新しい時代の学校施設検討部会(第10回)議事要旨

1.日時

令和4年3月4日(金曜日)13時00分~15時30分

2.場所

オンライン開催

3.議題

新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について

4.出席者

委員

赤松佳珠子,天笠茂,伊香賀俊治,倉斗綾子,中馬英和,〇長澤悟,野中陽一,毛利靖,吉田信解(敬称略, 〇:部会長を示す)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 下間文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官,磯山施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,栗本施設企画課課長補佐,髙草木施設企画課課長補佐

5.議事要旨

(以下 ○:委員等の発言,●:事務局の発言)

・長澤部会長より挨拶。
・事務局より最終報告 概要、本文第1章~第4章について、資料2,3を用いて説明。
 
○:32ページの木材利用の促進のイラスト「木材化・木質化」と表記されているが、本文の記載に即して「木造化・木質化」にした方がいいと思う。

○:報告書は、基本的にこの方向で良いと思われる。これを今後、どのように位置づけて活用してもらうか、どのように理解を広げていくか、といった報告書の活用の仕方や共通理解の図り方のような手立てについて、もう少し目配せがあってもいいと思う。例えば、教職員支援機構の研修プログラムの中で報告書を取り上げていただき、理解を深めてもらう機会を設けることや、各都道府県の実施する管理職等の研修会の中での情報提供など、どのように報告書を活用してもらうか示しておくことも考えても良いと思う。

○:国による推進方策に関わる部分も含まれたご意見である。各設置者において、どのように受け止めていただく必要があるかをうまく書き込む工夫をさらにしていきたい。

○:次年度の都道府県や市町村の研修プログラムの姿が見えてきており、その一つの大きな柱は「個別最適な学び」である。「個別最適な学び」を実現・具体化していく際に、報告書は有力な検討材料となり、ヒントになるはずである。国や都道府県、市町村の研究や研修の中で報告書をしっかりと位置づけ、報告書の視点や内容をしっかりと踏まえてもらうための触れ込みを加えることを検討いただきたい。

○:建築後に教職員が変わっても、設計の意図が引き継がれるような手立てが必要だと思う。建てて終わりにならないように、毎年4月に学校のビジョンを確認するなどをして、現場の教職員が学校を活用し続けられるようにしたい。

○:学びとなる空間も教職員を抜きにして活力を生み出し切ることはできない。学校施設や空間の在り方は学校設置者と設計者だけではなく、教職員やそこで学ぶ子どもたちも含めて考えていくのだということをどう実現していくかはとても重要だと思う。その点で、先生たちが工夫して学校の空間を築いた事例やそれを子どもたちが上手に活用している事例を紹介する工夫もこれから必要だと思う。

○:この部会の検討については、設計者や学校、自治体からの注目度が高いことをひしひしと感じている。今回の資料で黄色マーカーがついている部分は、これまであまり表現されてこなかった部分や新しい部分が非常に多いと思っている。特に「遊び」という言葉や「先生方の働く環境として」という部分は、着目されるような形で書けているのではないか。ただ、学校現場の先生には、国で現在話し合われていることがまだまだ浸透していないと感じている。設計者が情報収集して勉強している状況も学校現場には伝わっていないため、今後の伝え方は非常に重要である。

○:設計する立場として、先生方など使う側と、特に実際に使われ始めてからのコミュニケーションが上手くいかないジレンマを少なからず抱えていた。建物が完成した後に、上手く使われるよう、それまでのいろいろな方々の思いや計画してきたことを橋渡しすることが一番重要な部分だと思う。設計者も様々なことを考えて取組む一方で、なかなかうまく教育につながっていかないことは報告書に相当丁寧に書かれており、そのサポート体制までしっかりと入れ込んでいただいている。後は、どのように現場の先生や関係者、地域の方々まで浸透させた上で一緒にやっていく意識を持ってもらうかだと思う。この内容を広めていく役割を報告書に携わった我々もまた担っていると思う。報告書を公開できるタイミングになれば、これを基に議論を進めていければと思う。

○:2050年カーボンニュートラルという政府方針に対して、学校施設で具体的にどう進めていくかという設計指針レベルだけでなく、そのための予算措置や、学校設置者、教育委員会、関連部局、首長などが取組むべき内容が報告書にしっかり明記されたことは素晴らしいと思う。また、カーボンニュートラル以外にも、学校施設の在り方や多くの整備事例が紹介されているため、早く公表して設計者や学校設置者に見ていただけるといいと思う。

 
・事務局より最終報告 本文第5章、別添資料などについて、資料3,4-1,4-2,4-3,4-4,6を用いて説明。

 
○:資料4-1のイメージ図12「多様な教育的ニーズのある児童生徒への対応の交流空間の例」では中庭の路面が芝生のように表現されており、そこで車椅子の子どもが一緒に学習しているが、車椅子に対する配慮として路面が芝生なのは適切かどうか、確認した方がいいと思う。

○:貴重なご指摘であるため、実態を確認した上で適切な表現にしていく。

○:報告書では、インクルーシブ教育についてしっかり位置づけられている一方で、その考え方を提示する部分では課題もまだあると思う。個別最適な学び、新しい学びの中で特別支援学級という学びの空間がどのように位置づけられるのかということについて、この部会としても記述しておく必要性があると思うので、今一度検討いただきたい。

●:特別支援学級の在り方については、特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設部会において議論しているところである。特別支援学校のみならず、特別支援学級、通級指導教室、普通教室も含めて、多様な児童生徒に配慮するための留意点などを議論する中で、特別支援学級の教室配置のことなどに関しても意見をいただいている。
 この部会の提言の中での位置づけについては、1つ目の学びの部分の中で、インクルーシブ教育システムへの対応という記述に、特別支援学級や通級における指導の状況を記載するなどの工夫も含めて検討していきたい。

○:特別支援学級を学校全体の中の空間として考えるより、むしろそれぞれを切り分けて捉える学校が少なくないと思うので、資料編に好事例を載せるというのも一つの方法ではないか。

○:報告書全体を通じて立体的に幅広く具体的なイメージを持ちながら理解してもらえる表現や記述の仕方が大事とのご指摘と受け止めた。資料4-1のイラストでは学校の活動の中に車椅子の子どもも描かれている他、資料3の22ページには「障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が安全かつ円滑に交流する」など基本的な姿勢が示されており、特別支援部会の検討を踏まえたとも記載しているが、この報告書で表現した方がいい部分や表現できる部分は色々あると思うので、特別支援部会の部会長とも相談しながら検討したい。

○:資料4-1について、「1人1台端末を文房具として活用し多様な学びが展開される姿」とキャプションの入ったイラストがあるが、イラストを通しで見たときに、タブレットが描かれたイラストばかりに見えてしまい、鉛筆とノートが全てタブレットに取って代わるかのように受け手に捉えられてしまうかもしれないと感じた。例えば、1つのグループの中に、タブレットを使った子どももいれば、はさみで図形を切っている子どももいる、何かを絵の具で書いている子どももいるといったような、その子の個性で何を使って行うかを選んでしている姿を示すことができればという印象を持った。

●:イラストの描写について検討する。

○:中間報告の体育館のイラストにはタブレットの描写がないので、子供または先生がタブレットを持った絵に変更することも検討できると思っていたが、逆の視点からのご指摘をいただいたので、全体を通して何をメッセージとして受け取られるかということを反対の視点からも配慮しながら、イラストについて考えていきたいと思う。

○:資料4-1のイラストは、教育委員会や設計者だけでなく、学校の先生にも、既存の学校で改修や使い方の工夫をするときに役立つと思う。先生や学校、管理職の方にアピールして見ていただけるようにできればと思う。

○:学校や教育委員会の方々も、何をどう始めればいいのか具体的なイメージが掴みにくい気がする。サポートの方法として例えば、倉斗委員が携わっているオープンスクール研究会の活動のように、学校の方々の中に建築計画や音響の専門家が入ることで実際の授業や単元にからめながら空間を活用していく事例について、ウェブ等で紹介するなど非常に分かりやすいと思う。

○:文科省が作ろうとしているサポート体制であるプラットフォームと連動し、事例として載せるのも良いと思う。

○:具体化への様々な工夫例を集めて、課題を持つ設置者や先生方にヒントとなるような取組や仕組みの紹介の仕方について、作成主体や内容の議論・検討が今後も進んでいくとよいと思う。

●:資料3の42ページに記載されているプラットフォームは、施設整備に留まらず、整備されたものをどう活用していくかといった事例も様々な取組の一環として紹介していくことを考えている。

○:今年度、文部科学省の委託事業で実施した、学力向上のための基盤づくりに関する調査研究について、活動の取組を報告しているので参考にしていただければ。

○:学校施設を設置する時と設置した後に何をするか、どう有効に活用していくか、その両面でトータルに取り組んでいくのが新しい時代の学びを実現することにつながるということだと思う。

○:当市の小学校でも芝生化を進めてきた。当初はグラウンドのトラックの内側全面を芝生化していたが、トンボのような様々な動物が芝生のところに来るため子供たちも喜んで裸足で芝生へ向かい、遊び、楽しく過ごしていた。その一方で、芝生の維持管理には費用と手間が嵩む。芝生は高温多湿の環境では、ほっておくとどんどん伸びてしまい、また、農薬も撒くことができないため、手作業で管理をしなければならず、現場の先生に負担が及んでしまう。また、社会人サッカーやソフトボールなどの際に芝生が邪魔になるケースもあった。結局、芝生化を進めていく中で、校庭の一角のみんなが納得する場所に芝生コーナーをつくろうということになった。つまり、校庭が全面的に芝生化されているイラストは、少し違和感がある。
 学校は本来「明日また行きたくなる」ところであり、学校に行けば常に新しい知識や体験、経験が得られることが保障されている空間であって欲しい。タブレット端末が全員に配布された今、学びの在り方が大きく変わり、従来の教室に限らない学びの姿について、私を含め学校の先生方も、イラストを見てイメージが沸くと思う。
また、子どもたちについての情報の共有にもタブレットは役に立つと思った。個人情報の管理は必要だが、課題がある子どもを引き継ぐ際にタブレットで情報共有することで、先生方が同じイメージをもって様々な課題に取組むことができると思う。
 「空間が人をつくる」と思っている。高い天井の空間の方が子どもたちも伸び伸びと過ごせるので、学校が子どもたちにとって、広く、大きく使える場所で、様々な空間があって欲しい。これを実現するには、予算が必要であるため、しっかりと国が財政面でもフォローしていただいて、子どもたちにとって「明日また行きたくなる」学校空間を自治体がしっかりと恒常的につくっていくことが大事だと思う。

○:5章の国における推進方策の中で、さらに強調すべきところ等はあるか。

○:専門の先生方のご意見が反映されており、違和感は特にない。

○:資料3 42ページの「財政支援制度の見直し充実」では、「安定的、継続的な予算の確保に努める」といった一文が追加され、前回部会の時より踏み込んだ表現となり感謝している。このプランを実現していくためには、地方の努力ももちろん必要だが、国の財政支援も不可欠だと思うので、ぜひ更なる国庫補助単価の見直し、国庫補助率まで踏み込んだ財政支援をお願いしたい。
 学校は子どもたちが中心であるべきだと思っている。全ての子どもたちにとって学校が安全・安心であり、快適であり、そして幸せに過ごせる場所にしていくべきものだというのは、いつの時代でも普遍的な理念なので、そうした理念を中心に据えながら地方と国が一体的に新たな取組を進めていくことが必要であると考えている。
 
・以上で意見交換を終了。
・事務局から、資料7に基づき今後のスケジュールについて説明。
 

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

指導第二係
電話番号:03-6734-2292(直通)

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)