たちと一緒にできるという状況をつくっていくべきだが、教室前後を行き来する通路スペースが狭かったり、教室自体が狭いと車いすの児童は教室内での動きに制約を受けてしまう。
これに対して、具体的なハード整備を結びつけるとしたら、まず広さの確保が挙げられるが、運用という面では先生方が車いすの児童の移動のしやすさという観点からも、いかに教室の中の環境を整えていくか、工夫していくかという視点が大事。先生方の心のバリアフリーという観点からの研修の強化もさらに進めてほしい。

○ バリアフリー化をどのような考え方で進めるか、その見方のところで、在籍児童生徒はもちろんだが、それだけでなく、保護者の視点や避難した方の視点、交流活動を行っている障害者施設の方々の視点、地域の高齢者の方々の視点等、様々な意味で、子供だけではない視点に立って考えていかなくてはいけないと改めて感じた。
また、トイレの洋式化、多機能トイレの数等がこれから課題になってくる。
加えて、水道の蛇口について、車椅子利用者や、力が弱い人のために、またコロナ対策の観点もあるが、センサーつき蛇口の整備があっても良い。
最後に、難聴児童のために、担任がマイクをつけて、それを受信しながら勉強していたという例がある。周りの児童生徒も協力し静かに授業を受けることはしているが、当該教室や隣、上階の教室において机・椅子の脚が床を引きずる音がマイクに入って聞き取りづらいことが問題で、春先、教員が消音のためのキットを取り付ける作業を行うことに非常に大きい時間的コストがかかる。そのため、机とか椅子の脚の部分に消音のための機能が最初からあると良い。

○ 心のバリアフリーの点で、教職員の障害のある方への受け取りが、まだかわいそうだという段階の人がいる。研修をしっかり進めていこうと思った。
先ほどの議論でエレベーターを求めて学校を選んでいる児童の話を聞いて、その地域の中で住民みんなで学んでいくというスタンスでありたいと思うので、バリアフリー化をしっかり進めていかなくてはいけないと思った。
それから、駐車場から校舎へ入る、その間のマンホールの蓋が飛び出ていたり、溝が変な形で入っていて、わずかなスペースが凸凹しているとき、わざわざ教育委員会に掛け合っても、なかなか補助金がないものだから後回しになっていくことも問題。高齢者やハンデのある方を呼んでいるのに、呼ぶに呼べない。

○ バリアフリーというと、エレベーターやトイレや段差に議論が集中しがちだが、一般的な小中学校でも自閉傾向のある児童生徒のために、カームダウンをするスペースが必要だとか、あるいは小さなスペースで心を落ち着けるような構造化されたスペースが大事だとかというようなことが学校計画では非常に議論になる。学校が多様な児童生徒に対して、空間的に持っているべき仕組みについても、将来議論ができればと思う。

○ 学校は、子供たちが生活する場であるが、地域の避難所となったり、あるいは生涯学習の場となったり、また、学校自体としても、コミュニティ・スクールということで様々な地域の方や保護者の方が来られたり、また、チームとしての学校として、様々な専門の方々が学校に入ってくる。そういった視点から、学校施設のバリアフリー化が今後一層推進されていくと良い。

○ 例えば特別支援学級を全部の小中学校に配置をしている学校設置者においても、施設面でバリアフリー化ができているかというと、現実的に難しい面もある。施設が整わなければ、特別支援学級を設置しないのかという難しい問題もあるかと思うが、そういう場合は、逆に施設がそれに追いつかなくてはいけないという考え方もある。

 公立小中学校において、学教法施行令22条の3に規定する障害の程度に該当する特別な支援を必要とする児童生徒の就学先の現状は、平成29年では、公立の特別支援学校への就学を指定されている者が7割、一方で、公立小学校への就学を指定というのが3割。その児童において特別支援学級に在籍している割合が9割、通常の学級に在籍している割合が1割という状況。
  また、これに加えて、発達障害の児童生徒が全体の6.5%程度通常学級に在籍しているという状況。以前、特別支援教育制度の導入に際して、特別支援学校や小中学校の施設整備指針を見直した際にも、様々な障害種に対応するための施設の留意点について整理をさせていただいた。今般のバリアフリー化の推進指針の改訂等に伴い、現行の学校施設整備指針の中で盛り込んでいる発達障害等様々な障害の方々への配慮も含めて、どのような留意点を整理するのかということを事務局としても考えていきたい。

○ 児童生徒の多様化や地域の方々のニーズの多様化の問題、そして、避難所の課題も単一的ではなくなってきていることは間違いない。学校のバリアフリー化の重要性が改めて浮き彫りにされた。
公立小中学校に限らず、学校は共生社会の先頭に立たなければいけない、そういう役割を担っていると考えている。既存の中で難しい側面もあるが、そういうことも含めた新しい方向性と、整備の目標、可能な限り具体的な対策を取っていくための方策、そのための数値目標というのが一定程度必要になってくると思う。

・以上で,意見交換を終了。
・最後に事務局から,次回会議において議論を深掘りしていくため,各委員に今後の推進方策の提言の骨子案をお示しさせていただく機会を設ける旨説明し,会議を終了。

―― 了 ――


 

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(大臣官房文教施設企画部施設企画課)