新しい時代の学校施設検討部会(第3回)議事要旨

1.日時

令和3年5月21日(金曜日)13時00分~15時30分

2.場所

オンライン開催

3.議題

新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について

4.出席者

委員

(委員) 赤松佳珠子,倉斗綾子,高橋純,中馬英和,長澤悟,野中陽一,毛利靖,吉田信解(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)
(今回の協力者) 伊香賀俊治(敬称略)
(委員代理) 藤木謙壮(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 山﨑文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官、磯山施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,栗本施設企画課課長補佐,小林施設企画課課長補佐

5.議事要旨


・長澤部会長より挨拶。
・事務局より、資料1及び資料2,資料3に基づき、本会議での検討事項及び論点、これまでの意見を説明。続けて資料4-1で前回までのプレゼンテーションの概要を説明。
・赤松委員から、資料4-2に基づき多様な学びの形態に対応した空間のあり方等について説明。
・伊香賀協力者から、資料4-3に基づき「学校施設のカーボンニュートラル対応」について説明。
・長澤部会長から、資料5-1に基づき「未来に向けた既存学校施設の長寿命化」について説明。
・事務局より、資料5-2で「新たな時代の学びを実現する教室改修事例」を説明。


(以下 ○:委員等の発言,●事務局の発言)

○これまで学校づくりに携わる中で、建設にかかる費用と竣工後に配置する備品や什器等の予算の枠組みが別だったり、発注者が違っていたりするために、せっかく設計しても全く違うイメージの家具が配置されることが多くあった。政策面、制度面で何か提言できないか。

●現状では施設整備費を中心に取り扱っているが、施設整備を進めていくにあたりどのような環境をつくっていくのかという視点においては、家具の配置など、アイデアとしてどういうことが考えられるかということについてもご議論いただきたい。

○現状の予算の仕組みを見据えつつ、それにとらわれず自由にこれからの在り方やそれを実現することを考えたい。

○オンラインが盛んになっている中で、図書室等の静かな場所にいても子どもたちが動画視聴や話合いなどをしたい時に行うことができる小教室があると非常にいいと思う。ICTが進むと、コンセントの配置がより重要になる。
環境面に配慮して改修することで子供たちの学習意欲が高まるというのは、新しい校舎で子供たちが快適に学習する姿を見て実感している。
設計者の考えが建物を使う側の教員にうまく伝わっていないように思うことがある。デザインのコンセプトが先生に伝わっていない場合、デザインは良くても、何か使い勝手が悪いものとなってしまう。設計の意図を理解するために使用者が説明を受けて使うことが大事だと思う。

○デザイン自体の大切さに加え、使用者にデザインの意図を共有することもまた大事だということ。

○人がいるところでのオンライン会議はすごくやり辛いが、学校でもオンライン会議を行う必要のある状況は出てくる。小教室に加え、周りを囲むことのできる家具や吸音性能がある家具、1人用の家具などがコーナーにあると使いやすいと思う。少しだけ囲まれているだけでも随分違う。
コンセントについては、実施設計を行う中で位置を先生と細かく議論し、デザインの中に落とし込んでいくが、先生が替わると使い方が変わってしまう。単にコンセントの数を増やすと費用がかかるので、様々な使い方を想定し、必要数を配置することが大事だと思う。
改修設計の際、意図が先生に伝わらないことが多いが、説明をすることで意図が初めて分かってもらえる。基本設計から実施設計、現場管理と段階ごとに契約が分かれており、基本設計から現場管理まで携わっても、その先は今の仕組みにはないため、完成すると使い手と関わる機会がなくなる。学校全体の施設マニュアルを自分たちで作り、使い手である先生に渡すことや説明をしたくても、関わる立場がない上、学校によっては忙しいと言われ断られてしまう。
先生とコミュニケーションをとることで初めて学校全体のことを理解し、それぞれの空間をどう使いこなすかというところに意識が向いていくと感じている。

○翠小学校は、教員は入れ替わるがほかの大都市の学校よりは長い期間いることが多く、校舎に組み込まれた設計者の意図がちゃんと代々先生方に引き継がれた例。当時の先生に設計者から直接説明する機会があっても、何年かすると先生方が入れ替わってしまい、結局マニュアルがどこにいったかも分からないことがよくあること。長きに渡って、学校を適切に使うための工夫は必要。
環境教材として継続的にやっていくことにより、先生が入れ替わっても設計者の意図が正しく引き継がれ、運用されていくと思う。

○設計段階で当時の教育委員会や先生、保護者、地域の方々と議論をした上で、総意として設計されていることが引き継がれることで、実際の学びや教育につながっていくような、設計者の想いの継承の仕方が必要だと思う。

○新しい時代の学校は、社会がICT化に向け変わろうとしていることに対して学校がどう対応していくかという側面がある。社会はそのままで教育を変えていこうというのではなく、社会そのものが変わろうとしている状況の中で、学校をどう変えていくかということは、少し違う切り口で考えることができるのではないか。

○学習者とデジタルの関係で、今のGIGAスクール構想での子供の様子等を見ると、ビジネスの世界での活動の仕方とすごく似てきている。子供一人一人がコンピュータを持ち、勉強を行うことやその様子が把握できる状態は、対面やオンライン、1人やグループなどの組合せといったように、オフィスのように自在になると思う。
パーソナルスペースを計画する際、一人一人の行動や活動の把握のニーズがより一層強まることになると思う。
一方で、電気の使用量が多いICTは、カーボンニュートラルなど環境に配慮した整備を推進していくことと相性が悪いようにも思われる。

○現在、蛍光灯はLEDに変わり、照明は半分以下に減ってきている一方で、ICTが進み、パソコンが増えている。ただ、ICTは必須のものであるため、省エネ型のICT機器やサーバーなど機器側で技術革新が今後起こると思う。

○メディアセンターの周りに小教室や個別のワークスペースをつくるということはいいアイデアだと思う一方で、中で何をしているか分かるようにしないと学校では管理上の問題となる。1人あるいはグループで何かするスペースは大事であると思うが、音対策に加えガラス張りにするなど外から活動が確認しやすくすることにも留意したスペースを計画をするといいと思う。
従来の普通教室の改修の際、廊下側の壁を取り教室を広げていくことが多いが、教室間の壁を取り払うことは難しいのか。都市部など教室が足りない場合は分かるが、教室が余っている場合は、2つの教室を1つにして教室の面積を広げた方が良いように思う。改修のしやすさや建築基準法上の問題があるのか。
家具を設置する際に多様な活動や人数にできるように対応することは、必要だと思うが、外国の教室では日本のように子供たちが机の配置を変える様子はあまり見ない。多様な家具を動かして空間をつくり直すことは、使い手に大きな負荷がかかると思う。空間に家具を置くことで、期待する学習活動が誘発される仕組みがある方が良いように思った。
設計者の意図を学校全体に浸透させることは難しいと思う。新しい構想による空間をつくるときに、先生が理解しなければならない理念や背景をカリキュラムに反映させなければならないと足かせになるような気がするため、期待する学習活動を誘発する(アフォードする)空間の構成や家具の配置といった発想が必要だと思う。

○教室間の壁は耐力壁になっていることが多く、一般的には取るのは難しい。教室の間の壁を取った例は、構造の確認をした上、何枚かあるうちの一部について耐力壁の役割を果たす範囲を確認し、空けられるだけ空けたもの。5分の2ぐらい空いていれば、廊下側も連続していることもあり、一体的に先生方が協働しながら活動ができる空間が作れる。教室の間が壁で仕切られていない方が先生に好評だったことが、追跡調査によって分かった。

○家具の配置による環境づくりでは誘発させる力が期待される部分だと思う。可動の中でも子供が簡単に動かすことのできる家具と、模様替えのように労力をかけて動かす家具があるため、学習の場面を想像して家具と建築を考えることが必要である。

○様々な学習の場面を見ていく中で、建築の空間だけでは限定的になってしまう。空間に家具を組み合わせることで、限られた面積の中で空間を変容させることができ柔軟な対応ができる。先生のイメージに合わせてある程度カスタマイズをしていける余地を残すことも大切かと思う。一方で、家具は発注者が設計者と違う上、予算も違うことにより当初のイメージが崩れやすいことは、大きい問題と思う。

○日本で家具を動かすことが多いのは、家具が個人机しかないからだと思う。作業のために机上面を大きくすることや、話合いのため囲み型にするなどを個人机でレイアウトしなければいけない。スペースと様々な家具があれば、予め家具の配置で環境を整備し、シーンに応じて適した場所や家具を選んで活動する環境ができる。

○オンラインに関して、クラス対クラスから、グループ対グループでつながった際に、音響や電波、場所などの問題が起きる。適当な部屋がない時には、空き教室をグループごとに活用した。今後、そうした空間が無限に求められていく中で、部屋の数で応えることは現実的ではない。家具という視覚的な空間の区切りを行っていく中で、声の干渉も1人1台環境の中で配慮しなければならない。

○多くの自治体がタブレットカートを導入しているが、1人1台の活用が進んでいる学校では不要になっている。一方、そうではない学校では、タブレットカートが面積を取るため、中長期的にも考えていく必要がある。

○給食ワゴンなども場所をとる。積極的に活動を支えていくための家具と、子供の持ち物の収納など学校の活動に必要な家具を、自由度の高い学習空間を確保するために捉え直していくことが必要と思う。



●ご紹介いただいた長野県の「県立学校学習時間空間デザイン検討委員会」報告書では、整備方法やプロポーザル方式による設計の選定手法についても提言されているが、この部分について、どのように感じているか。

○日本では、設計入札で決まっている公共施設はとても多い。地方自治法や会計法にかかわることだが、値段の安いところが落札する現状はもはやあってはならない。様々な経験があり、新しい空間をつくることのできる設計者を選定することが重要なため、プロポーザル方式で設計者を日本全国から幅広く募集して、選定委員会の下で設計者を選定していくプロセスは必要である。入札で設計者を決めるより労力はかかるが、設計者の選定は重要なカギなので、時間や費用をかけてでも絶対に譲ってはいけない。長野県の検討委員会では、県の方を含めて委員総意で提言している。一方、これまで入札をしていた自治体にとっては、プロポーザル方式でどうすればいいか分からないというのが実情だと思う。建築学会などもプロポーザル方式をサポートする方向になってきつつあるが、国交省などと連携し、文科省の方でも周知し支援することが重要。

○プロポーザル方式では、どのような設計やアイデアを求めているかという前段の基本構想や計画が大事となり、設計者を選定する委員会の構成が重要になる。選定委員が新しい課題を認識していなければ、提案しても評価されない事態となるので、プロポーザル方式を生かすためには、仕組みを整えていくことも課題としてある。
長野県でまとめた構想の中では、既存施設についての取扱いはどうなっているのか。

○改築や新築をできる数は限られているので、構想の中では改修も含め、エネルギーの問題や断熱性能を向上するだけではなく、空間の作り方も重要としている。

○本市では、概ね築40年の時点で老朽化した学校施設の長寿命化改修を行っている。屋上防水、外壁補修、床、壁、天井の内装改修を基本とし、トイレの改修や受変電設備などの設備の改修も併せて行っている。また、学校施設は地域の主要な避難所でもあるため、埋設給排水管の改修や、バリアフリー化の観点から、スロープの設置、エレベーターの設置などの機能向上も必要に応じて行っている。
本市では、小・中学校など合わせて1,600棟ほどを管理しており、その中で長寿命化改修は年間30棟ほど、予算は100億円弱ほどの大きな額となる。国庫補助などの財政支援もあるが、市の一般財源からも負担する必要があるため、教育委員会と財政局で予算折衝が毎年起こる。改築と比べると長寿命化改修の1平米当たりの単価は5割程度のため、時代の要請を捉えた様々な新たな取組を行っていくためには、予算の確保が必要。その際、環境整備による子供たちの健康や体力の向上、学力の向上といった相関関係を具体的に示すことができると予算折衝が円滑に進むと思う。

○ICT環境において、子供たちはタブレットを使い、Wi-Fiも整備されている中で、先生が置いていかれている自治体を見聞きしている。先生はタブレットを持たず、パソコンで授業をやっているが、セキュリティー上、パソコンはWi-Fiにつないではいけないルールが決まっている自治体もあると聞く。ICT環境を整えていく中で、子どもたちだけでなく、先生の環境整備も一緒に整備する必要がある。

○教職員スペースを考えるときに何か具体的な観点はあるのか。

○働く場という点で、現代の執務スペースのような設えで効率よく働けることが必要と思う。

○普通教室を一つとっても、広さの捉え方、ICT環境の整え方や家具の話などがこれまで議論としてあがっている。特別教室、図書館、屋外スペースや今の職員室などを、従来の枠組みで考えるのではなく、子供の活動や学校の学習活動を見つめ、枠組みを再構成する必要もある。この報告書を世の中に発信していく上で、どういう項目を立てて報告するかが大事。また、環境整備と省エネルギーについて立体的に書くためにも学校はゼロカーボンを実現に向け、目標時期を設定した上でどのような施設設備を考えていけばいいかという観点も必要。

○文科省の委員会として、2050年の将来CO2排出予測をし、様々な学校の学級数や規模の情報に校舎の省エネ対応や再エネ導入を踏まえ、2050年に1990年比70%減となる分析をした。改めて最新の情報でCO2排出をゼロにするためには、何年度には何校まで整備するといった実施目標が必要。そうすれば、毎年度の必要な予算額が分かる。適切に予算をかければ技術的に可能であり、 公共施設として模範を示すために予算を確保することが重要。そのためには、子供たちの健康面や学習意欲の面など学校施設の違いによる子供たちへの影響といった根拠が必要。



・以上で,意見交換を終了
・最後に事務局から,資料7に基づき,今後の部会スケジュールについて説明を行い,会議を終了。

―― 了 ――

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