学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(平成28年度~)(第11回) 議事要旨

1.日時

令和3年3月25日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について
  2. 今後の高等学校施設の在り方について
  3. 今後の特別支援学校施設の在り方について

4.出席者

委員

(委員) 天笠茂,伊藤俊介,上野淳,織田克彦,片田敏孝,加茂紀和子,斎尾直子,志村秀明,高際伊都子,田原優子,長澤悟,中埜良昭,野中陽一,樋口直宏,山下文一,吉田信解(敬称略)
(特別協力者) 丹沢広行(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】山﨑文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官,森施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,木村施設企画課課長補佐

オブザーバー

【初等中等教育局】若林特別支援教育課課長補佐,酒井参事官(高等学校担当)付参事官補佐
【大臣官房文教施設企画・防災部】田中施設助成課課長補佐
【高等教育局】青山私学助成課助成第二係長

5.議事要旨

・事務局より、会議資料の確認
・事務局より、資料1-1に基づき、新しい時代の学校施設検討部会の主な検討事項及び論点について説明
・長澤委員より、資料1-3に基づきプレゼンテーション

(○委員の発言,●事務局の発言)
○ 理想と現実という観点から話をすると、理想の部分について、新しい時代の学びの姿や令和の日本型教育の議論を重ねる中で感じたのは、日本がこれまで歩んできた明治時代からの教育の在り方というものは、非常に大きな成果を上げてきたということである。
 同時に今の時代においては、個別最適化という観点が非常に求められている。資料1-3でコモンズについて説明されているが、この共生という言葉は、日本の教育や日本人の文化に非常に関わりが深い。
 日本では自分たちの歩んできた重層的な文化の歩み、歴史の歩みと外部から入ってきたものを共生させながら、自分たちに上手く活かしていくという歴史を歩んできている。これから国際社会に対して日本人が発信していくべきなのは、環境との共生という、思想的・文化的な面でも日本人が過去から培ってきた観点であり、子供たちにしっかり文化、歴史的な背景も含めて教えていくべきではないか。
 それを施設として表していくために、木材を大事にする施設を造っていくことが大事ではないか。木質化とは、教室や教職員室、廊下などに木をふんだんに使っていくことであり、本庄市においても新しく造られたある学校はもちろん、全校で木の床を磨く「無言ひざつき清掃」というものを実施している。木に親しむ清掃の尊さを学び、木が持つ調湿効果や、木を大事にしているという文化的なことも子供たちにしっかり教えていくことが必要ではないか。
 これから新築や改築を行う際に木質化を大事にしていただきたい。
 現実の面について、新しい学校を建設するときに、新しい発想を盛り込んで造ることは比較的容易にできる一方で、長寿命化を図って大規模な形で既存の施設を改修するというときに、例えば廊下と教室を隔てている壁を取り払うといっても、構造上、非常に難しいということがある。
 既存施設の改修を行う場合に、新しい時代の学びの姿をどのように改修計画に反映させたらよいかという理想の実現を、いかに低コストで行うかという現実的な視点からの考察を、ぜひお願いしたい。先進的な事例を探して全国的に紹介するといった試みも必要である。

○ 防災教育において重要なことは子供たちが命を守れることであるが、子供たちの災害に対する対応行動は、学校で教わったことを従順にできることではなく、臨機応変に自分で考え判断し、主体的に内発的に行動できることである。
 学校の教室座学のように知識を与えるだけの教育では主体的、内発的な災害対応力は誘発されず、地域との連携が非常に重要である。
 学校で教わるような教科科目を認知能力とするならば、やり抜く力や主体性、自己肯定感、人間力、他者に対する思いやりといったものを非認知能力といい、それを高めていくことが防災教育には必要である。
 子供たちが、自分たちの住んでいる地域に目を向け、自分の友達、家族、コミュニティに領域を広げるときに、その人たちを思いやることや地域との関わりがあることによって、社会の中での自分の居場所、位置づけが認識でき、それが喜びとなって主体性が身についていく。
 これからの学校の防災教育という観点で見ても、防災は学校だけの問題ではなくて、地域全体の問題であるので、地域の方々と連携を取り、みんなで命を守れるような社会をどのようにつくるかが重要である。
 資料1-3の中の学校とコミュニティ施設の複合化・共同化の例など、町の施設と学校の施設が共有化され、子供たちと地域の間の関わりが密接になっていく、こうした学校のつくり方は、子供たちが地域とのコモンズということを意識することができ、防災教育上も極めて効果的である。

○ 資料1-3のスライド3枚目の左側に、遠隔授業や連携ということが書かれているが、この中に保幼小中高の連携ということを入れていただきたい。例えば小中一貫教育を実施している学校の中にスタジオのような部屋があると、小中の連携が実現可能なのではないか。
 また、教師に対する研修や教員養成の中で、施設に関する内容を取り扱うことが重要である。特に今、中教審でも、教職科目で情報機器の活用を強化するという話が出ているが、既存の教育方法や教材に関する部分がしわ寄せを受けると良くない。

○ 考えるだけではなく、自分なりの方法で伝えるということをトレーニングしていく必要がある。伝えることは結局、対話であるので、少人数学級のレベルが違ってくるような教育の場づくりが必要である。対話となると、せいぜい生徒は10人程度となり、考え方を変えなければならない状況になってきている。
 このような部屋を複数造るのが難しければ、オープンスペースをうまく使うことや、リアルとオンラインの入れ替わりということを考えれば、半数の生徒が使うということでその部屋の量、数を考えれば成り立つのではないか。
 感染症、ウイルスのことを考えると、通気や採光等も建築として考えなければならないので、外部空間も使った教育環境のつくり方を検討する必要がある。

○ 図書館あるいは図書スペースの在り方について、デジタル化の波にどう既存の図書スペースが対応していくのかということは、大きなテーマである。
 この1年間のデジタル化の中で、図書スペースが機能化していない実態があり、学校における図書スペース、図書館の機能の在り方について今後さらに議論を深めていただきたい。
 教科スペースや教科センターといった、これまでの教科と施設の在り方については、もう一度、抜本的に見直す必要がある。教科横断型の教育や、俗に言う○○教育を求めざるを得ない状況があるが、これまでの教科に対する施設対応が、これらをはばむような形になってきている。既存の教科がそれぞれのテリトリーを何とか確保する方向に機能しがちな状況をどのように超えていくのか、教科指導と施設の在り方ということについて、よりそれを打ち出していくべきである。

・事務局より、資料2-2に基づき高等学校施設部会報告書案について説明

○ オンライン化やDXが進み、教育環境のつくり方で可能性が広がっている。
 自然豊かな中山間地域や、過疎地域に高等学校を持っていってしまうと、もともと子供が少なくて需要が少ない上に、教育人もそろわず、教育の質が下がってしまうが、リアルとオンラインのハイブリッドで、かなり教育環境は保つことができる。
 また、都市部の限られた空間よりも広々として自然環境もいいので、工夫次第でより高度な教育ができるのではないか。
 大都市への人口の集中が進んでおり、高等学校も大都市に偏っているので、文科省が戦略的に中山間地域や過疎地域に持ってくるということを考えてもいいのではないか。
 理由の1つ目は、SDGsにも近いテーマが掲げられているが、自然環境が豊かということで、感受性を育み、自然の恵みを知ることができることである。
 2つ目が、資料2-2の43ページに寄宿舎とあるが、地方で生活すると、食べ物や住まいが安くなるので、高校生を持つ保護者も、あるいは国際化が進み外国人が入ってきてもお金の負担が少なく済み、高度な教育も可能になることである。
 3つ目が、地方創生ということで、地方では過疎化が進み人口が減って、高等学校を誘致しようという自治体が多くあり、地域にとっても良いということで、様々なアクティブ・ラーニングが展開できることである。
 こう考えるとこれからの高等学校には、多様なタイプが出てきて、地方では遊休施設、既存施設の活用もより行われているので、これまでの型にはまりがちな施設計画ではなくなってくるのではないか。

● 公立高等学校の適正配置、教職員定数の標準法というものがあり、この中で、各都道府県において適正配置について努力義務が規定されている。国として一律に全体の各県の高等学校をどこに配置せよというところまで申し上げることは難しい状況ではあるが、現在の報告書の中では、先ほど指摘いただいた中山間地域、離島に立地する高等学校についても意見をいただいている。
 資料2-2の15ページに、「中山間地域や離島等に立地する高等学校は、地域社会との連携・協働によって、当該地域ならではの学びを実現するとともに、ICTも活用して複数の高等学校が教育課程の共通化・相互互換を図るなど、様々な教育資源を活用することによって、小規模高等学校単独ではなし得ない特色・魅力ある教育に取り組むことが求められており、こうした学校の施設整備に当たっては、地域の状況に応じた適正な規模や配置等の検討に加え、持続的な地方創生の核としての機能を有することにも配慮した施設計画とすることが重要」と記載している。その中で、寄宿舎の有効性についても指針の中に加えさせていただいたという状況であり、このような様々な魅力・特色ある高等学校づくりというものを施設面からも後押ししていく必要性があるということが議論されている。

○ 資料2-2の16ページに、「また、生徒一人一人が主体的に活動したり、じっくりと個別学習したりできる空間を確保することも考えられる」という一文があるが、小学校、中学校においても同様だが、高等学校に関しては特に一人でじっくり学ぶスペースを保障することが必要である。
 例えば、地域の図書館に高校生が休校中に多く来館し、席を全部埋めてしまうこともあるので、学校と図書館の在り方も含めて、個別学習がじっくりできる場をどういうふうに用意するかが重要である。

● 現在、高等学校施設整備指針においても、指摘いただいたような個別学習という観点は既に書かせていただいているところだが、この報告書の中でどういう形で強調できるかということについては、部会長、主査とも相談をしてまいりたい。

・事務局より、机上配布資料、報告書の最終的な取りまとめについて説明
・今後の修正については主査に一任された
・事務局より、資料3-1に基づき、特別支援学校施設部会の設置について説明
・事務局より、資料3-2、3-3に基づき、今後の特別支援学校施設の在り方に関する検討について説明
・若林課長補佐より、資料3-4、3-5に基づき、新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議の報告、学習指導要領の改訂について説明

○ 通常学級、小学校、中学校、高等学校と、特別支援学校との学びの連続性、あるいは空間的な連続性も含めて、そこが今回の学習指導要領の改訂で強調された一つと受け止めて、これを施設的にどのように現実化するのかを検討してもらいたい。
 また、特別支援学校の施設の在り方についての議論の経過そのものが小学校、中学校、高等学校の施設に反映されることを目指していただきたい。
 固有の特別支援学校の施設の課題はしっかり対応していただきたいが、敷居を低くすることが大きな改訂の目指す方向であり、むしろ既存の通常学級をどう特別支援学校とつなげていくか、連続を図っていくかということが大きなテーマになるので、小学校、中学校、高等学校を全部ひっくるめた中で議論し、その一端が、施設的な在り方も含めたこれまでの通常の学級の在り方の見直し、改善につながっていくような視点での議論もぜひお願いしたい。

○ 学びの連続性、それから一般の小中高と特別支援学校との連携、連続性ということを重要な課題として検討する。

○ 特別支援学校の授業や教育のモデルは、一般校の参考になることが多いので、一般校のつくり方への示唆のようなものも出てくると良い。
 特別支援学校は基本的にそれぞれの児童・生徒が違うことが出発点になっていて、かなり大規模な学校でも一人一人個別のカリキュラムを作って、集団を組み替え、先生が動き回り、それぞれに合った授業を展開している。
 北欧の学校では一般校も、時間割にせよ勉強の内容にせよ個別のメニューを作って一人一人の学びをサポートしており、日本の特別支援学校の考え方に似ている。特別支援学校の授業のやり方の思想と、それに対応した空間の造り方は、将来的には普通校の手本になりうるのではないか。

○ 昨年、ある公立小学校4校で、一般校・通常学級におけるインクルーシブ教育に関する調査の機会を得た。一般クラスに在籍する軽度の障害(情緒系が多)の児童数は増える傾向にあり、普通教室まわりの多様なサイズ・つくりのクールダウンスペース等は重要であるとのことだったが、老朽化している旧来の校舎においては、教員の工夫の負担も大きく、苦労している点が課題であった。特別支援学校の整備は進んできているということだが、一方で、一般校の通常学級では現在、多様な個性の児童生徒がいる中で、普通教室周りの空間のつくり方、改築・改修に参考になる工夫等についても、検討されるとよい。
 また、別の観点で、老朽化校舎の改修・改築に際し、都市部の狭い敷地の居ながら建替え等では特に、工事期間が長過ぎて児童生徒の在学年数を超える等、通学年数全て工事中等、質の高い学習環境が提供できない事例があること等も課題であり、代替地確保等の検討もあるとよいと思う。

○ 障害がある生徒がどうやって社会との接点を持つかがポイントであり、ある小学校との複合化施設にある喫茶コーナーは障害者の方たちが働く福祉喫茶になっているが、小学生だけではない多様な方たちが来るので、障害がある方たちがここで社会との接点を持てるようになっている。特別支援学校施設でも、いかに社会との接点を持つか、それでこういう複合施設に入るようなことを含め、検討してもらいたい。

○ 先ほど学びの連続性、社会との連続性、一般校との連続性というお話があったが、社会との連続性ということも重要な観点であり、検討したい。

○ 幼児期から小学校教育、中学校、高等学校へとの連続性のある取組というのはとても重要である。特別支援学校における環境が学びの連続性を持って構成されていくことは地域の小学校、中学校にも参考になっていくのではないかと思う。教育の連続性を担保していくための環境づくりや、教室環境を含めて一体的に検討してもらいたい。また、地域社会との連携を踏まえた上で、どういう施設がいいのかという視点でも検討してもらいたい。

・事務局より、今後のスケジュールについて説明


―― 了 ――
 

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