学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(平成28年度~)(第9回) 議事要旨

1.日時

令和2年3月11日(水曜日)※書面開催

2.議題

  1. 高等学校施設部会の検討状況について
  2. 環境教育に活用でいる学校施設検討部会の報告について
  3. 高等学校施設部会設置要綱の改訂について
  4. その他

3.出席者

委員

(委員) 天笠茂,五十嵐智浩,伊藤俊介,岩井雄一,上野淳,織田克彦,片田敏孝,加茂紀和子,後藤ひとみ,斎尾直子,志村秀明,高際伊都子,田原優子,長澤悟,中埜良昭,野中陽一,樋口直宏,水沢邦紀,山重慎二,山下文一(敬称略)
(特別協力者)丹沢広行(敬称略)

4.議事要旨

(1) 高等学校施設部会の検討状況

(○委員の意見)

○ 報告書「これからの小・中学校施設の在り方について」の中でも議論された「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を促す施設整備」として,「特別な教室等を用意するのではなく,普通教室そのものを一斉授業にも少人数学習にも対応できる自由度の高い空間にする,といった取組も考えられる。」とあるが,これは高等学校においてはより一層重要な視点である。宮城県迫桜高等学校の事例では,講義スペースと実習スペースが整備されており,課題研究に取り組みやすい学習環境が構築されている。今後の在り方としては,現状では狭すぎる普通教室を拡大し,同じ空間内に講義とグループワーク等が可能な学習環境を構築し,自由度の高い空間にすることが重要。一人一台端末を前提とした学習環境との関連でも重要。

○ 「2-2 社会状況の変化」の「(3)働き方改革」,のタイトルに若干違和感がある。ここは職員の快適かつ効率的な職場環境という趣旨についての情報が記載されるのではないか。また,同2-3「求められる建物の性能の変化」については施設の再活用といった側面から,限られた予算の中で既存施設を再利用している事例,例えば,堀川高校のLL教室をアクティブ・ラーニングスペースに再利用している取組などを示してもよいと思う。

○ 今年度,公共施設再編市民ワークショップを開催したが,地元高校生が3名参加してくれてよい意見交換ができた。「地域との連携」はしっかりと書いてほしい。また,コーディネーターに加えて,地域交流室のようなものもあればいいと思う。

○ 全体に関して。備品や教育方法・使用方法等に関する留意点が表記されている箇所が見られるが,本報告書では,備品を使ったり,教育したりする上での施設環境上の必要な留意事項について表記することが適当ではないか。また,情報セキュリティ等情報のシステムに関わる留意事項について,施設整備指針でどのように扱うのか(指針での守備範囲)の整理が必要。

○ 個別項目に関しては,(2)高校改革(特色を活かした学校づくり)は,具体的な留意点の内容として,①特色や専門性への対応(室・スペースの確保・充実等),②生徒の多様なニーズへの対応(柔軟な空間作りなど),③地域の特色の活用(自然との調和,地場産材の活用など)の視点からまとめるのも一考。

○ p.3の「調べ学習や探究活動等にICT機器を普通教室で活用する場合,生徒が学習者用コンピュータ等を文房具と同様にいつでも自由に使用できるよう保管場所や充電設備などを備えること」については,『有効』ではなく『必要』が適当ではないか。また,多様な学びを受け入れる未来志向として,p.6の2(1)に,「衛星通信の利用も視野に入れた施設の工夫について」を加えてもいいのではないか。
その他,p.12のトイレについては,「災害時も考慮して」,また可能であれば「広い空間や,手すり又はそれを代用できるデザイン」も追記,p.13(2)②には,「調理場の設置・充実と,食堂スペースの設置」を追記してはどうか。半年前に災害を経験し,これらはとても重要だと感じた。
図書室について,ゆとりある空間設計,外部からの利用や夜間の利用も視野に入れた設計,パソコンも活用できるスペースが必要。こういった図書室は学び続ける社会にしていくために,学びなおしが地方でも実現できるようにする手立てだと思う。

○ 中等教育学校および施設併設型中学校との連携に関する記述を追加してほしい。
どの学校を訪問しても,普通教室は狭く感じられるので,高校生の体格およびアクティブ・ラーニングを考えた余裕のある広さを検討する必要がある。
高校の場合,弁当持参や購買でのパン購入等が多いので,ホームルーム等で食事をする場合の手洗いやごみの管理等、教室内外の衛生管理に配慮する必要がある。
エレベータの設置が困難な学校の場合,車いす用階段昇降機の設置を検討する必要がある。

○ 全体として言えることだが,学びの多様化によって,学びの場も多様となるが,施設的に満たすべき観点についてすべてを最高点で網羅しなくてもいいと思う。

○ 通信制へ進学する生徒の増加,普通科の抱える課題,大学との接続の変化といった点 も高校教育への影響は大きいと思う。
本報告書における「建物の性能」が何を指すかは議論となるが,ICTの項目があってもよいのではと思う。現在ICTの項目がおかれている「社会状況の変化への対応」は,どちらかというと教員の資質の向上に関して記載される部分と思う。

○ 報告書に視察した事例を記載する場合には,報告書が挙げている課題への対応をうまく取り込んでいるポイントがわかるような記載があると良い。また,事例で,同じようなポイントを学校独自の違う単語で説明しているところがあるので,同じ課題に対応した取組であればそれがわかるよう,報告書の各課題との対応関係が整理されていると読みやすい。

○ 高等学校改革については,そもそも高等学校が小中学校と異なり課程,学科,地域性等々多様である。施設整備においても「汎用性のあるもの」と「特別な」あるいは「特化したもの」に対応するものがあり,この書き分けをしていくことが求められる。

○ 第1章に関しては,沿革や課題を書く上で教育方法や社会の変化の速度と,建物の変化の速度とは違うのではないかと思う。いずれにしてもそれぞれの変化についてどの程度の期間を見通したものか明示することが必要。

○ 第2章1(1)②については,多様化や変化の速さに対応するためには,多目的に使えるシンプルな空間を計画することが重要。(3)①には,感覚過敏等を持つ生徒への配慮,②について,トイレにおけるLGBTへの配慮を盛り込んでほしい。
2(2)②について,教室表示,校内案内など来校者等にもわかりやすい視覚的な表示を活用することが重要なため,それがわかるように記述してほしい。(3)②について,産業界との連携,外部専門家の活用等に際して教職員と連携しやすい居場所の確保が望まれるため,それがわかるように記述してほしい。
3③について,ランニングコストや修理コストを考えた建築部材,備品等を使用するよう努めることが必要である旨,追記してほしい。

○ 安全や防犯,環境,バリアフリーなどの配慮は随分進んできたと思うが,保健室や相談室は、あまり変化が無いように感じる。心身の健康について学んだり,その管理について体得したりする「健康に配慮した施設」を,教科学習への配慮を中心とした「保健体育関係教室」とは別に,保健室や相談室の機能強化として設けてもいいのではないか。

○ ICT化の進行によって将来,授業スタイルが根本的に変化する可能性が高いが,教師の下で機器を使用する前提で書かれているように思える。授業も教室も変わる方向性を示しても良いのではないか。

○ 項目について,「省エネ化・環境負荷低減」を項目として立てる必要があると思うので,第1章2章ともに,「求められる建物の性能の変化」に追加して,(1) 長寿命化,(2) 省エネ化・環境負荷低減,(3) 避難所機能がいいと思う。現在「長寿命化」に含まれている省エネ関連の項目は移す。

○ 本文については,p.2②1ポツ目の頭に「主体的・対話的な学びのための環境的基盤として」を追加,p.3「主体的・対話的な学習活動を行うための教材・空間に生徒がアクセスしやすいつくりとすることが重要。」のポツを追加,同ページ「プロジェクターを設ける場合には,移動式のプロジェクターを活用すること」の後に「や,活発なグループワークのためにプロジェクターを複数台使用できるようにすること」を追加。その下のポツについては,「有効」ではなく「重要」を,同ページに「教職員が少人数で随時打合せが行えるような打合せスペースを分散して配置することも有効。」のポツを追加。

○ P.4②1ポツ目,『施設を計画するにあたっては,・・・そのために必要な施設』の後ろに「・設備や空間」を追記。その下に無動機入学者が学習動機を高め,ドロップアウトしないようにするためにはこのような視点が必要な観点から,「生徒の生活の場・居場所となるような快適で心地良い学習空間とすることが望ましい。」を追加。同ページ②の<各室で留意する点>の1ポツ2ポツの間に「生徒や来訪者が快適に交流できる空間も有効。」を追加。

○ P.5②3ポツ目として「支援を必要とする生徒が場面に応じて適切な学習環境を選択して移動できるように,多様な学習場所を用意しておくことは有効。」を追加。また,その下<各室で特に留意する点>に「特別な支援を必要とする生徒を含め,生徒全般にとって学習効率を高める空間とするために視環境(光環境),音環境にも配慮した計画をすることが重要。」を追加。

○ p.6②1ポツ目の最後「重要」を「必要」に,また,その下に「ユビキタスというICTの特性を活かした教育に備えて,教室に限らずラウンジや動線空間等も含めた学校全体が学習場所となることを想定した空間計画をすることが望ましい。」を追加。同ページ<各室で特に留意する点>の2ポツ目として「小集団,グループでの学習のための場所を作れるように自由度の高い設計とすることも有効。」を追加。

○ p.9<各室で特に留意する点>2ポツ目として「地域住民,大学関係者等と連携・協働する空間は,コミュニケーションや創造性を誘発する魅力的な空間であることが望ましい。協働の成果を展示・発信するためのスペースも有効である。」を追加。

・その他の議題については,各委員より了承。

―了―

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