学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(平成28年度~)(第10回) 議事要旨

1.日時

令和3年1月27日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

2.議題

  1. 今後の高等学校施設の在り方 について
  2. 新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について
  3. 学校施設のバリアフリー化に関する調査研究協力者会議報告について
  4. 公立の義務教育諸学校等施設の整備に関する施設整備基本方針、同基本計画の改正案について
  5. 学校施設整備関連の予算案について

3.出席者

委員

(委員) 天笠茂,岩井雄一,上野淳,片田敏孝,後藤ひとみ,古俣和明,高際伊都子,田原優子,長澤悟,野中陽一,樋口直宏(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】山﨑文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官,森施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,木村施設企画課課長補佐

オブザーバー

【初等中等教育局】田中初等中等教育企画課教育制度改革室長,工藤参事官(高等学校担当)付中高一貫教育支援係長,宗像教育課程課教育課程企画室企画係員

4.議事要旨

・事務局より、新任委員の紹介、事務局の異動について報告、会議資料の確認。
・事務局より、資料1-2及び1-3に基づき、高等学校施設部会の報告書素案について説明。

(○委員の発言,●事務局の発言)
○ 資料1-3の7ページの図のとおり、対面指導と遠隔・オンライン教育のハイブリッドを実現しようとすると、先生にとっては教室環境を整えることが負担になる。双方向性を維持するための環境整備について文章中では触れられていなかったので、今回盛り込むのかどうか検討が必要である。
  資料1-3の16ページの教科横断的な学びのための教室については参考資料1の67ページの宮城県迫桜高校の講義スペースと実習スペースを一体化した事例を見て、普通教室でも、一斉授業と、グループ活動を両方実現できるスペースがあって良いと思った。「教科横断的な学習に柔軟に対応できるよう、学習関係諸室相互の位置関係を設定することが重要」と記載があるが、もう少し踏み込んで記載できないか。

● 1点目のハイブリッドの教育を実現するための双方向の環境整備について、まさにこれからの時代の学びを実現していくための学校施設の在り方を検討する上で、大きなテーマの一つになると考えている。高等学校施設部会においても再度検討する。
  また、2点目、教科横断的な学びへの対応については、多様な横断的な施設環境の整備の事例がある。高等学校の議論の中でも、具体的な事例をイメージしながら検討していく。

○ オンライン、対面、それらをハイブリッドした授業という、様々な可能性が出てきた。施設的なことではないが、学校には強力な情報インフラの整備が必須の条件になる。

○ 防災という観点から、資料1-3の9ページの記載にあるが、災害が激甚化・頻発化する中で、約75%の公立高校が避難所に指定されており、今後、避難所としてのニーズは高まると思う。これまで日本の防災行政においては、避難所運営は市町村単位で行われていたが、災害が激甚化・広域化する中で、いわゆる広域避難の必要性が出てきた。自分の町だけで避難が完結するのではなく、広域的に対応するためには、県の防災行政、もしくは市町村の連携の中で対応する必要がある。
  県の防災予算というものをしっかり高校の防災機能の充実に使ってもらえるよう、調整をしていただくことが必要。
  また、8ページに、「学校と地域の連携・協働」がある。この部分の記載も重要で、津波の可能性がある地域では、今、小中学校で防災教育がしっかりなされており、その子供たちが地域の高校に進学すると、地域の防災のリーダーとして、特に高齢者に対する配慮など、中心となって動くことにより、アクティブ・ラーニングの面でも、主体的で自立的で、自分たちの社会における役割、地域社会における役割を強く認識して、学習意欲や自己有用感を高めるためにも有効に機能している。高等学校と地域との連携、そのための施設を整備をしていくことは時宜を得た取組である。

● 高等学校施設部会においても、県立高校への期待から、市町村との連携をしっかり図っていくことの必要性が議論されている。地域社会や高等教育機関などと連携・協働しながら、魅力化・特色化を図っていくということの方向性も示されているので、意見を踏まえ検討を進めていきたい。

○ 現状、オンラインですべての授業を行うことはできず、コロナ禍において特例もあったが、本来は普通科の学校では対面による授業も行う必要がある。その部分について誤解を与えないように書き分ける必要がある。

○ 資料1-3の19ページに、「4.安全でゆとりと潤いのある施設整備」について記載されているが、健康への配慮という部分について、今回コロナ対応を考えると、衛生面で手洗い場の環境に課題がある学校がある。
  22ページに教職員の働く場について記載がある。教員のリフレッシュルームを考えると同時に、生徒のメンタル対応に関わる施設についての記載が必要である。
  併せて、ラーニング・コモンズ等の集まる場所があることや協働する場の整備も必要ではあるが、個々に対応していくための施設についての記載がされていない。

・山﨑文教施設企画・防災部長より挨拶。
・「新しい時代の学校施設検討部会」の設置と委員の決定。
・長澤部会長より挨拶。
・事務局より資料2-2、2-8、2-10に基づき、新しい時代の学校施設検討部会における検討課題やスケジュール等について説明。
・田中室長より資料2-4に基づき、中央教育審議会答申について説明。
・事務局より資料2-3に基づき、主な検討課題について説明。

○ 答申について5点にまとめると、1つ目は、ターゲットは2030年あるいはSociety5.0というこれから10年、あるいはその先の我が国の社会の在り方であり、これまで蓄積されてきた良いところとの適切な融合を図った上で、この先の変化する時代を乗り越えていくことが基本的なスタンス。
  2つ目は、個別最適と協働的な学びというのが一つのキーワードかなと考えており、この国の教育システムの根幹になっている年齢主義あるいは課程主義に履修主義や修得主義がミックスできないかが一つの論点であった。
  3つ目は、全ての子供に対して、特に特別支援学校の子供たちや外国籍の子供たち、遠隔地の子供たちに等しく教育の機会あるいは教育の質を提供することが重要な視点であった。
  4つ目は、ICT環境、オンライン授業等にどう向き合っていくのか、基本的な立場や考え方、具体的な方向等について位置付けており、施設整備ともかかわりが深いと思う。
  そして、5つ目は、既に音楽等では半数以上の小学校における教科担任制が導入されていたが、9年間の義務教育において、新しい義務教育学校の在り方や小中の連携等の文脈の中で、小学校の教科担任制が答申された。
  なお、免許状については引き継ぐ課題の一つとして位置づけられている。
  その上で、資料2-5の81ページから84ページは、施設や環境について記載されているが、その観点では、個別最適な学びが、一つの要素になる。昭和の時代は学習の個性化や個別化について、具体的な実践が積み重ねられ、今回、個別最適な学びということが挙げられ、そのつながりと今日的な課題を分析したり、位置づけたりすることが重要であり、議論の課題の一つと捉えている。

○ 昭和50年代後半、戦後の標準的な学校施設の姿が変化を始めた。当時の文部省が総合的な調査研究を実施し、多様な教育方法への対応、豊かな生活の場、地域に開かれた学校、情報化対応を、4本の柱として学校の在り方がまとめられた。これが平成4年に制定された学校施設整備指針に盛り込まれ、また、多目的スペースの補助制度などもあり、それ以降学校施設は変化を始めた。その後、学習指導要領の改訂、防犯、安全、健康など、新たな課題についてその都度調査研究が行われ、その成果を反映する形で施設整備指針が改訂され、学校施設の質的向上が図られてきたと理解している。学校施設整備指針を土台として新しい課題を受け、それを取り入れる形で質的向上を図ってきたのに対し、今回の新しい時代の学校施設検討部会の目的は、新しい時代の学びの姿、学校像を踏まえ、これからの学校施設を考えるためのビジョンと在り方を示すことと理解している。
  例えば、既存の室名や施設構成、設備水準にとらわれないアイデアまで含めて自由に議論を進めていきたい。

○ 特別支援教育というより、今は、多様な生徒にどう対応するかという、インクルーシブ教育システムの観点から様々な取組がまとめられており、様々なところで議論されている内容が集約される形で取り込まれていることに、非常に期待を持った。
  障害のある子がどうというよりは、全ての子供に対してどういうふうな教育をこれから進めていくのかという観点が基本にありながらこれからの議論が進んでいくことに期待をする。

○ これまで、普通教室の在り方については踏み込んだ議論がされてこなかった。新しい時代の学びを実現するためには、さらに多様な学習活動を教室内で展開する必要がある。小学校が最も普通教室で授業を行っている時間が多いと思われるため、学習活動と教室活用状況のデータを基に、教室活用の幅を広げて新しい学びを実現する必要がある。

○ 個別最適な学び、GIGAスクールを実現するためには、1人1台端末の確保や通信速度が重要になる。例えば、教室に60インチの大きい電子黒板を置いた上でさらにソーシャルディスタンスを確保するには、空間的に余裕がない。端末を単に配るということ以外に、どういう環境整備をするかをこの部会で考えていきたい。

○ 非常に夢のある話だ。どうしても施設の面積や明るさの議論になるが、今回は壁、窓や天井も含め、学習環境を大きく変える可能性がある。

○ 学校施設を考えるときに、建物の中のことばかり考えていたが、コロナ禍を通じて、壁を取り払った屋根だけの空間や既存施設も庇を長くして、子供たちを集めることができるオープンエアの空間があっても良いと思った。木陰の下で先生と子供たちが学ぶような自由度のある発想で、検討部会に期待したい。

○ 防災、コロナ対応、GIGAスクール、少人数学級バリアフリーや校舎の長寿命化等様々な課題があり、学校設置者は個別には一生懸命対応しているが、それらが有機的にどのように教室の在り方につながるのかまで考えがまとまらない状況であるため、部会での議論に期待したい。

・事務局より、資料3-1、3-2に基づき学校施設のバリアフリー化に関する調査研究協力者会議について報告
・事務局より、施設整備基本方針と施設整備基本計画の改正(案)について説明
・事務局より、学校施設整備関連の予算について説明

○ 現場は、理想を掲げても、お金の問題で進まないという現実があり、バリアフリー化工事の補助の引上げや単価の改正が行われており感謝する。

・事務局より今後のスケジュールについて説明

―了―

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大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

指導第一係

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)