学校施設のバリアフリー化等の推進に関する調査研究協力者会議(第2回)議事要旨

1.日時

令和2年9月10日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 学校施設のバリアフリー化等の推進について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員)市川宏伸,上野淳,古俣和明,菅原麻衣子,髙橋儀平,三田村裕,宮﨑英憲(敬称略)
(特別協力者) 丹沢広行(敬称略)
(委員代理)尾上浩二(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】山﨑文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官,森施設企画課長,小谷施設助成課長,廣田施設企画課企画調整官,梅﨑施設助成課防災・減災企画官,木村施設企画課課長補佐
【初等中等教育局】若林特別支援教育課課長補佐
【高等教育局私学部】竹内私学助成課専門官

オブザーバー

【国土交通省】渡邉住宅局建築指導課専門官

5.議事要旨

・事務局から,第1回会議の欠席・代理出席の委員について紹介。
・宮﨑委員,尾上委員から参考資料2に基づき提出意見等について説明。

(○委員の発言,●事務局の発言)

○ 学校におけるアレルギー食への対応、ハラール食への対応など食のバリアフリー化という視点が入ってくることが必要。

○ 発達障害の方は少し狭い場所、あるいは暗い場所が落ち着くという場合があり、そういう場所を用意する配慮も必要。
  また、教室に隣接してオープンスペースを設けることがあり、発達障害の立場から見れば好ましくない場合もあり、配慮が必要。

・事務局から,資料1に基づき第1回会議の委員からの主な意見を報告。資料2に基づき緊急提言(案)について説明。

○ 資料2の3ページ目の3つ目の白ポツについて、スロープ等の設置により段差が解消された校舎は66.6%となっているが、調査における定義を教えていただきたい。この数値は避難所として利用する場合だと思うが、児童生徒、教師、あるいは保護者として利用する場合どうなのか。

● 当該調査では、避難所に指定されており要配慮者の利用が想定されている公立学校のバリアフリー化の状況を把握したところ、66.6%であった。
  一方で、現在、文部科学省では実態の調査を進めており、避難所への指定の有無、要配慮者の利用の有無も含めて実施しているところ。利用者が教職員なのか、あるいは地域住民なのかは区別していない。

○ 校舎における保健室等、要配慮者の利用が想定される1階のエリアの室に行くことができれば、バリアフリー化が達成されたとするのか、2階や3階や、特別教室までバリアフリー化されて初めて達成されたとするのかによって、数値が違ってくることにも留意が必要。
  特に、児童生徒、教職員の方にとっては毎日のことである。例えば1階にのみ車椅子トイレがあっても、3階に自分の教室がある場合、近くにエレベーターがなければ、トイレのたびに階段を担ぎ降ろしてもらわなければならない。あるいは、その時間がないから、トイレを我慢する場合もある。そういった状態では、バリアフリーとは到底言えない。並行して行われている調査が、こういったことを踏まえた調査内容になることをお願いしたい。

● 教職員あるいは地域住民等の細かい内訳は取っていないが、外部から要配慮者とされる方が利用する空間までの経路について調査している。先ほどの御意見については、今後の調査の御意見ということで確認させていただいた。

○ 資料2の3ページ目の「学校施設のバリアフリー化の状況等」の表現について、各階にトイレの設置が理想的とか、洋式トイレはバリアフリー化の視点から重要など、トイレについては比較的、具体的な記述があるが、近年整備された学校建築では、ほぼ常識的になっているエレベーターについては、その設置が基本的であるというニュアンスの記述があまり見られない。

○ 水害時の避難のことで、「上階への移動等が必要な場合があり」とあるので、この部分に今の論点を追加できるか検討が必要。

● ご意見を踏まえて加筆する。

○ 発達障害でも光や音に対して感覚過敏の人がかなりいて、こうした視点も、広い意味のバリアフリーとして対象に加えていただきたい。例えば照明の明るさを調整できるようにすることなどが必要。
  また、多くの避難所は市町村が設置しているが、障害のある人が避難して来ても、騒がしいとか、場所を取り過ぎるということで、受け入れていただけないことがある。東日本大震災のとき、避難所に入れない障害者の方たちや特別支援学校の卒業生が、特別支援学校に避難しようとした際、県から開設指示を受けていないため入口が開けられず立ち往生になったことがあった。福祉避難所の数は非常に限られており、特別支援学校でも福祉避難所でされている工夫をしていただきたい。特別支援学校は避難所にどの程度指定されているのか。

○ 発達障害者等への対応や、環境、様々な音、光等の感覚過敏の子供達への配慮は当然、今日ではバリアフリーのカテゴリーの中に取り込まれている。

● 避難所指定状況について、学校種別に調査をしているが、特別支援学校の場合は、公立では、およそ全体の45.5%が避難所に指定されている。

○ 耐震については文部科学省が具体的な対応を取った結果、かなりの割合で耐震化が進んだ。問題は近年の台風や集中豪雨等に対し、学校を避難所に指定する場合の上階への移動の際のバリアフリー化も含めた防災機能強化。
  東京の東部地区は、大きな河川が氾濫した場合、ほとんどの地区が、3メートルから5メートルぐらい浸水し、2週間くらい水が引かない状況になる可能性がある。避難所として地域に貢献できる学校の役割について検討する必要がある。
  また、確かに特別支援学校の避難所指定は半分ほどで避難所に位置づけられていないという課題もある。特別支援学校は都道府県立の場合が多いので、都道府県と市町村との連携が非常に重要。地域の実情に応じて、福祉、子ども避難所のような形で特別支援学校が位置づいていけば良い。
  公立の小中学校における高齢者や障害者を含めた不特定多数の方々の利用の視点はインクルーシブな社会をつくる上で非常に重要。

○ 学校設置者の視点では、3ページの下から4行目の「ニーズに的確に対応した仕様等になっているかの点検・検証が必要である」の記載について、新設の施設であっても、既存の施設であっても、「ニーズに的確に対応」することがどういうことなのか誰が判断するのかを、解説する具体的な事例を示していかなければならない。
  既に対応済みと思われているものも、本当に大丈夫なのか点検・確認することが重要。

○ ニーズに的確に対応するということでは、建築の分野でも、バリアフリー化の性能評価について議論されている。車椅子で自走できるお子さんは、自分でトイレを利用できるという観点、常に介助者の方と一緒に行動している方は、介助者と一緒にトイレに入れるといった観点など、できることを保障していくことが重要。
  また、障害は個人に属するのではなく社会にあるという、障害の社会モデルという用語を、追記するべき。

○ 4ページ目の1つ目の白ポツについて、「学びの基盤となる環境整備」と記載があるが、先ほど指摘のあった障害の社会モデルに関係して「合理的配慮」という言葉を入れられないか。学校のバリアフリー化に当たっては、『みんなの学校』となるよう、全てのエリアに全ての障害がある者がアクセスし利用できることを基本とすべきということを加えていただきたい。
  物理的なバリアフリーはもちろんだが、様々な情報へのアクセスも含むことが分かるような文章を加えていただきたい。
  避難所に指定されているところは、この5年間で、バリアフリー化するぐらいの、スピード感が欲しい。期限を定めるだけではなくて、整備目標の高さを明記いただきたい。
  また、毎年フォローアップし公表していただけないか。さらに、学校評価とバリアフリーをひもづけるような仕組みを入れていただきたい。
  「心のバリアフリー」は非常に多義的な意味があるが、ユニバーサルデザイン2020行動計画で、社会モデルを理解すること、そして障害差別を行わないよう徹底することだと示されている。国土交通省のバリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(中間とりまとめ)にもそのことが明記されている。緊急提言にも整合をとるようしっかりと書いていただきたい。

● 整備目標の高さについてどこまで示すのかは、今後、実態調査の結果なども踏まえて、本会議でも御議論いただきたい。
  学校評価に関して、学校施設のバリアフリー化を、個別施設計画策定時の実態把握のための評価項目に位置付けることや、学校評価における評価項目、指標として設定することも考えられると6ページで記載している。この項目を、注釈ではなくて本文に書き込むかも含めて、今後、検討する。

○ 6ページの2つ目の白ポツに「好事例の普及啓発を行うこと」とあるが、好事例は、具体的にはどのようなものか。
  また、学校設置者が、教育振興基本計画や学校施設の長寿命化計画を考えてバリアフリー化を進めることとある。学校施設全体として老朽化が進んでいる中で長寿命化計画が、1つの大きなミッションになっているが、障害のあるお子さん・保護者がエレベーターを要求しても、学校の老朽化が進んでいるという理由からエレベーターは設置できないとされた事例も、度々伺ったことがある。どのように優先順位を考え、長寿命化計画全体の中で公共施設(校舎)内のエレベーター設置を進めていけるか。

● 文部科学省では、心のバリアフリーノートという指導用の教材等を各学校に配布したり、オリンピック・パラリンピック教育の中で、様々な障害の理解を深める指導が行われている。また、障害のある子供と障害のない子供の交流及び共同学習も全国的に行われているので、全国の学校に参考になる事例を収集し、展開していくことが考えられる。

● 長寿命化計画そのものが、今ある学校施設、老朽化している学校施設を建物内外の改修も含めて、今後、どのようにしてリニューアルしていくか考えていくことなので、併せてバリアフリー化を進めていくことは十分考えられる。

○ 心のバリアフリーに関連して、障害のある子も、行きたいと思ったら地域の学校に行き、当たり前のように、いろんな子が学んでいるといった学校がまだまだ少ない。実現するために、学校現場でどういった考え方が必要か、その中で、ハード整備をどのように関連づけていくか議論を深めていく必要がある。

○ 今回の改正ではバリアフリー基本構想の中で、教育啓発特定事業が位置づけられたので、バリアフリー基本構想の中で心のバリアフリーを通常学級と一生懸命、継続的にやっているところも見られる。

○ 今まで、40、50年で改築していた校舎を、現在は全国的にも70年、80年使用できるように長寿命化しており、機能向上やバリアフリー化も含めて、都度改修している。
  自治体の方々も、長寿命化の文脈であれば取組みやすいと思うので、その場合も、補助率を上げたり、単価を見直したりということは、バリアフリーの推進になるかと思う。
  5ページ目の1つ目の白ポツに整備目標の設定とあるが、バリアフリー化の状況は自治体によって大きく異なるため、各学校設置者の実態を踏まえたものにするよう配慮が必要。

・緊急提言について主査、事務局一任にて了承。
・事務局より、資料3、資料4に基づきバリアフリー化推進指針の改訂に向けた主な論定及び指針の構成等について説明。

○ 前回の指針からもう16年以上たっており、その間、社会の認識も随分向上してきた。今回改訂するときは、もう少し、ユニバーサルデザインやノーマライゼーションの観点から記述していくということを心がけたい。
  例えば校舎の端にあるエレベーターで上に行くというのは、バリアフリーではあるがユニバーサルデザインではない。ユニバーサルデザインあるいはノーマライゼーション、さらにはインクルーシブというようなことについて、踏み込んだ書き方をするべき。
  既存の学校施設についてのバリアフリー化をいかに進めていくかが一番の課題なので、できれば具体的なデザインマニュアル、あるいは具体的な事例等をなるべく分かりやすく示していくことが重要。

○ バリアフリー化推進指針を改正する背景はしっかりと書き込んでおく必要がある。
また、学校施設整備指針に書かれているような特別支援の観点を、どのように標準化してバリアフリー化指針に反映させるかという視点もある。

○ 障害者権利条約の批准や障害者差別解消法の制定・施行を踏まえて、インクルーシブ教育あるいはそのための合理的配慮のための環境整備の必要性を書いていくべき。
  指針の目次を見ると、障害がある教員や障害のある保護者が利用する場合の視点が、やや弱いと思うので新たな視点として加えていただきたい。
  特別支援学級のみならず、通常学級で学んでいる障害のある児童生徒も念頭に、障害のある子もない子も分け隔てなく全ての教室を使えるといった視点を、基本的考え方として入れていただきたい。

○ バリアフリー化推進指針にも、保護者あるいは地域の人たちの利用、災害時の部分について、一通り書かれているので、さらに強調したり、あるいはインクルーシブ教育の視点で取り上げていくべき。

○ 指針の改訂については、障害者基本法、差別解消法や障害者の権利に関する条約の批准などバリアフリー化を加速する背景が重要。合理的配慮と基礎的環境整備という考え方を受けて今回の学習指導要領は改訂されているので、書いていく必要がある。
  平面計画や各室計画等については、整備指針と見比べながら、緊急提言で特に大事なところを今回のバリアフリー化推進指針の中で書き込んでいくことが必要。

○ 改訂の背景に、緊急提言のポイントをしっかりと書き込む必要があると思う。例えば、実際のニーズのフォローアップなども指針の改訂に関わってくる。そして、好事例等の取扱いについても構想しながら、今後、議論を深める必要がある。

○ 「重要である」、「望ましい」、「有効である」との書き分けの中で、車椅子で使えるトイレが、各階に設けることが望ましいと記載されていたが、「望ましい」から「重要である」に改める見直しも、重要ではないか。
  公共交通機関でいうと、2018年の交通バリアフリー基準の改正後は、複数のバリアフリールートを確保するように基準が変わっている。その時代に求められているバリアフリー水準に合わせて、指針を改訂する必要がある。
  加えて、情報のバリアフリーの確保は遅れがちだが、特に避難所として使う場合を考えると、例えば聴覚障害の方にとっての回転灯など、情報上の障害がある人にとっても、安心して使えるという視点も必要。

● 御意見を指針に反映していくときに、社会の情勢をどのように酌み取るかが重要。バリアフリー法の中には、義務的に課せられる円滑化基準と、それを超えて取組を誘導していく誘導基準が設けられている。バリアフリー法全体の整理の中での位置づけも意識しながら、どのように反映していくか議論が必要。

・以上で意見交換を終了。
・事務局より、資料5に基づき今後のスケジュールについて説明。
・山﨑文教施設企画・防災部長より挨拶。

―― 了 ――
 

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(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)