新しい時代の学校施設検討部会(第8回)議事要旨

1.日時

令和3年12月13日(月曜日)10時00分~12時30分

2.場所

オンライン開催

3.議題

新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について

4.出席者

委員

 天笠茂,伊香賀俊治,倉斗綾子,高橋純,中馬英和,長澤悟,野中陽一,松畑煕一,毛利靖(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 下間文教施設企画・防災部長,磯山施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,栗本施設企画課課長補佐,高草木施設企画課課長補佐

5.議事要旨

(以下 ○:委員等の発言,●:事務局の発言)


・長澤部会長より挨拶。

・事務局より,出席者の紹介。資料1に基づき,前回のプレゼンテーションの概要を説明。

・事務局より、資料2で「学校施設の視察」を報告。

○矢吹町立矢吹小学校を視察した際に、教室間の折戸は合同授業や様々な形態のグループ活動による多様な授業を実施することを計画してつくったと伺ったが、折戸を開けるだけでは学習活動の多様化は難しいと実際に拝見して感じた。同じ学年で隣り合う教室を使っている姿を見ても、折戸が閉じられているケースが多かった。改修時の計画の意図が上手く引き継がれず、そこまで活用されていないように思われる。一方で、隣が空き教室の場合、充電保管庫やロッカー等を隣の教室に動かし、本来の教室空間を広げている姿も見られたため、空き教室にグループ学習用のテーブル等の什器類を置けば、1つのクラスが2つの教室をうまく使うことで学習活動が展開される可能性を感じた。その他、黒板まわりが収納になっていると、スペースを確保するのに有効だと思った。

○北名古屋市立西春中学校の視察では、安全をベースにエコ改修や地域との融合といった明確なコンセプトを掲げ、「身の丈に合った改修」を設計事務所と協力しながら進めるといった点が印象に残った。併せて、改修によって、年間の光熱水費が大幅に削減された点も興味深かった。一方で、北名古屋市の小中学校が9校ある中で、現在までにこのような改修は、西春中学校ともう1つの中学校のみに留まっている点に、財政的な課題を感じた。横展開が難しいという点は、北名古屋市に限らず、地方公共団体の共通の課題であり悩みだと思う。
 また、改修を機に、生徒たちの活動に少し落ち着きが見られたと校長先生より伺って、校舎の環境整備の生徒への具体的な好影響が確認できれば、さらなる横展開が進んでいくようにも感じられた。

○西春中学校の改修では、「ゾーニングの刷新」、「メディアセンターの増築」を目標に掲げ、「教室周りを充実させる」ために南北2つの棟の2,3階に普通教室を学年ごとにまとめて配置した上、2棟を結ぶ渡り廊下の両端に余裕教室を生かして新たに多目的スペースを設け、それを挟んで、2クラスずつのユニットを構成している。それにより、教室前の通り抜けがなくなり、教室と廊下の間仕切りを閉め切らずに廊下部分を教室の延長として活かせるようになっている。また「既存の枠だけにとどまらない」という方針の下、図書館や職員室を一部増築して教育機能の拡充を図っている。同様な考え方は新宮市立王子ヶ浜小学校にも見られ、図書館を中心にした学校づくりというコンセプトに基づき、既存校舎の中心に新たに図書館を増築している。
 西春中学校では、受験への配慮として、3年生の普通教室として仮設校舎を用意している。既存改修は「いながら改修」が必要とされる場合が多いが、工事中の教育環境の確保についての配慮が大事である。また、昇降口の位置の変更や屋上の断熱化と合わせ、建物の外観も変わっている。内装木質化等も含め、学校全体のイメージを変えることも長寿命化改修の一つの可能性を表すものと言える。
 黒松内小学校は、改修前は中廊下型教室配置で、学校運営に明確なイメージがないようなレイアウトで、図書室などもかなり小さかった。地域の住民も巻き込んでマスタープランの検討を進め、その結果、改修後には2学年ずつの教室のまとまりがつくられ、廊下部分が教室の延長スペースとなり、ロッカーなどはそちらに配置することで、教室空間自体の拡充につながっている。既存の枠の中で教室面積を確保する一つの工夫として、見るべきところがあると思う。また、多目的室や図書館、パソコン室を合わせたメディアセンターと組み合わせ、各階に学習の中心となる空間ができている。さらに多目的室あるいはメディアスペースを中心にした学校づくりというコンセプトのもと、2階の床スラブを一部抜くことで空間そのものも一体化している。改修目標を明確にし、共有することにより計画の範囲や目標の立て方の幅が広がり、新築と遜色のない空間が出来上がっている。関係者の努力が新しい可能性を切り開いていると感じた。

○長寿命化で100年もたせるとのことだが、校内LANなどのICT設備は、その間にどんどん規格が変わる。それら設備が交換しやすい設計かどうかという視点も入っているといいと思う。体育館についても冷暖房が整備されてきているが、普通の100ボルトではなく200ボルトの配線になっているのか、設備が入っているのかが気になった。学校によって改修・改築前後で、コスト面や広さの感じ方に異なる意見があるが、どのような整備をすればより良い環境が整備できるか。また、学校と公民館が複合化する事例は増えてきているが、学校の入口が公民館の受付と一緒であると、公民館の職員もいるため、安全・安心な学校になりやすいと思う。

●ICT設備の交換が容易な設計かどうか、冷暖房導入にあたっての電圧の考え方については、視察時において詳細に確認できていないため、事例を整理する中で確認したいと思う。既存校舎を使った工夫の都合上、スペースに制約が生じ、新築と同等のスペースが取れていないケースはあった一方で、廊下を挟んだ教室の向かい側に多目的スペースや多目的コーナーを配置するなどの工夫も見られた。公民館との複合化事例については、校長先生とコミュニティーセンター長が毎日コミュニケーションを交わし、様々な取組を実施することができるよう工夫されていた。

〇ICTの急速な進歩に伴い設備等が陳腐化しないように、交換や増設のしやすい「リダンダンシー」(冗長性)の高い施設づくりはこれからの大きなテーマと言える。改修だけでなく新築や増改築にも当てはまる課題だと思う。配管・配線等を隠すのでなく取り換えやすいように表しとし、それ自体をデザイン要素として生かすくらいの設計が有効と感じられる。
 長寿命改修のコストは、どの範囲まで算入するかで評価が変わる。例えば、クラス数が減っている場合、改築すれば補助基準面積は減るが、既存改修により既存面積を上手く活かすことによって余裕のあるスペースが確保できる。それを今日的な教育の展開に対応できるような空間・設備・家具にするという判断をすれば、必要な改修コストについての考え方は変わると思われる。
 王子ヶ浜小学校では、改修前は廊下に教室が並んでおり、通過のための廊下として狭い印象があったが、改修によって1学年2クラスと余裕教室を組み合わせ、廊下をその学年の多目的スペースのようにも使うことができるよう、教室の延長として捉えられるように計画されている。改修の場合には、教室の面積をいかに確保するかが大きな課題になる。廊下を教室の前を通って特別教室や体育館に行くためだけの空間としてみるのではなく、通過動線がない形にすることで教室の延長として廊下が有効に使えるようにする計画上の工夫が求められると思う。

〇資料2の「長寿命化改修」の中に「耐震改修」のフレーズもあるが、長寿命化改修を行う中で、過去の耐震改修による鉄骨ブレースがあるために、機能や環境の向上がかなり難しくなっている事例もある。そのため、過去に耐震改修した建物の事例と長寿命化改修とあわせて耐震化する事例は、表現として分けて示した方が良いと思う。

●今後改修をしていく中で、構造上の検討が必要なものと、過去に耐震化を行ったものが混在しないよう整理をしていきたい。

〇「エコ改修」のような整備に係る予算名で時期的な想像がしやすいと思う。

〇受け手が混乱しないような事例の紹介の仕方を大事にしたいと思う。一方で、耐震化は基本的には既に済んでいると思われるので、長寿命化改修を文科省の定義どおり、機能の高度化のための改修として進める上で、既に改修・補強した部分をどう扱うかというテーマが、今後出てくると思われる。子どもの数の減少に対して減築により階数を減らし、荷重を抑えることによって、補強用の耐震ブレースを撤去し、開放的な空間にした事例も見られ、総合的に考えていけたらと思う。

〇ICTの設備が新しくなっていく中で、もう1つ変化が起こる可能性がある。ICTの活用が進むと、仕事の仕方も変わり、ペーパーレス化が進むにつれ、設備も変わるかもしれない。視察先の学校の平面図を見ると、職員室の隣に大きな印刷室が用意されているが、旧来の印刷機が当初計画で想定されていたのではないかと思う。プリンターも今では非常に安く、コピー機も安く使えるため、コンピューターから直接出力できるプリンターを分散配置し、仕事の仕方に応じた教師ラウンジのようなスペースも考えられるかもしれない。その他、職員室の前の大きな黒板に紙を貼って日程管理しているものをディスプレイに置き換える、先生方が防犯面や連絡手段としてスマートフォンを持つといった電子化も仕事の仕方の変化による学校施設の変化の中であり得ると思う。
 また、GIGAスクール構想の標準仕様は米国製のソフトウエアで、このソフトを上手に使おうとすると、一部の授業が欧米型の学習指導に近づくといった変化が見られている。欧州を参考に学校施設の運用を検討している建築家がイメージする学習活動に近い活動が、学校現場では意図せず行われることが起こっている。令和の学校教育の理念と、1人1台端末と、建築家の先生方の想いが重なり、多目的利用ができるオープンスペースが必要となっていく可能性を感じた。

〇みどりの学園では、全ての先生がPHSを持って、教室だけでなく校庭からでも連絡が取れる環境がある。児童生徒の事故対応など、安心安全に対して十分に活用できている。

〇スマートフォンであればクラウドシステムに接続し、リアルタイムで運用できるため、音声の連絡だけとなるPHSからスマートフォンに切り替えている学校もある。

〇実例や現場の取組なども踏まえながら、今後さらに議論を深めていければと思う。
 
・事務局より、資料3,資料4に基づき、「学校施設スタンダード」、「施設整備の優先度」、「長寿命化改修事例の収集・分析等」について説明。

〇最終報告は、教育委員会の施設担当にとって参考になる内容だと思う。人事異動で違う分野から急に施設担当になる場合は多くあり、そのような方々が、教育長や首長等に説明するときにうまく使用できる資料になるといい。

●受け手が必ずしも専門ではないことをしっかりと留意しながら整理していきたい。

〇最終報告をまとめていくにあたり、より広い立場の方々を念頭に置くことが大切である。この部会の一つのテーマである「新しい学びの環境をつくり出していく」というのは、学校施設担当の方々だけでなく、学校の当事者、学校の実践に関わる立場の方々と相互に連携しながら、全体として、一体的に進めていくものである。例えば、図書室とコンピューター室を一体化するといった話も、その学校の当事者がアイディアを出して判断していくこと抜きに、方向性や基準を示すだけでできるものではない。その点で、この部会でまとめた知見を学びの空間構成の主役である学校の先生方に届けることが重要ではないか。
 長寿命化ということで言えば、学校では施設・設備の安全点検を先生方が行っているが、そこで出てくる課題とこの部会での議論が必ずしもうまく接合できていないのではないか。例えば、先生方からすればトイレや水回りの老朽化が最も顕著だが、今回紹介された事例ではそのような点は取り上げられていない。施設担当の方々にとっては周知のこととして省略されているのかもしれないが、学校の立場からすると日々の点検やメンテナンスを長寿命化の文脈に位置付ければよいのかどうかわからない。発信に当たってはそうした立場の観点も視野に収めていくことが必要である。
 学校評価の項目や在り方について、学校施設の立場から改善の提言を行うことも、取組の一環としてあってもいいと思うが、どのように文脈の位置づけにするかについては、検討する必要がある。

●整備をした先の学びの実現は、とても重要な視点である。活用の仕方やメンテナンスについても整備と一体にして考え、学びの環境が持続していくように検討しなければならない。整備しただけで終わりとならないように、維持管理をし、有効に活用していく視点も含めて、今後、最終報告の整理をしていくことになると思う。学校評価に関しては、施設設備の整備が学校評価の一例として挙げられているが、どこまで今回の議論を当てはめることができるかを事務局の中でまずは考えてみたいと思う。

〇地方の実情として、学校整備を取り巻く課題が非常に多く、しかも年々その課題が増えてきていると感じている。例えば、空調設備については、先行して設置された職員室や保健室等が更新の時期を迎える中、普通教室に加え、特別教室や体育館等にも空調を新設するという課題も出てきている。トイレについても、便器の洋式化や床の乾式化が行われていない学校も多くある。  
 また、バリアフリー化の観点から、車いす対応のトイレや校舎内のスロープの設置に加え、エレベーターの整備についても検討を始めている。その他、災害に備えた給排水管の耐震化やブロック塀の撤去など、学校整備を取り巻く様々な課題がある点をまずご理解いただきたい。
 こうした状況の中で、新たに「新しい時代の学びに対応した学校整備」のコンセプトが示されているため、地方公共団体や教育委員会の共感を得るような内容にして欲しいと考えている。
教育を取り巻く全体の課題を見たときに、学校整備以外の課題も種々ある。いじめや不登校への対応、特別支援教育、日本語を話せない子供たちへの教育指導の充実、教職員の働き方改革など。そのため、教育委員会全体の取組の中で、今回のこの提言の優先度を上げることが必要だと考えている。限られた予算の中、マンパワーも不足しており、教育委員会の職員もかなり疲弊している状況も踏まえ、最終報告は、教育委員会や学校現場の理解と共感を得ることができるような、地方の実情に即したより実効性のある内容にしていただきたい。
 個別最適な学びや協働的な学びの充実など、新しい時代の学びの進捗とあわせた学校施設の長寿命化改修を一体的に進めることについては、教育委員会の中でもその必要性は理解しているので、引き続き、国のさらなる財政支援について検討していただけると、地方自治体としてもより深く関与していくことができると思う。

●より実効性があり、共感を得ることができる内容にすべく、実態をしっかりと捉える視点を忘れないように、一体的推進の中で、取組みやすいものになるよう整理していきたい。

〇資料4の木のイラストにある黄色部「安全・安心で持続可能な教育環境の確保」とそこに乗っかってくる緑色部は、イメージとしては非常に分かりやすいと思うが、多くの自治体は、黄色部の整備で手いっぱいになりがちだと思う。機能的に安全・安心を確保しながら、同時に学習環境の向上を図ることが、現実的に優先度が高くなると思うが、まず何をしたらいいのか、緑色部についても最低限の目標値のようなものがあると理解がされやすくなると思う。併せて、A、B、Cの分類について、財政状況等に応じた整備規模の事例を示すこと自体はわかりやすいが、新しい時代の学校として目指す整備の目標を持って実現するための整備のパターンというのは、言葉としては整備する手段になると思う。

●手段と目的、目標について、しっかりと整理してイメージを深めていきたい。

〇カーボンニュートラル対応の部分が明示的になっていない点が気になった。学校施設の脱炭素対応は、財政的に一番置き去りにされやすいと思う。特に、大量にある既存の学校施設の省エネ改修等を通じた脱炭素化や再生可能エネルギーの導入のように予算規模的にも厳しい内容について置き去りにならないようにして欲しい。

〇省エネ改築はもとより、今日的には脱炭素についての施設のあり方を明確に示すようにしたい。実現する手順について事務局でも検討いただきたい。

●カーボンニュートラルの視点については、長寿命化改修の場合であっても、壁や窓等の断熱性能の向上や高効率照明等の導入をし、省エネを進めていくといった記載がある。新築等の場合は、基本的には原則ZEBを目指すということをより明確化した形になっているが、既存の建物においてもZEBを目指していくという考え方はあると思う。一律既存の学校を全てZEBにしていく方向性をどこまで強調できるかについては、自治体の状況も押さえつつ取り組んでいく必要があるため、その点で新築・既存を分けて整理した上で、いずれの場合でも脱炭素の構築について貢献していける施設環境整備を求めてきたいと考えている。

〇柔軟で創造的な学習空間の実現の視点に関しては、机上資料のA、B、C等の分類のパターンの具体例に示されている文章では、普通教室をオープン化するニュアンスが強く読めた。当初、普通教室の在り方自体の見直しが学びの在り方の見直しにつながるという議論があったと思うので、多様な学習活動を可能にする普通教室といった、学級・学習集団を再構成しなくても空間を拡大していく発想を強調してもいいと思う。タブレット端末の活用等の先進的な取組は、今の普通教室で行われているが、先進的な取組に対応するために必要な学習環境や家具の配置の在り方等の普通教室の学習空間の構成については、あまり研究されていないと思う。そういう先進的な取組から、学習空間の構成についての知見を得て、反映していく方向性があるといいと思う。

●普通教室の在り方に関連した分類パターンについては、多目的教室がより強調されたものになっているが、教室の広さについて中間報告の中でまとめており、そのような視点も織り交ぜながらしっかり整理していきたいと思う。別途、国立教育政策研究所の文教施設研究センターが、教室環境の在り方について議論を開始していると伺っているため、議論と連携を図っていくことも意識していく必要があると思う。

〇教育委員会の立場で施策を実現していくためには予算が必要で、市の財政当局の理解を得られるかが重要である。限られた財源の中で、施策や事業を予算化するには、今直ちに実施しなければならないという事業の緊急性を十分に説明できなければならず、また、得られる具体的な効果、費用対効果も説明しなければならない。そのためには、整備による具体的な効果や、子どもたちや学校現場にとってのメリットを分かりやすいイメージで提示することが、予算化の実現に向けた一つの支援になってくると思う。
 資料4の木の絵とA、B、Cの分類は、自治体の実情や財政状況を踏まえた提案でとてもよいと思うが、整備内容について教育環境の向上の方により深く関与できるもの(A、B、Cの順)に対して、国からの財政支援に差を設けることができれば、地方自治体としても、インセンティブが高まってくると思う。また、補助制度については、恒久的なものが望ましいが、仮に年限を定めたものであっても、財政当局に対し、今がこの制度を活用する好機であるといった説明も可能になるのではないか。

●より緊急性、より効果のある施策を推進していく観点で、これからつくり上げていく事例の整理の仕方についても工夫が必要に感じた。

〇先端的な指導方法やカリキュラムといった新しい学びの環境づくりと長寿命化を分けて捉えられないように、対外的に発信する際に気を付ける必要がある。新しい学びの取組には比較的予算が集中され、片や長寿命化の方は予算を広く薄くという形になりがちである。一体的な新しい学びをつくり出していくことが全ての学校にとって課題であるというような位置づけ方で対応していく必要性があると思う。

●長寿命化は、老朽改修という文脈だけのものでは決してなく、新しい時代の学びの実現を図っていく視点も織り込んだ事例としてどのような取り上げ方をしていくかを、これからの議論の中でまとめていきたいと考えている。

〇新しい学び舎の空間を目指していくことに大きく位置づけるということは大切だと思う。長寿命化は取りあえず何となく事をしのぐというような捉えられ方がされやすい。そうではなく、次の時代やこれからの将来に向けて、新しい学校の在り方や学び舎をつくっていく、そうした文脈の中にあるのだという提起の仕方が大切だと思う。

〇社会全体で個別化や最適化などが強調され過ぎているため、学校が協働し探究してみんなで発表し合うような共に学ぶ場であることが強調されなければ、学校がなくても個別にどこでも学ぶことができるのならそれでいいではないかというような方向になりかねないと危惧している。教育とは何か、学校とは何を目指すべきか。普通教室とはどのような教室をいうのか。そういう基本的な学校そのものの在り方、これからの教室がどのようなものであるかという基本的な考え方をしっかり考えていかないといけないと思う。家庭学習やオンライン学習で済むことはどんどん済ませ、学校では、みんなで学び、遊び、協働で発表し合い、刺激し合い、討論し合い、将来を考え合うといった協働的な教育、共に育つ教育の方向性を、教室環境や施設でどのように生み出していくかという基本的な議論をしっかり行いたいと思う。

〇従来の学校像あるいは学校を構成している諸室について、固定観念や既成概念を超えて捉え直す必要があるということであり、ご意見も踏まえ、更に検討を進めていきたい。

〇事例集はこれまでもいろいろ出しているが、「新しい時代の学校施設」として、何を事例として示し、どういう意図で読み取ってもらいたいかの伝え方が非常に重要だと思う。

〇文教施設研究センターでは、創造的な学習空間の創出に関する調査研究として、創造的な学習に対応する学習空間の在り方やモデル的な形の調査研究を実施している。最終的な児童生徒のアウトプット・アウトカムの関係は難しく、多目的スペースはあるが活用されていないため効果が生まれていない事例、古い校舎だがICT教育に先進的に取り組んでいる事例、新しい校舎をさらに発展させて取り組んでいる事例などを見ると、施設の在り方と新しい学習をどう効果的に進めていくかについては、一筋縄ではいかないように感じている。1、2年生は学校の中に入らず終日屋外で過ごしている私立学校もある等、ますます多様化している中で、重点化の在り方を示すのは困難ではあるが、参考になるような手がかりを示していけたらと考えている。

〇本日の各委員からの御意見を踏まえ、次回部会に向けて、各検討事項についての整理を事務局において進めていただき、次回以降さらに議論を深めていければと思う。
 今回の事務局案で「スタンダード」という名称は使用しない方針が示されているが、「スタンダード」という言葉の使い方については、これまで多くの委員から意見をいただいている。「スタンダード」という言葉が歴史的に標準設計を想起させ、成長変化を抑制する響きがあることを危惧するご指摘や、「コンセプト」、「ガイドライン」、「大綱」などの別の言葉で表現してはどうかといったご意見もあった。いずれにせよ、目標や水準をどう定め、どのように実現していくかが、初めに「スタンダード」という言葉を使った趣旨だと思う。目指すべき水準を確保しながら、さらに個別にどういう努力を積み重ねて特色ある学校づくりをしていくかという意味合いを、本日ご指摘のあったように幅広い関係の方によく伝わるような形の表現の仕方とあわせて、今後考えていけたらと思う。継続的な検討事項については、これからさらに深めていかなければいけないと思うので、今後も引き続きご意見をいただけるようお願いしたい。

・以上で意見交換を終了。
・最後に事務局から、資料5に基づき今後のスケジュールについて説明し、会議を終了。
 
── 了 ──

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

指導第二係
電話番号:03-6734-2292(直通)

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)