今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議(令和元年度~)(第5回) 議事要旨

1.日時

令和2年9月24日(木曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. オンライン会議(Cisco Webexを用いて開催) (事務局:文部科学省旧庁舎4階文教施設企画・防災部会議室)

3.出席者

委員

アリソン・ビール委員、有信委員、上野委員、岡委員、清水委員、下條委員、髙野三重県戦略企画部副部長(鈴木委員代理)、竹内委員、伹野委員、恒川委員、土井委員、西尾委員、宮浦委員、山内委員、吉村委員

4.議事要旨

(○委員の発言、●事務局の発言)
 

議題1 最終報告に向けた論点・スケジュールについて

・事務局より参考資料1、参考資料2、資料1-1、資料1-2について説明。

○建物の老朽化率について、目標に対する達成状況と次の策はどうあるのかということ示すべき。

●中間まとめの中に目標に対する達成状況を整理している。老朽改善整備の達成率は25%で、整備面積は目標475万㎡に対して進捗117万㎡である。予算の目標は、年平均2,600億円、5年間で1兆3,000億円。多様な財源や財政投融資の実績を勘案すると、そのうち国費の必要額は年間平均約1,900億円であるが、実際は年間平均831億円となっている。

○国の場合は予算そのものが言わば獲得努力目標になっていて、結局、予算そのものが目標達成できていないという事実になっている。

○施設関係の予算は相当厳しいが、外部にその厳しさが見えていないというのが問題。国立大学法人の会計基準の下では、建物の減価償却費という概念が明確に盛り込まれていない。企業会計基準を用いた場合は、建物関係のことを踏まえるとほとんどが赤字になるはず。建物関係が、これだけ大変な状況にあることの可視化、およびそれをもとにした社会一般への知らせ方について真剣に考える必要があるのではないか。

○減価償却費が費用計上されておらず、費用として明確に意識されていない。収支均衡の会計基準の下で会計バランスが取られているので、本来赤字であるはずのものが全く見えなくなっている。

○国立大学附属病院は建物の減価償却が入っている。セグメントによってばらばらのところが国立大学の会計にあり、その辺りの統一化や評価について検討していただきたい。

○文科省の中で会計基準についての議論はあるのか。

●国立大学法人会計基準等検討会議があり、減価償却の見える化についても議論しているところ。

○収支均衡という会計原則では、収支を均衡させるためにコストを割りつけているという結果しか出ない。全く経営になっていないという非常に深刻な問題があり、きちんと議論していく必要がある。

○「サステイナブル・キャンパスの形成 省エネの目標」は、目標自体が毎年1%ずつの5年間で5%であり、この目標とパリ協定で日本が約束している2013年に比べて2030年度時点で26%削減するといった目標との関連をどう考えているのか。

●現行計画の目標は、省エネ法に基づく省エネルギーの目標とほぼ同様としている。次期計画においてパリ協定との目標をどうするかに関しては今後検討したい。

議題2 コロナ禍を踏まえた大学施設の在り方について

・事務局より資料2-1、資料2-2について説明。

○日本建築学会のキャンパス・リビングラボラトリ小委員会において、学生に対してキャンパス環境に関するアンケートを実施している。資料2-1では、学生の声があまり見えなかったが、学生がキャンパスに対してどう思っているのか、どう使っているのかということを知ることが重要なのではないか。アンケートでは、コロナの感染拡大以降キャンパスに対する満足度が大きく低下している。自宅や実家に必要な施設が整っていないことや、通勤や通学がしにくい、居場所となる空間がないことが要因となっており、様々な人と出会える場所であることをキャンパスに求めているという声がある。共用空間や廊下、ラウンジ、ロビー等、本来の学生の居場所をつくっていく一方で、換気の対策や、安全であることを示すことを各大学で考えていくべき。

○大人数の講義室で授業を受けるときの適正な学生の密度について考えた方がよい。3人掛け机に座ってパソコンと資料を出すと、かなり窮屈な状況であり、気持ちよく学修できる環境の在り方を考えるきっかけになったのではないか。学生たちが人間関係を育んでいく上でも、外部環境は非常に重要な要素だと、アンケートの中間結果からも少しずつ見えてきており、その重要性について次期計画にも入れることができればよい。

○ハイブリッドな学修環境の提供・整備が今後のポストコロナ、ウィズコロナの方向性ということで非常に同感。現実的に対応できる内容が本提案にも盛り込まれると大変タイムリーだと思う。例えば、狭い教室でどのように三密を避けてスペースを確保するか、効果的な反転授業をオンラインでどのような対応をしていくか、自習時間をどのように設定するか等、いろいろな利用改善をもう少し踏み込んだ内容があると良い。

○ICTの環境がかなり遅れており、アクセスポイントやレイヤースイッチがかなり昔に整備されたものが多く、それらを整備することが重要である。保護者の心配が非常に強く、オンライン授業への強い賛同もあり、対面だけになることを全員が希望しているとは考えていない。オンラインで行うことを併存して授業の質を高めると同時に、場合によっては大学間での授業の共有化といったところにつなげられれば良い。また、換気の問題について、厚生労働省の基準では、一人あたり1時間に30m3の換気量が必要であり、基準に該当するものは少ない。今後、対面授業を中心とした方向に動いた場合、教室を確保できるのかどうかという心配がある。

○海外からの共同研究者の往来がストップしたのが大変大きなことであった。研究設備の遠隔化、自動化を進めて、結果的には以前と比べてあまり遜色ないように研究を進めることができたと考えている。構造生物学では1日で測定できるサンプル数が自動化により約2倍に増え、研究の効率化に非常に役に立った。素粒子の研究では、海外の研究者が自分の国から設備の運転に参加するため時差があったが、研究設備の24時間運転は好都合であった。研究設備のメンテナンスや若手研究者の人材育成では、対面における研究指導等が欠かせないこともあり、オンラインと対面のハイブリッドを目指すことは大変重要である。

○研究環境のDX化を図っていくことは非常に重要。データサイエンス的な研究はデータベースが整っていて外部アクセスできれば在宅でもできるので、データの活用をより一層進めていくことが、グローバルな中で研究を進めていくのには非常に重要。学生の音楽やスポーツなどの授業以外の活動も、三密を考えながらキャンパスの中で行われていくので、それらの担保をどうしていくのかは非常に重要ではないか。

○アクセスポイントだけではなく、根幹のデータベースや情報システムが非常に古いことが問題。外部からのアクセスが業務として行われるようになり、セキュリティ的には非常に危ない状態にある。アクセスの無線LANだけではなく、大学の基幹システムのセキュリティも見直す必要があり、ICTも水道や電気と同じインフラとして恒常的な更新をしていただきたい。トイレだけではなく食堂もいわゆる三密空間なので、加えておいていただきたい。

○今後、ハイブリッド授業・研究が一般的に進んでいく中で、老朽化した大学の施設整備や環境整備の必要性が一層高まったのではないか。教育と研究の質を高めていくためには、感染防止対策に加えて、オンラインの実施にあたって根幹となる情報システムの整備、スタジオの確保といったものも至急対応していくべきではないか。経済が傷ついた中で経済対策も必要になってくるので、老朽化対策と教育研究の質を高めていくためのものについて予算を確保し、至急対応していくべきではないか。いろいろな工夫を高等教育機関で行っているが、老朽化した施設では工夫も限界があるので、場合によっては増築も選択肢に入れながら、次回の議論で出てくる目標設定を考えていくべきではないか。

○ハイブリッドの教育環境を整備していくことについては、全く異論はない。今回のコロナのようなケース以外にも、様々な災害などでキャンパスそのものが使えないといった状況が考えられる中で、いかに高等教育において学生の学びを止めないようにするのかを考えるべきなのではないか。学内サーバーで全てを賄う従来のやり方では、どうしてもキャンパスに様々なトラブルが起こったときに、オンラインでの学修環境がうまく動かないといったことも出てくるので、それをうまく避けるような環境の整備を考えておかなければいけないのではないか。レジリエンスといったことが最近言われており、強靱かつフレキシブルな施設整備といった観点は少し盛り込まれてもいいのではないか。

○イノベーション・コモンズとwithコロナの方向性が一致する点は良いと思うが、捉え方によっては一致しないという考え方も出てしまう可能性もある。当初考えていたイノベーション・コモンズは人が混じり合って交流する場という考え方が中心であったと思うので、ICTの活用によってハイブリッドのためにもイノベーション・コモンズは有効ということだけでは少し弱い印象。広いスペースでの交流だけでなく、コロナ対策用でブース型にして音声が混じらないようにする等、今日的な対応も踏まえた形にした方がよいのではないか。ハイブリッド対応は今すぐ必要で、要求していたスピード感が前倒しになっているので、既存の設備をイノベーション・コモンズ型に内部改修して、速やかに対応できるような予算を一部可能にすることにより、前倒しした対応も来年度早期に認めていくことも盛り込んでいくと、現実的なニーズに合う。

○ハイブリッド授業の在り方や、研究をオープンサイエンスとしてどのように進めていくのかという御意見については賛同している。キャンパスとして魅力ある場所にするために、イノベーション・コモンズのことを含めて、キャンパスのもつ意義について根本から考え直す絶好の機会なのではないか。コロナ禍においての経験から、オンライン講義が多くなっていくと講義室等の面積は小さくて済み、一方で、オンライン講義では実施困難である実験・実習等に用いる教室の面積は、ソーシャルディスタンスの確保の観点から現行より大きくする必要がある。このことは、今後文部科学省において、基準面積をどのように捉えて決定をしていくのかについて再検討しなければならないことを示唆しているのではないか。

○5月頃に保護者アンケート調査を実施したが、1年生の保護者を中心に、70%以上が対面講義をしてほしいという意見であった。一方、学生の40%ほどは遠隔がいいという意見であり、大きくかい離があった。前期は、実験・実習は全て対面で、通常の授業は遠隔を中心に行った。その結果、9月のアンケート調査結果では、1年生の教育では、授業外の勉強時間は増えたが、自分の理解度や到達目標、達成度、授業の満足度、全て昨年に比べて落ち込んだ。特に、理系の学部で試験以外は全て遠隔で行ったところは大きく落ち込み、非常に不満を持っていることが明らかになった。このような状況で、とにかく対面講義をすることが必要だと思っているが、教室の大きさがどうしても入らない場合や、遠隔の場合でも、アクセスポイントがない等の問題もあるので、机や壁、空調も含めて具体的な対策を示してはどうか。

○オンライン授業にプラスな面が多くあることには賛同している。その一方で、先生の負担や、学生のラーニング・アウトカムズの長期の影響、メンタルへの影響については、まだ分からないところがあるのではないか。全ての学生が同じバックグラウンドを持っているわけではなく、どのように全ての学生に良い環境ができるかということが大きな課題であり、格差が出ないようにしていくべきではないか。

○事務局と調整し、頂いた御意見を取り入れつつ取りまとめる。修正については、主査一任いただけるか。

(「異議なし」の声あり)

○特に反対がないようなので進めさせていただく。この取りまとめに関しては、取りまとめた後に文科省のホームページで公表し、次回の会議で皆様方にお示しする。

 

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室

企画調査係
電話番号:03-5253-4111(内線3247)

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(大臣官房文教施設企画・防災部計画課整備計画室)