学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(平成28年度~)(第14回) 議事要旨

1.日時

令和4年3月17日(木曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について
  2. これからの特別支援教育を支える学校施設の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員) 天笠茂,岩井雄一,上野淳,江田明弘,片田敏孝,加茂紀和子,高際伊都子,田原優子,長澤悟,野中陽一,樋口直宏,山重慎二,吉田信解(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 下間文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官,磯山施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,髙草木施設企画課課長補佐,栗本施設企画課課長補佐,亀田施設助成課課長補佐

【初等中等教育局】髙橋特別支援教育課企画調査係長

5.議事要旨

(○委員の発言,●事務局の発言)
 
・事務局より、会議資料の確認
・長澤部会長より、新しい時代の学校施設検討部会の最終報告書案について報告
・事務局より、資料1-1から1-9に基づき、報告の詳細について説明
 
〇 人口減少に伴い、小・中学校数の減少もさらに進んでいくだろうが、ある意味では、学校の質を上げていくチャンスかもしれない。学校を統廃合しない場合は余裕教室を多様な学びに使う、統廃合する場合はそれをきっかけに設備を充実させ、より深い学びができる空間を作るといった機会になり得ると思う。
 
〇 子供の数の減少に伴う施設の余裕を生かすことが大事だという点については、新しい学びに対応するために、既存施設の改修の場合は、余裕教室や多目的スペースなどを面積資源として活かし、施設環境を充実させ整えていくことを報告書の中で記述している。また、統廃合の場合も、報告書に記述された取組みが求められ、加えて共創など、統廃合計画ならではの検討が必要になると思う。

● 第4章「設置者の推進方策」(2)「首長部局と協働した、中長期的視点からの計画的・合理的な整備」の中で、学校施設の適正規模・適正配置も含めた、様々な課題に対し、首長部局と協働しながら、これからの学びの環境を整備していくことが重要である旨の記述がある。国の推進方策でも、「学校施設整備活用推進のためのプラットフォームの構築」の中に、首長部局との協働体制の構築における効果的な事例を発信していく趣旨の記述がある。また、首長部局との横断的な実行計画のガイドラインや事例集を策定しているため、これらを用いながら国として好事例の発信に努めていきたい。
 
〇 第4章(4)で、先生方を当事者として巻き込む、学校関係者の参画について書かれているのが良いと感心した。また、第4章(2)で、中長期的視点というのがきちんと入っていることも良いと思う。いよいよ建築となってから考え始めるのではなく、常日頃からそのような視点を持ち、また、首長部局を巻き込んで進めることが大切である。そのためには、総合教育会議で学校施設のことについて常々論じておくことも必要だと思う。

〇 参画について、具体的な場面のご指摘をいただいた。どのように書き込むか事務局と考えたい。

● 総合教育会の場を活用することは、首長部局との連携・協働を進める一つの方策になり得ると思うので検討する。
 
〇 第1章にある『2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿』で、子供の学びや教職員を支える環境として人的環境、特に保護者の理解をどのように得るかは大事なポイントなので、それについても書き入れていただきたい。

〇 保護者が参画し、学校の進めようとしている教育を理解し支援していただくことは大事な視点であるため、その必要性、参画や情報共有の方法等についての記述を検討したい。

● 令和3年1月の中教審答申から引用している部分のため、答申の内容を改めて確認し、ご指摘の点が反映できるか検討する。
 
〇 GIGAスクール構想の際に、IT環境がどこまで整っているかを各学校で自己点検できるようなチェックリストがあった。この新しい学びに対しても、個々の学校で満たしている部分と不十分な部分が分かるチェックリストのようなものができると、整備すべきポイントが分かるのではないか。

〇 個々の学校で次に向けての施設整備を具体的に検討する時に一つの有効な手段であり、今後の検討課題になると思う。
 
〇 27ページで、学校・地域・社会の連携が前面に押し出されており、学校が地域コミュニティ形成の核となる様々な機能を担っていることを踏まえた記述となっている。29ページ、30ページに防災の観点があるが、学校が社会や地域との連携をどんどん深め、教育機関だけではない社会的な意味づけがなされることで、学校に様々な機能を充実させることに対する理解を広く得られるようになっていくのではないかと感じた。災害時も含めて学校が社会とつながり、地域コミュニティの中核を担うものとして機能が充実していく方向性は、防災の観点からも、子供たちの育み、地域との関わりの中で育まれていく環境の観点からも望ましいものであり、充実した記述だと思う。
 
〇 第4章(4)の学校関係者等の参画に関して、学識経験者とはどのような人が想定されるのか。また、ワークショップなどに参加する学校関係者等の勉強の場、基礎となる知識を教わる機会について何かアイディアがあるのか、或いはこれから検討するのか伺いたい。ワークショップをしながら学ぶことは当然あるだろうが、例えば教師教育や教員養成の中ではそういうことを学生が学ぶ機会はあまりなく、彼らが先生になって、いざ学校を作る、或いはコーディネーター的な役割をするとなった場合にも、いわゆる素人目線でしか語れないことになる。

〇 学校の教職員が一番の当事者であり、教育あるいは学校を改革していく上で主たる担い手であると認識している。教職員を含めた関係者が施設環境と新しい時代の学びとの関り、地域における学校の役割、それを実現するための施設の在り方等について理解を深めるための様々な場や機会を設けることが必要である。個々の学校計画における教職員の参画やワークショップ等はそのための機会としても有効であり、教育者や学校建築の専門家らと共に意見交換をし、共に考える場とすることが重要と考えており、そのことがより伝わるよう事務局と検討する。

● 第5章の国の推進方策では、プラットフォームを構築し、具体的な整備・活用の事例を発信することや、学校建築アドバイザーなど専門家による専門的・技術的な相談体制を構築することが記載されている。多様な専門性の中には教育の専門家や学校建築計画の専門家、設計者など、様々な方々を想定している。このような方々との相談体制を構築していく中で、どのように多様な関係者を巻き込むかも含めて、学校関係者の参画の在り方などについてもアドバイスすることが想定される。教員研修への講師派遣については、教職員が学ぶ場に対し、有効に機能するようなものにしていければと考えている。
 好事例を着実に横展開するための現場同士のネットワーク化については、学校設置者あるいは教職員などが気軽に、ダイレクトに有益な情報、ノウハウを交換していけるような場づくりうまく進めていくことができたらと考えている。
 44ページ(6)「普及啓発、適切なフォローアップと更なる調査研究等の実施」では、研修等の機会を通じて広く普及させていくことが記述されている。文部科学省が実施する学校設置者を対象とした行政説明の場や独立行政法人に教職員支援機構が主催する教職員向けの研修の機会のような様々な手段や場を通じて、広く発信し普及していくということも提言いただいている。

〇 学校建築アドバイザーは、既存の専門分野によるものではなく、むしろ新たな在り方を将来的に思考し、その姿に向けてそれぞれの持つ知見を再組織させたものとして描くことが大切ではないか。そのためには、自分の専門分野に当てはめて物事を理解するのではなく、互いに新たなフィールドをそれぞれの現在の立場から構築していく指向性を持って捉えていく必要があると思う。
 
〇 特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設部会で取り上げられていたこととして、障害の社会的モデル、障害は障害者本人の中だけにあるのではなく社会的環境にあるという考え方からすると、このような形で環境を整えていくことはとても大事なことだと思う。
 22ページにクールダウンできるスペースが必要と書かれてあるが、現状ではこのような記述にならざるを得ないが、クールダウンが必要な状況にならないような、落ち着いて学習できるスペースが広がっていくことが大事と感じた。
 
 
・上野部会長より、新しい時代の特別支援教育を支える学校施設の在り方に関する検討状況及び報告書案等について報告
・事務局より、資料2-1から2-6に基づき、部会長からの報告の詳細について説明
 
〇 部会での議論等をされてきた皆様に感謝。どこかに記述はあるかとは思うが、あえて申し上げるが、コロナが大変課題になっている中で特に感染症対策などについて。特別支援学校あるいは学級における感染症対策などに係る視点は、今回の報告等の中でどのように位置づけられているのか知りたい。
 私自身は障害のあるお子さんと障害のないお子さんが一緒にいるというのは、当然ながら、教育上とても大事なことであると認識している。世の中にはいろいろな人がいて、互いが支え合うということを小さいうちから考えるというのは、非常に大事なことだと思う。子供たちが小さいうちから、障害がある、なしにかかわらず、一緒に生活することの大切さを非常に感じているところ。
 一方、このコロナが、こうした我々の共生社会をつくるという、教育現場においても共生社会をしっかりつくるという理念に対して大変大きな壁として立ちはだかっている。こうした状況下で、どのように障害のある、なしにかかわらずみんなで共生社会をつくろうという学校現場が向き合うべき課題に対して、大変大きな問題提起がなされているのではないかと感じるところ。その点について、部会においてどのような議論があり、どのような視点が盛り込まれたのか知りたい。

● 7ページ目の中段、第1章にて、一連の新型コロナウイルス感染症の拡大により、小・中学校や特別支援学校において、学校施設のある意味セーフティーネットとしての役割が再認識されたところということを記載するとともに、こうした役割を踏まえた施設整備の在り方が必要としている。
 また、それらを受け、例えば18ページ目では、ICTの活用、個別最適な学び、協働的な学びへの対応というところがあるが、誰一人取り残すことのない教育を実現するという視点で、まさに自然災害、コロナ禍等、障害のある幼児児童生徒が取り残されることがないように、ICTも活用しながら学びへの対応ということをしっかりしていくことが重要という点を記載した。
 また、その他の部分についても、感染症予防の観点を含めて、十分な空間を確保することや、プライバシーに配慮されたスペースを計画することにも言及しているところ。
 
〇 事例紹介における、特別支援学校や、特別支援学校と普通の小学校が併設されている事例について。国庫でも補助が増えてきているという意味なのかもしれないが、設計に関わる中で、小学校の中に特別支援級という部屋、個別支援級という部屋など、こうした名前のある部屋が、数としてのみ増えている側面もあるという印象を受けている。
 設計者としては、この点が非常に悩むところであり、一番論じなければいけないところなのではないかと感じている。バリアフリーに関する議論もされるなかで、ハード面から実際その部屋がどのように使われているのか。あるいは現在のインクルーシブ教育を目指していく中で、特別支援学級や個別支援級は、結局、普通教室での学習が難しい場合にそこに行くというように、逆に学習の場を分けてしまっているという側面もある。障害のない子供たちがそこで一緒に学ぶということももちろんあるし、一緒にどこで学ぶんだ、遊ぶんだというような観点について知りたい。
 なので、具体事例を示す際に、例えば小学校の中にある支援学級や個別支援級とどのような交流が行われているのかとか、そういった情報がより盛り込まれると良いのではないか。

● 視察報告の、例えば1番の秦野養護学校と末広小学校の事例においては、授業や畑においての栽培活動、避難訓練、給食における交流といったあらゆる機会で、多様な形の交流が行われている。今後、さらにイメージが湧くような事例も横展開していければと思っており、検討していく。
 
〇 先程の議論と一部重複するが、学校施設としていいものを造ってもそれが有効に使われるかどうかというのは、子供への教育という部分にも大きく依存している部分もあると考えているため、一部今回の議論からは逸脱する点もあるかと思うが一点。
 自身も、障害のある子供とない子供が一緒に学ぶということが非常に重要と認識しており、学ぶだけではなく広い意味で、一緒に遊ぶことも非常に重要だと考えている。そういう意味では、先ほどの事例の中に、一緒に遊べるような空間を一緒の学びの場と併せて掲載することはすごく良いと思うが、必ずしも有効活用されてないのではないかという点が気になるところ。
 海外の文献など調べていると、障害のある子供たちへのいじめの問題が取り上げられていたり、日本でも比較的、例えば発達障害がある子供たちへのいじめが今もなおあるということ。特に障害のない子たちの、障害のある子たちに対する理解が十分でないとすれば、こうしたいじめの問題が起こるし、せっかく充実した空間をつくっても、そこが結果として有効活用されないということも起こり得るのではないか、という点が気になっている。
 先ほど、具体的な事例として紹介されたような、可能な限り児童生徒間の交流が起こるようにするという取組はすばらしいと思う一方で、そのインクルーシブ教育を通じて、障害のない子供たちに対して、障害のある子供たちについての教育がされているのか知りたいところ。例えば発達障害について、障害のない子供たちはちゃんと理解できているのかどうか。それから、その他の身体障害について、どういうサポートをしてあげればその子供たちと一緒に学べるのか、そういったことに関して教育面でしっかりした充実が図られているかどうかについても知りたい。今回の報告書から一部逸脱する部分もあろうかとおもうが、もし何か教えていただけることがあれば知りたい。

● 障害者理解教育というところで、学習指導要領に、交流及び共同学習を行う旨の記載をしているところ。これを基に、各学校によって、やり方や内容は様々だとは思うが、各種取組は行われている。例えば、障害のある子供とない子供が可能な限り同じ場で学ぶようにということや、あるいはそういう取組を通じて、障害及び障害者への理解が深まるようにという取組がある。一方で、障害にもいろいろな特性があるので、国としても事例集や各自治体の取組をホームページ上で掲載する等、一連の取組がさらに質の高い学びになるよう取組を進めている。

〇 例えば、視察の事例では、刈谷の事例では普通の小学校と特別支援学校が同じ敷地にあり、十日町の事例では通常の学校と特別支援学校を一体的に整備した学校であった。こうした学校では、児童生徒の障害のある子供に対する理解や協調、ほかにも、例えば保護者の理解も格段に進んだということを聞いている。
 そういう意味では繰り返しになるが、これから連続的な環境を構築していくことが、今、特別支援教育課から説明があったような、相互の理解が進んでいくという観点に対しても、物的な環境として寄与していくことになると思う。一方、まだまだ道は遠いかもしれないが、この報告書がそういう意味での一つのガイドラインになればと考えている。

〇 1点だけ。そういう取組があるのであれば実証研究のような形で、具体的に、どのような機会をつくることで障害のある子たちに対する理解を深めることにつながる、というようなデータが出てくると、非常にインパクトのある、意義のある研究になるような気がする。この施設の拡充に付随して何かできるとよいのではないかと感じた。
 
〇 今の議論に関連してはなかなか課題が多いものとして認識しているが、交流及び共同学習については、既に文部科学省も交流及び共同学習のガイドブックを出していて、様々なグッドプラクティスの紹介もしているところ。一連の議論でこうした話題が中心になったことはないが、交流及び共同学習を前提として、どんな取組、施設が効果的かというのは必要な観点。先ほど話に挙がっていたように、普通の小学校と特別支援学校が同じ敷地の中にあって、日常的に共に生活できるような環境を確保している学校も近年になって増えてきている。
 今回、私が視察に同行したのは神戸市立の学校だが、そこは特別支援学校も小学校も神戸市立ということで、これは両校の連携が非常にうまくいったケースであった。もう一つは神奈川で、県立の特別支援学校と秦野市立の小学校の事例であるが、これも同じ敷地の中にあり、日常的に児童生徒間の交流及び共同学習をしている。こうした学校の事例は増えているが、その一方で、どこでも実現できるかというと、環境的な問題、距離的な問題等、解決すべき課題は様々ある。ただ、そういう取組が非常に重要であるということは、国も発信しているし、実際、特別支援学校もかなりのところが取組をしていると認識している。
 今回、私どもが調査した中では、都道府県教育委員会の約2割が特別な籍を活用できる制度を設けていて、その制度を用いて特別支援学校が居住地の小・中学校と交流及び共同学習をするという取組をしていることが分かった。また、こうした制度が広く普及してきていることも分かった。
 そういう意味では、インクルーシブ教育、共に学ぶというのは、何を学ぶかに応じて解決すべき課題があるように思う。小学校の一つの教室で、各々が違う課題を学ぶというのは今の日本の教育にはなじみづらいと思うので、そこも含めて整備をしていくということがこの先の課題となるのではないか。施設、設備に関しては、今回の議論を通してかなり整備が進んだのではないかと思っている。
 
〇 特別支援学校と小学校の併設や、教育上の交流などは非常に求められており、重要性も理解しているところ。一方で、多くの小学校の中の個別支援級では、その空間の扱いの方向性が定まっておらず、ただ数だけをそろえているような学校もあるように感じる。その中で先生方がすごくいろいろな工夫されていることは理解しているが、結局のところ、一般の小学校の中に整備されている個別支援級自体について、やはり扱いに不明な部分が多いように印象を受ける。
 
〇 本日いただいた御意見については、事務局、「新しい時代の学校施設検討部会」部会長の長澤副主査、また天笠副主査とも相談の上、「特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設検討部会」部会長に最終的な調整、修正を御一任いただきたいと思うが、よいか。

(「異議なし」の声あり)
 
 ・事務局より、今後のスケジュールについて説明
・下間文教施設企画・防災部長より挨拶
・天笠副主査、長澤副主査、上野主査より挨拶

 
―― 了 ――

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

指導第一係

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)