平成26年6月24日
今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議
「検討の方向性・課題の整理に関する中間まとめ」(案)
1.背景
2.現行5か年計画について
3.国立大学等施設整備をめぐる環境の変化-現行計画策定時からの変化
4.基本的な考え方-検討の方向性
1.安全・安心な教育研究環境の基盤の確保
(1)耐震対策、防災機能強化、老朽改善整備等の推進
(2)地球環境に配慮したキャンパス形成
2.国立大学等の機能強化への対応
(1)国立大学等の機能強化を活性化させる施設整備
(2)教育研究の活性化を引き起こす老朽施設のリノベーション
(3)継続的に医療等の変化へ対応していくための附属病院施設の整備
3.財源の確保等
5.今後の検討、分析の進め方
○文部科学省では、国立大学法人等の人材養成や学術研究、高度先進医療の推進等を実現するため、平成13年から3次にわたり、科学技術基本計画を受けた国立大学法人等施設整備5か年計画を策定し、計画的・重点的に施設整備を推進。
○しかしながら、国立大学等の施設は、依然として安全性・機能性の不足や老朽化の更なる進行などの課題や、教育研究活動の高度化・多様化、国際競争力の強化、産学官連携の推進等に必要な施設面の課題など、更なる課題が存在。
○これら様々な課題に対応していくためには、長期的な視点に立って、その充実に向けて計画的かつ重点的な施設整備を行うことが不可欠であることから、国として、国立大学法人等全体の5か年計画(以下、「5か年計画」という。)を策定し、安定的、継続的な整備が可能となるよう支援の充実を図っていくことが必要。
○現在は、第3次5か年計画(平成23年度~27年度)の期間の終盤に差し掛かっている。次期5か年計画策定に向け、これまでの全国の整備状況を踏まえつつ、教育研究、成長戦略等に関わる施策の動向を注視しながら、今後の検討の進め方等について議論していくことが必要。
○また、次期5か年計画の開始時期は、次期科学技術基本計画及び次期中期目標・中期計画期間と同時期(平成28年度~)となることから、両計画の策定に向けた検討と歩調を合わせていくことが必要。また、第2期教育振興基本計画(平成25年度~平成29年度)※を踏まえたものとすることが必要。
※ 教育振興基本計画(平成25年6月14日 閣議決定)(一部抜粋)
第2部今後5年間に実施すべき教育上の方策
基本施策18 学生の主体的な学びの確立に向けた大学教育の質的転換
基本施策14 優れた才能や個性を伸ばす多様で高度な学習機会等の提供
基本施策15 大学院の機能強化等による卓越した教育研究拠点の形成、大学等の研究力強化の促進
基本施策16 外国語教育、双方向の留学生交流・国際交流、大学等の国際化など、グローバル人材育成に向けた取組の強化
基本施策19 教育研究環境の整備や安全に関する教育の充実など学校における児童生徒等の安全の確保
基本施策21 地域社会の中核となる高等教育機関(COC構想)の推進
基本施策27 大学等の個性・特色の明確化とそれに基づく機能の強化(機能別分化)の推進
基本施策28 大学等の財政基盤の確立と個性・特色に応じた施設整備
○以上のことから、次期5か年計画の策定に向け、調査研究協力者会議において本年8月時点での中間的な取りまとめとして、検討の方向性・課題の整理を行うもの。
○現行の第3次5か年計画においては、「2. 基本的考え方」の中で以下の視点からの施設整備を一体的に実現することを掲示。
1質的向上への戦略的整備-Strategy
2地球環境に配慮した教育研究環境の実現-Sustainability
3安全な教育研究環境の確保-Safety
○また、現行5か年計画は、1老朽改善整備(約400万平方メートル)、2狭隘解消整備(約80万平方メートル)及び3大学附属病院の再生(約70万平方メートル)の3本の柱を掲示。同様の柱立てをしていた前期の第2次5か年計画(平成18~22年度)を継続・発展させた計画。
○平成26年度当初予算に係る事業の完了後は、上記3本柱全体としては事業量ベースでの進捗率は約65%(多様な財源を活用したものを含む。)となる見込み、うち1老朽改善整備分は約56%、2狭隘解消整備分は約89%、3大学附属病院の再生分は約87%となる見込み。老朽改善整備に著しい遅れが出ている状況。
※前5か年計画における同時期の事業量ベースでの全体進捗率は69%
○構造体の耐震化については、Is値0.4以下の建物について原則として当初2年間で完了、続いて、平成27年度までの耐震化完了を目標として取り組み、平成26年度当初予算に係る事業の完了後は、耐震化率は約96%となる見込み。
○構造体の耐震化については、平成27年度末までにおおむね完了する見込みであるが、東日本大震災の教訓を踏まえ、学生等の安全確保や、教育研究活動の継続性の確保、地域住民の緊急避難場所となること、災害発生直後から大学附属病院で医療活動を行うこと等の観点から、構造体の耐震化のみならず非構造部材の耐震対策や防災機能強化を更に推進していくことが必要。
○老朽改善については、現行計画期間中に耐震化中心の整備を行った影響から、前述のとおり老朽改善整備に著しい遅れが発生。国立大学等においては、今後、老朽化が原因で電気設備やガス設備の故障や事故が増加し、教育研究診療活動の中断や学生等の怪我などが頻発することが危惧。また、経年による施設の機能陳腐化等のため、本来行いたい教育研究活動ができていないという声も多く聞かれる。
※築25年以上で改修を要する老朽施設は全国で893万平方メートル(全保有面積の32.3%)。(平成25年5月1日現在)
○狭隘解消に伴い、施設保有面積が増加している。運営費交付金が逓減する中で、施設保有面積の増に伴う施設の維持管理費用をいかに確保していくかが課題。
○地球環境問題への対応については、世界の大学では意欲的な温室効果ガス削減目標を掲げるなど、ここ数年間で、積極的な取組が拡がっている。国立大学等のキャンパスは、「札幌サステイナビリティ宣言」(平成20年 G8大学サミット)に明記されているように、地球温暖化対策などのモデルとして先導的な役割を果たしていくとともに、それらを通じて社会に貢献していくことが期待されている。
○一方、国立大学法人等は、国立大学改革プランやミッション再定義を踏まえて、グローバル人材の育成やイノベーションの創出、学生の主体的な学びの創出、地域再生・活性化への貢献などの課題に対応していくことが求められており、これに応じた施設面での対応が必要。また、国立大学附属病院については、医療制度の改革を踏まえた高度で質の高い医療等の課題への施設面での対応が必要。
○グローバル化の進展する中、我が国の高等教育の国際競争力を向上させ、世界の有力大学に伍していくことが強く求められている。世界の有力大学では、ここ数年間で、異分野交流によりイノベーションを導くオープンラボ形式の研究施設や、学修意欲を促進するラーニングコモンズなど、新たな施設整備の取組みが盛んに進められている。宿舎施設については、留学生との混住による日常的な交流環境が備わっている。また、アジアの有力大学では、優秀な海外人材を呼び込むなどの国際競争力の強化を意識して、これらの施設整備が行われている。我が国においても、施設面の国際競争力の強化を促進することが急務。
○法人化後、施設整備費補助金を用いない「財源の多様化」が進展し、特に、一定の収入が見込まれる宿舎や福利施設について長期借入金等による整備が増加。それら先行事例を収集し、普及を図っていくことが必要。
○国立大学等施設整備をめぐる財政状況が厳しい中、将来にわたって安定的に整備充実を図っていくため、今後の国立大学法人等施設整備に当たっては、新たなニーズに対して直ちに新しく施設を建て続けていくことから発想を転換し、膨大な既存施設について、最大限有効活用を図りつつ、計画的な改修や更新、修繕により、安全・安心な教育研究環境を確保し、機能強化などの新たなニーズに対応していくことが必要。
○上記「3.」で述べた環境の変化を考慮すれば、次期5か年計画を通じ、
などが必要である。次期5か年計画の基本的な考え方については、以下の方向性により検討していくことが必要。
※1 以下、本中間まとめにおいて「リノベーション」とは、教育研究の活性化を引き起こすため、施設計画・設計上の工夫を行って、新たな施設機能の創出を図る創造的な改修を指す。
○学生や教職員の安全確保はもとより国土強靱化の要請等を踏まえた耐震対策や防災機能強化について一層の推進。
(具体的方策)
○老朽化した膨大な既存施設について、長寿命化により、中長期的な改修・維持管理等に係るトータルコストの縮減や予算の平準化を図るなど、改修を中心とした老朽改善整備の計画的な推進。
(具体的方策)
○地球環境への配慮の観点から、省エネや維持コスト削減に取り組む大学等を重点的に支援。
(具体的方策)
○国立大学改革プランを踏まえ、各大学の強み・特色に応じたキャンパスを創造的に再生していく取組を、着実に推進。
(具体的方策)
○グローバル人材の育成やイノベーションの創出のための、先端的な教育研究の拠点となる施設整備を重点的に推進。
(具体的方策)
<整備例>
-研究者の異分野交流を推進し、イノベーション創出を活性化させるため、研究内容等に応じて、1パブリック交流スペース、2オープンラボ、3施設のフレキシビリティなどを確保した研究施設の整備。
-各大学等が自らの戦略上重要な研究プロジェクトや教育研究組織等のスペースを機動的に確保するため、流動性のある全学共用の総合教育研究棟の整備。
-学生の十分な質を伴った学修時間を確保し、学生が主体的に学び考える能動的学修を推進するため、開放性、透明性を高め、「見る」「見られる」空間にしたラーニングコモンズなどの図書館機能や、多様な学修スペースなど、各大学等の学修支援環境全体を充実。
-日本人学生と外国人留学生の相互理解の深化、国際化を牽引できる人材の育成やリベラルアーツの充実、日本人学生の語学力の向上、さらには外国人研究者の受入促進のため、混住型国際寮や外国人研究者宿泊施設、知的交流の拠点等の受入環境整備。
-学生や研究者等のコミュニケーションや異分野交流を促し、リフレッシュできるとともに、地域における知の拠点・文化的中心としてふさわしい、魅力ある屋内外のパブリックスペースの整備や、一群の施設等の質的向上整備。
○女性研究者や障害のある学生、留学生、外国人研究者、地域住民など多様な利用者への配慮
(具体的方策)
○「(1)国立大学等の機能強化を活性化させる施設整備」を踏まえ、新たな教育研究等を実施し、活性化を引き起こすため、老朽施設のリノベーションを重点的に推進。
(具体的方策)
○個々の附属病院の機能・役割を踏まえた変化に対応する病院施設への取組を着実に推進。
(具体的方策)
<整備例>
-学生・医療従事者に対する医療シミュレータや模擬患者による技能教育・研修に必要となるスペースを整備(教育)
-新しい診断法・治療法の開発や難治性疾患の研究等に必要となるスペースを整備(研究)。
-新たな医療(低侵襲治療や再生医療等)に必要となるスペースを整備(診療)。
-地域医療連携の強化に必要となるスペースを整備(地域貢献・社会貢献)。
-海外に向けた日本発の革新的な医療や医薬品、医療機器の実用化のため、附属病院内に研究スペースを整備(国際化)。
○計画的な施設整備の推進のための、財源の安定的な確保。
(具体的方策)
<例>
-トップマネジメントによる施設マネジメントの促進。
-財源の多様化。
-施設整備の目的を達成するため、建築計画とともに、施設の運用についても体制を整備し、適切に実施していくことを促進。
-機能強化のための施設・スペース等の資源再配分の取組の促進。
-先進的な施設整備に関わるノウハウの蓄積・人材育成。
今後、「4.基本的な考え方-検討の方向性」の具体的方策に関連して、以下の課題について更に検討、分析を進める。
○次期5か年計画における整備目標(整備面積)や、整備による成果目標と成果指標、整備の優先順位等の設定。
○施設マネジメントの取組の促進を含め、システム改革の重点的な推進方策の検討(施設整備補助事業の評価の際に、一定の取組状況を求めることを含む)。
大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室