新しい時代の学校施設検討部会(第2回)議事要旨

1.日時

令和3年4月20日(火曜日)10時00分~12時30分

2.場所

オンライン開催

3.議題

新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について

4.出席者

委員

(委員) 赤松佳珠子,天笠茂,伊藤俊介,倉斗綾子,高橋純,中馬英和,長澤悟,野中陽一,毛利靖,吉田信解(敬称略)
(特別協力者) 齋藤福栄(敬称略)
(委員代理)大岩伸喜,藤木謙壮(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 山﨑文教施設企画・防災部長,笠原技術参事官、磯山施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,栗本施設企画課課長補佐,小林施設企画課課長補佐

5.議事要旨
 

・長澤部会長より挨拶。
・事務局より、資料1及び資料2,資料3に基づき、本会議での検討事項及び論点、これまでの意見を説明。続けて資料4-1で第1回部会の概要を説明。
・毛利委員から、資料4-2に基づき「つくば市・みどりの学園の先進的ICT教育」について説明。
・大岩教育部長、藤木主査から、資料4-3に基づき「備前市におけるICT機器の活用状況」について説明。
・倉斗委員から、資料4-4に基づき『これからの「学び」をささえる環境』について説明。

(○委員の発言)


○授業のシーンを見ると,板書が残っている。子供たちに情報を一斉に出すときに,先生が黒板に板書するといったアナログの提示ではなく,デジタル情報を使用する提示は,授業文化や板書文化の側面から難しいのか。

○板書とは別の授業の中身みたいな資料をパワーポイントで作ることが多い。一 方で,「学習のめあて」のような1回の授業を通して残すものは,板書で提示し ている傾向がある。

○大型ディスプレイとは異なり,黒板は固定なので,子供たちは黒板が見ることができる位置に座らざるを得ない。板書を画面上で見るといったデジタル情報を複数の画面提示できるような環境をつくるというようなことは考えられないのか。

○大型ディスプレイ2画面で対応すれば,板書で残している内容もデジタル化す
ることができると思う。

○ちなみに、子供たちにとって,どういうテーブルの形や配置が望ましいか。

○円いテーブルであれば,自然と顔が見え,コミュニケーションが取れる。何かを 作るときは,円いと面積が狭いので,四角いテーブルが良い場合もある。その ため,必要に応じて教室を移動して使っていることが多い。

○ICTシステムが汎用的なクラウドのようにも見えたが,専用の学習指導向けのクラウドシステムで画面転送を行っているのか。

○クラウドについては,つくば市では30年以上前から,サーバーを共有して市内各学校全部をつなぎ,電子掲示板の使用やデータ共有をしている。そのシステムがクラウドに置き換わり,家や自分の学校,他の学校からでもつながるシステムとなっている。

○グループワークをするときのテーブルの方が、一斉に伝達するための大型ディ スプレイや黒板よりも重視されている気がする。個別のブースによく,23イン チなどの小さいディスプレイが置いてある。みどりの学園義務教育学校では, 小型のディスプレイはあまり置いていないのか。

○小さいディスプレイ代わりにタブレットを使っている。また,発表のような全体へのプレゼンで大型提示装置を使う機会が多い。

○学習目標の設定や学習課程の設定は,子供たちにどのように周知されているの か。例えば,学習目標が単一の場合, 黒板やパワーポイントなどで一斉に伝達 する方が都合良い。個別に学習目標が設定される,または,個別に学習目標を 持っている子供たちの場合,一斉の度合いが減るため,黒板や大型提示装置の 役割が減る。学習目標や学習課程の指導との関連から,ICTは使い方が変わる と思う。

○学習の目標は,単元によって異なる。総合的な学習は,大きなテーマがあるが,子供たちはそれぞれ課題を持って追求するため,グループの人数は決められていないことが多い。

○ICTには,テレビ会議システム等があるが,みどりの学園義務教育学校の放送設 備とICTの関係はどのようになっているのか。

○テレビの回線は教室内にないが,無線LANがあるため,「みどりんTV」というみどりの学園内の放送を毎日のように配信している。



○先生方が提示するものを黒板に板書といったアナログの提示ではなく,デジタル情報を使用することは難しいのか。

○常に残しておきたいものと,切り替わっても構わないものという,複数のデー タの中で,プロジェクターのみの1つの画面ではできないという状況があった。 そのため,常に残したいものは,現状,黒板に提示されている。複数ディスプレ イになれば,全てデジタル化が可能になると思う。デジタル化すれば,資料を 子供たちに渡すことができ,画像として送ることやトリミングして必要な部 分を自分のデジタルノートの中に貼りつけるなどもできるようになる。その 際には,子供たちが後で使うためにどの部分を切り取るか意識して,現場は資 料を構成していく必要があると思う。

○文化的な側面で何かを変えることや子供たちが主体で学ぶということを考え たときに,黒板というのは大きな存在である。子供たちが黒板を向いて座って いるという状況が生まれると、その状況で一斉に伝えることが大前提になる ように思う。黒板の存在をどうクリアするかというのは、大きな問題である。

○建築の世界では,正面性をどのように考えるか,正面性をなくすような提案   も行われている。

○学級経営や生活の場としての空間と,現代的な学習をする空間のニーズが重ならない点が多くなってきているのか。

○普通教室のような生活の場として使おうとするため,普通教室にあるものを特 別教室の中でどのように実現させるかという発想になりやすい。必要がない ものに関しても文化という点で,そぎ落とせない部分が残っていると思う。生 活をする点で,ロッカー等のニーズを追加していくと,最終的に普通教室と同じような狭さになり,活動しにくくなると思う。

○教室の後ろにロッカーがあることは,日本独特の教室の風景と言えるが,備 前市では,フューチャールームを普通教室としたときに,ロッカーの取り扱 いはどうしたのか。

○長机の上に置くなど,授業を重視したため,生活面で不便が出ることには、目をつぶっていた。一方で,日常的に机の横にある引っかけや重たい机の動し方,コードの取扱いといった日常の文化をそのまま引き継ごうとすると問題があることが運用して分かった。

○総合的に教室の在り方を解いていく必要がある。



○以前,本町小学校で実際に授業をした際,クラス単独で横にはみ出る形態はやりづらかった。普通教室のスペースを広くするしか,多様な活動を生み出すのは無理なのではという印象がある。教室の広さを現状の1.5㎡/人を3~4㎡/人に広げる発想で教室拡張型のワークスペースを考える方がいいと思う。
 もう一つの発想として,いろんな教室のタイプをつくり,そこに移動するというのもあると思うが,小学校は普通教室の中で多様な活動をすることになると思うので,そういう意味でも広くすることはいいと思う。発表にあった共有のスペースで静かに使うための1つの方法として,本を分散配置するとかコンピュータを分散配置することを踏まえ,共有スペースに一人で学べるような環境をつくることも発想としては必要と思う。



○GIGAスクール構想は,活用について温度差があるが,一人一人のパソコンにより,オンライン講義や動画,実際の教室でどういうふうに活動していくのかを考えていく必要がある。授業は手段であり,授業の先にある子供の学びに着目していくと,結果として子供一人一人で目標管理せざるを得ず,それぞれの子供の能力を伸ばしていくということに行き着く。ICTにより,個別の状況も把握できるような仕組みになっていくと思うと,そういう視点から見直していく可能性はあると思う。例えば,昔は入試のために丁寧に教えていた先生が,今はかなり対話的で協働的な授業にチャレンジしている状況となり,子供の感想も一人一人拾えるようになっている。子供の反応がよいため,黒板もほとんど使わないような授業が始まっているような例もある。子供の学びが改めてICTでどうなっていき,それに伴い,学校施設がどうなっていくかを考えていく必要があると思う。子供がパソコンをよく使っている学校では,子供の学びの成果が上がっている。先生だけではなく子供自身もパソコンにより,統計処理やAI分析のようなデータの分析を行うこともでき,動画やデジタル的な作品などもたくさん作っている。一方で,学校の中で公表する場所があまりない。子供の作った作品が,日常的に何となくデジタルサイネージのように公表されていくといった子供の学びの成果をどう見せていくのかといった新しい観点から考え直すと施設の在り方についての考え方が変わってくるのではないかと思う。

○最後の学びの成果をみんなに見てもらえることは,個別最適化と協働的学習 の両方に関わり,双方を結びつける要素かと思う。

○個別最適化とか協働的学習は,国として公教育における要求の高い低いという観点ではなく,そこに迫って応じていくことが求められている。先生の技量を引き上げる環境整備の在り方や居ずまいの仕方について,施設の在り方の提起をこれからさらに議論で重ねる必要があると思う。学校では世代替わりが進んでいる。1つの教室をマネジメントしていくのに苦労している若い世代の人たちが存在している中で,個別最適化について,授業改善の求めとどう織りなしていくのか,どういう形で先生方にそれを応答していくのかという視点でもこのテーマを受け止めていく必要があると思う。先生が組織として力をつけていく中に,ICTに向かうことや,GIGAスクールに向かうあたり,鍵やアイデア,ヒントがあるように思う。カリキュラム,教育課程をチームとして先生は学びながら,学校の授業の在り方等を改善し,環境を整えていったところを丁寧に分析し,データを明らかにすることによって,施設の在り方や使い方について,いろいろ学ぶことができると思う。

○既存施設をどのようにすれば,今の個別最適化の中で,新しい学びに対応した施設にできるか。新しい施設をつくるということは,財源的な制限から難しいため,今ある施設をどのように工夫をすればいいかという視点が自治体として大事になる。限られた中で,どういう形をつくっていくかという視点で考えなければならない。普通の箱型教室とは違う,様々な施設で行われた多種多様な学びが,どういった成果を出してきたのかというところは知りたいと思う。また,GIGAスクール構想の中で育った子たちが,その成果を発揮して次のステップに進む際に,受験の在り方等はどうなっているのかを考えなければいけない。現在の暗記型の受験の在り方も考え,変えていかなければならないと思う。GIGAスクールの進め方が,子供たちにどういう影響を及ぼすのかは,保護者にとって非常に関心のあるところである。ICTによる学びを行うことにより,子供たちは行きたい学校へ行けるのかに答えていかなければいけない。



○私も同様に既存施設の活用というのが最も大切なことではないかなと思う。本市では,学校施設のうち築40年程度の建物が,全体の7割近くを占めている状況があり、学校施設の長寿命化という目標から,築80年学校施設を使うといった学校施設の個別計画も策定している。そのため,新築や改築によって、新たな教育環境をつくり上げていくということは難しいように思われる。新しい生活様式を踏まえ,健やかに学習・生活できる環境の整備というテーマがある。その中で,本市の取り組みとして、空調の整備を行っている。学校の体育館は地域の主要な避難所であり,学校の中で最も広い空間でもあることから,ポストコロナも踏まえ,体育の授業以外での体育館活用を検討し,学校の体育館に空調を整備する方針を掲げている等,既存の広い空間を有効活用できないかといった取組みも検討している。



・以上で,意見交換を終了
・最後に事務局から,資料5に基づき,今後の部会スケジュール及び現地調査について説明を行い,会議を終了。

―― 了 ――

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