資料8 「学校施設の長寿命化計画策定に係る手引(仮称)」骨子案

はじめに

1.総論

(1)学校施設の役割

1.子どもたちの学習・生活の場
・学校施設は,子どもたちの学習・生活の場であり,学校教育活動を行うための基本的な教育条件であるため,充実した教育活動を存分に展開できるよう,機能的な施設環境を整えるとともに,豊かな人間性を育むのにふさわしい,快適で十分な安全性,防災性,防犯性や衛生的な環境を備えた安全・安心なものとする必要がある。
・さらに,地球温暖化等の環境問題に対応するため,環境を考慮した学校施設であるエコスクール化を推進することや,教育内容・方法等の変化,教育の情報化,バリアフリー化等の様々な社会的要請に適切に対応するため,教育環境の質的向上を図ることが求められる。
2.地域コミュニティや防災の拠点
・学校施設は,地域住民にとって最も身近な施設であり,生涯にわたる学習,文化,スポーツなどの活動の場として,また,地震等の非常災害時には避難所として利用される地域の防災拠点としても重要な役割を担っているため,必要に応じ他の文教施設や高齢者福祉施設との連携の推進や防災拠点としての機能の強化を図る必要がある。
・また,学校が社会全体で子供たちの学びを支援する場とし,地域の振興・再生にも貢献するコミュニティの拠点として役割を果たすよう,学校施設と他の公共施設等の複合化を進めていくことも有効である。

(2)個別施設計画とは

・平成25年11月に策定された「インフラ長寿命化基本計画」(インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議決定)において,各インフラの管理者及び当該インフラを所管する国や地方公共団体の各機関は,インフラの維持管理・更新等を着実に推進するための中期的な取組の方向性を明らかにする計画として,「インフラ長寿命化計画(以下,「行動計画」という。)」を策定することとされた。
・さらに、同基本計画においては,各インフラの管理者が,行動計画に基づき,個別施設毎の具体の対応方針を定める計画として,個別施設毎の長寿命化計画(以下,「個別施設計画)という。)を策定することとされた。

(3)個別施設計画の位置づけ

・文部科学省では、学校施設環境改善交付金の交付を受けようとする地方公共団体に対して施設整備計画の提出を義務づけている。この施設整備計画が緊急の課題を迅速に進めていく観点から計画期間を3年以内としたものであるのに対し、個別施設計画は中長期的な施設整備の見通しを示すものである。
・また,「インフラ長寿命化基本計画」においては,各インフラの管理者が既に同種・類似の計画を策定している場合には,当分の間,当該計画をもって,個別施設計画の策定に代えることができることとされ,同基本計画の趣旨を踏まえ,「できるだけ早期に適切な見直しを行うよう努める」こととされており,その際に本手引を活用することも考えられる。

(4)個別施設計画策定の目的

・地方公共団体による個別施設計画策定の主な目的は,事業に係るトータルコストの縮減及び平準化である。
・国・地方の厳しい財政状況の下で,今後見込まれる膨大な老朽施設の再生を効率的・効果的に進め,トータルコストを縮減・平準化するためには,施設の劣化状況や学校施設を取り巻く環境を総合的に把握した上で,今後必要となるコストの見通しを明らかにした個別施設計画を策定し,計画的に改修や維持管理等を行っていくことが重要である。

(5)本手引の目的

・本手引は,各地方公共団体が域内の公立学校施設の個別施設計画を策定する際に参考とするための基本的な考え方や留意点,計画に盛り込むべき事項等を示し,解説したものである。
・なお,平成25年に取りまとめられた報告書「学校施設整備基本構想の在り方について」 では,各地方公共団体の所管する学校施設全体の中長期的な整備方針等を策定する際の基本的な考え方やプロセス等について提言されている。本手引は,各地方公共団体が当該報告書やインフラ長寿命化基本計画等を踏まえつつ,迅速かつ効果的に中長期的な整備計画を策定し,老朽化対策を推進することができるよう,各検討段階で押さえるポイントを詳細に解説したものである。

(6)適用の範囲

・本手引は,公立の幼稚園,小学校,中学校,中等教育学校,高等学校,特別支援学校を対象とするものである。ただし,本手引に示した考え方や解説等は,公立学校以外の文教施設においても参考とすることができるものと考えられる。

(7)用語の定義

・修繕,改修,改築,長寿命化,インフラ長寿命化基本計画,行動計画,個別施設計画,維持管理計画,トータルコスト 等

2.個別施設計画策定の手引きと解説

2-1.個別施設計画の策定・実施に当たっての留意点

・各地方公共団体において,効率的かつ効果的な施設整備を進めていくためには,1.施設の点検・評価によって現状を的確に把握した上でそれを踏まえた計画(個別施設計画)を策定し(Plan),2.計画に基づき,適切な改修・維持管理等を実施し(Do),3.整備による効果の検証を継続的に行うとともに,より効果的な整備手法など改善すべき点について課題を整理し(Check),4.次期計画に反映していく(Action),というPDCAサイクルを確立することが重要である。
・また,事業にかかるトータルコストの縮減・平準化を実現するためには,改築より工事費が安価で,廃棄物や二酸化炭素の排出量が少ない長寿命化改修への転換を図るようにするとともに,施設の状態,役割,機能,利用状況,重要性等を勘案した優先順位を定めることにより,適切な改築時期等の設定を行うことが必要である。
・さらに,建物をできる限り長く使うため,適切な維持管理を行っていくことが重要であり,その際,老朽化による劣化・破損等の大規模な不具合が生じた後に保全を行う「事後保全」ではなく,損傷が軽微である早期段階から予防的な修繕等を実施することで機能の保持・回復を図る「予防保全」を導入することが重要である。「予防保全」を行うことにより,突発的な事故や突発的な費用発生を減少させることができ,維持管理や改修等の費用を平準化することができる。

2-2.各事項別の解説

(1)背景

各地方公共団体における行動計画の内容を踏まえ,個別施設計画の策定に当たっての背景を記載する。

(2)目的

各地方公共団体における個別施設計画の策定に当たっての目的を記載する。

(3)計画期間

施設の現状と今後の長寿命化の方針,維持管理計画等を考慮の上,計画期間を設定する。

(4)対象施設

公立の幼稚園,小学校,中学校,中等教育学校,高等学校,特別支援学校を対象とする。

(5)現状

地方公共団体の人口状況や財政状況,他の公共建築物の状況等の学校施設を取り巻く状況について現状を整理するとともに,改修方法等の検討に必要な老朽化状況等の施設の状態や維持管理の計画に必要な事項について調査し,記載する。

(6)情報基盤の整備と活用

把握した現状データの蓄積方法を記載する。

(7)目指すべき姿と基本的な方針

各地方公共団体が目指す教育を実現するための中長期的に目指すべき学校施設像を示すとともに,そのために必要な施設整備の基本的な方針を記載する。

(8)維持管理計画の立案・運用

各学校施設の維持管理を効率的・効果的に実施するため,維持管理の点検・評価の項目を整理する。また,点検・評価の項目毎に調査の方法,周期等を設定した維持管理計画を策定する。

(9)長寿命化の実施計画

各対象施設の現在の状態と優先順位の考え方を踏まえた,今後の改修・改築等の時期や方法,費用等を整理し,年次計画を策定する。

(10)長寿命化のコストの見通し,長寿命化の効果

計画に従って長寿命化を行った時のコストの見通しを明らかにする。また,改築中心の場合とのコストの比較・評価を行い,長寿命化の効果を明らかにする。その他,必要に応じて定性的な評価も行う。

3.参考

○先行事例等を掲載予定

 

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