今後の国立大学法人等施設整備に関する有識者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成31年3月11日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 東館3F1特別会議室

3.議題

  1. 今後の国立大学法人等施設整備に係る方向性(素案)について
  2. その他

4.出席者

委員

有信睦弘(主査),上野武,下條真司,鈴木英敬(代理出席者 横田浩一),竹内比呂也,恒川和久,西尾章治郎,宮浦千里(敬称略)

文部科学省

淵上国立大学法人支援課長,小野山企画評価課課長補佐,西井学術機関課長,丸山学術基盤整備室長,林科学技術予測センター上席研究官,平井文教施設企画・防災部長,山﨑技術参事官,藤井計画課長,深堀整備計画室長,木村計画課企画官

5.議事要旨

・事務局より配布資料の確認、有識者の紹介。


(1) 今後の国立大学法人等施設整備に係る方向性(素案)について

・事務局より、参考資料1,2に基づき、前回会議以降の政策の動向について説明。


【質疑応答・自由討議】
○ 資料3の「社会との連携・協力の推進」について、地域や地方創生に関わる記述が主となっているのは、捉え方が狭い。これから大学に求められる社会との連携とは、第6期科学技術基本計画に向け総合政策特別委員会の論点まとめのなかで言及されるような、「共創」(「Co-creation」)であり、社会の様々なステークホルダーと大学が一緒に創造活動を展開し、社会のいろいろな困難な問題を大学がともに課題解決に臨むことを意味する。大学は単に地域資源ではなく、社会の本当に複雑な課題を解決する拠点であり、ハブとして社会貢献すべき。例えば大阪大学がSociety5.0を社会実装していくための実証実験の拠点であるように、複雑な社会的な課題、あるいは国の施策に応じた課題を解決する実証実験の場としてのキャンパスという視点があっても良い。
 また、例えば国土強靭化といった重要な施策に関しては、国がきっちりとサポートする一方で、建物を建てることにより収益が得られるものに関しては、国でなく大学が主体的に考えつつ、少しでも国からのサポートがあれば大学はやりやすい。国と国立大学法人の役割分担について一定の方向性を示すことも重要ではないか。

○ 基本的に「共創」を進めてくときは、従来の枠組みの中で議論されている範囲の社会連携の個別の議論ではなく、全体の思想を明確にすべき。地方にせよ、産業界にせよ、基本的には「共創」という考え方で財源の多様化、あるいは地域における活性化といった視点を捉え直して表現した方が良い。

○ パッケージ化の意味がよく分からない。イノベーション・エコシステムでヒト、モノ、カネを連動させていくことが非常に大事だというのには同感だが、その具体的な方策がこの言葉からは見えない。施設の修繕に充てようとお金をプールしようとしても、研究・教育の改革や、組織の改正、機構を設立というような大学内での議論の流れの中では焦点になりにくい。施設に対し理解のない方も多く、様々な意味で執行部の方針や文部科学省の施策に対する不満もある中で、大学の政策全体の方向性についてのパッケージ化がなされていない。第4期のとき以上に各大学が改革を迫られ、人事面、評価、組織のことで疲弊している状況で、連動とはどのように考えるのか。

○ 今回の会議では大きい方向性を御提言いただければと思っている。パッケージ化というのは、例えば、ラボ改革にしても1つの所管課だけで済む話ではなく、色々な課が対応していかないといけない。各課が協調して1つのことについてソフトとハードを連携させ、パッケージ化して大学を支援していくという方向性のもと対応できないかということ。

○ それぞれの施策を個別にやるのではなく、施設整備の充実が必要な部分については、それを絡めた全体として具体化していくためのパッケージ化が重要。
 今は設備の減価償却費がコストとして考えられていないため、運営費交付金を充てて老朽化部分の対応をしたり、あるいは間接経費を充てて老朽化部分の対応をするなど、施設整備費以外のお金を充てている。実際にコストとして意識すべきものをどういう形で明示的にするか方向性をそろそろ出していかないと、コスト意識がなければ多様化された財源をどのように投入すべきかという議論もできなくなってしまう。

○ 施設の評価は、量的に見るものはあるが、質の問題に関する評価は全くない。投資に対する効果や、どれだけ経費削減ができるかという視点も含め、大学のポジションが分かるような自己評価の仕組みが必要ではないか。施設の観点から見た評価の仕組みのようなものを今後作る必要があるのではないか。

○ 内部質保証の仕組みを積極的に自分たちの施設整備の評価の中に取り込み評価をしていくことは重要。その中では、施設整備に関して、パッケージ化と絡めて評価をすることまで入れられればいいのではないか。

○ 何と何をパッケージにするのかがよく分からない。施設面での支援を含めたパッケージ化というと、施設面の支援が後手にまわっている印象がある。大学の「教育・研究の多様化・高度化」などが最初に出てくると、施設整備をなぜやるのかわかりにくい。施設整備のアプローチの仕方の視点で、出口として「教育・研究の多様化・高度化」と大きな目的がその先にある方が理解しやすい。「教育・研究の多様化・高度化」の中に含まれるそれぞれの事項についても、少し整理した方が良い。

○ 研究の多様化等が先に書かれているのは、ITやライフサイエンスが急速に進歩することにより、従来の研究設備、施設に対して根本的に考え方を変えなければいけないということだと思われる。

○ 24時間化を含め社会に広く開放されたキャンパスができると多様な人が出入りすることになるので、ソフト面でのキャンパスの安全の確保を施設整備の考え方の中で入れるべきではないか。また、シンガポール国立大学図書館は昨年の秋にデータを利活用するためのバーチャルリアリティの部屋を設けた。このように、データサイエンス教育の推進というソフト面での展開にあわせて、分野を超えたデータのビジュアライゼーションのためのハードの整備が適時にできるような仕組みが必要ではないか。

○ 新しい大学のキャンパスの在り方や設備については、特定の目的に対して特定の価値を生むような設備として、具体的に資金の多様化も含めながら考えることが重要。

○ 施設整備を進めていかないと日本の教育・研究はもたないといったメッセージを強く出さないと、国立大学の教育・研究が危うくなると思う。

○ 今回確保できた予算のレベルをある程度維持しないと、施設の老朽化対策は非常に厳しい問題。この有識者会議も含めて、その必要性について発信していただくことが重要。併せて、多様な財源は老朽化以外のところに行きがちなので、それを何とか振り向けられないかというのも併せて考えていく必要がある。

○ 国の予算に頼るだけでは、大学の現場環境の悪化が進む。これをどうやって解決していくのか国と国立大学法人の双方で考えねばならない。多様な財源も含め、老朽改善整備を一体どう強力に進めてゆくのか。

○ これをどのように進めるか方向性を出す必要がある。基本的に減価償却費分の補充がなされれば、理論的には老朽化に対応できるが、現状はコスト見合いという考え方や減価償却に対する基本的な考え方が浸透していない。従来のように1つの施設整備費補助金にだけ頼るべきではないという認識のもと、財源の多様化等違う方式を取り込むべき。

○ 必要性を訴えつつ予算を確保し、多様な財源をこの中で取り入れながらやっていくということが重要。また、今抱えている規模を大学がそのまま維持することを是とするのかという議論もある。

○ 「国立大学法人等施設の長寿命化に関するライフサイクル検討会」の最終報告では、これからは80年から100年施設をもたせ、より短いサイクルで修繕や改修を入れ、掛けられるお金を平準化していく方針を打ち出している。
国立大学はもっと建物自体を大事に使い長寿命化していくべきで、なおかつ予算を確保しないと実行できないということも、メッセージとして入れていくべき。

○ 長寿命の設定により、今の国の減価償却方式では当然毎年の原価が少なくなってゆくので、より長く持たせられるかもしれない。

○ 前提条件を含まず投資効果だけを計ると、ますます縮小していく可能性もある。当然市民の理解は必要なので、別途うまい方法で市民に見せていくことは重要。社会の急激に変化が大学を定点として回っていくような仕掛けになれば望ましく、大学は安定して機能を果たしていくという環境を作るべき。
 また各地方によって在り方が全然違うなか、本当のグローバルな社会課題として解決するという話と、地域の今々の問題を解決するということのバランスどのようにとるかということも、観点として是非入れてほしい。

○ 大学が社会に与えている付加価値が明確に可視化をされていないので、それに対する設備の効果も全然分からない。したがって、設備のお金を投入することが単純に老朽化対策のような話だけで説明されてしまう。ここで投資効果を明確にすべき。

○ 「全国知事会等関係機関との連携も含め、戦略的な情報発信の方策を検討すべき」という記述について、更に具体のイメージはあるのか。
 情報発信とともに、今後計画を策定するにあたって、その節目、節目に地方公共団体も地方大学の意見を聞いてほしい。

○ 投資効果等を可視化するなど分かりやすくした上で、知事会の要望に我々の提言を踏まえて盛り込み発信いただくように、これから皆様と御協力しながら取組めたらありがたい。
 あと、地方の意見を聞く場ということについても、大きな方向性を頂いた後に、今後具現化のためにいろいろ詳細を詰めていくなかで御意見が聞きたい。

○ このような検討の際、都度地域の意見を聞くような機会を定常的に設けるよう勘案して頂きたい。

○ 都市側の持っている施設マネジメントの問題や地域活性化ということと、大学がどう向き合うかを考える部署がほとんどないのではないかと思う。
 例えば北海道大学がキャンパスを分断している道を地下化してキャンパスにしたことにより、様々な企業が産学連携できる建物を作れる場所を生み出したとか、名古屋大学のように地下鉄の開通に伴って駅の位置を考えるといった新しい施設整備の方法がある。自治体と協働することによって、逆に民間からの投資も呼び寄せる等、これまでとは違う視点で考えていけたら良いのではないか。

○ 個別にチャンネルを持っている大学はあるが、一般的にはそういった事例は少ないとみられる。

○ スクラップ・アンド・ビルドで従来の研究科、学部の建物の一部、産学連携のスペース等を、1つの建物にまとめて合築できないか。1つの建物の中に複数の機能を一緒に取り込み、一部の産学連携のスペースからはスペースチャージの経費を有用し、一部の研究科、学部のスペースの建築費については大学や文部科学省からの老朽化解消の経費として賄う、というような方法で施設整備を実現することが可能になるのではないか。

○ 老朽化対策の目標に対する進捗率の低さを考えると、夢を語って良いのか、夢を語るどころではないのか分からない。現状把握をどのように考えるかという基本方針が必要。

○ 施設整備費補助金のみを頼りに施設の改修なり更新をやるという考え方はもう限界。PFIなどもっと積極的に様々な資金を活用する形で、大学で独自に計画を立てる部分があっても良い。例えば理化学研究所では、本部棟を含めて築後何十年もたち限界に来ているものを全部建て替えるという新しい計画を立て、それを全て何十年かかけて返済するという計画を進めている。大学でこういうことができないのは、法人法等々での規制が影響しているのかもしれないので、こういったことも含め検討してほしい。

○ 我々も事業を予算化していくプロセスの中で、単に古いからということでやるというよりは、機能の重視というところを見つつ、ハードとソフトを一体となって見ながら進めていくということを考えている。

○ 何かに特化した建物ではなくて、大きくまとめて建てて、そこに様々な機能のものを入れ込む方がコストパフォーマンス的には良いと考える。それを実現するためには、フロアごとの建築費を別の予算で賄うことが可能となる方法を、大学としても考えていかなければならない。

○ 本学でも老朽建物の建て替えと産学連携や寄附などをセットにしてPFI事業で進めている。しかし老朽改善については、基本的に今ある建物の建て替えの面積分しか国費は出ず、そのほかのところは大学で努力するというスキーム。本当は大学の中の問題を解決するようなものをさらに盛り込んでいきたいが、なかなか難しい。
 例えば、ノーベル賞を取られた天野先生の研究施設のように、大学の在り方を示すような施設は重要。老朽改善と狭隘解消とは別の何か項目がほしい。

○ 機能を重視した形での整理の仕方もあると思うので、そういう打ち出し方もあると思われる。今後また方向性を打ち出す際にどういった整備していくのかということで整理をすれば、新たな捉え方もできる。


(2) その他


・事務局より今後のスケジュールについて確認。


―― 了 ――

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