新しい時代の学校施設検討部会(第4回)議事要旨

1.日時

令和3年6月8日(火曜日)10時00分~12時30分

2.場所

オンライン開催

3.議題

新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について

4.出席者

委員

(委員) 赤松佳珠子,天笠茂,伊藤俊介,倉斗綾子,高橋純、中馬英和,長澤悟,野中陽一,毛利靖,吉田信解(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)
(今回の協力者) 伊香賀俊治,望月伸一(敬称略)


文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 山﨑文教施設企画・防災部長,磯山施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,栗本施設企画課課長補佐,小林施設企画課課長補佐

 

5.議事要旨

・長澤部会長より挨拶。
・事務局より、奥田委員に代わり松畑委員が就任した旨を説明。
事務局より資料1及び資料2,資料3に基づき、本会議での検討事項及び論点、これまでの意見を説明。続けて資料4-1で前回までのプレゼンテーションの概要を説明。
・伊藤委員から、資料4-2に基づき「教室・学習空間の計画」について説明。
・望月協力者から、資料4-3に基づき「人口動態等を踏まえた学校運営や学校施設等の在り方」について説明。
・事務局より、資料5で「オンラインで実施した学校視察」について報告。





(以下 ○:委員等の発言,●:事務局の発言)

○5年、10年先の人口推計を考えながら学校を設計することは重要と思うが、文科省の補助金を 使って、5年、10年先の人口増加を見込んだ教室を作るというのは難しいのではないか。

○首都圏周辺であれば学校はまだ増えるという推計が結構あるが、10年先を見越すと明らかに減っていく。その推計とこれまでの状況を見ながらどのように計画を立てていくのかが重要。その中で補助金は、長寿命化改修も含め、将来の在り方を念頭に置きながら検討する必要がある。

●現在、公立学校施設整備費の補助金は、3年先の変化を見越して建築計画を申請することが可能である。今後、人口が減っていく中で、効率的な施設整備を進めていく視点から、児童生徒数や学級規模が将来どのように推移していくのかは重要な視点だと考えている。

○将来の見通しとして、どの時点をターゲットにした施設計画を行うか。また、そのための制度 については1つの課題になると思う。トレンドごとに児童生徒数を算出するシミュレーション はどのようなケースを想定されているのか。

○出生数の予測をいくつかの条件に分けた上で整理しシミュレーションしている。

○外国の事例では、正面性のない教室ばかりであったが、どんなカリキュラムなのか。

○デンマークやスウェーデンの場合、紹介したスライドはインテリアの改修や家具の入れ替えに積極的に取り組んだモデルケースであるが、昔の家具をそのまま使い、コの字型や教室型に机を配置していたりする学校であっても一斉授業の形態は非常に少なく、重要な部分の解説や学ぶ目的、進め方、生徒の成果物の共有などの場面に限られている。様々な学校の先生から、インストラクションの時間を2割ほどまで減らすなどしたと伺ったので、そうした授業モデルが共有されているのかもしれない。また、一斉授業の場面でも、教科書やノートを広げるスタイルがあまりなく、話合いやじっくり話を聞くことに主眼が置かれている。教科書やノートを広げる作業は、ワークスペースで行うことが多いため、一斉授業の活動時は、集まる場所も狭くてよく、相対的に教室の中で占める面積は小さくなりやすいと思う。

○既存校舎を改修して、教室間にある壁を取り払う際に、構造等の課題はないのか。

○既存施設の改修時には、第一に構造やコンクリート強度を確かめる必要がある。教室間の壁は 構造の要素として計算に入っていることがあり、その場合、取ることが難しいが、構造計算を し、構造に影響なく取れる範囲で工夫をしている例もある。また、教室と廊下の間の壁は、比 較的取りやすいため、開放し、増築するなどの工夫もできる。

○換気の観点から、間取りを考えることも大事な視点だと思う。

○普通教室の冷房化は一気に進んだが、部屋の温度を下げるだけで、換気設備が同時に整備され ているとは限らないケースがあることが現在の課題として挙げられる。その場合、窓開け換気 をする必要があるため、真夏では温度も湿度も上がる。コロナの感染リスクも踏まえたアフタ ーコロナの学校の教室の換気の在り方も、今後の学校施設整備のとして検討する必要がある。 運用面だけではなく、設備面も改善していかないといけない。

○日常の維持管理において、自分たちの学んでいるところを自分たちで清掃していくことが大事な視点である。こうした日本の学校 文化にも配慮できたらよい。

○長寿命化のためには、維持管理を踏まえた施設計画は大事である。身の回りの物を大事にし、お互いを考えながら自分の生活があるという意識を育てる教育的意義も含めて、子供がどのように維持管理に関わるか議論を進めていけたらと思う。

○学校再編の検討にあたって、立地、コストと教育方法・教育効果の両方を議論してうまく進め ている事例があれば教えていただきたい。

○小諸市の学校教育審議会で議論されたこれからの学習環境の状況をイラストにするといった 見える化を行い、住民の方にも分かりやすくした。さらに、より具体化するために、教育委員 会と市長部局が共に検討を進める体制を、教育委員会と市長部局に了解を得て進め、具体的な 再編計画を策定して住民に示していくように進めている。これらの工夫に倣って進めたいと いう自治体が2,3ある。

○子供の数が減り余裕教室が増える中、学校としては使っているとの認識であっても物置になるなど必ずしもすべて活用されているわけではない。教育を行う上でどれくらいの余裕教室数が確保されていればうまくいくなどの事例があれば教えていただきたい。

○個別施設計画(長寿命化計画)のなかで、建物情報一覧・諸室の構成・カリキュラムを紐づけ し、諸室の構成と活用状況を明らかにして、施設担当・学務課・学校側に納得してもらい、余 裕スペースを引き出すことをすると同時に、新たな使い方を示すことで理解してもらうこと を、小・中学校や高校で行っている。

○一般的なオープンスペースを持っている学校だけでなく先進的な取組を行っている学校でも オープンスペースの利用、特に学年全体で使うことが減っていると感じる。先生方が多忙で学 年連携の打合せをする時間が減っていることが空間の使い方に影響しているのではないか。

○私の行った調査結果からは打合せをする時間が減っていることと空間の使い方には関係があ ると推測できる。多目的スペース使用を他クラスと調整する方法として、使う時に声をかける 先生が最も多かったが、スペースを活発に使う先生とそうでない先生の差が顕著だったのは、 スケジュールを事前に調整するか否かであり、多目的スペースを活発に使う先生は、先生間の 打合せや調整を多く行っていた。学年ユニットの学級数が多いと多目的スペースの使用頻度 が減る傾向があり、相談や打合せ、調整すべき相手が多いことも手間を増やす要因になってい ると思われる。プレゼンテーションでは、担任の裁量で使うことができるスペースの充実を提 案したが、周囲から完全に区画されると今度は学間連携をしない状況を助長する危惧もある ため、共用空間との連続性も重要である。

○オープンスペースをその都度片付けるか、学級の拡張領域として家具等を出しておくか、など 先生方の多忙と同時に、校長の方針によっても違いが出てくるのか。また、先生同士が議論し てワークスペースの使い方を検討する場合と、なかなかそういう時間が取れていない学校で は活用の頻度・使い方に違いがでているのか。

○ヒアリングからは影響があることと推測している。校長・教頭や学年主任が規律・統率・整頓 を重んじる学校では多目的スペースが片付いている代わりに使用頻度は下がっているように 思われる。多目的スペースが活発に使われている学校では、建前としては片付いていなければ ならないが、学習活動のためにものが出ているのは許容されるという暗黙の了解が校長をは じめとする学校全体で共有されていることでのびのび空間を使っている印象がある。

○学校別条件シートの活用事例は、ほかに使用事例があるのか。

○学校別条件シートは小学校、中学校、高校で予算要求の精度を上げていく際に、最初の段階 から適正な予算や条件を作っておくニーズがあり、かなり利用が増えている。

○オンライン視察で学校を見たときに、教育理念がはっきりしていて、学校教室環境とカリキュ ラムがセットで考えられていると、うまくいっている感じがした。また、全体的に机は大きい ほうがよく、特別教室の机も大きいほうがスペースを広く使えているように見えるため、机の 大きさも検討する必要がある。小学校はパソコン教室が不要だと思われるが、中学校や高等学 校では、パソコン教室の在り方は検討する余地があるのかもしれない。また、小さい部屋を大 きくするより、もともと大きい部屋を小さくする方がコスト面の負荷は少ないように思えた。 他に、普通教室の中にグループ活動や個別学習の固定のスペースを作ることは結構重要だと 思う。それは、デンマークの発想にも通ずるところがあると思う。



・事務局より、資料6で「中間まとめ(骨子案)」について報告。

○骨子案3ページに指導体制の整備の1文が記されているが、中教審の審議とか答申では、小学校の高学年における教科担任制の導入との関わりが議論され、成案としてまとめられた経緯がある。施設の立場からも十分受け止めていただきたい。答申の文章では義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方が書かれているため、施設の立場からも在り方に対応する記述を図ることが必要と思う。施設の立場から教科担任制の在り方について、答申では小中一貫や義務教育を前提にしながら教科担任制の在り方を検討したが、小中連携とか小中一貫校のケースなど全体を通しての目配せが、骨子案の中では不足しているように思われる。

○5月26日に、2050年脱炭素社会実現を基本理念とする改正地球温暖化対策推進法の法律の改正が行われ、2030年に46%減という、今から9年の中で今ある技術を最大限活用して実現しないといけない状況である。そのために、国民の意識改革や行動変容が必要だと言われているが、学校が模範を示し、子供たちが学ぶことによる、保護者への波及効果や子供たちが成人になった時の意識づけが必要となる。さらなる木造化、木質化、省エネ化や再生可能エネルギーの導入により、これまでのエコスクールをさらに大きく前進させる必要がある。大きく前進させるためには、ZEBやLCCMを一般化する必要があり、先進的なモデルを多く構築して、普及・啓発させる必要がある。それには、国の財政支援が不可欠であり、例えば、今後9年間は、2009年度に予算措置された国庫補助5,000億円や地方交付金6,000億円くらいの規模で毎年やっていく必要があるのではないか。

○小学校の教科担任制を考えると、今までの特別教室で作られた教科以外の教科用の教室というのもあってもいいと思う。

○新しい時代の学びの実現には、子供たちの安心・安全な教育環境の確保が最優先であり、中心 に据えるべきだと思う。時代が変わっても、子供たちの安心・安全の確保は普遍的だと思う。 また、今の既存施設の長寿命化改修や老朽化改修の枠組みの中で、持続可能な取組を行ってほ しい。様々な先導的なモデルや取組を横展開できるかといった目線で検討していく必要もあ る。学校は子供たちの学びの場、生活の場であると同時に、地域のコミュニティー活動の拠点 かつ、地域の主要な避難所である。また、学校の再編、統廃合、施設の複合化を進めていくに は、地域住民の理解が必要不可欠であるため、防災上のニーズなどの地域住民のニーズを踏ま えた取組にも対応していく必要があると思う。

○骨子案の中にある項目は、読んだ人が具体的なイメージを持てる形で表していくことを意識し、整備の目標や方法につなげていけるようにしたい。

○国研でもスーパーエコスクール実証事業で既存施設の改修前、改修後の詳細な比較検討をし、成果の検証、課題の抽出等も行っている。今後9年でさらに高いハードルを越えなければいけないため、学びの基盤として位置づけられているのは適切であると思う。環境対策は、カーボンニュートラルだけでなく、温熱環境を整え、快適に使える新しい学びのための環境に資することを含め広い波及効果があると思う。安全・安心と並ぶ学びの基盤という形で位置づけられているが、文部科学省が、学校施設の耐震化や安全・安心に対して大きな投資を行い、それによって成果を上げ、公共施設の中でトップランナーとなってきたが、同様に環境対策においても先導的な役割を果たし、大きな投資をしていくことは非常に意義のあることであり、予算を投下すれば結果は出ると思う。

○骨子案の目次を、1、2、3、4の順番から、1、3、2、4にした方が、新しい時代の学びを実現するというタイトルに対して、目次の構成で何がポイントなのかが分かりやすくなると思う。新しい時代の学びでは、学習指導要領やICT化といった教育面で今一番新しく起きている変化を反映する課題があると思う。前半で新しい時代の教育の面、後半で公共施設に共通する普遍的で、かつ時代を問わない項目をまとめる構成がいいと思う。また、施設整備の面で考える必要がある項目と運用で工夫する項目の区別がつきにくいため、誰に創意工夫してほしいかが分かりやすい構成、表現にしてほしい。

○事務局で意見を参考にしながら、検討していただく。

●チャットでいただいた倉斗委員の情報系、デジタル系の環境整備の専門スタッフの不可欠性という意見、吉田委員の改修では財政的な負担面、一歩踏み込んだ改修の実施には一層の支援が不可欠という意見についても受け止め、具体的な素案の作成にとりかかりたいと思う。


・以上で、意見交換を終了。
・最後に事務局から、資料7に基づき今後の予定について説明し、会議を終了。

―― 了 ――

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

指導第二係
電話番号:03-6734-2292(直通)

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)