高等学校施設部会(令和元年~)(第3回)議事要旨

1.日時

令和2年1月31日(金曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. 視察報告について
  2. 今後の高等学校施設の在り方について
  3. その他

3.出席者

委員

(委員)  伊藤俊介,岩井雄一,織田克彦,加茂紀和子,北村公一,柴田功,高際伊都子,多々納雄二,長澤悟,牧田和樹,𠮷田宏(敬称略)
(特別協力者) 丹沢広行(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 笠原技術参事官,木村施設企画課課長補佐,廣田防災・減災企画官,谷口施設企画課指導第一係長

オブザーバー

【初等中等教育局】 高田教育課程課教育課程企画室企画係長,安彦参事官(高等学校担当)付高等学校改革推進室長
【高等教育局私学部】 三好施設助成課専門官

4.議事要旨

議事要旨
・事務局より資料1に基づき,9月に実施した現地視察について説明。
・視察に関する意見交換。

(○委員の発言,●事務局の発言)
○視察を行った立命館高校と追手門学院高校は,ごく最近建設された建物であり,空間構成や色彩,家具等を工夫し,新しいイメージの学びの空間を作ろうとしていたのが大きな特色。一方,堀川高校は建設から少し時間がたっているが,4層の吹き抜け空間を中心にゆとりのある空間をいかして様々工夫された学習を展開しており,近年では近隣の廃校となった小学校をSSHに関連した理科実験棟として活用するなど現在の施設の改修だけでなく地域を巻き込む形で学習の場を拡げていたのが興味深かった。

○追手門学院や立命館は中高一貫校だが,中高の空間的棲み分けや一貫校ならではの特色などあれば教えてほしい。

○追手門学院の運営方式は従来通り,普通教室があり特別教室がある方式。ただし,学習集団を授業に応じて弾力的に編制できるように,CANALと呼ばれるオープンスペースを挟んで普通教室が並ぶ形式をとっている。また校舎の真ん中に置かれたPORTと呼ばれるメディアスペースを挟んで中学校と高等学校がゾーン分けされ,このPORTを介して中高が交流できるよう計画されていた。

○立命館も大きなホールを挟んで教室が配置されているが,このホールは学習空間というより広場のような生活空間的な雰囲気が強い。メディアセンターやメディアラボ,プレゼンテーションルームといった自主的で多様な学習のための空間は1階にまとめられ学びの中心スペースとなっていた。その他,通路の各所にプロジェクターを設置し学習の場所として活用するなど,学校全体が学びの場であり生活の場であるように計画されていた。

・資料2に基づき第1回及び2回会議における意見について,資料3-1,3-2に基づき,報告書の構成及び報告書作成のためのたたき台について説明。
・各委員による意見交換。

(○委員の発言,●事務局の発言)
○現在進んでいる高等学校改革の状況によっては,普通科の高等学校に関する記述が大幅に変わる可能性がある。現段階で報告書の中身をがっちり固めてしまうのではなく,今後,多少の変更が見込まれることを踏まえた議論をすべきではないか。

●ご指摘の通り,報告書は高等学校改革に係る議論を踏まえたものとなるため,現時点では枠にとらわれずご意見いただきたい。

○大前提として,この部会ではどのようなアウトプットを目指すのか明確にすることが大事だと考えている。

○中教審等の議論の流れでも,小中は単線型の教育制度を引き続き踏襲し,高校は複線型として子供たちの選択の幅を拡げようという動きで進んできており,小中と高校の違いは明確になってきている。

○予備校などでは衛星通信を利用した授業を行い,成果を上げている。今後学校で学ぶことの中身が変わり,普通の授業は家で受講するという未来もあるかもしれない。そうであれば,学校には授業を受ける場ではなく,顔を合わせた交流の場という役割が大きく求められてくる可能性もある。

○学校施設整備指針の改訂の方針として,現在ある指針の見直しなのか,根本的な作り直しまで行うのか考えなければいけない段階にきているように思う。個人的には,改訂を行うのであればフレキシブルかつミニマムなものとするのが一番汎用性の高いものになると思うが,公立学校の予算的な問題も絡むため,まずは本指針の位置づけを明確にする必要があるだろう。

○イノベーションはハードの変革とソフトの変革,それを使う人の意識の変革の3つの要素が三位一体にならないと起こらない。今回我々はハードだけを取り上げるということだと,我々の議論が徒労に終わってしまうのではないかと懸念している。

●今回の議論の成果として中教審での議論や様々な状況の変化等を踏まえて,今後の高等学校施設において必要となるだろうポイントを報告書で取りまとめていただきたいと考えている。また,指針については,長年の検討の積み重ねでもあり,部会の議論を踏まえ新たな視点を追記したいと考えている。あわせて,現行の指針に時代に合わないものがあれば,しっかり整理していく必要があると考えており,別途ご議論いただく機会を設けたいと思う。

○環境性能は,今の公共施設が備えないといけない基本的な要件だと思うため,報告書内の求められる建物性能の項目として記載した方が良いと思う。

○施設の在り方として働き方改革が記載されているのは違和感がある。また,ICTは一章で社会の変化にあるのは理解できるが,ICTは教育に影響を与えるものであるので,2章では教育の方で取り上げるのではないかと思う。

○教員の働く環境についての記述は,授業改善を行うため,あるいは魅力ある職場環境をつくるための環境整備ということを踏まえれば,高校改革への対応の一環として記載するのも良いのではないか。

○学習指導要領や高校改革などそれぞれの有効期間が異なるため,施設整備指針にはどのような記述が適切なのか考えあぐねている。特にICT関係については,様々な選択肢の中で各自治体が多様なロードマップを描いている状況であり,5年後くらいには見直しの必要があると感じている。

○「教育方法の変化」を例えば「生徒の資質・能力の育成を図る教育」として学習指導要領の改訂や,高校改革や,特別な配慮が必要な生徒への対応について記載してはどうか。教育方法の変化という言葉では,今までの先生方の教育を否定していると捉えられかねないため,表現を検討した方が良いのではないか。

○アクティブラーニングや探究型学習等の推進というものが強く伝われば伝わるほど,従来のしっかり知識を付けていくという教育を否定されているように受け止める学校も多い。アクティブラーニング等の重要性は伝えながらも,知識をつける教育も同等にやっていくことが大事だとわかるようにバランスの取れた記述としていただきたい。

○地域との協働は死活問題であり,県立高校であっても地域の色も持った高校が求められていくと考えている。高校の存在価値を高めていくためには,キーマンとして,教員でも市町村の職員でもない多様な経験を有したコーディネーターの存在があるのが望ましい。そういう人が学校内に居場所を持っていて,教員や市町村と協働・連携できる,こういったことは大事な観点なので,報告書に盛り込まれると良い。

○高校現場の視点からお話すると,探究的な活動をすればするほど,生徒が主体的に自由に動くようになるため,そのような活動で使われるようになる例えば階段や廊下,アトリウム等の教室以外の空間の安全面については留意点に入れていただけると良い。

○比較的小規模な改修における留意点も記載されているが,これは是非お願いしたい。最小限の費用で子どもに学ぶスペースを提供していく事例は様々な学校で参考になると思うので,より具体的に記載すると良い。

○東日本大震災の時,高等学校は帰宅困難者の受け皿になることも多かったが,夜間は学校に電気供給がなく,このため水のポンプも止まり難儀した。避難所機能の中に自家発電設備があると良いと思った。

○千葉の台風災害の時も避難住民が最も要望したのが情報の確保。衛星電話等も含め防災拠点の高機能化はやっていかなければならないため,各学校の工夫というレベルを超えて,防災など教育以外の部局の協力も得ながら,しっかりと防災拠点としての学校について記述した方が実際に役立つものになると思う。

○壁一面をホワイトボードとする環境は,子供たちが日常的に議論や交流をする際に役立つものでもあり,ICTを活用した活動にのみ使われるものではない。ある活動を実現するための環境整備という等号で結ばれるような書き方だけだと,高校では項目ばかり増えていくように思われるので,書き方に工夫が必要だと思う。

○今回の報告書及び指針の改訂においては,今後の学校環境の可能性についても提示するという目的があると理解している。今回の視察校のうち,学校の敷地外に別棟として設けられた施設が,地域と子どもをつなぐ場となっている事例があり,非常に可能性を感じさせる空間であった。このような空間についてもトピックの一つとして取り上げても良いのではないか。

○財政的な面でも新たな環境の整備が難しい学校が圧倒的に多いと思われるため,今ある施設や近隣の施設等の利用も含め,既存のものをどう生かすかという観点で,様々なヒントが得られるような報告書になると良い。

○この高校にはこういう生徒が入学してくるだろうという固定観念が外れていく時代が来るのではないか。例えば隠岐島前高校のように,県外からの入学者が半数を超えるような学校では,その受け入れのための暮らしの観点も出てくるのではないか。また,県外から来た生徒と地域出身の生徒や地域住民とが複合的に関わるコモンスペースは調理室や食堂が考えられる。食堂は防災の観点でも重要である。こういった観点をどこに位置付けていくのが望ましいかも総合的に見ていくと出てくるかと感じた。

○普通科では2%程度と推定される中,通信制,定時制には特別な配慮を要する生徒は10数%いると言われているため,今後本報告書で様々な学科がある高校での対応を記述する場合には,そのあたりの配慮について記載いただけるとありがたい。

○長寿命化に関連した記述には,財政状況の厳しさや使い方の工夫について記載しているが,新しい学校を建てる場合でもそれらの視点を記載しておく必要があるのではないか。

○少子化に対応していくにあたり,恐らく新築の場合はダウンサイジング,既存の学校では,増築は余り増加しないと考えられる。一方,余裕教室の増加は想定されるため,余裕教室を活用した多目的空間や通級指導のための空間の確保といった視点について書くのが良いのではないか。

○今後,学校の中だけ完結せず,課外活動であったり遠隔教育であったりと,学校の外部とつながっていくような学習も増えていくと思われるため,学校外と連携ができるような機能の追加も必要だと考えている。

○専門高校には実習施設が数多くあり,老朽化が進んでいる。これら高校ならではの施設に関する記述の書き方についてもご検討いただきたい。

○異常気象により災害も増えているので,避難所機能も含めて防災機能や防災性能の強化といった観点でまとめることも考えられるのではないか。

○PPPやPFIなど施設の整備方法についても記述があると,設置者としては選択肢が増えて使いやすいものになるのではないか。

○今ある施設を活用していくという観点からも,PDCAサイクルのチェックを行う項目について,報告書に記載した方が良いのではないか。


・以上で,意見交換を終了。
・事務局より今後のスケジュールや連絡事項について説明。

―了―

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課

指導第一係

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)