特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設部会(第1回)議事要旨

1.日時

令和3年10月22日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 今後の特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員) 阿部一彦,青木隆一,市川裕二,岩井雄一,上野淳,喜多好一,菅原麻衣子,諏訪肇,髙橋儀平,丹羽登,原田公人,日高真吾,森由利子(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 下間文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官,磯山施設企画課長,髙草木施設企画課課長補佐

オブザーバー

【初等中等教育局】 宇野特別支援教育課課長補佐

5.議事要旨

(○委員の発言,●事務局の発言)
 
・下間文教施設企画・防災部長より挨拶
・上野部会長より挨拶
・事務局より出席者の紹介、会議資料の確認
・事務局より、資料1、2-1、2-2、3に基づき、検討の趣旨や背景等、関連する施設整備の施策について説明
・宇野特別支援教育課課長補佐より、資料4に基づき、特別支援教育関連の施策について説明
・事務局より、資料5に基づき、主な検討事項及び論点案について説明
・各委員より、資料6に基づき、主な検討事項及び論点案について発表等

○ 一人一人の教育ニーズに適応するとともに、卒業後の社会参加も見据え、障害の有無に関わらず共に学ぶこと、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育の実現が重要である。
 特別支援学校、特別支援学級、通級に在籍する児童生徒数が増えていることによる教室不足の問題や、バリアフリー環境、ICTの活用等は重要な検討事項である。また、特別支援教育支援員はとても重要な役割を果たしており、安定した配置が必要である。
 就学前から卒業後も含めた切れ目のない支援を行うこと、また、学校での学びの場、放課後等デイサービス、家庭、それぞれが一人一人の児童生徒の発達を十分に支援していく上で、教育、福祉、家庭の連携が重要である。スクールソーシャルワーカーの配置も重要であり、個別の教育支援計画、個別の指導計画とともに放課後等デイサービス、福祉領域の施策の個別支援計画との連携なども含めて行っていただきたい。

○ コロナウイルス等感染症対策といった喫緊の全国の課題だけでなく、当然、津波や地震といった災害への対策についても、改めて検討していく必要がある。
 全国の盲学校には、職業教育課程として、あんまマッサージ指圧、はり及びきゅうに関する養成課程を設けているが、学習指導要領だけでなく、施設に関する規定が含まれている「あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゆう師に係る学校養成施設認定規則」の改正といった、関係法令も意識しつつ検討を進める必要がある。
 視覚障害の児童生徒にとっては、分かりやすい教室配置等の配慮された、空間構造が重要である。視覚障害の特性を踏まえた配慮例として、点字ブロックや盲導鈴(音声誘導装置)の設置、廊下の突起物が無いように考慮した消火器等の位置、階段の手すりや段鼻が分かりやすいようなコントラスト、採光への工夫や調光システム・遮光カーテンの設備が挙げられる。また、オープンスペースとして廊下と教室の区切りがない学校も増えてきているが、視覚の代わりに聴覚を活用した学習をしている視覚障害の子供たちにとっては難しい環境であり、静寂を確保できる構造が必要である。
 知的特別支援学校の在籍者数については増加し、教室不足や過密化が生じている一方で、盲学校の在籍者数は年々減少しており、視覚障害と他障害種の学校の併置併設、盲学校に知的障害の分教室が入るといった動きが全国で増えてきている。多様な設置形態が増えてきたことを念頭に置いた検討をしていく必要がある。
 また、施設整備指針の記載について、文言調整が必要な箇所がある。
 
○ 特別支援学校は、多様な障害種・学部と、小規模校から大規模校までの幅広い組合せで設置されており、多様な特別支援学校に対応できる学校施設の在り方の検討や、多様な障害等の障害特性に応じた学校施設の在り方の検討が必要である。
 特別支援学校が障害のある方の障害者スポーツの拠点校として活用されるといった動きがあるが、貸出ししている団体・施設には非常に幅があり、生涯学習の推進のために学校施設をどう利用するかということも検討していく必要がある。
 障害のない子との交流及び共同学習について、特別支援学校においては児童生徒の居住地の学校との直接交流、特別支援学校がある地域の小中学校との学校間交流があるが、こうした取り組みが進んでいるところもある一方、課題があるところもある。また病気療養や入院等で通学できない児童生徒の遠隔授業を推進するため、ICT環境の整備を進める必要があり、個別に児童生徒が1人で学習できるような部屋等の設置も必要である。
 福祉避難所について検討を行う際には、児童生徒の在校時の災害対応と、災害が起こった後の福祉避難所としての災害対応は分けて検討する必要がある。また、福祉避難所の設置は市区町村の役割であり、県立特別支援学校のような設置者が異なることも念頭に検討が必要である。特別支援学校においては通学区域には非常に幅があり、学校所在地から非常に遠い市区町村との関係も踏まえた検討が必要となり、ただ単に、特別支援学校を福祉避難所として設定することはなかなか難しい。
 学校施設を考えるときには子供の学びだけではなく、職員のことを考えるべきである。職員室、職員の休養室、ロッカー室等、職員が働きやすい環境整備の視点も必要であり、また、小中学校に設置される特別支援学級や通級による指導を受け持っている先生方の状況を踏まえて環境整備の視点についても検討に加えるべきである。
 
○ 今回、特別支援学校施設整備指針の改訂に当たって、特別支援学校だけではなく、特別支援教育を行う学校施設全ての整備について検討するということになり、これは大変重要なことである。
 学校施設整備指針においては、「重要である」、「望ましい」、「有効である」という表現が取られているが、設置者に指針を読み込んでもらい整備を進めてもらうことが求められている。指針であるということは理解した上でも、とくに重要と認められる箇所については求められる水準と併せて提示できるようにしたい。
 全ての学校において基礎的環境整備を進めていくことが必要であり、中でも特別支援学校では、より多くの環境整備が求められる。さらに、障害がある児童生徒が共に学ぶ環境を整えるために、一人一人に対して適切な合理的配慮を提供するために学校施設整備指針をどのように改訂していくのか、検討が必要である。
 
○ 各障害種の中で共通している検討課題として、特別支援学級等の教室の不足が挙げられる。普通の教室を利用している場合が多く手狭になっており、パーティションや防音壁で仕切っている場合も多く、非常に問題であり、特別支援学級等の専用の教室を整備する必要がある。特別支援学級の教室に求められる機能について、学校施設整備指針で示していく必要がある。
 トイレに付き添いが必要な子、肢体不自由の学級以外にも歩行困難な子、身辺処理の必要な子といった、様々な障害や特性のある児童生徒に対して、多目的トイレ、シャワールーム、手洗い場、エレベーター、手すり等は標準装備とする必要がある。
 特別支援学級、通級指導教室におけるにおいては、非常に教材が多いため、その収納スペースの確保が必要である。
 弱視の児童生徒に関しては、拡大教科書を置ける大きな机が必要である。
 通常の学級に特別支援学級の児童生徒が交流及び共同学習で入っている自治体が多くあるが、通常学級においては特別支援学級の児童生徒を含めて教室の規模が検討させていないため教室が非常に密になることが現状としてあることについて、検討していただきたい。
 医療的ケアに関して、医療的ケアが行いやすい施設や、教室と往来しやすい場所の控室といったケアスタッフのための施設があると良い。
 自閉症や発達障害、集団不適応を起こしている児童生徒に関しては、クールダウンができる個別スペースが各フロアにあると良い。
 聴覚過敏の児童生徒に対しては防音の整備、弱視の児童生徒等に対しては遮光・調光の設備が必要である。
 保護者用の相談室、控室があると良い。また、安全対応に関して、衝動性が強い児童生徒に関しては、照明器具の防護やマジックミラーの設置、ロッカーや机の角に緩衝材があると良い。また、バリアフリー化も当然ながら重要である。
 
○ 子供たちにとって学校は社会を学ぶ場でもあり、小さな社会とも言える。そこに自分の存在が認められる居場所があり、互いに対等な関係にあるという実感を持つことが何よりの教育基盤であることを踏まえ、社会から分けられているという意識を生み出さないような配置や動線や空間のつくり、運用といった観点から施設の在り方を考えていくことが非常に重要である。
 通常学校と特別支援学校の一体型校舎の事例があるが、連続性のある多様な学びの場を垣間見ることができる。必ずしも、一体型校舎を推していこうという意味ではないが、その中に連続性のある多様な学びの場を実現するうえで、学ぶべきことが多くあるのではないか。
 学校は子供と先生だけが利用する施設ではなく、誰もが利用し得るために、特に災害時の要配慮者の避難も受容できるバリアフリーの施設、設備、また避難時の運用やゾーニングについての想定は非常に重要である。体育館のみならず、校舎、校庭など、災害時にどう使い分けるか、学校の特性や地域特性を踏まえた学校施設計画が求められる。
 特別支援学校について、福祉避難所としての役割を期待するにとどまらず、一般向けの避難所にもなり得ることをふまえて議論が必要である。
 医療的ケアが必要な児童生徒は特別支援学校だけではなく、通常学校に通うこともあるので、通常学校に係る学校施設整備指針の記載内容も併せて検討していくことが必要である。その際には、何でも加えればいいという安易で過剰な整備にならないように、現場での工夫や融通の効きやすさなども尊重した整備内容を示すことも重要である。
 
○ 肢体不自由教育部門の廊下では、車椅子の子供たちが余裕を持って擦れ違える幅にすることや、身長や障害の違いに対応できるよう手すりを2段にするといった工夫をしている。また、玄関やグラウンドへの出口、非常災害時に備えて非常口についても、車椅子の前輪が挟まってしまうことがないよう、フラットな環境で外に出られるように配慮することも重要である。
 上下階移動については肢体不自由の児童生徒の車椅子が階段から転落しないような防護用の柵の設置、スロープの先の部分に衝突対策のクッションをつけるといった配慮もしている。
 肢体不自由のある児童生徒にとってWi-Fi環境は、キャリア教育や交流教育を進める上で非常に重要であり、特別支援学校の高等部においても、GIGAスクール構想に基づく環境整備が必要である。
 医療的ケアを必要とする児童生徒等に関して、災害時も人工呼吸器、吸引機の使用のために電気を必要とし、バッテリーは長時間もたないため、非常用電源装置が必ず必要である。
 車椅子利用者が使いやすいよう洗面台の下部を空洞にしたり、車椅子対応のトイレには、おむつ替え等を必要とする児童生徒等にも対応できるよう、大型ベッドを設置することが必要である。また校内の各案内表示は、誰にとっても分かりやすいピクトグラムを用いるといった配慮が必要である。
 
○ 平成29年の学校教育法の改正により、盲・ろう・養護学校が複数の障害種に対応可能な特別支援学校が増えている。こうしたなかで、既存の施設をそのまま使わざるを得ない学校において、動線やトイレの確保について必ずしも十分な対応ができていない状況があるため、検討の必要がある。
 肢体不自由の特別支援学校と比べて、ほかの障害種の特別支援学校においては、医療的ケアのための場所が確保できていない場合がある。また、従来の福祉の領域では知的障害でも運動機能障害でもないけれども医療的ケアを必要とする子供たちがかなり増えてきていることへの対応として、特別支援学校だけでなく小中学校についても検討する必要がある。二分脊椎の子供やオストメイトをつけている児童生徒にとって必要なトイレが確保されていなければならない。
 通学バスにおける排泄上のトラブルの対策のため、バス乗降所の整備はかなり重要であり、今後検討の必要がある。
 病弱の特別支援学校では、病院内に設置される学校と隣接した学校があるが、病院内に設置される学校の場合、病院の経営状況によって学習環境が大きく左右されている。病院によっては廊下で授業をするような事例もあり、最低限、学校教育として実施できるような施設は揃える必要がある。また、ネットワーク環境について、現状では電子カルテが関連するWi-Fiは使えないという状況があり、病気で入院している間もきちんとネットワークを活用できる環境を最低限、確保する必要がある。
 また、強度行動障害といった精神疾患の子供たちに関して、落ち着くための場所の確保だけでなく、安心でき、個々の子供たちのプライバシーが守られるような施設を検討していく必要がある。
 
○ 聴覚障害の児童生徒に関して、騒音対策が非常に重要な視点であり、FM補聴器等のシステムがかなり普及しているが、欧米の学校でのように防音を基本的な整備として考える必要がある。
 インクルーシブ教育システムに関して、通常学級に難聴の児童生徒が在籍している状況が多くある中で、特に聴覚機器の配備が不足しているという調査結果があり、聴覚特別支援学校のセンター的機能の発揮と併せて教材の共有についても考えていく必要がある。それに伴って、特別支援学校が有している施設や設備について、より情報発信していくことも必要である。
 昨今はデジタルの補聴器が95%程度普及しているが、学校ではループシステムといったアナログ式の機器がほとんどで、通常学級との連携もなかなか難しいという現実があり、デジタル補聴器の援助システムは必須である。また地域との連携の中で、遠隔地との通信システムの整備は、保護者の経済的な負担の軽減も含めて非常に重要であり、乳幼児相談についても、遠隔地通信システムによってかなりカバーできる部分があるのではないか。
 新しい学習指導要領への対応という観点からは、生涯学習という視点から共同学習も含めた地域との連携、また落ち着いた環境で個別の指導を行うため、学校の中にキャリア支援室のような空間を整備する必要がある。
 欧米のHearing Awareness Weekや、耳の相談日等を各種自治体が打ち出しているが、法的整備によって、障害理解のための啓発をより地域に対して行っていく必要がある。
 特別支援学校においても、異動人事がある中で専門性をどう担保するかという問題が大きく、インクルーシブに関わる研修のシステムを法的整備の中で充実させる必要がある。
 特別支援学校が「地域に開かれた学校」となるためには、特別支援学校に地域の方の要望をどのように反映するかという視点が重要であり、特別支援学校の施設や設備について地域の方に知ってもらうことと併せて、地域のニーズを施設整備の検討の中に反映することが重要である。
 Wi-Fi機器の充実ということが今、聴覚障害の中では非常に重要視されており、様々な機器がこれから開発されていく中で、それに対応できる環境が必要である。
 学校に現在在籍している児童生徒だけではなく、地域の中で、これから将来どういう人々が活用できるかという視点で考え、乳幼児から成人まで利用できるような施設として検討していくことが、「地域に開かれた学校」に近づくことに繋がる。
 
○ 特別支援学校設置基準について、校舎の面積は設置基準を満たしているが、学級編制を基準どおりにした場合には、10教室以上教室が不足するような学校もある。一方で、全体の児童生徒数が減少する中で、特別支援学校に進む児童生徒の数が今後、どのように推移していくのか推計が難しく、どれくらいの教室を整備するのがよいか、自治体は苦慮している現状がある。また、教室を多くすると学校の大規模化につながり、学校運営上の課題も懸念され、敷地に増築をするスペースが全くない学校も多く、その場合は、一部の学部を移転したり、他の県有施設の活用等も検討する必要がある。
 現在、令和6年度まで特別支援学校の教室不足解消のための補助金を3分の1から2分の1にかさ上げすることが国で行われているが、今後も計画に基づき整備を行うために、かさ上げ期間の延長について検討をお願いしたい。
 
○ 一人一人に応じた教育ということと、共に学ぶ教育、この両立ということが一番の課題であり、学校施設を考える上でも必要である。
 特別支援学校施設整備指針の具体的な検討については、改めて具体的な論点を分類する必要がある。文部科学省が作成している論点案では、例えば「①新しい時代の特別支援教育へ対応した施設整備」と「②新しい学習指導要領へ対応した施設整備」の中に、「1人1人に応じた教育」についての考え方や、インクルーシブといった「共に学ぶ」という考え方が混在しており、また①中の設置基準を踏まえた論点については、レベル感が違うのではないかと考える。そこで、検討上の分類例として、「共に学ぶ」という観点、「一人一人に応じた教育を進める」という観点、「安心・安全」の観点、それから「設置基準等々の整合性や今日的課題への対応」の観点といったように分類して検討してはどうか。
 学校施設の在り方を検討していくに当たって留意すべき1点目の観点としては、設置基準はあくまでも児童生徒数に対応する形になっており、施設整備をする上で、学校施設整備指針のなかでは適正規模どのように想定するのかということも含めて検討が必要である。2点目に複数の障害種への対応として、対象校においてはそれぞれの障害の構成比や学部の構成比が変化していくため、整備には柔軟性が必要である。3点目に、地域で共に学ぶ仕組みに関して、地域住民や児童生徒との関わりが持ちやすい設備・施設の整備をさらに進めることを考えていく必要がある。また、4点目は他校種施設への併置や転用について、消防施設や、小学校と中学校では階段のピッチが異なるといった改修の際に生じる課題にも留意する必要がある。
 
○ 幼児から小学校、中学校、あるいは高等学校への連続的な対応というのは、特に障害のある児童生徒にとっては非常に重要である。また、通学時間が長くなることにより地域での多様な共生の機会が阻害されてしまうため、特別支援学校の配置の問題は、学校の整備にとって非常に重要であり、地域の学校や空き教室との連携等、様々なことが教室づくり、学校づくりにおいても課題となるため、議論していく必要がある。
 
○ 先ほどあった、学校施設整備指針の「重要である」、「望ましい」、「有効である」という表現に対して、もう少し強制力という観点で検討できないかという意見について、同じように考えている。また、より整備する必要がある、整備しなければならないといった観点を盛り込もうとしたときに、内容によっては設置基準のほうに盛り込むのか、バリアフリー法の中で検討していくのかといったことも念頭に置いて検討を進める必要がある。
 
○ 本日いただいた御示唆、あるいは御指摘を、次回までに事務局と整理し、論点に加えていく。
 
・事務局より資料7に基づき、学校視察の候補について説明
・事務局より、資料8に基づき、今後のスケジュールについて説明
 
 
―― 了 ――

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大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

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(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)