特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設部会(第2回)議事要旨

1.日時

令和3年11月11日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 今後の特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員) 阿部一彦,青木隆一,市川裕二,岩井雄一,上野淳,喜多好一,倉斗綾子,菅原麻衣子,諏訪肇,髙橋儀平,丹羽登,原田公人,日高真吾,森由利子(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)
(臨時委員) 中野泰志(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 下間文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官,磯山施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,髙草木施設企画課課長補佐

オブザーバー

【大臣官房文教施設企画・防災部】 久芳施設助成課防災・減災企画官,鶴見施設助成課指導係長
【初等中等教育局】 宇野特別支援教育課課長補佐,森田特別支援教育課特別支援教育調査官(視覚障害教育)

5.議事要旨

(○委員の発言,●事務局の発言)
 
・事務局より出席者の紹介、会議資料の確認
・各委員より、資料1に基づき、主な検討事項及び論点案について発表等
 
○ パーティション等の設置されたブース型や、マン・ツー・マンで対面できる場所があるといった一人一人に最適な学びの環境づくりは、特別支援学級だけの話ではなく、身体障害を対象とするような特別支援学級でない場合には、通常の教室と特別に大きく異なるような仕様があるわけではない。
 インクルージョンやダイバーシティーが社会のスタンダードとなる時代において、教育の場でも一人一人の個性として障害を見るといった視点で本部会に参加していきたい。

○ 昨年の12月に16年ぶりに「学校施設バリアフリー化推進指針」が改訂されたが、16年前は「サラマンカ宣言」、「インクルーシブ教育」等の国際的な基準についての議論が不十分であった。今回は、東京2020大会の開催要件を踏まえ、国を挙げて共生社会を進めていくという流れの一つとして、学校教育の場がインクルーシブな教育の具現化という形になってきているのではないか。障害の社会モデルが学校の中にも入ってきており、避難所としての整備の問題に繋がっている。昨年の「学校施設バリアフリー化推進指針」改訂の検討では、いかに差別のない社会、あるいは心のバリアフリーを進めることが、義務的な教育環境のソフト面とハード面ともに重要であるかが痛感された。
 いつの時代でも、新しい学習指導要領をいかに施設環境で具現化できるのかが問われている。例えば、かつて80年代に開かれた学校が強く叫ばれていたが、それが実現したのかどうか、その開かれた相手は地域なのか、あるいは児童生徒なのか、その中にどのような人たちが含まれていたのかということを確認することがとても重要である。
 今まさに問われているような、誰一人取り残さない教育を進めていく一方で、様々な災害等の中で障害のある児童生徒が取り残されている現状に直面している。
 環境をつくり過ぎないことはとても重要である一方で、校具や設備を一人一人に適用できるような環境をつくり上げることが必要である。
 地域の中で切れ目のない教育環境をつくるためには、学校空間の多様な活用が可能となる施設側の人員確保、あるいはカリキュラム、ソフトの提案を同時にしていくことが必要である。
 また、特別支援学校で、当たり前につくられてきたような一人一人に対応したバリアフリーの設備や環境を、普通学校の中にも取り入れていき、トータルな意味で特別支援教育を行っていくことが重要である。現在は、特別支援教育の環境が特別であった時代から大きく変化し、多様性と調和、あるいは全ての学校環境を含む社会全体の方向性が問われている。特別支援教育の場の中で共生教育の環境づくりという形を示していくこともあり得るのではないか。
 細かなニーズに対して配慮するのは、設計者であるのか、あるいは施設設置主体側かといった課題がある。
 例えば普通学校の体育館やステージ式典を行う際に、合理的配慮の考え方であれば校長先生が下まで降りて車椅子の児童に対応するということが考えられるが、それをせずに済むように整備することが、学校の基本的施設環境で求められている時期に来ているように思う。教室の案内においても、障害を持つ児童生徒が分かるのかどうかということも注意をしなければいけない。
 細かなことではあるが点字ブロックの連続的な敷設や、下駄箱付近へのベンチの設置によって、簡単なことだが、保護者や地域から来る人たちにとっても非常に使いやすくなる。
 車椅子対応トイレや、性的マイノリティーへの対応、あるいは、異性、同性も含めた介助の部分、特に避難所対応といった視点は重要である。また、各フロアに車椅子対応トイレがない場合に、や、同じフロアに2人の車椅子の児童生徒がいた場合、車椅子使用の児童生徒が授業に遅れてしまうということを聞いている。
 学校施設というのは地域の公共施設の標準であるべきであり、これは特別支援教育の学校であっても、あるいは普通学校でも同じことが問われている。
 
・委員より、資料2に基づき、特別支援教育におけるICT活用を踏まえた学校施設整備について下記の流れで説明
 
(「1. ICT活用のための環境整備の必要性」について)
 現在、Society5.0に対応するために、教育に関しても様々な取組が行われているが、IoTという、様々なものがインターネットに繋がる社会が目指されており、当然ながら学校も、学校中にあるテレビ等の家電製品といった全てのものが、ICT機器でアクセスできるようになっていなければならない。ビッグデータの活用として今後、学校でもCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)が導入され、児童生徒のパーソナルデータ等々が蓄積されて、それぞれに寄り添った学びが展開されるにあたり、学校がこのビッグデータのハブとなる必要がある。人工知能の活用やロボットが、特別支援教育の中で今、注目をされており、「OriHime」をはじめとした分身ロボットに関して、例えば肢体不自由等があってその場に行くことができない子供たちが学校の場で、ロボットを通して様々な子供たちとやり取りをしていくというようなことが、実現可能な世の中になってきつつある。Society5.0のキーワードである、IoTからロボットに至るまでが、これから学校整備をしていく際には必要不可欠な要素であると考えていただきたい。
 現在、これらに対応するために、学校の情報化が推進されているが、例えば、2019年にスタートした読書バリアフリー法に関して言えば、学校図書館がハブになって、様々な書籍をバリアフリー化し、アクセシブルにするという取組が必要になってくる。こういった教育の情報化を支えるためのインフラを用意しておく必要がある。
 情報化はキャリア教育の視点においても非常に重要であり、大学入学共通テストや、司法試験等をはじめとする資格試験で、受験の際にパソコンを使うことができるようになってきている他、様々な福祉サービスを受けるために必要な障害者手帳のデジタル化も現在検討されており、ここにもICTリテラシーが必要不可欠である。日々の学習の中でこういったICT活用が十分にできる環境がなければならない。
 
(「2. 特別支援教育におけるICT活用」について)
 特別支援教育においては、例えば紙の教科書がアクセシブルでなかったために、ICT機器を利用せざるを得ないといった状況があり、ICTは早い段階から積極的に利用されてきた。学習や生活上の困難さを軽減するために、現段階でも様々な障害種別、発達段階別に様々な開発がなされ、利活用が行われているが、障害種によって整備すべき環境というのは異なるため、各学校は多様な障害を包括できるインフラ整備を進めておく必要がある。
 国立特別支援教育総合研究所が作成している「特別支援教育教材ポータルサイト」では、どのような教材が学校の中で使われる可能性があるのか知ることができる。
 「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」で議論が積極的に進められており、小学校、中学校に関しては、ほぼ全ての教科書が学習者用デジタル教科書として発行されている。来年度からの高校の教科書改訂においても、着々とデジタル化の準備が進められている。しかし、デジタル教科書を利用するための端末が学校のネットワークに繋ぐことが出来なかったり、どの教室でも使えるようにはなっていなかったりしているのが現状であり、ICT環境の整備という観点で、この会議の中で今後議論していただきたい。
 
(「3. ICT環境整備の前提となる基本的な考え方(総論)」について)
 ICT環境整備をどのように行えばよいか、1つ目のポイントとしては、障害のある子供たちにとってICT機器は情報保障のための重要なツールとなっており、様々な場所で様々な対話が起き、「主体的・対話的で深い学び」ができるようにしていくため、教室だけではなく、全ての場所でICT機器を使えるようにするための施設整備が重要である。
 特に、視覚障害や聴覚障害のように情報障害と言われている障害に関しては、常日頃のコミュニケーションでもICT機器が必要不可欠である。
 視覚障害のある場合のICT機器を使った情報保障として、AI等を活用したナビゲーションシステムが登場してきており、「Bring Your Own Device (BYOD)」と言われるように自分のスマートフォン等を学校に持ち込んで利用できるようにする必要がある。そのためには、学校の至る場所で、自分のスマートフォンをネットワークに接続し、利用できる環境が必要不可欠である。また、スマートフォン等のカメラ機能で文字や画像等を認識して音声化するシステムもかなり進んでおり、これらのシステムを利用するためには高速ネットワークや電源、音に集中できる静かな環境も必要不可欠である。最近増えているオープンスペースにおいては、非常に音が聞きづらく足元が危険になるようなケースがあるため、配慮が必要になる。
 聴覚障害のある場合の情報保障としては、遠隔手話や自動字幕等があるが、視覚障害と同じように、自分の端末が使える必要がある他、一人の子供が複数の端末から情報を得る必要がある場合も想定した整備が必要である。従来から活用されている磁気ループに加え、現在はデジタルワイヤレス補聴援助システムが主流となっており、こういった新しいシステムにも対応できる必要がある。なおかつ、マイクやビデオなどの全ての音響装置がこの補聴補助システムに接続できるように設計をしていくことが重要である。例えば、教員がパソコンで動画を流す時等の音声を全て補聴システムに転送できる端子を教室に整備する場合、後から取り付けるとなると非常に高価になってしまうため、最初に設計する段階でこのような電気的な取り回しをしておく必要がある。
 これまでは視覚障害、聴覚障害について述べてきたが、全ての障害で、様々な教室、屋内外の運動施設、通路等の動線空間、寄宿舎等の生活空間といったありとあらゆる場所で、ICTが利用できるインフラ整備が必要である。電源や無線LANは勿論、例えば大学進学を目指している場合に、統計処理や数学的な処理をするためにPCを使う環境が必要であり、有線LANの整備についても必要不可欠である。有線、無線のネットワークに自分自身の端末やスマートフォンが接続できるように、運用についてハードとソフト、セットにして考えていただきたい。また、無線LANは多くのマシンが接続すると非常に重くなる可能性があり、情報の要となっているところは有線で繋ぐことが必要である。
 電源に関して、学習の途中でタブレットの電源が切れてしまうことが多々あり、授業中でも充電できるよう電源が必要であるが、電源を床に這わせてしまうと視覚障害や車椅子の児童生徒にとって危険となるため、配慮が必要となる。
さらに、主体的な学びのためには家庭学習も重要であり、寄宿舎や、病弱の児童生徒が居る病院等の生活空間にも、整備をしていただきたい。
 ICT環境整備を行う上での2つ目のポイントは、ICTを有効に活用する際に注意しなければならないことがあることであり、最も大きな問題は、健康への留意である。例えば、障害の種類に関わらず、学校の照明環境は直接照明になっているものも多く、その下ではタブレットに光の映り込みがあるために目を近づけないといけないことが、健康被害につながっていくという問題があり、このような健康被害が起きないようにするための配慮が必要である。
 また、ICT機器には様々な障害に対応するアクセシビリティ機能がついているが、これが阻害される場合がある。例えば視覚障害や光に対する感覚過敏のあるケースでは、タブレットの画面を白黒反転したり、配色を変えることが有効である。しかし、机や回りの空間が真っ白だと、それを眩しく感じてしまいタブレットの配色を変更した意味がないということが起こる。また、照明等が眩しいために、せっかくタブレットの画面表示が見やすくなっていても、上手く見ることができないという問題が起きる。新しい指針においては、こういった問題が起こらないように環境整備を進めていただきたい。
 また、音が非常に頼りになる視覚障害や、聴覚過敏がある場合は、オープンスペースが音環境という観点では必ずしもよくないように、ICT機器の音響に集中できるように騒音を低減していけるつくりが必要になる。
 
(「4. ICT活用に必要な施設設備(各論)」について)
 学習関係諸室については、教員が自作した教材を蓄積、提供できるためのアクセシブルなファイルサーバーというのが非常に重要である。例えば、WebDAVサーバー等を立ち上げて様々な電子教材を共有し、どこからでもその教材にアクセスできる環境を整えているICTの先進校が多くあり、そういう学校が標準になると良い。特別支援学校のセンター的機能として、通常の学級とオンラインで繋ぎ、交流教育や共同学習ができるようにするためには高速なネットワークが必要不可欠となる。また、それぞれの障害別に必要なシステム、機材類を活用できる環境が非常に重要であり、運用も含めて考えていただきたい。
 視覚障害や感覚過敏のある場合には、板書をカメラで撮る際や、まぶしさがある場合に遮光カーテンが全ての教室に必要である。また照明について、間接照明が必要不可欠で、一つ一つの照明器具が調光できる装備や、黒板に適切な照明が当たるようにする必要がある。視覚障害や車椅子の場合には、床面に電源ケーブルが這う状態は非常に危険なため、天井から電源をぶら下げるという配慮が必要になる。ICT機器と様々な既存の支援機器というのを併用する場合に備えた机の広さ等というのも非常に重要な環境である。
 聴覚障害における補聴援助システムに代表されるように、時代と共に変化していくシステムに対応していけるような柔軟な運用が必要である。
 学校図書館について、読書バリアフリー法の成立により、各学校図書館において様々なアクセシブルな書籍を提供する可能性があり、それを子供たちが自ら使えるような環境を整備していく必要がある。特にネットワーク環境が重要になり、図書館におけるICT活用が推進できるように、また地域の方が特別支援学校の学校図書館等に来訪した際に、アクセシブルな書籍等に接続できるためには、図書館のネットワークが閉じたものであってはならない。
 屋内外の運動施設について、子供たちが運動する時に、タブレットで手本を見せた後、実際に実技をしている様子を記録し、比較するという方法が行われており、運動施設、特に屋内施設で、幾つかの大型モニター等が設置されているといった環境整備をしていく必要がある。
 通学経路や玄関、廊下等の動線空間についても、対話を生み、そこから学びへと繋がる非常に重要な場であり、例えば重度の肢体不自由で視線入力装置を使ってコミュニケーションをする子供が、車椅子に装置を設置して廊下を移動する中で挨拶や会話を交わす場合、当然、この動線空間にも無線LAN等が設置されていて、ICT機器が十分に使えるようになっている必要がある。
 非常時や災害時の誘導も非常に重要。一般の空間ではデジタルサイネージを使ったり、電光掲示板を使って避難路を指示するというような取組がもう既に行われていて、消防庁ではそのためのガイドラインを作成した。学校にも災害等の避難のためのデジタルサイネージ等を設置することで、例えば聴覚障害の子供たちに対して、何が起こったのかがすぐ分かるという状況をつくっておく必要がある。将来的には、さらにビーコンやGPSのような最新技術が導入できるようにしていく必要がある。そのために、例えば、廊下等にも後々電源を増設するための環境をつくっておく必要がある。
 生活・交流空間は、いわゆる寄宿舎とか病院等が対応する。寄宿舎に関しては、学校と同等のICT利活用環境が必要不可欠。また、寄宿舎においては、個室で個別の学習を行うので学校と同等のICT利活用環境というのが必要。特に寄宿舎においては、以前、盲学校と聾学校が一緒だったときに火事が起こって、聴覚障害の生徒たちが逃げ遅れてしまったという非常に痛ましい事故があった。こうしたことが防止できるようにデジタルサイネージ等を設置し、デジタルサイネージ等に避難経路等を示して誘導するような環境をつくっておく必要がある。
 トイレもすごく重要。最近では、トイレのICT化も行われている。例えば、トイレの個室で緊急放送が分かるように、放送と連動してパトライトが点灯するというシステムが必要。聴覚障害の場合、個室に入っていると放送が聞こえないので、パトライトの点灯を見て個室から出るとデジタルサイネージで何が放送されているかというのが分かるといったシステムを構築しておく必要がある。
 それから、タブレット端末で様々なトイレの操作をするシステムも開発されているが、視覚障害のある場合、タッチパネル方式だと使えない場合があるので、物理ボタンなどを配置してアクセスできるような形にしておく必要がある。
 今、コロナで洗浄施設も非常に重要。アルコール消毒等が様々な障害のある子供たちにも利用できるように、それから、知的障害のある子供たちの場合には、どう利用していいか分からないということがあるので、説明がデジタルサイネージ等に分かりやすく表示されるようになっているというようなことも必要。
 地域の人たちとの交流も重要。地域の障害のある人たちも学校にたくさん来られるようになるので、多様な障害にも対応できる環境が必要不可欠。
 特に、先ほど説明した学校図書館は、読書バリアフリー法が本格実施されると、外部のボランティアが学校図書館に来て、アクセシブルな図書を作成するという可能性も高い。そういったニーズに対応できるようなICT環境の整備が必要だろうと思う。備品ももちろん、その備品がちゃんと稼働できるようなインフラ整備が必要。
 センター的機能の関係諸室も極めて重要で、今、特別支援学校は特に通常の学級への支援を行っているが、最新のICT機器がこのセンター関係の施設で利用できないと模範にならない。そのためには、センター関係施設には点字ピンディスプレイをはじめとした様々な備品類に加えて、高速ネットワークで利用できるようにしておく必要がある。
 それから、現在、多様な学びの場で学んでいる子供たちが増えてきたので、例えば、盲学校が地域の学校から依頼されて点訳をして、そのデータを地域の学校に渡すというようなことや、聾学校において、音声情報を例えば遠隔手話や字幕で地域の学校に送るというような取組も行われている。
 そういった取組を支えていくためには、センター関係の施設がファイルサーバーとちゃんとつながっていて、地域の学校にファイルを提供できるというような仕組みも必要。
 管理関係室についてです。共生社会のモデルである特別支援学校は、障害のある教職員の雇用が増加すると考えられる。そうすると、管理関係のところ、例えば職員室や事務室の中で、障害のある教職員が働くことになるので、様々な障害に対応できるようなICT環境整備が必要不可欠になる。現在、ICTに関する様々な議論の中では児童生徒が注目されているが、教職員にも注目をしていかないと、障害のある人たちの雇用が進まない。特に教育関係では、障害者の雇用状況が必ずしも芳しくないと報道されているので、これを促進していくためには、障害のある教職員が校務をICTを活用してアクセシブルにできるような環境整備が必要不可欠。そのために機器を管理したり、それからサーバーを管理するような部屋が必ず必要になるし、子供たちだけではなく、教職員を含めた避難誘導システムの構築が必要不可欠になる。
 学校によっては、もう既にサーバールームを用意していたり、そのサーバールームの中に様々なタブレット等を一括管理することができるような設備をそろえているところもある。
 盲学校に鍼灸マッサージ等の臨床センターがある。これは、そこで学んでいる生徒たちが実際に施術をしながら学んでいく仕組みになっているが、この臨床センターにおいて、一般の病院で使われているような電子カルテシステムが使えるようになっていないところもまだあるようだ。一般病院で導入されているような電子カルテ、管理システム等が利用できるような環境整備は必要不可欠。これは卒業後を踏まえたことであるが、今の職業教育に限らず、子供たちが卒業した後のICT教育が学校でもできる、それからフォローアップができる環境整備が必要。
 最後に、特別支援学校には、Society5.0による共生社会のモデルとなるように環境整備を行う必要が必要不可欠。一般の社会を牽引するのが特別支援学校であってほしい。今回は設備について紹介したが、今後、ハードとソフトをどのようにトータルにシステムとして機能させていくかが重要。今、国土交通省等でも、ハードだけという議論はしておらず、ハードとソフトをどう連携させて機能させるかという議論をしているところなので、ぜひこの会議の中でも、運用面を含めたソフトをシステムとして一緒に考えていただけるとありがたい。
 
○ 情報、ICTの活用の中で、管理をする施設側の配慮、教育する側、児童生徒、それから地域、家庭や保護者とが切れ目なく連続していなければならないと思うが、特に特別支援学校の場合、地域と乖離している可能性が高く、児童生徒が家庭に帰ってきた際の地域において、地元の教育行政や企業、NPO等とのネットワークが構築されていないと、なかなか話に出てきたようなICTの活用を、家庭の中で持続的に動かしていくことができないと考えられ、併せて考える必要があるのではないか。
 設備等について、特別支援学校だけでなく、地域の学校の中にも展開していくことが、その情報をうまく活用していく、あるいは様々な特別支援教育の知見を展開していくことになるのではないかと思っており、そのためにはどこまでが、それぞれの学校のグレードで対応できるのか検討するということが、この部会の中でも必要ではないか。
 
○ 現在、文部科学省のGIGAスクール構想の中では、家庭に対して様々な高速ネットワークに接続できるための補助が行われており、家庭に関しては今後充実していくと期待をしているが、寄宿舎や病院内で生活している子供たちの場合に、それがどう適用されていくかという点については、今後、より細かく見ていく必要がある。
 特別支援学校と地域の通常の学級との関係について、特別支援学校の整備が進んでいけば模範として、地域の学校がどういう整備をすれば良いか相談に行ける場になるため、まずは特別支援学校を重点的に整備しながら広げていくのが良いのではないか。
 
○ この部会の進め方について、通常の学級も含めた全ての学校において特別支援教育をどう進めていくかという視点により、この部会は基礎的環境整備についても検討するのか、それとも特別支援学校の施設整備指針を中心に考えていくのか、整理する必要がある。ただ、特別支援学校のみとするのも特別支援教育から考えるとおかしいので、ICTに限らずバリアフリー、共生社会という問題で、どこまで基礎的環境整備を通常の学級で進めていくか、次の段階として、より特化した教育機関としての特別支援学級、特別支援学校における施設設備をどこまでグレードアップすればいいのかといったように、今後どのように検討を進めていくのか整理をしたい。そうなると、特別支援学級もしくは通級による指導の環境整備については、連続性を意識して、小学校の施設整備指針の見直しも始める必要があるのではないか。
 
○ 全体的な議論の方向性について、御指摘のように、この会議は特別支援学校だけを対象にするのではなく、障害を持つ様々な児童生徒が、通常の学校や特別支援教育の学級、特別支援学校と、様々なところで教育を受ける環境について総合的に考えるというスタンスで運営していくが、議論の仕方については次回までに工夫させていただきたい。
 
● 今回、特別支援学校の施設整備指針の改訂のみではなく、特別支援学級や普通学級、通級指導も含めて、学校施設についてどのようなことが求められるかという観点で議論いただくということになる。最終的に、基本的には特別支援学校の施設整備指針改訂案を作成することになるが、必要に応じて、小学校、中学校、高等学校の指針においても、不足する観点があれば反映するというところも含めて考えていただきたい。
 
○ 現在、1人1台の端末についてはほぼ全ての小中学校で揃ってきているが、同様のタブレット端末の配置という形で進んでおり、障害のある子供たちにおいては合理的な配慮が全然なされていない現状がある。合理的配慮を踏まえた個々の子供への端末の整備については、どのように考えておられるのか。
 
○ 個々の端末は揃っていても、その子供たちに本当に必要な、障害の特性に合った端末が配られておらず、点字のピンディスプレイや視線入力装置といった端末を活用するために必要な支援機器については、通常の学級に在籍している子供たちには配布される仕組みになっていない。通常の学級における教育まで全部同じように扱っていくためには、例えば就学奨励費等をより拡張し、その子供たちが必要な全ての機材を揃えて、授業等の場面で使えるようにする個別の合理的な配慮が非常に不可欠である。
 
○ 普通教室に無線LANが設置されても、多くの子供たちが一斉に接続することを前提にしていないために問題が発生している状況があるという話も聞いており、様々な機械を接続することを考えていく際に、無線LANの容量や速度についても言及が必要ではないか。
 
○ 情報保障するための端末を複数台、同じ無線LANの中につなげないために、問題が起こっている。例えば聴覚障害のある児童生徒への情報保障として自動認識をさせた後の文字修正をするための端末が使えないといった運用上の問題は多く出てきており、運用も含めて議論をしていただきたい。
 
・事務局より、資料3に基づき、前回会議における委員からの主な意見の論点1、2について説明
 
○ 医療的ケアで一番大切なのは非常用電源であると考えるが、後段のほうに記載され埋没してしまっているので、強調していただきたい。
 
○ 「1. 一人一人の教育的ニーズに応じた教育を支えるための施設の充実」の「障害の重度・重複化、多様化への対応」の記載について、盲ろうの子供たちや、重度の障害の子供たちの視点についても書き込んでいく必要がある。
 委員のご発表を踏まえて、ICTに関するシステムへの膨大な配慮が必要となってくると、例えば「ICTに考慮された施設の対応」といった別項目を別途起こしても良いのではないか。
 視覚障害と他障害種の学校の設置・併設について、なかなかイメージをしにくいと思われるので、補足的な説明が可能であれば、具体的な取組の事例を載せると分かりやすいのではないか。
 
○ 重度重複についての記載がもう少し丁寧に書かれるべきという指摘について、今後の作業で十分注意したい。ICT環境の項目について、事務局と計り、まとめ方については配慮させていただく。
 
○ 医療的ケアの対応については、医療的ケア支援に関する法律が整備されたこともあり、小学校、中学校を含め充実させていくことが重要。また、この8月に学校教育法施行規則が改正され、医療的ケア看護職員や、情報通信技術職員、特別支援教育支援員等、多様な方々が働くような空間についても考慮した内容にしたい。現在の学校は多様な方が働くようになってきているため、従前の教員のみに留まるような記載を変えていく必要があると思われる。
 
○ まず、採光について、現在、非常にLED化が普及しており、一般的にもかなりまぶしく感じるような照明器具が学校にも多く入ってきているように思われ、間接光などの工夫も必要と感じている。
 「1人1台端末に対応した大きな机」について、例えば車椅子を使われる子供たちにとって大きな机がどう影響をもたらすのか、必ずしも大きな机にすることが正しいのかということについて若干疑問を感じている。
 あと、GIGAスクール等に関して、Wi-Fi環境などが整ってきているが、セキュリティーのレベルや速度に関しては、自治体間の予算の都合による差が大きいというふうに聞いている。これは全国一律に教科書が配られるのと同じように、ICTの環境とかスペックにもある程度一定の基準というのが今後は必要になると感じている。
 
○ それぞれ障害種別に応じた配慮事項、必要事項については、整理が必要であると思われる。とくに障害種によって対応が違う部分が出るのではないか。今回、特別支援教育を対象に考えると、特別支援学校の障害だけではなく、特別支援学級や通級による指導(特別支援教室)の対象の子供たちの障害にもどう対応していくかということが求められてくる。一人一人に応じたということで障害に応じたことを書くだけではなくて、様々なシチュエーションが考えられる。そこをどう整理していくか、きちんと整理しないと、施設整備を行う側理解しづらいように感じる。
 
○ 1点は「特別支援学級においても1人1台端末などに対応した大きな机」、「大きな机」について、「など」には拡大教科書に対応であるとか、様々その障害種に合わせたというところだと思うが、「大きな机」というのがすごく抽象的だなと思う。実際、学校では今、旧JIS規格の机が非常に多く、なかなか新JISになれていない。新JISだと多分5センチぐらい幅が大きい。それだけでもタブレットの置場が確保できたりするので、そこをまずしっかりと確保しつつ、障害種に合わせた机の大きさを確保することが良いと思う。
 2つ目は、これから小学校、中学校の施設整備指針に議論の内容を反映していくにあたり、その小中の施設整備指針に記されている内容をしっかりと踏まえながら取捨選択をしつつ、追記していくことが必要かと思う。
 
 
・事務局より、資料3に基づき、前回会議における委員からの主な意見の論点3、4、5について説明
 
○ 1点目としては、施設整備指針を運用していくにあたってのこれまでの課題や成果の整理が必要と思う。
 2点目として、学校を建て替えるというタイミングは何十年に一回であり、今できることを示す視点も必要ではないかと思っている。優先順位と言うと、それぞれの自治体によって違うかとは思うが、先ほどのICTの環境整備や避難等について、大規模な改修でなくとも、今できるような技術的なヒント等を例示しておくと効果的であると思う。
 
○ バリアフリー・ユニバーサルデザイン等の丸の6番目の障害者トイレとあるが、一般的に「障害者トイレ」という表現はあまり耳にせず「車椅子対応トイレ」という表現のほうが比較的よく使われるかなと思う。大事なのは、「おむつ替え等に活用できるよう、ベッドがあるとよい」という表現になっているが、このベッドがベビーシートと思われてしまうと、そういうふうな捉えられ方をしてしまいますと、ベビーシートのほうはあくまで乳児の対応ですので、こちらも国交省のほうの設計標準と合わせ、「大型ベットがあるとよい」というふうに示したほうが、より真意が伝わると思う。
 2点目については、先ほども非常に様々な職種、立場の教員がいるというお話があったが、加えて、障害のある教員も働きやすい場というような就業環境ないしは労働環境として、障害のある教員という視点も入れるべきと思う。
 3点目は災害時における避難所としての機能について、支援学校に通っているお子さんたちは、決してその支援学校のすぐ周辺に住んでいるわけではなく、通学バス等で30分、1時間かけて遠くの市町村から来るとなると、支援学校に通う子たちが自分の支援学校に避難するとは限らない。わざわざ遠いところに避難するということは考えにくい。
 また、避難所の運営が市区町村ですので、都道府県の支援学校が避難所となる場合に、ここが市町村と都道府県でしっかり連携をしながら避難所の運営をしないと支援学校が取り残されてしまう可能性があるというようなことも実例から見えてきている。そういった複数の視点がこの中に問題が含まれているため、整理が必要と感じている。
 
○ 一人一人の教育的ニーズに応じた教育の充実の視点にもすごく関わることだが、特別支援学校の設置基準の策定で、教室不足のことだけではなく、第15条に整備するものの中に自立活動室がしっかりうたわれているところが私は重要だと思っている。特別支援学級も通級の指導も、特別な教育課程における要は自立活動であると思うので、整備指針の段階でも自立活動をどのように展開していくのかという視点で大きく反映させてほしいと思っている。
 それは特別支援学級も同じで、先ほど特別支援学級のところにも自立活動の部屋とあったが、やはり特別な教育課程においては自立活動というものが重要なので、教育内容から考えると、自立活動をどのように重要な指導として取り扱っていくかという視点においての施設設備の整備を全体として貫いていただけると良いと思う。
 
○ 3番の「社会的要請等も踏まえた、安全・安心・快適な空間づくり」の中で、一番気にしているのが子供たちの安全という観点。そうしたときに、この3の中に不審者の侵入等、要するに防犯についての項目があったほうがいいと思う。現状の特別支援学校施設整備指針についても、たしか第9章のところに防犯計画というのがあったと思う。そこにつなげる意味でも、防犯ということについて、この中にしっかり書き込んでいくべきだと思う。
 もう一点は、自立活動が特別支援教育の要になるので、しっかり位置づけていくということと、恐らく全国の都道府県教育委員会、または、設置者である教育委員会が最初に見ていくのは、この特別支援学校設置基準についての項目がどう書かれているかなというところになろうかと思うので、該当部分は引き続きブラッシュアップしていければと思う。
 
○ 私が特にお話ししたいことは防犯というか防音装置について、これは聴覚障害のお子さんのみならず、インクルーシブ教育システムという中では、通常の学級等でも、いわゆる騒音対策ということが必要かと思っている。学校の環境基準のほうにも静かにしたほうがいいよというようなことを書いており、皆さんそれは同意されるかと思うが、やはり数値目標も掲げておく必要があるかと思っている。というのは、海外では、アメリカ、イギリス等、教室の騒音というのは35デシベルとかという、すごい小さい音でやっている例もあり、何をもって静かにするかというところはすごく重要な視点ではないかなということを感じている。これは照明もそうかと思うが、数値目標みたいなものも検討して入れていってはいかがかなと思う。
 
○ 1つは、この報告書の最終的なまとめ方について、意見交換なので羅列に留めるのか、修正しながら意見として整理するのか。
 そういうことでは、例えば、今の御説明のあった8ページのところでも、バリアフリー・ユニバーサルデザインでも、まだ改訂指針が出たばかりなので、整合性も含めた、もう少しトータルなコメントを出しておいたほうがいいのか、精査をどうするのかということが気になった。
 また、通学バスについて、利用する児童生徒の排泄に係る問題については車両に関する問題もあると思われるが、触れられれば良いのではないか。
 また、避難所に関する取組についても検討しているが、地域の学校だけではなく、地域のコミュニティーの拠点としての役割や地域の施設間の連携の観点からも触れる必要があると思われる。
 
○ ご指摘の通り、これまでの議論の意見を並べるだけでなく、障害種や学校種ごとにどのような配慮が必要であるかを反映することが重要であり、これまでの意見を整理したい。
 また、スクールバスや他の公共施設との連携についても整理していく。
 
○ 通学バスに関連する点として、放課後デイサービスの送迎では、雨天や積雪時等の天候に左右されないような、安全対策や取組を進めることが重要である。
 
・事務局より、資料4に基づき、今後のスケジュールについて説明
 
 
 
―― 了 ――

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

指導第一係

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)