今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議(令和元年度~)(第2回) 議事要旨

1.日時

令和2年1月31日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

3.出席者

委員

アリソン・ビール委員、有信主査、上野委員、岡委員、小谷委員、清水委員、下條委員、竹内委員、伹野委員、恒川委員、土井委員、宮浦委員、山内委員、横田三重県戦略企画部副部長(鈴木委員代理)

文部科学省

矢野会計課主査、牛尾高等教育企画課長、上野国立大学法人支援課課長補佐、小林学術機関課課長補佐、丸山学術基盤整備室長、林科学技予測センター上席研究官、 笠原文教施設企画・防災部技術参事官、藤井計画課長、深堀整備計画室長、藤原計画課企画官、小林整備計画室長補佐

4.議事要旨

・事務局より委員の紹介、配布資料の確認


●議題1 有識者からのプレゼンテーション
・ 名古屋大学天野浩教授より「C-TECsエネルギー変換エレクトロニクス研究館、C-TEFsエネルギー変換エレクトロニクス実験施設の紹介」(資料1)に関して説明。
(概要)

  • 本研究所は、異なる専門性を持つ研究者が集結し、窒化ガリウムというパワー半導体に関しては世界に先駆けた取組をしている。
  • 研究所の特徴として、1企業レベルのクリーンルームを兼ね備えた割に、一般より低価格で建築できた。2産業界や国立研究開発法人などに開放し、機密性とオープンイノベーションを兼ね備えたフロアと各研究室間の壁がないフリーな空間のフロアに分かれており、機密性を保ちつつ、オープンなスペースでインタラクションが活発化することを意識した設計となっている。
  • 研究所の強みとして、それぞれの専門家が異分野融合し、例えば電気自動車ならモジュールや部品、キーやトランジスタなどそれぞれの専門家がワンチームで研究を行っている。
  • 提案させていただきたいのが、日本の社会インフラ、社会システムを変えていくためには、それらが共同で研究開発ができるスペースが必要。シンガポールのNanyang理工大学ではキャンパス内において、自動運転バスが試験道路を走り、学生が通学に使っている。従来の個々の技術開発にとどまらず、統合型で研究開発を進めていくスペースが重要ではないか。
  • また、青色LEDは1兆円規模の市場になるまで30年要したが、投資家の意見では長くても10年で社会実装まで進めなければいけないと言われている。そのため、10年以内に実現するためには、工学系だけではなく、経済、法律の専門家と一緒になって取り組む必要がある。
  • 教育に関して、名古屋大学では未来エレクトロニクス創生加速DII協働大学院プログラムを産業界と連携して行っているが、学内にスタートアップ教育や課題解決のためのスペースが足りない。キャンパス中で学生が試作した電気自動車や電動航空機を動かしたいがそういったスペースを確保できない。世界に通用する人材を輩出するためには、ますますの研究、教育両面での支援が必要と感じている。

○施設の建設費はどのくらいか。

○通常、理系の施設は平米単価が30万円を超えるが、本施設は建築的工夫によりそれ以下に抑えている。

○現在、多くの大学でそれぞれの研究者の独立性を重んじて、一つ一つ部屋を用意している。若い研究者は特に個室ではなく大部屋の中で切磋琢磨すべきではないかと思う。この施設はどうか。

○教授には個室があるが、准教授、助教や研究員は学生と一緒になってディスカッションできるよう施設を設計している。研究室間の壁もないため、異分野の研究者が一緒になってディスカッションできるスペースを作ったが、大変うまく機能している。

○研究室間の壁を取るために、准教授や若手の研究者の方を中心に、どういう研究を進めるべきか、どういうふうに働くべきなのかをまず徹底的に議論した。海外大学なども視察したうえで、こういうやり方だったらこういう研究が進められるだろうという議論がベースにあったことが重要。建物の真ん中に大階段があるが、その大階段の周りに研究者が集い、またそのオープンなスペースでは半分がフリーアドレスになっており、研究者が毎日違う席で仕事ができる環境となっている。

○電気自動車や電動航空機などは企業との連携で企業の方に(費用やスペースを)出してもらえるフェーズではないのか。

○リチウムに関してはそれもできている。富士スピードウェイで電気自動車を走らせたこともある。例えばスマートシティだと電気自動車の会社と、例えば電力会社が一緒になって開発を進める方が確実に早くできるはず。そういった自動車会社と電力会社が一緒になってできるスペースが必要。航空機に関してはまだその段階に至っていない。

○シンガポールだとスマートネーションなどの試みがあり非常に大きく動いている。日本にもそういうスペースがあってトータルにいろいろなことが考えられると更に効率がいい。

○Nanyang大学のように学内に作るということもあると思うが、例えば、トヨタ自動車が発表されたWoven Cityのようなところを活用するということも考えられるのではないか。

○企業単体だと難しいところもある。電力会社や多くの企業が参画した方が良い。

・ オックスフォード大学日本事務所代表アリソン・ビール委員より「オックスフォード大学の仕組みと設備」(資料2)に関して説明。
(概要)

  • オックスフォード大学は38のカレッジから出来上がっている。学生と学者が住む小さなコミュニティが今のカレッジの原型になっており、そのコミュニティでは学生たちはマスターの監督を受けて、キリスト教の精神にのっとった倫理的な生活を送るという仕組みであった。
  • オックスフォードは建築制限が厳しく高い建物を建てることはできない。新しいPhysics Departmentを新しく建てた際は、地下階にラボや最先端の設備を設置するとともに、地上階の教室やセミナールーム結ぶspiral staircaseには学生や学者がミーティングできるようなスペースを設け、ディスカッション、コラボレーションを促進する仕組みとしている。
  • 多くの学生はカレッジ又はデパートメントの図書館で勉強しており、それらの図書館は24時間週7日開館している。また、個人ではもちろん、複数人でも勉強できるよう多様なシートアレンジがなされている。
  • オックスフォードファウンドリという起業家精神を育て、大学発ベンチャーを促し、スキルを高める施設がある。学生、教員、卒業生など大学関係者のみならず、大学以外の人も使える幅広く開かれた場所になっている。1階にはいろいろなスキルトレーニングやネットワーキングイベントができるトレーニングルームやオープンスペースがあり、2階には大学発ベンチャーのためのオフィススペースもある。

○大学、カレッジとデパートメントの関係はどうなっているのか。

○カレッジは特に財政面で独立している。デパートメントはコースの内容を決めてレクチャーやセミナーを行い、試験を行う。最終的には大学がディグリーを授与することになるため、そのアカデミーの内容やエグザミネーションズは大学が行う。

○大学のレピュテーションを保つために、カレッジごとの質の格差はどうなっているか。

○アカデミックな面は同じ。各カレッジは施設、生活の面に関しては多少違いがある程度。

○オックスフォードのようないわゆるレジデンシャルをベースとした教育システムは、イギリスの大学全体で見た場合、どれくらいの割合で行われているか。

○オックスフォードとケンブリッジはこのようなカレッジシステムがある。その他多くの大学はカレッジではなく、大学の周りにhall of residenceがあり、学生はその中に住むことが多い。最近、自分の実家に住み大学に通うことが少しずつ増えている。

○古い建物をメンテナンスするにはとてもお金が掛かると思うが、それは大学全体で管理しているのか。あるいはカレッジごとにメンテナンス努力、予算努力が課されて責任があるのか。

○施設の維持は各カレッジの責任になっている。卒業生から寄附を集めそれを充てたりしている。


・ 国立高等専門学校機構理事、函館高等工業高等専門学校校長伹野委員より「高等専門学校高度化推進プラン」(資料3)に関して説明。
(概要)

  • 高等専門学校は、現在国立51校あり、中学校卒業後5年間一貫の技術者教育を行っている。最近ではいろいろなキャリアを持つ学生が非常に増えており、研究・開発・起業を含めて新産業を牽引する高度な技術者としての活躍も非常に期待されている。
  • 今後社会ニーズに応えて高専の高度化を進めることを目的とした高専高度化促進プランを今年度から進めている。3つの重点戦略は、1教育の質保証、2特色形成、3国際化・情報化となっており、その他ガバナンス関連で、経営力強化や働き方改革に取り組んでいる。また、これらのベースとして高専の高度化を推進するための施設の整備充実を掲げている。
  • 施設は経年25年以上の要改修施設が全部の4割以上を超えている。老朽化対策に併せて、グループ講習やアクティブ・ラーニング、ラーニングコモンズ等が自由にできるような施設、クリーンで安全性に配慮した新たな実習工場、女子学生受け入れのための整備を進めていく。また今年度からシェアハウス型の国際寮の導入を進めている。

○地方創生のための拠点として企業とか地域の方々との研究というのも増えていると思うが、そういう研究をするスペースはあるのか。

○専攻科ができた際に地域と共同研究を行うスペースが少し整備された。ただし、老朽化が進んでおり、新たな形のスペースを整備していく必要がある。また、高専の多くは県庁所在地ではなく、それぞれの県の2番目、3番目の規模の町にある。そういった地域は人口減少が進んでいることもあり、産学連携、地域創生の核になるような学校にしていきたい。

○高専から編入された学生は優秀で基礎がしっかりと身についていると感じている。各地域での社会実装を、例えば地域の方々と行うことを非常に得意とするのではないかと思うが、そういった機会はあるのか。

○函館高専の場合は各本科の学生、専攻科の学生も卒業研究がPBLであり、地域の中の解決できるようなテーマを出して、地域の人たちと地域の企業と一緒に解決策を見出すということを行っている。全国の高専でそれぞれ、地域の課題を解決するような教育を行っている。

○障害を持たれている方への対応もできているか。

○障害を持って入ってくる学生に対しての環境整備は対応できている。また、なるべくそういう学生を分け隔てなく教育する場を目指すということで、ほかの国立大学と同じように取組んでいる。

○大学と高専で、例えば図書館や寮など共通する施設を共用できないか。何か制約があるか。

○私が知る限りない。今、高専も地域の大学と連携教育プログラムを作る検討を進めている。確かに高専の入学年齢である15歳と大学の入学年齢である18歳は、大きな年齢差であるが、外国から留学等で高専に来るのはほとんどが18歳以上となっている。

○5年間教育ではあっても3年終了時で高校卒業相当として大学入学要件はどうなっているか。

○高専の3年生を終了した段階で大学の入学資格があり、大学の入試試験は必要となるが大検の受検は必要ない。


・事務局より資料4に関して説明。
○大規模研究を進める設備を大学の研究者などに提供するということを目的として、大学共同利用機関が設けられている。大学の研究の相当部分は大学共同利用機関で行われているという点、また、基礎研究の重要性というところに鑑み、大学共同利用機関の施設に関わる問題もこの会議の検討の対象に含める必要がある。


●議題3 今後の国立大学法人等施設整備に係る方向性について
・事務局より資料6に関して説明。
○有識者のプレゼンを踏まえると、今後チームによる研究をいかにうまく進めるか、そのためのサポートとして施設の工夫も非常に重要であるということ、オックスフォード大学や高専などではチュートリアル制度や寮による共同生活の事例があったが、個人の能力を高めつつ、学生同士で連携しコラボレーションできる力を持っている人材を大学がこれからも排出していかなければならない。教育研究の多様化・高度化、学生・研究者等の多様化への対応の前に、コミュニケーション能力を高めるといったことが必要であり、それは組織やソフト面も重要だが、施設などハード面の工夫によってできることもあるので、そういったことを考えていく必要があるという内容が記載すべき。

○施設をデザインする側と実際に施設を利用する側の間をつなぐ、一種のプロジェクトマネジャー的な働きをする人・仕組みが必要。

○ハードとソフトを分けて書くと、建物を整備したらオープンラボ、オープンイノベーションできるといった安易な捉え方をされる可能性もあるのでそうならない書き方、指標の置き方が必要。また、大学の中でスマートシティのようなものを整備することはやはり難しい。企業などと協力、産学連携などによってできる仕組みも施設整備の中で何かあるとよい。


○当該計画は前向きなものとして位置づけられるものであり、「5.活動の基盤となる施設整備の方向性」において、「保有面積を抑制し」という表現があるが、誤解を招かないように配慮して、例えば「保有面積の総量適正化」とか、マネジメントの観点から「活用方法の高度化」といった表現とすべき。

○スペースの目標設定に関して、産学連携のスペースは研究者や企業からニーズがある。そういったスペースが求められているのではないか。

●議題4 その他
・ 事務局より資料7について説明。

―― 了 ――

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