高等学校施設部会(令和元年~)(第4回)議事要旨

1.日時

令和2年12月22日(火曜日)13時00分~15時00分

2.議題

  1. 今後の高等学校施設の在り方について
  2. その他

3.出席者

委員

(委員)  伊藤俊介,岩井雄一,織田克彦,加茂紀和子,北村公一,高際伊都子,長澤悟,山口直人,𠮷田宏(敬称略)
(特別協力者) 丹沢広行(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 森施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,木村施設企画課課長補佐,田中施設助成課課長補佐

オブザーバー

【初等中等教育局】 酒井参事官(高等学校担当)付参事官補佐,新見教育課程課企画係長
【高等教育局私学部】 青山私学助成課助成第二係長

4.議事要旨

・事務局より、新任委員の紹介、事務局の異動について報告、会議資料の確認。
・事務局より、資料1に基づき第3回高等学校施設部会、第9回学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議における主な意見について説明。
・酒井初等中等教育局参事官(高等学校担当)付参事官補佐より、資料2-1、資料2-2に基づき、現在検討が行われている高等学校改革の状況について説明。
・事務局より、資料3-1に基づきこれからの高等学校施設の在り方(イメージ)について説明。

(○委員の発言,●事務局の発言)
○ コロナ禍において、ソーシャルディスタンスをしっかり確保するためには、教室数を増やして授業をしなければならない。体育館で授業をしたという学校も聞いている。
  また、災害時、避難所としての役割を持たせつつ授業が実施できるよう、多様な活用ができるスペースや設備が必要である。

○ 資料2-1、2-2には、高校教育が抜本的に変わる可能性があるということが幾つもちりばめられているが、施設に関しては、どこまで書くのかが難しい。コロナ対応が1年間続き、ソーシャルディスタンスの確保も大変だったが、学校のネットワークが非常に弱いので、情報化を進めるのであれば、ネットワークの構築にたけた専門の方の参画が必要。回線も、生徒の通信環境もばらつきがあるため対応が難しい。
  ある事例では、各家庭が、学校が考えるオンラインの学習環境を整えるのにほぼひと月かかった。学校だけがオンライン学習環境整備に対応するのではなく、家庭の環境についても学校が踏み込むのかは、非常に大きな課題である。
  また、情報漏えい対策が非常に厳しい課題だが、オンライン授業と両立させるために苦労した。
  調理実習も、みんなで作って食べることができないので、例えばこの後もこの状況が続けば、ゆくゆくは生徒たちが自分のスマホを見て、自宅で調理して、その様子を教員が見れば、調理室が不要ということが起きかねない。
  20年後、30年後、実験実習がこれまでのようにできないのであれば、高等学校に本当にそれらの設備が必要なのか等、どこまで議論していいのかと感じている。

○ 施設が新しく、設備も、1人1台が可能になるようなものを確保できている工業高等学校は少なく、このコロナ禍の中で実習運営も難しいと思われている校長先生も多くいると思う。
  もう1つ、私自身は、使う側の視点をもっと考えていかなければと思う。新しい高等学校改革がされていく中で、生徒だけでなく、教員の視点も含めて、施設の在り方を考えていかなければならない。

○ 公立高校のどの都道府県も似ている部分はあると思うが、多くの学校からネット環境を整備することが難しいということが聞こえてきた。
  先生方が独自でいろいろな授業動画を撮影するなどいろいろな工夫をしているが、それを見ることができない状況があった。
学校施設を考えていく上では、アクティブ・ラーニングを実施していく上でのスペースの問題、環境の問題を考えていくことも重要である。また、手洗いの励行などを進める上で、手洗い場が少ないという声もある。

○ コロナの感染防止対策で、冬、換気をすると非常に教室の中が寒くなるというという学校現場の声をよく聞く。
教室の中と外気との交換をするのに非常に効率のいい熱交換器があり、その設置要望が多いが予算もかかるため、なかなか難しい。
  また、交付金を活用して、トイレの洋式化に併せて手洗い・照明のセンサーによる自動化を図った県立学校もあり、学校からも喜ばれた。
  それから、主体的・対話的で深い学びの実現ということでは、1つの目的に絞るのではなくて、多目的に使え、またICTの環境も整っていて、冷暖房も完備している、ラーニング・コモンズのような教室が欲しいという学校からの要望が多い。
  特別教室も、様々な用途に便利に使える空間とすることが重要であり、ICT環境が整っていればなお良い。そうすれば、地域の方々と交流する場にも活用できる。
  それから、資料3-1のP.3に、「専門学科を有する学校について、最先端の職業教育を行う上で必要となる産業教育施設・設備の計画的な整備に対応した施設計画とすることが重要」と記載がある。高等学校は文部科学省からの交付金ではなく、一般財源で整備するため、なかなか老朽化した実習施設等が改修できない。先般、閣議決定された国の第3次補正予算案で、デジタル化に対応した産業教育装置の整備で、大規模な予算を確保していただいたが、非常にありがたい措置で、これでかなり整備を進められると思う。

○ インクルーシブ教育と関連して20年後30年後を見据えたときに、合理的配慮という意味での機器とかアプリの開発などが進み、並行して資料3-1のP.5に記載されている高速大容量の通信環境が求められてくる。
  例えば、デジタル教科書を使いながら、一方で、音声変換をしていくような対応が必要な生徒も居ると思うので、機能高度化に対応できる施設をどのように造っていくのかが課題である。

○ 学校施設は、今後もどうすれば「自ら学ぶ」ことができる空間となるのか、工夫していかなければならない。加えて、高校も、大学もそうだが、授業だけではなく、生活の場として余裕のあるスペースをどのように造るか、また、使っていくかも議論をしていかなければならない。
  コロナの前までは、つながりやオープンな空間という方向だったが、コロナになってからは、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用など、それまで目指していた、空間や教育が一転してしまっており施設、教育プログラム、人とのつながりの関係が難しくなっている。

○ 資料3-1の「これからの高等学校施設の在り方(イメージ)」に関連して、施設などハード面でできることが何かということだけで書いており、授業などがソフトとハードがセットになってどのように行われるかイメージが湧きにくい。
例えば1人に1台端末が行き渡ったとき、そこでどういう授業が行われるのか、また、高度な学習内容・授業、学習形態という表現もあるが、それが具体的にどんな場面になるのかが、よく分からない。
  そうすると、一体どういうふうに空間をつくったら、これから変わっていく教育をサポートできる空間ができるのかがイメージしづらい。教育についての議論がどこかで行われていると思われるが、そちらの議論なども踏まえて、もう少しソフトを含めたイメージを提示できたほうが良い。
  今後、コロナウイルスのような感染症と付き合っていくためには、例えば半分は家で半分は学校で授業を受けていて、同時に同期して授業を受けるという方式かもしれないし、ハイブリッドな授業のやり方かもしれないが、ソフトとハードをセットにして、どうやって運用するかをイメージすることが必要。
  この部会は施設の在り方を提言したり議論したりする場ではあると思うが、ソフトと合わせたイメージの提示がもう少しあっても良い。

● 今、コロナ禍において、学校の在り方が変わっているのではないかという指摘を、様々な委員からいただいた。
中教審のワーキングにおいては、コロナ禍における学校教育の在り方、高等学校の役割という部分で、今回の臨時休業措置など特殊な状況下において、オンライン授業等、様々なことが行われた。
  一方で、教師の生徒への対面指導や生徒同士の関わり合いなど、学校教育の特質が失われるものではないということを改めて確認し、学校そのものの存在意義が整理されている。
  重要なこととして、遠隔オンラインなのか対面オフラインなのかという二元論に陥ることなく、高等学校が持つ役割を最大限に果たすために、対面指導が効果的なもの、地域社会における学びが効果的なもの、オンラインでの学習が効果的なものを見極めて、その最適な組合せによって可能性を引き出すような学びを探っていくということが示されている。
  したがって、今後、学校教育の特質をしっかりと押さえた上で、空間がその目的のためだけに使われるということではなく、より柔軟な使い方ができるような、弾力的な対応が可能な施設計画の重要性につながっていくのではないかと考えている。
必要か必要でないかという二極論で整理していくとなると、難しい部分があるので、今ある施設、あるいはこれから整備していく施設の弾力性、柔軟性をどのようにして確保していくのかという視点も持ちながら、整理をさせていただきたい。
  また、ICT関連では、既に補正予算などで、ネットワーク環境の整備が予算化され、また、今般の第3次補正において、センター方式を取っているところについては学習系ネットワークを学校から直接インターネットへ接続する方式に改める整備も国が支援をさせていただいている。整備した環境を用いてどのような学びを展開していくのかというイメージということの指摘をいただいたので、最終的な報告書の構成に当たっては、それが読み手にも分かるよう工夫を重ねていきたい。

● 今、初等中等教育分科会で検討している方向性も、まさに二元論に陥ることの無いようにというもの。今回のコロナ禍で学校の果たすべき役割が再確認された。中教審では、学校のいわゆる「学力的機能」だけではなく、人と人とのつながりや安全・安心を生む「福祉的機能」はやはり学校の機能として、変わらないものであろうというように議論された。
  今回のコロナ禍や今後、仮にまたこういった感染症が起きた場合には、今般の対応と同様のことを考えていかないといけない。一方で、今後、感染症が収まった場合、やはり学校教育の役割、存在はコロナ以前と大きくは変わらないと考えている。

○ 今回の件で、やはり中学生と高校生には随分違いがあるということを実感した。
高等学校については、7割の普通科で同一内容を勉強するという前提で、校舎もカリキュラムも考えていたため、今までは中学と高校をセットで考えることが多かった。選択科目を取り、自分の能力を伸ばすことをより一層目指すのであれば、必要な設備というのは大きく変わってくるという感触を持った。
  18歳までは中学校と一緒で、場を大事にしていく方向で指針を示すのか、個をもう少し重点的に出すことで指針を示すのかによって、もしかすると、同じ地域の学校でもA校とB校で設備が全く違ってもいいという未来を見ていくのかということになる。大学はすでに個々に施設が異なっているが、そういったところも含めて、非常に重たい議論になる。
  もう1つ、今回の一連のコロナで大きな影響を受けたのが、在外教育施設である。
  教員が入国できない、生徒は身動きが取れない、予算的な措置がされないということで、現場は大変苦労されている。国内の例えば離島や山間部でオンラインによる授業が可能になるのであれば、世界に出ている日本人の子供たち、日本語で教育を受けたいと思っている子供たちについても、同じような授業がオンラインで受けられる環境ができると、日本人のこれからの働き方にプラスになると感じている。

● 高校教育の在り方について、必ずしも大学教育に近づけることを念頭に置いているわけではないが、どちらかというと全国一律で同じような教育をしていくというものではなく、各地域や学校の実情に応じた特色化・魅力化という方向で普通科教育を進めていただくのが、今回の高校改革の肝である。

○ コロナで授業の様々な実施方法が見つかったが、やはり学校教育というのは学校で行うことが最良の方法であるという立場から、この施設・設備の在り方を考えていったらいいのかなというふうに、自分の中で整理をした。

● コロナの状況下においても、オンラインなのか対面なのかという二項対立の構造ではなくて、ベストミックスな姿を目指していく、最適な学びの環境を整えていくという視点でいる。そのため、今後の在り方、あるいは指針の取りまとめに当たっては、施設環境をどのようにして充実させていくかという視点での議論をしていきたいし、整理をしていただきたい。一方で、それぞれの教室の姿として、その用途のみでしか用いることができないというような形なのか、それとも、様々な課題に対応できるような弾力的あるいは柔軟な考え方なのかという、そういう発想があると思うので、そうした視点も織り交ぜながら、現場の皆さんが有効に活用できる施設の在り方ということを提示していくことができればと考えている。

○ 今例えば地域社会との関係で、中山間地域・離島における小規模高校の在り方等の話もあったが、どういったところに新しい学校の姿、可能性というのを描いていくかということが一つ課題になっていると感じた。
それから、高校は中学校を目指すのか大学を目指すのか、これも二元論ではなく、持っている要素をどのように新しい高校像を描きながら統合していくかということが求められていると思う。学校はほかの人がいて、一緒に学び一緒に育つ場であり、それがインクルーシブ教育システムなどの考え方にもつながるところだと改めて強く、今度の経験を通じて感じた。

・事務局より資料3-2に基づき報告書の構成案について説明

○ 第2章や第3章で、学習内容や学習形態の具体像がイメージできるような、つまり、四角い教室からこの先どう変わるのかのヒントになるような情報があるとよい。
  あと、第1章の2つ目のポツが、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大」となっているが、これからの学校施設の在り方という、かなり長期間にわたって使われる手引みたいに、1つの項を割いて、施設計画を考える上での基本的な要件の1つとして考えるという位置づけにすべきなのか、今の社会状況の1つの要因として捉えていくことなのか、どのくらいのタイムスパンの問題として捉えるのか。

● これからの学校施設を考える上での要件と捉えていくのか、あるいは社会情勢として紹介していくのかという観点では、現在のイメージは後者であると考えている。
  つまり、新型コロナウイルス感染症が拡大されている状況の中で、学校は様々な課題を抱えたが、一方で、学校という必要性を再認識し、高等学校の役割・在り方を改めて実感をしたところから、これからの高等学校の改革の在り方が議論されて、方向性として示されている状況にある。そのため、コロナを大前提として施設の在り方を全て定義していくというよりは、例えば自然災害など、様々な配慮しなければならない事象の中の1つとして、コロナを捉えながら、学校施設の在り方・留意点を整理していくことを考えている。

○ このコロナの状態で、オンライン授業など、今後の高校の教育を変えていくためのヒントは多く出ていると思う。
そういう意味では、従前にそのまま戻すということではなく、ここで得られた経験を、この先変えていくものに生かすという視点もあるとよい。

● 資料3-2の第2章の「これからの高等学校施設の在り方」の中では、例えば3番目の「情報化」というところには1人1台端末環境、これはまさにコロナの中で学びを止めない、保障していくという視点の中で、オンラインの可能性がさらに高まっている状況があるので、そこはしっかりと押さえていくという点では、過去に戻っていくのではなく、新しい学びの在り方、変革に伴った施設環境を追求していくという視点になる。
  もう1点、安全でゆとりと潤いのある施設整備というところに「衛生環境の整備」とあるが、やはり三密解消と言われている中で、衛生環境をどのように確保していくかということも大きな課題となっていると感じているので、これもまた、コロナ対応ということも踏まえて、施設環境として必要な視点だと考えているので、そういう意味では、コロナを一つのきっかけとして、これからの新しい学校施設の姿を描いていくという点はあると思う。

・以上で意見交換を終了。
・森文教施設企画・防災部施設企画課長より挨拶。
・事務局より今後のスケジュールについて説明。

―― 了 ――

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(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)