新しい時代の学校施設検討部会(第6回)議事要旨

1.日時

令和3年7月7日(水曜日)10時00分~12時30分

2.場所

オンライン開催

3.議題

新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について

4.出席者

委員

(委員) 赤松佳珠子,天笠茂,伊藤俊介,倉斗綾子,中馬英和,高橋純,長澤悟,野中陽一,毛利靖,吉田信解(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)
(今回の協力者) 伊香賀俊治(敬称略)


文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 山﨑文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官,磯山施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,栗本施設企画課課長補佐

 

5.議事要旨

 


(以下 ○委員等の発言,●事務局の発言)


・長澤部会長より挨拶。
・事務局より,出席者の紹介。資料1,資料2,資料3,資料4に基づき,中間報告(案)の第1章及び第2章を説明。


(中間報告(案))
〈第1章〉
○第1章冒頭で(1)社会情勢の変化,(2)「令和の日本型学校教育」の姿が挙げられているが,その前段として,新学習指導要領について触れておく必要はないか。

○4ページの四角囲み「教科等に応じた多様な学びのスタイルの例」は,教科に縛られず,もう少し広く捉えた教科以外の学びの例や学校生活全般を表現してほしい。

○生徒会活動などの様々な活動は学びに直接つながらないかもしれないが,学校生活全般のデジタル化がコンピューターの使用とともに,あたかも事務所のように様々な形で表れているように見える。教科等も大事だが,他の場面のイラストもあってもいいのかもしれない。

○様々な活動風景が伝わるような表現の仕方を検討したいと思う。

○GIGAに対応したネットワークやクラウドを使用し,新学習指導要領の目指す能力について,「教室だけでなく自宅などから,自分の考えを端末に入力し,ネットワークを通して大型提示装置に転送し,思考を可視化する姿」「タブレットを活用して,課題を問題解決し成果をプレゼンし話し合う姿」「友達と協力しながら,プログラミングし思考し合う姿」「広いスペースでプログラミングを使い,作曲やグループ演奏といった創造や協働する姿」「タブレットで記録したデータをネットワークによって他のメンバーに送信し,データを活用して,良かったところや改善点を話し合い,新たな作戦を立てる姿」「クラウド等を活用し,子供同士が話し合いながら画面上で共同作業し,学びを深める姿」「端末を活用して,自分の体調や気分,先生に聞いてほしいことなどを書き込み,良好なコミュニケーションができる姿」「生徒総会などをオンラインで配信し,生徒が様々な場所で端末を使って視聴したり,投票したりして,1つの場所に集まることなく,ネットワークを使って主体的に活動する姿」などが挙げられると思う。

○学校施設の問題点に対し,解決するための自治体の予算等が組めない状況や建築資材の高騰が起きている中で,国庫補助の単価が非常に低い等の課題をもう少し文言として,盛り込んでもいいと思う。老朽化のような様々な目に見える課題はもちろんだが,その背景にある予算の不足や低い単価,制度の問題などといった主に予算面に対する言及が,この課題という中にもう少しあってもいいと思う。

●自治体の財政状況も非常に重要な課題であり,加筆したい。

○人材不足の点についても大きな課題。例えば,GIGAスクールになったとき,デジタル系のことをサポートしてくれるスタッフのような,いろいろな面で学校に関わる人材が不足していることは,これからの課題になっていくと思う。

○共創の観点から,教職員だけでなく,地域の方々,NPO,様々な専門家の参加が課題の一つとしてあると思う。これをどこまでどう広げて記述するかを検討していきたい。

○6ページ,(GIGAスクール構想,ICTの活用)の1つ目の丸の最後に「これからの学校教育を大きく変化させ,様々な課題を解決し,教育の質の向上につなげていくことが求められている」とあるが,「様々な課題を解決し」は,子供たちがすることと,先生がツールを使い授業を改善していくことと,どちらを指す文言か。

●ICTの活用によって学びそのものが変わっていく観点から,子供たちの変化のみならず,教職員の変化もある。例えば,オンライン授業だけではなく,クラウド等を活用して教職員がテレワークをすることや,校務支援システムなどを使い,先生たちの学習以外に,出席状況や健康の状態などを総合的に勘案しながら,子供たちそれぞれを個に応じた指導につなげていくことができるといったような,教職員と児童生徒が共に様々な課題の解決をし,それが教育の質の向上につながっていくのではないかという表現である。

○最初に「個別最適な学びと,協働的な実現するためには」と書いてあったため,そうするためには,子供たちが主体的にそれぞれで設定した問題や課題の解決や解決学習をするなど,教育の質の向上につなげていくことが求められるという方がいいと思ったが,教師の改善も含まれるのであれば問題ないと思う。

○1章の中で「少人数学級」の中に35人学級の話があるが,35人学級のことを「少人数学級」と呼ぶのか。

●今般,中教審答申等を踏まえて,「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」,いわゆる標準法が改正された。この改正概要の中で,学級編制の標準の引下げに加え,少人数学級の計画的な整備という中で,今後,2年生から6年生までを段階的に35人にすることを計画的に行っていくとしており,35人に引き下げることを,少人数学級の計画的整備という表現として世の中に発信している状況である。

○「少人数指導」と紛らわしい上,35人を少人数とは呼びにくいのではないか。

●通常の学級規模を維持しながら,少人数による学びを展開することを「少人数指導」と呼び,学級規模そのものを少人数化することを「少人数学級」と称している。



〈第2章〉
○8ページ,(空調設備,トイレの整備状況)の最初の丸に「また,既存体育館の多くは断熱性能が確保されておらず」とあり,体育館に焦点を当てるため,普通教室や校舎の断熱の話を省略したように思われるが,既存校舎は断熱がほとんどされていない。脱炭素社会実現という課題への対応として,また,コロナ対策や省エネという観点からも,体育館だけでなく既存校舎についても断熱強化や効率の良い換気設備の充実が課題になる。

●校舎についても脱炭素化を進めていく上で断熱性能の向上が重要になるので,現状について記載する。

○7ページ,(学びのスタイルの変容への対応)の最初の丸「ICTの活用により,学級単位で一つの空間」について,ICTはあくまで道具であり,一斉授業から個別学習に転換することはICT以前から言われていたと思う。道具と目的が逆に感じられないように,学習の個別化によって,様々な授業形態が増え,ICTというツールによって加速・充実するニュアンスが好ましいと思う。また,2章の新しい時代の学びの実現に向けて解決すべき学校施設の課題としては,学習をどうするかが一番大事なテーマだと思うので,(1)の見出しは,「実空間の価値を捉え直す」より,「これからの学びに施設や空間を合わせる」方がいいと思う。仮に「学校施設という実空間の価値」を入れるのであれば,「ポストコロナ時代」における実空間の役割として言及する方が,内容に即した表現になると思われる。

●学びのスタイルや学校施設の課題の見出しの捉え方について,指摘を踏まえ検討する。

○「実空間の価値」については,ポストコロナだけでなく,オンライン教育や遠隔教育が進む一方での実空間という側面もあると思う。そういった意味合いが伝わるような表現にしたいと思う。



・事務局より,資料1,資料2,資料3,資料4に基づき,中間報告(案)の第3章を説明。

〈第3章〉
○学びを軸に「個別最適な学び」と「協働的な学び」をキーワードとして,令和の答申とそれを受けた施設の立場からの展開という大きな流れは,本報告書(案)で表現されていると思う。その上で,全ての児童生徒や子どもたちを公教育の枠の外に置かないという理念が令和の答申の1つの大きな柱となっており,公教育の境界線や外に置かれてしまう児童生徒,子供たちを視野に収め,公教育の中で向かい合っていくことが答申の「全ての子供」というところに象徴されている。それを具体化したものが「個別最適な学び」であるため,学習が幹となる説明はその通りだと思う。その場合,施設的な立場から子どもたちにどう目配せをしていくかに関して,学校教育等とうまく接合し切れないことに対し,「個別最適な学び」の実現という形でどう実現していくかが課題で,例えば,1章から3章までにある保健室の在り方や教育相談室の在り方,個別的に指導する空間やスペースの在り方,特別支援学級と通常の学級の関係の中で,視野を収めて取り組み,まなざしを位置付け,受け止めていくかは必要であると思う。1章,2章では,具体的な内容を記述できないかもしれないが,総論で少し触れることはできると思うので,1章から3章までの中で,何かしらの記述をすべきだと思う。現在の学習指導要領の1つの柱として,アクティブラーニングとカリキュラム・マネジメントを施設の立場からの意義付けした上で,施設の利活用の在り方を現場向けに言及することを検討いただければと思う。

●誰一人取り残さないという大きなコンセプトも,令和3年答申の中の重要な部分のため,今後より議論を深めていくべき部分だと捉えている。これらのテーマについては,中間まとめの中でも触れた上で,しっかりと議論していきたいと思う。カリキュラム・マネジメントについては,学校設置者の推進方策を述べている第4章に出てくる。今後の学校施設を整備するだけでなく,いかに活用するかが重要であり,施設やスペースのマネジメントは,カリキュラム・マネジメントの教育課程の実施に必要な人的や物的な体制を確保する側面の一環として位置付けていくことが重要であると第4章で述べているが,全体の中で,どのようにカリキュラム・マネジメントの部分を取り上げていくかについては,再考したいと思う。

○「マネジメント」という言葉の使い方の整理が必要だと思う。2章では,施設マネジメントという形で「マネジメント」という言葉が使われているが,カリキュラム・マネジメントという場合には,更に教育や学校の在り方そのものに絡めた捉え方だと思う。

○カリキュラム・マネジメントは,学校の先生方が,施設などの物的な面により問題意識を持ち,工夫しながら活用していくという意味の使い方で,施設マネジメントは,むしろ設置者の在り方についての使い方となると思うので,その点を踏まえ検討いただきたい。

○(2)丸2 ⅰ)快適で温かみのあるリビング空間において,空間に対する愛着・誇り・感謝という言葉を入れていただいたが,(1)新しい時代の学びを実現する学校施設の姿(ビジョン)についても,子供や先生がその空間の中で力や意欲が湧くようなポジティブな言葉で表現していただきたい。例えば「明日また行きたい学校」というのはとてもいい言葉だなと思う。一方で,キーコンセプトの下にある「教室という限られた空間に閉じずに」という言葉は,「閉じた空間」とネガティブに捉えるのではなく,学校全体が全人的な教育を提供する場ということを表現するために,削っても良いと思う。

○ただいまの発言の趣旨を踏まえ,空間建築の持つ力をきちんと表現していけたらと思う。

●「教室に閉じるものではない」という部分は,現状を打破し固定観念を脱しなければいけない思いが出た文言で,前向きな捉え方で文章全体を見ていく必要があると理解しているので,指摘については反映したいと思う。

○個別最適な学びのイラストは,今までの閉鎖的な教室のイメージから脱却した自由な学びの風景と見受けられるが,先生の指導の場面というイメージが強い。新しい時代の学びを実現する学校施設の姿として,子供たちが主体的に学ぶ様子は違った場面があると思うので,シーンの選び方をもう少し吟味する必要があると思う。

●自由な学びのイメージが伝わるような工夫をしたい。

○(1)の「未来志向」の最初にある「学校は,教室と廊下それ以外の諸室で構成されているものという固定観念から脱し,学校施設全体を学びの場として捉え直す」という表現は重要だと思う。これまで,機能など何かを充実させる際,設備やスペースを設けることが望ましいといった足し算的な提案や提言が多かったため,固定観念を取り払って再構成する視点を示したことは大事だと思う。また,イラストに関しては,大人が多い印象がある。子どもや生徒主体でしっかり学習している表現があってもいい。(2)18ページのインクルーシブ教育システムの構築は大事だが,身体・心理的な特性への配慮の話が中心となっており,身体的な特性としては見えない部分に関しての記述は少ない。「個別最適な学び」はインクルーシブであり,その環境をつくるためにはソフト面から,インクルーシブな教育システムの構築に寄与するような,ソフトとハードをつなげる表現があってもいいと思う。

○インクルーシブという概念をどこまで広げ,用いると狙いがよりよく伝わり,理解してもらえるかを念頭に置き,具体的に記述するか大枠だけにとどめるかを検討していきたいと思う。

○19ページで「快適で温かみのあるリビング空間」の真ん中の丸の中に,「感謝」という言葉があるが,木材のある空間やリビングの空間に限定されず,空間が子供たちに対する大きな影響を与えると思うので,特定の空間に限定してしまう表現にならないよう配慮していただきたい。

○机上資料のイラストの3ページ目では,一斉にグループ活動をしている様子のため,個別に活動していないと捉えられる可能性があると思う。いろいろな子がそれぞれの目的を持って活動している中で,先生に習うことや外部人材のお話を聞くようなイメージでもいいかもしれない。また,読書・学習・情報センターにはコンピューターの描写がほとんどないように見える。予算を取って,より良い校舎を建てたいと思える風景であり,かつ,一人一人がそれぞれの特徴や特性に応じて個別に活動している姿を,建物や環境が支援している描写であると,主体的な部分が描けたイラストになると思う。

○黒板を背にして先生が話している場面や個別最適な学びの場面について,よりふさわしいシーンがないか更に検討していきたいと思う。よい校舎を建てたくなる,また,その場に愛着が湧く,好きだと思う気持ちが意欲を高めるという観点も大事にしていきたいと思う。

○イラストは,みんなが同じようにタブレットとかパソコンを見ているという統制されている場面に見えた。自由に過ごしているシーンの描写があってもいいと思う。新しい学校施設の在り方として整備をしていく中に,児童生徒や教職員,先生方,学校を使う側の人たちが,自分たちの想像力で工夫をして,家具の製作や空間のレイアウトなどいろいろなことを展開していくことをメッセージとして入れてもいいと思う。単に整備された用意されたものだと,先生自身の能動的な部分がないので,自分たちでもっと工夫してやっていけば変わっていくことを伝えていければと思う。

○教職員自身の想像力の話は,カリキュラム・マネジメントがベースとしてあると思うので,違う表現で課題を示していただけたらと思う。

○全てのイラストで,先生が前に立って教えている絵となっているので,子供が前に出て説明する場面や,グループで話し合っている場面があると新学習指導要領に沿っているように思われる。また,7ページで女性の先生が地図か何かを説明しているが,3人がタブレットを持っているのに対し,残りの人は何も持っていない。読書やコンピューター,図書などを組み合わせると多様性のある描写になると思う。10ページの教職員の働き方のイラストは,すごくいいと思う。こういう空間は作るのが難しいが,職員室は真っすぐな形態で学年ごとの先生で集まって座っているイメージがあるので,学年を超えて先生が話し合え,交流できるスタイルの職員室だと素敵に思える。

○イラストに対する意見の内容をどう説明文として反映していくかも併せて検討していきたい。

○文中のどこの場所にどのイラストを入れるかは重要で,3ページのイラストでは,みんな同じグループという意見があったが,教室からオープンスペースにはみ出して,つい立てをつくると空間ができ,そこでも学習できる可能性をくみ取ることができる描写も,価値があるイメージ図となる。全体として先生が指導している場面は確かに多いが,イメージとしては悪くないと思う。様々な意見を一致させるイラストにするのは,難しい話であると思うので,本文のどこの例として何を伝えるかがはっきりしていれば,イラストは効果的だと思う。

○資料2の17ページの職員室の内容に共同やシェアのような協力しやすい労働環境といったニュアンスを加えれば,オフィスのような考え方が入り,先生も個人主体から共同で学級運営や学年運営をしていき,お互いの意見をより高め合っていくイメージが伝わるように思う。

●これからの学びが変わり,教室の有様が変わっていくことをよりイメージできるように意見について受け止めたい。イラストについても,できるだけ丁寧に意見を反映していけるようにしていきたいと思う。



・事務局より,資料1,資料2,資料3,資料4に基づき,中間報告(案)の第4章を説明。

〈第4章〉
○空間については大事だが,財政的な措置や予算があってこその話である。28ページの学校施設整備のための財政支援制度の見直し・充実を最終ページまで強調していただきたい。冒頭と同様にここでも,現状では予算の確保が難しく,今の状況では価格の高騰等に対応が難しいことを地方自治体として強くお願いしたいと思う。また,ZEBでの施設づくりは,公共施設においても大きい課題のため,この点も予算措置が必要ということを強調していただきたいと思う。それから,木質化や木材利用についても,状況によってはお金がかかってしまう。補助制度の面等でも,国で重要視していただきたいと思う。いずれにしても,推進するためには,既存の補助制度の見直しをやっていただきたいと思う。小規模な教室の整備や学校施設の複合化の推進,地域に開かれた学校づくりなど様々なやり方や改修方法があると思うが,既存施設を大規模に改修できない場合や改修せざるを得ない場合がある。補助がないと地方自治体は本当に困ってしまうので,きめの細かい補助の制度を構築していただきたいと思う。また,この章にある,技術的なノウハウは共有をお願いしたいと思う。27ページに「事後保全型から予防保全型への転換」とあるが,自治体の中の教育委員会だけでは難しい。技術的なノウハウが足りない地方自治体はたくさんあるので,国として,具体的な実践につながる整備事例やノウハウについて,知見を蓄積して,専門的かつ技術的なアドバイスをいただければと思う。それは,GIGAスクール構想の推進といったソフト面でも,パソコンやタブレットを使った様々な教え方について,地方自治体によってはノウハウや知識について共有する必要があると思う。国において情報把握した上で,自治体同士で蓄積されたノウハウについて,お互いに情報共有が横展開できるよう図っていただけたらと思う。

●3章にあるビジョンの実現に当たって,現状の課題を克服するために,財政面の課題をクリアする必要がある。国における推進方策の中で,意見をしっかりと受け止めながら,中間報告の修正をしたいと思う。

○学校設置者における推進方策と国における方策の2つに分けた柱立てについて,地方の立場として,国と地方が一体的に取り組んでいく必要があると思う。国からの財政支援に対し地方からの様々な事例やエビデンスの提供といった国と地方との連携は必要であると思うので,「国と地方の連携」や「一体的に取り組む」のようなキーワードはどこかで述べていただきたい。また,地方の実情として,老朽化対策や空調整備,トイレ改修,バリアフリー化のような学校施設整備を取り巻く様々な課題を抱えている中で,新たな施設整備や新たな学びに取り組むと,事業量が多くなり,事業者を確保することが年々厳しくなっている状況である。入札を行っても業者が確保できず,翌年度に予算を繰り越すことや執行ができない事態も出てきている現状についても触れていただきたいと思う。
26ページの丸2 の下から2つ目の丸印に,首長部局と協働で将来推計する記述がある。これまでの五,六年の将来推計から10年での中期的な将来設計をすることが書かれているが,地方の立場からすると,0歳からの幼児人口を基に将来推計を行い,学校の児童生徒の推計を行っているため,10年規模で精緻な児童生徒数の推計をつくることは,難しい印象をもってしまう。また,丸3 のPFIでは,多様な整備手法の活用や課題が記述されているが,これまで市の新築の学校でPFIを検討しても民間活力を活用することは難しい意見を事業者から頂いた。学校施設単体でPFIやPPPの制度を導入していくことは難しいと思っており,施設の複合化のような場合に,民間事業者の能力を活用することができると思うので,そのような条件付けを入れた方が地方の実情に即していると思う。最後に,国の推進方策については,国からの財政支援は必要で,新しい時代の学びに対応する制度の充実だけでなく,既存の老朽化対策についても,しっかり予算を確保していただきたい。さらに,これまで補助対象になっていない維持管理経費や小規模な修繕といったランニングコストにも予算が必要な状況で,老朽化改修が必要な既存施設は数が多いため,すぐに次の事業に進めないこともあり,維持管理にかかる小規模な修繕についても,今後,国の補助対象となるよう検討をしていただきたい。また,400万という補助の下限額について見直していただきたく思う。防犯対策の推進も提言の中で出てきたが,防犯カメラや電子錠についてもニーズがあるため,それについても補助対象として検討していただきたい。

●国と地方の連携は非常に重要である。(1)(2)で推進方策を記述しているが,一体的に取り組んでいくという姿勢を見せるために,学校設置者と国の連携を追記したいと思う。将来推計については,望月協力者より少し長期的なスパンで継続的な変化の把握の実例や具体的なやり方などをこれまでに御提示いただいたところです。現在,文科省において,首長部局との協働による学校施設,あるいは計画の策定に係るガイドラインや事例集があるが,その中で,具体的な推計の方法なども示しつつ,参考になる情報を共有していきたいと思う。複数の施設をまとめて発注する空調整備や給食施設の整備については,近年もPFIが増加しているという状況を踏まえつつ,複合化の導入について追記を検討したいと思う。国における推進方策での御意見については,事務局で受け止めさせていただきたいと思う。

○推進方策の4つ目にあるつながりで,学校関係者の参画と記述されており,カリキュラム・マネジメントを受けているところと思うので異論はない。その上で,この推進方策は,設置者に対してのメッセージという位置づけであると思うが,丸1 ,丸2 ,丸3 の方策と丸4 の方策は性格が異なると思う。丸1 ,丸2 ,丸3 の方策が設置者に向けたものであるのに対し,丸4 は先生などの学校関係者と捉えた場合,学校関係者への働きかけを設置者としてどう工夫するのかという視点があってもいいと思う。設置者が学校へ働きかけをする支援方策を入れた上で,こういう視点で学校の学びの環境を整えてくださいとなる方が好ましいと思う。これまでは,ソフトとハードの両者が固定的関係の中にあり,学校の先生はソフトを担当し,建築の専門家や設置者はハードを担当するすみ分けがあって,先生の意識はハードに従う形の指向性を持っている学校現場が多かった。ここをどう攪拌していくかが現在の課題だと思う。そういう観点から,丸4 の記述について,もう少し丁寧に示していく必要があると思う。筑波の教職員支援機構の研修では,カリキュラム・マネジメントや組織マネジメントについて,先生の働きによって研修が行われているが,建築サイドからのメッセージの伝え方等については,現状を把握し改善点について,検討していただきたいと思う。それは,国が果たすべき役割の1つとして位置づけられていると思うので,この辺りを文脈の中でもう一度御検討願いたい。

●設置者として,学校関係者に対し,どのような物的な環境整備への支援ができるのかという側面は重要だと思う。学校設置者から使い方を押しつけるのではなく,より使いやすいようノウハウやアイデアをどう蓄積し,それを学校関係者へどう共有していくかが大事だと思う。設置者の役割だけでなく国に期待されるところも踏まえたいと思う。

○4章の記述に,財政当局と絡む内容や国としての予算措置,自治体としての予算措置に踏み込んだ記述が加えられたことは画期的だと思う。29ページの最後にある,脱炭素まで含めた長寿命化改修は,相当な予算措置が必要だということは明らかである。新築の事例や改修で模範的な先導的な事例が既に幾つかあるので,それらの情報を文科省として集約し,何をすれば,どのくらいの予算が必要かという事例集的なものを早急に整備していただくといいと思う。その上で,「学校建築アドバイザー」という記述が29ページにあるが,その情報交換の場も必要だと思う。予算がついたときに,学校設置者として設計者をどうコントロールするか,学校での維持管理に反映していくかは大きな課題だと思う。

○「学校建築アドバイザー」(仮称)とあるが,専門家による相談体制はどういう人にどういうタイミングで相談するかということが大切かもしれない。改修の場合には,参加が必要な専門家に違いがあると思う。

○設計者の携わる業務は,設計,基本・実施・管理,基本設計だけの発注,基本・実施だけの発注,現場管理までなど,様々なケースがある。単に竣工して業務が終わると,基本的に業務としては完全に終わってしまう。竣工後に使い始めてから,学校関係者とアジャストしていくということが非常に重要にもかかわらず,関係が打ち切られてしまう。保護者や教職員,教育委員会などで調整し,積み重ねて議論して,みんなでつくり上げたものが,学校に引き渡したところで切れてしまうと,使い方やうまく使ってもらう工夫を設計者から伝える機会が設けづらくなる。設計者からは立場がないと受け入れてもらえにくいため,橋渡しができるかどうかで状況が変わると思う。建築家や設計者だけでなく,研究をしている先生や教育関係の専門家などの多様なチームが少し関わるだけでも,学校の使い方が一気に加速していくことがあるので,様々な自治体で実現していけないかという思いがある。学校建築アドバイザーによって,設計段階と使い始めの橋渡しについてうまくいくかをどう書けば伝わるかは検討しなければいけない。現在,導入を検討している学校や自治体に対して,どう運用するかについて御案内している段階である。

○専門家やNPO,地域で学校を支援する人たちがアドバイザーという形で参加し,構想や計画を立てていくことが大事だということを示していければと思う。プロポーザル方式やPFI方式も記述されているが,募集する段階で計画内容が規定され過ぎていると,それと違う提案がしにくいということがある。計画を立案する段階,立案後のそれぞれの段階で関わり続けることが大事である。

○学校のカリキュラムをアドバイスするといった学校の内と外をつなぐ専門家という立場の人は必要だと思う。指導の在り方や,教育のカリキュラムの中身と同時に,建物の在り方や物的環境の在り方についても,専門筋から担当するというような学校建築アドバイザーやカリキュラムコーディネーターは,外部の専門家と学校の内をつなぐ広い意味で,この国の学校に必要だと思う。厳しい状況になっている学校は,つながりがうまくいっていないことが要因の一つだと思う。国として,アドバイザーやコーディネーターを設置や在り方についても検討事項の一つとして位置づけてはどうかと思う。学校建築アドバイザーはふさわしいネーミングかと思うが,国の推進方策として,学校施設の立場からすると,もう少し包括的なネーミングもあり得るかもしれない。学校の内と外をつなぐ,学校の専門家の人たちと実践の展開をする先生とをつないでいくような専門的な立場の人を構築していくことは,国の検討事項としてあっていいと思うので,国として,推進方策の立場を位置づけることが可能かどうなのかも含めて検討いただければと思う。

○先導的モデル事業が新しい時代の学校づくりに関して進んでいるが,そのような事業の生かし方や得られるノウハウを共有できるような仕組みも大事だと思う。

○全国の学校の数を考えると,学校建築アドバイザーのような専門家はもっと必要に感じる。また,様々な専門家や専門職の方が地域にたくさんいるので,学校建築アドバイザーだけでなく,学校評議員制度のようなコミュニティースクールみたいな形で,地域の人材を活用する手立てがあってもいいと思う。PTAにデザイナーの方が入り,イベントのデザインをやってくれる学校もあるので,地域の人材と一緒に学校をつくることができると,現実的で公立の学校の良さがもっと引き出されるのではないかと思う。丸5 の先導的モデルについても,プロポーザルの中で,学校を建てていく際に,地域の人たちを巻き込んでワークショップをやるプロセスは当たり前になってきている。このような地域の人材と一緒に学校をつくる内容は,この辺りで述べたらどうかと思う。

○教員養成から教員研修の段階で,研修プログラムや教員養成のカリキュラムの見直しの検討が進んでいるので,見直しの中で建築の立場からどういう形でアドバイザーを位置づけ,他と関わりを持ちながら検討していくかを問題意識として持ち続ける必要があると思う。

●財政的な支援だけでなく,既に実践が広がっている先導的な取組については,引き上げて,ノウハウやアイデアを展開していくということが重要だと認識している。また,国のプラットフォームの中で事例の展開をしていきたいと考えている。協力者会議における継続的な検討事項の中で取り上げることについては,教育環境向上と老朽化対策を一体的に整備する事例という限定した見せ方や示し方から,少し幅広く事例の収集や分析を加えていきたいと思う。
学校建築アドバイザーやカリキュラムをどのような形でイメージしていくことができるのかについて,事務局の中でも整理していきたいと考えている。

○来週16日の金曜日に協力者会議,親会議が開催される予定だが,そこで本日の議論を踏まえた中間報告案を報告する予定となっている。本日の意見を踏まえた修正については,事務局と相談の上で進めることで,部会長に御一任いただくことでよいか。

(「異議なし」の声あり)

○それでは,部会としての中間報告案について,協力者会議に御報告し,御議論いただくようにしたいと思う。その間,部会の皆様には必要に応じて相談させていただく場合があるかもしれないが,その場合には,どうぞよろしくお願いしたい。
この中間報告の後は,最終的な取りまとめに向けて検討を続けていく。


── 了 ──

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