特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設部会(第3回)議事要旨

1.日時

令和3年12月17日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 今後の特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員) 阿部一彦,青木隆一,市川裕二,岩井雄一,上野淳,喜多好一,菅原麻衣子,諏訪肇,髙橋儀平,丹羽登,原田公人,日高真吾,森由利子(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 磯山施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,髙草木施設企画課課長補佐

オブザーバー

【大臣官房文教施設企画・防災部】 鶴見施設助成課指導係長,鈴木施設助成課指導係員
【初等中等教育局】 宇野特別支援教育課課長補佐

5.議事要旨

(○委員の発言,●事務局の発言)
 
・事務局より出席者の紹介、会議資料の確認
・事務局より資料1に基づき、委員視察の概要について報告
 
○ 灘さくら支援学校の視察に参加したが、特別支援学校と小学校の連携という観点から好事例であると感じた。また、この特別支援学校と小学校の連携については秦野養護学校にも共通する観点であるとともに、今後、同様の施設において運営を行っていくにあたり市と県の連携は一層重要になるものと考える。
 
○ 灘さくら支援学校は地上6階建ての建物であり、水害対策等における垂直避難の観点から重要であると思う。一方で、高層階の建物に肢体不自由及び知的障害を持つ児童生徒がいるなかで、地震時の避難方法がどのように確保されているのか伺いたい。
○ 灘さくら支援学校では大きなスロープを確保しており、エレベーターの使用が難しい場合であっても、児童生徒の避難が可能になるようにしている。また、避難訓練も定期的に行っているということであった。
 
○ 先程の議論にもあったように、やはり県と市の連携が重要なものと認識している。あわせて、行政同士、校長先生同士の連携、学校同士の連携も大切である。例えば、秦野養護学校と秦野小学校の体育館の共用について、もともとは小学校の体育館ということで、特別支援学校の先生方が遠慮をしてしまうなどのケースも考えられるが、こうした学校同士の連携を進めていく上で生じた課題があればお聞きしたい。
 
○ 秦野養護学校の場合は、学校同士の連携が十分に取られ、円滑な運営が図られていた。施設利用の観点から大きな課題は生じていなかった様子。

 
・事務局より資料3に基づき、報告書骨子案第1章について説明
 
○ 特別支援学校は障害種別の学校の他に、バリアフリーの観点や、なるべく身近な地域の特別支援学校を利用できるようにするため、複数の障害種に対応できる総合支援学校のような形態になっていく方向性があるということを聞いている一方、現場は必ずしもそうではないという実感もある。障害種別を複数化していくという方向性について、報告書ではどう扱っていくのか。
 
● 特別支援教育の在り方に関する会議報告に沿って記述をしていくことになると思うが、障害のある子供の自立と社会参加を見据えて、一人一人のニーズに的確に応える指導を提供できるように、通常学級、通級指導、特別支援学級、特別支援学校と多様な学びの場を充実していくことが基本的な考え方となる。各ニーズ、実情に応じて、一番適切な学校の在り方をつくっていくことが重要であり、そのような方向性で記述する。
 
○ 報告書においては、様々な形態があり得るという示唆を示す方向性になるかと思う。一方で、障害種別の学校においても障害が重複化している、例えば視覚障害でも肢体不自由を伴うケースもあり、その辺りも十分書き分けていく必要がある。
 
○ 今の議論で出たような障害種が重複する場合があり得るので、地域の実情や学校の配置等の問題を包括的に検討していくことで、地元の公立小中学校との連携や児童生徒の転籍を含めた対応が実施しやすくなると感じた。
 骨子案の特別支援教育と地域との連携の観点について。地域の災害時の避難所やコミュニティ拠点としての機能についてハード面の記載がされるようであるが、ソフト面に言及する前段においても、地域との共生や障害のある児童と障害のない児童生徒が共に学ぶ教育の実現という観点から、少し地域性を絡めた見出しがあると良いと思われる。
 
○ 特別支援学校に通学する児童生徒でも、地域の交流校と密接な関係を持ったうえで教育を受けるという観点は最近ますます重要視されている。
 
○ 第1章の「1.新しい時代の特別支援教育」と「2.新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方における特別支援教育特有の課題」の構成について、2に含まれるバリアフリー化や地域の災害時の避難所等についても大切な課題であるが、論理展開としてはむしろ、1の新しい時代の特別支援教育を進めるに当たって、2ではどのような施設を造っていけばよいのかという流れで第1章をまとめることが必要なのではないか。
 
● 第1章については、恐らく2のタイトルのつけ方が紛らわしいのかと思うが、基本的には1において教育面の背景を示し、2ではそれ以外の施設関連の課題を記載している。第2章の初めの箇所で前書き的に、第1章を受けて施設としての課題、これまでの取組みの成果、今後の方向性について総論的な内容を記載する予定であり、そういった整理で記載していきたい。
 
○ 第1章では新しい時代の特別支援教育について記載しており、学習指導要領の改訂や特別支援学校設置基準の制定が近年の大きな動きになるかと思うが、これらについてはどの箇所に位置づけられるのか。
 
● 学習指導要領の改訂や特別支援学校設置基準の制定等については、第1章で総括的に取りまとめた報告となっている。具体的には、例えば1-2のこれからの特別支援教育の方向性の(1)、障害のある子供の学びの場の整備・連携強化という中に学習指導要領の改訂については言及していくつもり。

 
・事務局より資料3に基づき、報告書骨子案第2章1・2について説明
 
○ 現時点では事例が多く扱われているが、今後は基本的な記載と個別具体的な記載について整理されていくという理解でよいか。
○ ご理解の通り。
 
○ それを踏まえた上で、基本的な考え方について、2ページの「一人一人の教育的ニーズに応じた教育を支えるための施設の充実」において、障害の重度・重複化、多様化への対応に関する記載がある。一方で、特別支援学校の難しさは、やはり人数や実態が年によって大きく変化する点と認識している。ついては、多様な用途が可能となる教室整備が必要である等、言及が必要と思われる。
 また、7ページの「1-3 医療的ケアへの対応、①基本的な考え方」について、衛生面に十分配慮した計画について書かれているが、加えて、動線について言及が必要と感じている。スタッフの動線のほか、児童生徒の車椅子の乗降時やケアを受けるための移動時には、電源確保のための配線のトラブル等の解消も想定して記載が必要と考える。
 
○ 4ページ、1-2「②-2 各室で留意する点」の項目について、肢体不自由においては、視線入力装置やボールマウス、スイッチの工夫等も留意すべきであるので、記載の必要がある。
 7ページ、1-3 医療的ケアへの対応の「②-2 各室で留意する点」に関して。電源の確保について、当然、災害時の非常用電源が必要となるが、加えて気温の低い時期は子供たちが低体温になりがちで、保温や加湿器等に電源を使うことも多いので、その点には留意が必要。
 また、衛生面について、教室に水回りの整備が必要になるため、この点も記載が必要。さらに、実際に記載するは検討が必要であるものの、感染症の対策の観点からは、加湿と換気、特に人工呼吸器、吸引、ネブライザー等を使用すると、マイクロ飛沫が飛ぶため、衛生面では注意が必要。学校では現状として、感染症に対して非常に配慮がなされている。
 
○ 先程の議論にもあった重複障害への対応について、重複障害のことを考えると、各障害種に対応した記載を行っていくと、莫大な量になってしまう。ついては、どこまで細かいことを書いていくのか整理が必要。まずは、とくに重要と思われる点を書き出した上でまとめていくのはどうか。
 また、特別支援学校と小中学校に関する記載の整理について。テーマごとに特別支援学校と小中学校に関する記載がなされるため煩雑な印象となってしまっている。整理を行うことは難しいと感じる一方で、更に整理したい。
 詳細の点について、やはりどの程度記載を行っていくか難しいところ。詳細な内容について記載を行うとなると、それに伴い、検証も必要になってくる。例えば、小中学校の特別支援学級にマジックミラーについて言及している部分があるが、これは別の何かの指針に記載され整備が進められたものの、活用が進んでいない印象を持っている。こうしたことからも詳細に係る記載は難しいものと認識している。
 また、寄宿舎のことについては、言及が必要と感じている。
 
○ 前書きで、特別支援学級の教室、通級による指導の教室、また、発達障害の子が大勢在籍している普通教室の今の現状と課題、これまでの取組の成果、今後の方向性も併せて記載することで、今後の取組において有効と思われる。
 その上で、特別支援学級等であれば小学校の整備指針にどう落とし込んでいくのかというところがポイントだと思うので、整備指針と併せながら、どの部分をどう追記していくのか、どこが違うのかというところを明確にしていくことが重要。
 
○ まず2ページの一人一人の教育的ニーズに関する、「①基本的な考え方」に関して。特別支援学校は多様な障害種とともに幼小中高の各学部がある旨の記載があり、これは特別支援学校ならではの視点。
 一方、基本的な考え方を踏まえて見ていくと、障害種ごとの記述が出てくるが、学部ごとの記載は行っていない。承知のように、例えば盲学校は幼稚部から高等部の専攻科まである。身長でいうと、100センチ未満から、大きい生徒では180センチの生徒もいている。現状、様々な体格の子どもたちが一つの特別教室等を利用しているので、可変式の設備等を盛り込めると良いのではないか。細かな点ではあるが、子供たちの発達段階に合わせた配慮に関する記載も必要と思われる。
 また、3ページの「考えられる論点」に記載のある寄宿舎について。寄宿舎の本来の目的は、特別支援学校の通学区域が広範囲にわたることを背景に通学保障の目的があったと承知しており、盲学校、聾学校については多くの都道府県で1校しかないため、引き続き寄宿舎が必要と思われる。一方で、交通機関の発達に伴い、本来の寄宿舎の機能や意義に変化が求められるように思う。例えば、新しい機能として、卒業によって自立と社会参加を前にした子供たちが、生活訓練といった観点で寄宿舎の機能を使っていく等、施設の活用の方向性を示すことができれば良いと感じた。
 8ページの1-5、関係機関の連携強化について。承知のように、特別支援学校の子供たちの多くは放課後にデイサービスを利用している。学校によっては、デイサービスの送迎車が50台ぐらい一気に入ってきて、近隣の道路も大渋滞するといった現状がある。当然、近所の方からは、何とかならないのかといった御指摘もある。こうしたときに、指針上に掲載するかは追って検討が必要であると思われるが、これから新しい学校を建てる際にも念頭に施設計画を進めていく必要がある。
 
○ 先程の電源に係る議論について。やはり医療的ケアそのものだけではなくて、ポット、冷蔵庫、加湿器等、冬は特に非常に電源を必要とする現状がある。こうしたなかで、授業するにあたっては、音楽プレーヤーやパソコン等々の複数の電源の確保が困難である事例も多くあるため、記載に工夫が必要と思われる。
 7ページの②-2、医療的ケアを実施するための経管栄養スペース等々の記述がランチルームに限定されているように見えることについて。特別支援学校によってはランチルームを利用して給食を取る場合もあれば、教室で給食を取っている場合もあるかと思う。また、経管栄養の実施もどこで行うかは学校によって異なるので、ランチルームを起点とした記載にとどまらず、実態に即した記載が重要と思われる。
 
○ バリアフリー化、ユニバーサルデザイン化について。最終的には個々の子供たちの多様性を踏まえた調整やフィッティング等が重要である。ついては、一度の施設整備等の対応で終わりということではなく、併せて配慮事項等について触れておくことも重要。
 バリアフリー化、ユニバーサルデザイン化は、そのままで誰もが利用できる環境だと認識される場合が多いが、そうではなく、調整が必要となる場合も多々ある。例えばスマートフォン等はユニバーサルデザイン化の代表的なものだが、いろいろな障害のある方々が使うためには、カスタマイズが必要。こうした認識が抜けていると、既定のものをそのまま使っていくという方向で勘違いされる可能性があるので、注意事項を記載することが重要。
 
○ 先程の議論で出ていた、学科や発達の段階に対応した柔軟な整備の重要性を認識したうえで、また別の考え方として昨今は入学生が減少してきているということで、学科の存続そのものをどうしようかという議論もある。こうしたなかで、将来的な児童生徒数等の変動も踏まえた検討が必要と考えている。
 また、この指針の読み手を考えたときに、指針の記載を通じて、整備における重要な点の再確認や現状の評価の指標として活用されることも想定できる。内容をすべて読み通すのは難しい部分もあるので、焦点を当てる部分を明確化することも重要と思われる。
 そこで、初めて特別支援教育に関わる方へ向けた概論として、障害種についてのおおよその説明や補足資料等があると、活用しやすくなると思われる。
 あわせて、補足資料として、こういった様々な教材や施設に関わることでは、関連団体が持つ情報を活用するため、URLを紹介するようなことも検討してもよいのではないか。情報の選択はまた難しいが、こうした観点もあると思う。
 聴覚障害の教育相談室について。保護者が頻繁に通うような場所であり、乳幼児を伴う場合もあるため、カーペットを敷くなど、室内の環境を整えることも重要であることも、どこか触れることができれば良い。
 また、聴覚障害に関する防音設備の内容が多く意見が反映されているが、他の障害種にも共通して言える部分は多々あるものと認識している。補聴や防音に係る設備等の配置は児童生徒に情報を伝達する趣旨からも、小中学校を含めて、積極的に整備を進めるべきだということも念頭に置く必要がある。
 
○ 準用規定に関して。凡例として使用するという形もあるが、重要な部分については、重複してもよいのではないか。また、最初の2ページの基本的な考え方に、小中学校についての記載も同時に示しておいたほうが、凡例とも対応するので分かりやすい整理になると思われる。
 また、現状、特別支援学校と小中学校で記載を区別しており、特別支援学校の記載としてまとめられているもののなかにも、小中学校でも使える、あるいは積極的に整備を行う必要のある項目があるように印象を受ける。併せて、小中学校に関する記載が増補されると、特別支援教育を巡る状況等を踏まえた施設の在り方により適するのではないか。
 指針中の表現について、現状では、重要である、望ましい、有効であるとして区別されているが、現状の社会情勢においては、有効と表現されている項目の中に、重要、あるいは望ましいに近いものがあるのではないか。

 
・事務局より資料3に基づき、報告書骨子案第2章3・4について説明
 
○ パラスポーツの拠点として特別支援学校等を活用することは重要な観点と思われる。パラリンピックを迎えるに当たってのUD2020行動計画でも示されているところで、障害理解や心のバリアフリーは非常に重要。
 この場合は、例えば土日の活用もあり得るのか。小中学校では、地域によっては体育振興会が管理を行って、体育館の貸出しにも関わる事例もある。このパラスポーツの拠点になった場合の休日の活用について基本的な考え方をお聞きしたい。
○ パラスポーツの拠点については、都道府県の考え方によって違うかもしれないが、現在、休日の運用を含めて活動を行っているところもある。ただ、そうなった場合は、防犯の観点から注意は必要になる。
 
○ 視覚障害者誘導用ブロックについて。普通学校の小中学校では、切れ目なく連続して各室に設置するというのは難しいのではという印象を持つので、書き方の工夫が必要であると感じている。
 また、性同一性障害や性的指向に関する記述があるが、医学モデルに該当するという形になるため、性的マイノリティー等の表現の方がこの場合は適切と思われる。
 最後に、災害時や避難所とも関わるが、全体として、駐車場については整備が必要になってくるのではないかと思う。
 
○ 11ページ、3-1の②-2、多機能トイレに関する記載について。「多機能トイレを計画することが重要である」また、「各階に計画することが望ましい」という形で示されているが、多機能トイレという用語は、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」の改正版(令和2年度)では使われていない。トイレの機能分散化を進めようとしている社会背景や、用語の統一という観点から、このままの表記でよいか確認いただければと思う。
 加えて、学校によっては、複数棟の校舎が設置されている場合があるため、そういった場合には、各棟にそれぞれ多機能トイレがある、ないしは各棟の行き来が十分円滑にできるようになっているということも非常に重要になってくる。
 
○ 整備指針の総則から始まって防犯、経年計画等によって構成される現状の項目はほぼ変わらないものとして認識して良いか。
● 指針への反映の仕方については、項目を含めて報告書案として次回1月の下旬頃示せればと思っているところ。
 
○ また、高等学校の施設について、高等学校の整備指針にも特別支援の話は少しずつ出てくるが、今後はどのように扱うか想定しているか。
● 小中学校以外の指針について。高校や幼稚園の指針があるが、基本的に事務局としては小中学校に関する意見をいただければと考えている。もちろん、小中学校以外について、特別支援学校の準用を超えて必要な検討事項があれば検討する。
 
○ くわえて、CO2のネットゼロ等近年取り上げられる内容についてはこの場で議論の必要はないか。
● CO2を始めとする学校施設全般において必要と思われるものは、これまで各学校指針の改正の中で言及している。必要であればもちろん改正するが、基本的には事務局で検討したいと思っている。
 
○ 13ページ、「4.地域のコミュニティの拠点としての機能の充実」の「②-2 各室で留意する点」に含まれる記載について。災害時への対応として書かれている避難経路や、聴覚障害者への避難時の誘導といった観点は基本的な部分になるので、10ページの前に記載した方がよいのではないか。

 
・事務局より資料4に基づき、今後のスケジュールについて説明
 

―― 了 ――

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