平成28年2月18日(木曜日)15時~16時30分
文部科学省旧庁舎4階 文教施設企画部会議室
(○:委員、●:事務局)
● 国立大学等の施設はイノベーション創出や地方創生を支える重要な基盤。本検討会で御議論いただいている事業評価は、『優れた施設整備事業を採択していくため』のみならず、『各大学等において施設整備を戦略的に進めるようにするための政策誘導のツール』でもあり、委員の皆様におかれては、この事業評価に日頃よりお力添えをいただき感謝。
「国立大学法人等施設整備5か年計画」も来年度から第4期目に入り、国立大学の施設整備はまさに今ターニングポイントを向かえている。耐震化がおおむね完了する一方、施設の老朽化による安全面・機能面での課題が深刻化しており、様々な場面で大学経営の一環として戦略的な施設マネジメントの推進が求められているところ。
本日は活発な議論をいただければ幸い。
事務局より、資料1「平成28年度国立大学法人等施設整備費予算案」について報告を行った。
事務局より、資料2「次期国立大学法人等施設整備5か年計画策定に向けた最終報告(案)」について報告を行った。
主な意見は以下のとおり。
○ 大学では老朽化した建物などを大量に抱えている。そうした中で、社会的な要請もあり機能強化を進めて行かなくてはならないが、十分な施設整備予算を期待できる状況にない。そのため大学は保有面積の抑制や多様な財源確保など戦略的な施設マネジメントを進めていく必要がある。そのようなことをデータや事例などを交えて説得力のあるものとしたのが本報告書案である。
今後、対外的に国立大学が直面する課題について合意形成を図るための一助となると思っている。
○ 留学生なども受け入れる中で保有面積を抑制していくのは難しいことではある。保有面積の抑制ということは、新築ではなく既存施設の改修による対応が必要になる。その際に、長期的な視点で多様なプログラムに対応できるフレキシブルな空間を整備することが重要。
しかしながら、大学では新築と改修では改修の順位が低く、改修による整備が進みづらい。引き続き大学に対して理解を求めていく必要がある。
● 改修の事例集を作成している。今後各大学に周知して改修のインセンティブを高めていきたい。
留学生をこれまでと同じ施設面積の中で対応していくには施設整備の工夫が必要。
○ 留学生については、1年間などの短期留学が主流となっている。国際教養大学では3年生全員を1年間留学させ、同時に海外から同じ人数の留学生を受け入れるなど双方の交流を促進し成果を上げている。また、中国の精華大学では200人規模でアメリカのUCバークレーと留学生の交換を行っている。
海外の大学はたいてい寄宿舎があるが、日本では寄宿舎の整備が海外ほど進んでいなく、数百人規模を受け入れられる寄宿舎をもっている大学は少ないと思う。アメリカ、中国、欧州では盛んに交流が行われており、日本は取り残されないように戦略的な整備が必要。
● 道路、橋、水道などの老朽化と同様、キャンパス内の建物やライフラインの老朽化も深刻。このままだと維持管理や更新の費用だけで予算を使い切ってしまい、新たな施設整備ができなくなる。そうした厳しい状況の中で寄宿舎の整備を進めていかなくてはならないが、最近では家賃を民間並みに徴収するPFI事業を活用した整備など工夫も見られる。
● 全国で数百名規模の寄宿舎整備の計画が上がってきているが、実際に整備が始まるのは数年後。海外の大学の寄宿舎は民間並みの家賃を徴収するのが標準で、日本の大学も法人化後は家賃を上げている大学もある。民間に近い家賃負担を設定しPFI事業などもうまく活用していただければよいと思う。
○ 学生は、国際的な環境で生活したい、また寄宿舎の方が多少家賃が安いことなどから多くは寄宿舎を希望しているため寄宿舎の整備は重要。
施設整備に関してはデザインの観点も取り入れた方がよい。例えば海外では予算の一部をアーティストの作品を飾るなどデザインのために充てる取組もある。
● 空間の魅力を高めることは重要。海外の大学でもそのような取組を重視する気運があるところもある。
事務局より、資料3「次期の国立大学法人等施設整備5か年計画の方向性を踏まえた事業評価・選定プロセスの見直しについて(案)」について説明を行い、了承された。
主な意見は以下のとおり。
○ 優先度の評価項目が無くなるが、その点はどのように評価されるのか。
● 事業評価は事業の中身を評価するものであるため、本日の見直しで大学における優先度を点数化することは廃止した。ただし、各大学から要求事業を提出してもらう際に優先順位は引き続き付けていただくことにし、それも参考に各大学のバランス、要求額などを総合的に判断して採択事業を決めていくことになる。
○ 今後S評価の事業については再度要求する場合、再提出は不要とのことだが、これらはあらためて評価作業は行わないのか
● 前年度にS評価を受けた事業の場合、内容が同じであればS評価とするため提出は不要。
○ 施設整備が赤字になっている大学がある。例えばある大学では10億円以上の赤字になっている場合がある。その赤字が学部の負担に回される場合があり、仮に10年間で返済するとしても年間1億円を返済することとなり大変厳しい状況。赤字が出ないように、例えば途中で計画変更をするなど大学に無理をさせない必要がある。
● 附属病院の整備については、予算が不足した場合は可能な範囲で追加予算を措置している。
● 一般的には、事業費の不足に対しては、まずは計画変更で仕様を見直し整備を完了する。その後、必要に応じ予算が確保できたときに追加整備を行うことが考えられる。
ここ数年で工事費が高騰している。しかしながら限られた予算の中で要求されるままに補助単価を上げると採択数が減ることになる。文科省としては各大学のバランスや安全安心の観点なども考慮して事業採択を行うこととしており、各大学には理解を求めているところ。
大臣官房文教施設企画部計画課