特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設部会(第5回)議事要旨

1.日時

令和4年2月28日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 新しい時代の特別支援教育を支える学校施設の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員) 阿部一彦,青木隆一,市川裕二,岩井雄一,上野淳,喜多好一,倉斗綾子,菅原麻衣子,諏訪肇,髙橋儀平,丹羽登,原田公人,日高真吾,森由利子(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 下間文教施設企画・防災部長,磯山施設企画課長,髙草木施設企画課課長補佐

オブザーバー

【大臣官房文教施設企画・防災部】 久芳施設助成課防災・減災企画官,鶴見施設助成課指導係長

5.議事要旨

(○委員の発言,●事務局の発言)

・事務局より出席者の紹介、会議資料の確認
・事務局より資料2に基づき、報告書案第1章について説明

○ 「はじめに」の最初の文章について。通常の学級、通級の指導を受けている障害のある児童生徒、そして、特別支援学級や特別支援学校に在籍する児童生徒数の増加が進んでいるとあるが、その理由は、特別支援教育に関する理解や認識の高まり、そして、制度の改正等が理由であると読めるかと思う。
 この点、ヨーロッパの特に北欧を中心とする地域、またイタリア、そしてアメリカ等において、特別支援学級や支援学校に在籍する児童生徒数を減らしていこうという世界の潮流の中で、日本は逆に増加しているということをどう解釈するべきか。冒頭の文章では増加の理由として、保護者の認識の高まりや制度の改正とポジティブに捉えられていると思うが、それ以外の理由もあるのではないか。この点について統計データやエビデンスのようなものはあるのか。
○ 委員が最初に言ったように、特別支援教育に対する理解が深まりつつあるということと、そもそも基本的に障害と認知される児童生徒の数が劇的に増加しているということ以外に、いろいろな意味でのバックグラウンドとして考えるべき複合的な要素があるかと思うが即答は難しい。
○ 学会での研究会等でもこういった質問を私自身が受けることが多く、もちろん複数の複合的な要因があるだろうと思うが、何らかの研究成果として、エビデンスとして、特に教育学分野において出ているのであれば私自身も知りたいと思うところである。一方、増加の理由を明示する今の書き方よりは、別な説明を冒頭に持ってくる方がよいのではないか。
● もともとこうした問題は2つの理由だけに収れんされるようなものではなく、「改正等により」ということで、様々な考えがある中で考えられるものを列挙している。これは例示としての記載だが、確かに「はじめに」の冒頭に出てくるので、この表現の仕方については、その他、様々な事情もあることがしっかり伝わるように、特別支援教育課とも相談して決めさせていただきたい。

○ 今の議論について。私も同様の説明を冒頭に置くことは少し検討が必要と思う。というのは、いろいろな場で言われることとして、特別支援教育に対する理解が広がったから特別支援教育を必要とする児童生徒が増え、インクルーシブ教育とは逆方向に現状が進んでいるという誤解を生む可能性があり、これはこちらの意図とは相反する話になってしまう。理解が広がれば、当然のことながら、インクルーシブ教育システムも進み、通常学級で学ぶ子供たちが増えるんだという話をしなければならないのに、その逆で、話が合わないことになるので、冒頭にこの説明を置くことは再度検討が必要。
 また、なぜ海外と比較し、日本で特別支援教育を必要とする児童生徒等が増えているかということについては、海外と日本で定義が違うという背景がある。例えば、学習不振全体を学習障害という形で捉えているところもあれば、そうでないところもあったりして、直接比較することは難しい。ただ、よく言われているのは、感覚過敏の子供たちがかなり増え、落ち着かない子供たちが小中学校に増えた、という現状があり、ただ単に保護者の理解が広がったというだけでは、学校現場としては、もう説明がつかないような状況になってきているのは確か。冒頭にこうした内容を書くことで、学校の先生方からすると学校現場を知らないのではと思われるのでは。なので、理由を書くのなら、後ろのほうでほかの理由もあるという形で書いてもらえれば良い。
 もう1点は、特別支援学級の数が非常に増えてきている。子供たちが増えるとともに特別支援学級の数が増え、現在、小中学校段階の義務教育段階で言うと、約20%が特別支援学級。つまり、5学級に1つは特別支援学級。特別支援学級が多い大阪府に限定すれば、約30%。つまり、3学級に1つが特別支援学級となる。なので、学校の中における特別支援学級の数が多いことを理解しておくと、通常の小中学校の整備指針を考えていくにしても、特別支援教育と共通する考え方が少ないのはおかしい、という観点を持っておくと良い。ここも「はじめに」に入れるかは別として、報告等で非常に特別支援学級の割合が増えているということにも言及できると良い。

○ これまでの議論と関連するが、私の理解では、国内において特別支援教育を必要とする児童生徒数が増えている社会的なバックグラウンドとして、障害のある人たちの地域移行等の問題もあると思う。これには、国も含めて進めているような生活の連続的、継続的な側面があるが、こうした要素が全体の地域でのインクルーシブ教育の高まりにもつながっているように感じる。
 もう一点は、10ページ目の2-5持続可能な開発目標と脱炭素社会の実現に向けた対応に関する記述について。ここの文章では、今回のこれからの特別支援教育を支える学校施設の在り方との関係性等を踏まえたほうが良いのではないか。分かりやすいのは、誰一人取り残さないというSDGsの考え方だが、カーボンニュートラルについての記載もこれにあたる。この部分について、ぜひ本報告書との関連を追加していただければ幸い。

○ 繰り返しとなるが、私も「はじめに」が気になっている。私の場合、外国の方に向けては、日本にはオプションとして4つあると説明している。特別支援学校、特別支援学級、通級による指導、そして通常の学級を設け、これを子供の実態というか、親の教育的、親の意向、子供さんの教育的ニーズに合わせて対応している。なので、一概に特別支援教育を必要とする児童生徒数の増減について論じることは難しい。また、近年は教育の対象となる障害と制度がマッチしていない国もあるので、この数字を国の間で比較することは難しいと説明もしている。結論を言えば、我が国の特別教育の制度についてもふれておくと、理解が進むのではないか。
 それから、あとは表記の話で2点目。いわゆる2015年などの西暦で書いてあったり、和暦で書いてあったりするので、ここは統一したほうが良いのでは。
● 年号は、基本的には和暦で書くが、目標値など物によっては西暦を使うことがあるので、必要に応じて整理する。


・事務局より資料2に基づき、報告書案第2章1~4について説明

○ 特に特別支援学校の併置・併設といった、恐らくこれから増えてくるであろう学校の在り方についても記載いただいたのは大変ありがたい。何点か提案と質問。
 まず、13ページの1でタイトルが「障害のある子供と障害のない子供」になっているが、「障害のない幼児児童生徒と障害のある」というように「ある・なし」の表現が入れ替わっているが、何か意図があれば聞きたい。
 2点目として、18ページ、2-4、自立と社会参加への対応に関する記述について。ここに「宿泊訓練」という言葉が出てきており、これは寄宿舎のことを言っていると思う。そして、19ページの一番最初「寄宿舎について」から始まる文では「自立と社会参加に向けた生活の訓練を行うという観点から」とあり、寄宿舎のもう一つの機能として「訓練」という言葉を使うが、寄宿舎も教育活動の中で行っているので、そこで訓練という言葉はどうかという懸念がある。実際に行っている訓練的な要素ではなく、卒業後の自立と社会参加に向けた、例えば生活経験や体験といった言葉のほうが柔らかくていいのではないか。あまり教育の中で訓練という言葉は使われないのでこの点はどうか。
● 「ある・ない」の表現について、意図はないので修正する。

○ 11ページで社会モデルについて言及するとともに脚注で取り上げたのは非常に大事なことだと思う。一方で、他の場では、障害の社会モデルという言葉も使われることが多いので、どちらが適切か検討いただけると幸い。

○ 14ページの「分け隔てられているという意識を生み出さないよう」という記載について。通常の学級と特別支援学級の教室をここでは対峙させていて、その次の「普通教室等と特別支援学級との」という部分では、教室のことを言っている。整備指針では「特別支援学級関係室」という言葉を使っており、この部分も教室の話だと思うので、ここは言葉の統一を図ってはどうか。
 2点目は18ページの「訓練」という言葉について。前回、私もこの内容に関連して指摘をしているが、日常生活の指導というのはよく出てくる言葉なので、指導という言葉を使ってはどうか。小学部の低学年等、幼い子だけではなくて日常生活の指導という場合も使える言葉。
 もう1点のところは、自立と社会参加への対応に係る「困難を主体的に改善・克服するために主体的に取り組むことを支援する」に関する記載について。主体的に改善・克服という言葉は、学習指導要領にも出てくる言葉だと思うが、どちらかというと、例えば自ら取り組むという意味合いと同時に、前回の会議でも出たように、自分だけですることが自立とは限らない。支援を受けながら、できるだけ自分の力も加えるという意味もあるので、主体的にという表現について、少し検討してもらえれば幸い。

○ まず、13ページ「バリアフリー・ユニバーサルデザインに配慮した計画とすることが重要である。その際、特別支援学校の児童生徒が居住地」以下の記述について。ここの部分で言及しているのは全体的なことであり、一般的な計画への配慮することが重要なので、「心身の発達段階等も踏まえつつ、小中学校等において校舎内外を問わず、必要なバリアフリー・ユニバーサルデザインに配慮した計画とすることが重要である」という表現などにしてはどうか。
 19ページの特別支援教育を担う教職員のため施設面での対応に関する記載について。この部分は今回議論されておらず、取扱いについてはなかなか難しいかもしれないが、特別支援教育やインクルーシブ教育を積極的に進めていくという意味で非常に重要。少なくとも、ここでは教職員が自由にくつろげる休憩室等の空間を設けることが望ましいと書かれているので、先生方が利用する際には、場合によって様々なメンタル的な条件や、通常の休み時間といった時間帯等の条件も想定していく必要がある。文言はこの場では思いつかないが、この段落、2-6のところに、ぜひ教職員の様々な教職員が利用する際にも、十分に機能するバリアフリー・ユニバーサルデザインについて記載いただければ幸い。
 それから、21ページの「駐車場」に関する記載について。ここでは、3-1で災害時における福祉避難所等としての役割を踏まえた対応という小見出しがあるが、ここの部分の「駐車場は」というのは、ニュアンスとして「車椅子使用者用駐車場等は」ということだろうと思うので、検討いただければ幸い。
 22ページ4について。ここでは、先ほど説明のあった、エレベーターやスロープ等は利用目的に応じた配置ということで、その下もエレベーター、バリアフリートイレは利用目的に応じたという書き方になっているが、利用目的に応じたというと曖昧に感じる。例えば、建築計画的には、教室等の諸室の配置及び利用目的等に応じた配置計画とか、あるいは設置整備が重要である、または、教室や校舎の配置にも言及するなど、具体性が非常に重要になるので検討いただければ幸い。
 先ほどの説明の中で、大きなハードルはできる限り避けたいという話があったが、学校の基本的な建築計画の中で必要な、連続的なアクセスビリティーの確保という視点で入れられればいいなと思っている。
 同じ22ページの性同一性障害に関する記述について。こうした内容を取り上げていただいて、しかも文言としてしっかり記述されているのは大変すばらしいと思う。自身も画期的な部分ではないかと思っている。一方で、その2行目のところの、保健室やバリアフリートイレ等について「更衣室としての使用を認める。」また、「幼児児童生徒の使用を認める。」などと、認めるという表現に違和感がある。施設管理者側の表現なのかもしれないが、この文章を保護者や関係者も見ることがあると思うので表現を工夫してもらいたい。また、できれば、ここにバリアフリートイレ・男女共用トイレ等について、保健室と関連するところに整備をするなどといった記述があれば良いと思う。
 また、同じ22ページの視覚障害者誘導用のブロックに関する記載について。現在、国交省でも車椅子使用者をはじめ、その他の利用者も念頭に、視覚障害者誘導用ブロックの敷設について議論が進められている。なので、追加する表現として、視覚障害者誘導用ブロックは、車椅子を使用する児童生徒等に配慮しながら、切れ目なく連続して配置するように計画することが望ましいという表現はどうか。

○ 13ページの障害のある子供と障害のない子供が共に学ぶ場と多様な学びの場の整備について、先ほどから議論があったが、我が国のインクルーシブ教育システムというのは、まさに多様な学びの場を用意しながらも、障害のある子供と障害のない子供が共に学ぶ場を進めていくという、一見すると矛盾するような話なのでここの書きぶりは難しいと感じた。
 その上で、1-1について。障害のある子供と障害のない子供が共に学ぶ場の整備で、特別支援学校と幼稚園や小中学校、高等学校が、学校の中で共生社会を具現化できるような環境づくりを行うことが重要であると書いてあるが、特別支援学校は幼稚園、小中学校、高等学校と場が離れる。その中で、どういう環境づくりをイメージしているのかがすごく分かりにくい2行になったように感じ、気になった。
 4-2の特別支援学校の教室不足について。最新の特別支援学校の教室不足の調査結果があれば、私のところにマスコミ等から取材が来るなど、かなり注目を浴びているテーマなので、文部科学省で把握している現況等の報告も触れられれば良いのではないか。

○ 語尾の「重要である」、「望ましい」、「有効である」という点について。この語尾の表現に沿って掲載の順番を整理できたらよいのではないか。「重要である」は最も重要で、それに次いで、「有効である」、「望ましい」というようにしてはどうか。1個ずつは問題無く読めるが、記載の順番が整理されていないため、全体として少し読みにくい部分もあると感じた。
 例えば、先ほどの障害のある教職員に関する記述ついても、「重要である」、「望ましい」、「有効である」といった順番で整理をしてはどうか。

○ 20ページの地域のコミュニティーの拠点としての機能の充実に関する記載について。7行目に「パラスポーツの拠点となる等」という表記があり、確かに、日本障害者スポーツ協会も日本パラスポーツ協会になって、パラスポーツという言葉の普及を考えているところだと思う。そして、さらに33ページの特別支援学校施設整備指針の中には、障害者スポーツという言葉がある。これは同じ意味を持つ言葉だと思うが、それが理解できるように、注記等を附してはどうか。

○ 性同一性障害に関する記述について。最近はよく、性同一性障害、LGBTQなどが取り上げられている。確か、性同一性障害者の性別の取扱いに関する特例に関する法律というのがあって、そういう法令上に基づけば、性同一性障害になるという方がいる。一方で、本人の立場として、精神疾患ではないという思いを持たれている方々には、こうした表現を気にされることもある。また、障害という言葉が使われているので、特別支援教育の対象になるのかなど、誤解を招きやすい表現であるのは確か。特に、本人の立場からトランスジェンダーという言葉を使いたがる方々も多い中で、表現の仕方については少し慎重な議論が必要と思う。性同一性障害という言葉を表に出すのがいいのか、それとも、最近は医療面でよく使われる性別ユニバという言葉が良いのか、慎重な検討が必要。
 ただ、性同一障害や性的指向、性自認について、取り上げていることは重要で、このことをしっかりと訴えてくことも必要。一方、用語の使い方はセンシティブなので、慎重な検討をいただければ幸い。

○ 全体の特例支援教育に関わる児童生徒の増加ということと関連して幾つか。例えば感覚過敏の話が出てきたが、視察でも見てきたように、発達障害の児童生徒に配慮した、カームダウン、クールダウンスペースの選択の問題、教室の修繕、保健室での対応について念頭に置いた記述が必要と思う。
● 2-1の中で、情緒が不安定な幼児児童生徒への対応として落ち着きを取り戻すための小空間についてすでに記載がある。
○ それではわかりにくいので、例えば、「等」という記述を追記して、例示としてカームダウン、クールダウンスペースを明示できないか。


・事務局より資料2に基づき、報告書案第2章5、第3章について説明

○ 24ページの学校施設の安全性や衛生設備等に関する記載について。読むと「温熱環境の改善やユニバーサルデザインの採用、バリアフリー化等により、利用者全てに優しい学校施設としていくことが重要である」ということであるが、文章の流れをみて「温熱環境の改善、バリアフリー化の推進、ユニバーサルデザインの採用等により、全ての利用者に対応した学校施設としていくことが重要である」としてはどうか。

○ 27ページから始まる改訂案の主なポイントでは、エッセンスにまとめていただいていると思うが、これは指針のなかにどのように反映されるのか。他校種で書かれていることと別に、これは大事な部分が多々あるかと思うので、扱いについて伺いたい。
 32ページの教職員のための施設面の対応に関する記述について。外部の専門家や支援スタッフについて言及されているが、19ページに遡ると支援スタッフへの対応として言及されているので、ここを整合させなくてもいいのか。
 34ページのスクールバスの発着場の動線計画に関する記述について。そもそも実は今、特別支援学校は放課後デイサービスを活用するケースが非常に増えている。スクールバスの発着もさることながら、むしろ、いろいろな事業所の車との交通整理や危険性への配慮も必要。安全性を確保すべき場所と駐車場で、本来ならば動線を分けられれば良いが、医療的ケアを必要とする児童生徒の送迎では、送迎時間に時間差をつけて対応する学校もある。こうしたことから、駐車場に係る問題はスクールバスだけではないので「等」を入れる、もしくは、先ほどの23ページで言及があっても良いのではないか。

● 27ページからの改訂案の主なポイントは、基本的に柱ごとに整理したもので、さらに主な修正点を示しているというところ。資料3と4は、今回紹介していないが、まさに第2章でのこれまでの意見を全て網羅的に反映している。これを報告書の中に付けるという案もあったが、特別支援学校施設整備指針、また、幼小中高全てに波及するため、これを実際に付けてしまうと、その部分だけ膨大な文章量になり報告書としてバランスが悪くなってしまう。なので、今回は主なポイントとして示した上で、実際には資料3、4にあるとおり、これまでの全ての項目を反映していくことになる。

○ 今の議論と同様に、スクールバスの駐車場について気になったというのが1点目。
 2点目として、ささいなことではあるが、30ページの設備設計の部分で第3、電気設備とあり、次に「コンセント」という項目が突然出てくる。コンセントというのが、一般的にこういう資料の中でいつも使われている言葉なのか。今は情報コンセント等種類もいろいろあるので、どういう意味で使われているのか少し分かりにくいかという気がした。
 それと、説明の中に、将来における各室、空間の使用方法等の変更にも対応できるようと書いていただいたのは非常に良いと思っている。加えて、この文章の中に、安全面に配慮したという文言を加えてはどうか。

○ 30ページの医療的ケアと動線等に関する記述について。設計者が読んだときの分かりやすさのことを考えると、実施体制の中身がどのように検討されていて、その中身を踏まえてどういう動線にすべきかという点が不明瞭な記述ではないか。
 もっとシンプルに、医療的ケアを円滑に実施できるような動線等を十分配慮して計画することが重要である、などとしてはどうか。その他の医療的ケアの部分についても、同様の点はあるかと思うので、実際に学校現場で働いているわけではない設計者が見ても、配慮すべき点が分かるような表現を意識してはどうか。

○ 特別支援学校を整備していくという視点から、34ページ「地域の障害者、高齢者、妊婦等の意見を聴取し」という記述について。これは報告書の中でも触れられているが、教育委員会が妊産婦の方の意見を聴取するというのは、現実的に、非常にハードルが高いというように感じる。ただ、この記載は重要ではなくて、有効であるとしているので、こういう考え方もできますという記載として解釈している。指針を踏まえた整備を各教育委員会が行う際に、あまりハードルが上がり過ぎないようにすることが大切かと思うので配慮いただけると幸い。

○ 24ページのその他の学校種と共通して充実を図るべき事項のICT環境の充実について。ここで特別支援学校でも大型提示装置であるとかタブレットの収納場所、充電場所を確保云々と書いてあるが、このことは現在GIGAスクールを進めていく上で非常に大切。これは特別支援学校の整備指針を反映させる必要がある一方、その前提として、小学校整備指針にも反映していくのも大切。小学校整備指針を見たときに見当たらなかったので、この点に配慮いただけると幸い。
 2点目は、25ページの幼児児童生徒の多様化への対応について。外国籍のお子さんに関する内容だと思うが、ここは障害のある外国人児童生徒への対応と明確にしたほうが良いのではないか。これは有識者会議の報告書にも、そこら辺のところは明記されている観点なので重要と思う。

○ 25ページの幼児児童生徒の多様化への対応に関する記載について、幼児児童生徒の多様化への対応というタイトルとなっているのに、その下には「外国籍の生徒に加え」ということで、生徒だけに限定されてしまっている。ここは、外国籍の幼児児童生徒、もしくは、外国籍の子供に加え、日本国籍である子供も増加しているという感じの意味となるので、ここの文書が生徒だけに限定していると、いわゆる中学校や高等学校の子供だけに限定しているような話になるので、ここは統一することが必要。

○ 以前、差別解消法の件で基礎的環境整備と合理的配慮の件について発言したがそれに関連してコメントする。指針等の案を見ると、「はじめに」で学校施設バリアフリー化推進との関係について言及されているが、学校施設整備指針や学校施設バリアフリー推進指針などで示された内容でなくても、一人一人の障害の状態や程度によって必要な変更調整をしなければならない場合、あるいは求められる場合があることを言及してはどうか。整備指針をふまえつつも、場合によっては合理的配慮としての要望は協議を行うことが必要である旨の文言をどこかに入れるとともに、子供によっては障害の状況によって必要な変更について改めて協議される必要があるということをどこかに述べたほうがいいと感じた。

○ 28ページの4「異なる障害種の特別支援学校や」という記載について。言っている意味は分かるが、異なる障害種の特別支援学校というのは定義上存在しないので、うまく言葉は変える必要があるのではないか。それと、補足にはなるが、32ページに、学校規模や教職員数に応じてというところで、PT、OT、ST等の外部の専門家と書いてあるが、特別支援学校自体にもう配置されているPT、OT等もいるので、もう外部ではないという議論が自身の参加する他の会議では結構出ているのでこうした点も配慮いただけると幸い。

○ 特にという指摘ではないが、今回、整備指針を進めるに当たって、医療的ケア等、本当に障害の重い子たちのことをいろいろと考え、検討を進めることができたのはとても意味深いものと感じている。自身も他の会議では会長を務めているが、一連の議論は有意義であったと思い、感謝している。

○ 部会としての報告書の検討は以上とするが、本日も非常に貴重な指摘があったため、報告書案や整備指針案については、改めて検討させていただく。その検討の結果を、会議ではなくメール等で確認いただくこともあるかと思うが、それも含めて確認の機会を設けつつ、最終的な取りまとめは部会長の私と事務局に御一任いただきたいと思うが、よいか。
(「異議なし」の声あり)

○ まだ若干時間があるため、何か全体を通じて、感想や印象があれば発言いただきたい。

○ 今回の部会への参加にあたり、例えば、熊本県の特別支援学校の災害時の対応など勉強になった。主に私は施設整備を専門にしているが、議論を通じて施設整備の在り方も大変勉強になった。専門の先生方の話を多く聞くことができたので、今後の施設整備にあたり、十分反映させたいと思う。

○ 参考資料の報告書概要について。第2章のところで、「特別支援教育を巡る状況等を踏まえ、特別支援学校及び幼稚園、小・中・高等学校」とあるが、今回の特別支援教育をめぐる様々な学校施設の在り方の議論の流れからすると、学校の順番は「幼稚園、小・中・高等学校」の次は、「及び特別支援学校」のほうが適切だと思うのでこの順番についても検討いただければ幸い。
 もう一点は報告書案の「はじめに」の第2段落目について。これは教育の領域の専門用語だと理解しているが、2つ目のところに、「こうした特別支援教育を巡る状況の変化も踏まえ」とあり、4行目で「一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級」と言及している。一方で、読みやすさからすると、一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える教育を提供できるようにと、指導よりも教育と、学習指導要領という言葉もあるが、指示して導くよりも教えて自ら育つというところが、恐らく全体の趣旨としてはあろうと思われる。最初の「はじめに」が、改訂の趣旨から言うと少し固めかなという印象を持った。これも制度的な縛りがあるとなかなか難しいが、検討いただければ幸い。

○ 全体に共通する話題について。一連の議論では、医療的ケア児の話が出てきていたが、それに関連して、医療的ケア児支援法が9月から施行されているので、実は医療的ケア児に関する支援については、法的な根拠を伴って整備されているので、そのことをどこかで一言触れておければと思う。

○ 基礎的環境整備と合理的配慮の話をしたが、今回、様々な方面から整備指針のレベルがあがり、基礎的環境整備のレベルが非常に上がったという印象を受けた。なおかつ、特別支援学校の整備指針を改訂しようというのがきっかけだが、それが特別支援教育の在り方を前提に据えたことで、一層特別支援教育が全体的に捉えられ、議論がより進んだと感じた。

○ 今回、私も勉強させていただく立場で参加したが、一つ一つの特別支援の子供たちに対する考え、先生方の意見が、ほぼ全て一般的に小学校、中学校、高校を考えていく上でも同じように必要になっている。こうしたなかで、もう遠くない将来、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒のための施設整備を分けて考えることもなくなるのではないかとも思いながら、一つ一つの議論を聞かせていただいた。

○ 最後に言うのもなんだが、2章の1の1-1、障害のある子供と障害のない子供が共に学ぶ場の整備について。これは大学の教育現場でも共通するが、障害のあるなしで区分できないグレーゾーンという言葉が使われることもあるが、明確に線引きできないという考え方、概念もあるかと思う。
 そう考えると、グラデーションとして、一人一人の教育的ニーズをいかに捉え、それに対応できるか、基礎的環境整備では十分対応できないところにどう合理的配慮を提供していくか、という観点もある。その後の、2章の2のところに一人一人の教育的ニーズとあるが、二元論できれいに区分できない部分もちゃんと見ていくというスタンスもすごく大事になっていくのでは。こうした考え方はこれからより求められていくと思うので、引き続き、私自身も研究をしっかり進めていきたい。


・事務局より資料5に基づき、今後のスケジュールについて説明
・下間文教施設企画・防災部長より挨拶
・上野部会長より挨拶


―― 了 ――

 

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大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

指導第一係

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)