資料3 前回会議(第3回)における主な意見

前回会議(第3回)における主な意見について、資料4-1「検討の方向性・課題の整理に関する中間まとめ」の構成に沿って整理すると以下のとおり。

■全体に係る意見

〇「4.基本的な考え方-検討の方向性」を考える上で、まず、予算が限られている現実、少子高齢化、環境対策を大きな問題として入れておく必要がある。その上で、国

際化、イノベーションや、教育研究の多様性をいかに保つか、そのための研究や人材育成をどうしていくかを入れた上で、次期5か年では何を重点的に行うか考える必要がある。柱立てとしては、(1)国立大学改革プランへの対応等、(2)耐震対策や防災機能強化、老朽改善は一体的なものとして1つにくくる、(3)既存のインフラを改築するのがベストだが、限られた予算の中で時代に合わせてリノベーションする、(4)21世紀の地球のことを考え環境問題について、4つの柱を立てるべきだと思う。
〇既存のストックを有効利用するときに、単に耐震改修や老朽改修で予算が付くというのではなく、もっと積極的に目的に合うように改修する視点で予算化するために、こういう柱を立てたらどうか。
〇施設の基本的な機能として、耐震化や省エネ、スペースなどは全ての大学に普遍的に必要なものである。一方で、グローバル化やイノベーション創出に向けた施設は、スマートキャンパスも含め、個別の大学が、ミッションや理念を遂行するために施設に求める機能である。その中で、優先順位としては、施設の基本的な機能に財源が行かざるを得ない。但し、多様な財源等で更に進んだ整備ができる場合もあるかもしれない。こうしたことから、今後の議論は、施設の基本的な機能と、大学の役割を果たすための施設としての機能を分けて議論した方が分かり易いのではないか。
〇建築空間が研究活性化に非常に強く影響するというのは非常に興味深い。
〇5か年計画に盛り込むべき観点に「老朽化対策」の回答が一番多い。社会インフラはリニューアルしないとどうしても老朽化していくため、維持費が非常に重要。これまで整備してきた施設を計画的にリニューアルする場合、これだけは維持費として欠かせないというベースラインを作り、その上にこれくらいしていくという観点も必要ではないか。

■「4.基本的な考え方-検討の方向性」に係る意見

1国立大学等の機能強化を活性化させる施設整備

(全般)
〇今までの施設整備の考え方からもう一歩進んで、イノベーションを起こすためにこう整備する、グローバル化に対応してコミュニケーション能力、発信能力を高めるためにこう整備するなど、前向きな形でラボ、交流スペース、フレキシビリティ等のキーワードがでてくると良いと思う。
〇将来的にミッションを再定義したら、施設の使用方法を変えられるようなフレキシビリティを持たせるなど、ロングタームに渡った大学の施設整備の方向性が必要ではないか。
〇パブリックスペースといった、これまで議論の中で出てきたキーワードを盛り込んではどうか。
〇女性の研究者を長い目で育てていく観点から言えば、大学の中、あるいは大学に附属する形で保育所を整備していくことは重要ではないか。
〇築30年、40年の建物では、設備等の状態が全然駄目になることから、メンテナンスをしやすい構造にすることも重要。

(イノベーションを推進する研究施設)
〇オープンラボの先駆けの1つはスタンフォード大学のBIO-X。医学、生物学をメインに、工学、化学、物理、情報工学などの研究者が協力し、新しいイノベーションを生み出すための施設として2003年に建てられた。完全にガラス張りのオープンラボであり、屋外に交流スペースがある。
〇その後、グラッドストーン研究所の他、サンフランシスコのステムセルの研究所や、ロシア、エジンバラ、シンガポール、インド等にオープンラボ形式の研究所が普及。
〇研究者の異分野交流を推進し、その結果イノベーションを推進するための施設のポイントは3つある。
〇1つ目はオープンラボである。その時々のプロジェクトに応じて個々のラボスペースを伸縮できる、研究機器を共有でき研究費の有効活用につながる、教員・研究員同士の交流が自然に促進されるなどのメリットがある。但し、危険物等を扱う実験は従来のクローズドラボで行う必要があるなど、オープンとクローズドのバランスも必要。
〇2つ目は交流スペースである。そこにいるだけで教員・研究員同士の交流が進むように計画することが重要。研究していないときの交流促進、外部への発信なども行える。
〇3つ目はフレキシビリティである。世界の研究所で非常に重視されている。レイアウト変更やドラフト・機器の増設を行えること、研究を継続しながらラボの外からメンテナンスを行えることなどが重要。
〇異分野交流は研究の発展のために重要であるなか、オープンラボは重要。日本でも研究のスピードが速いなか大型機器を急に入れることができる点でも大変良い。また、研究倫理やハラスメントなども交流により大分減ると思うので、素晴らしいシステムだと思う。
〇オープンラボにするため壁を取り除くには、まずトップのリーダーシップが重要。また、自分達のグループだけではできなかったことができるようになるという実体験が生まれると、オープンラボの方が絶対良いと思う人が増えてくる。
〇スペースは研究者の既得権になると良くないので、その割り付けは所長権限で行うことが必要。研究費がなくなると人も少なくなるため、それに見合ったスペース配分になるが、オープンラボであるので、実験機器などは自由に使えることから、また復活するチャンスはある。
〇オープンとクローズのバランスは、現状ではよくても、数年後には研究グループが育って変わる可能性があり、それを吸収できるフレキシビリティが重要。
〇iPS細胞研究所では、同じような研究グループは採用しないように配慮し、競争より協力のマインドで行っているが、いくつか同じ分野のグループもあるため、ある程度独立したスペースは必要と感じている。
〇社会科学系等についても、教員同士の交流があった方が様々なアイディアが生まれるのではないか。また、学生についても、他の研究室の学生と論文等を書いた方が、色々な意味で伸びる人が多いのではないか。
〇予算面で言うと、オープンラボは壁が少ないため、決して建設費は高くはないのではないか。しかし、アメリカと気候が違うので、光熱費が多くかかる課題はある。
〇はこだて未来大学は、情報系の大学であり、オープン性とクローズ性、ある程度のフレキシビリティを兼ね備えているので、機会があれば紹介していただいてはどうか。
〇知財を含めた機密性の点では、iPS細胞研究所の場合、研究室の間ではなく、研究所の中と外でブロックして機密性を確保している。また、企業との共同研究などでは、セキュリティをかける必要がある。

(施設整備に関わるノウハウの蓄積、人材育成)
〇アメリカでは、ラボのオープン性とクローズド性をバランスよく取り入れるための考え方などについて研究をしている人がおり、ノウハウの蓄積があると思う。
〇アメリカには研究所のデザインを請け負うラボデザイナーがいると思う。
〇日本全体として、イノベーティブな、グローバルな人材育成を進めていくときに、教育環境の水準を高めていくための計画や技術的なノウハウをどう作っていくか、それらを担う人材育成も含め、非常に大事だと思う。アメリカに比べ、そのあたりが日本は薄いと思う。
〇施設があればよいというのではなく、それを運営していくためのノウハウ、人材等の蓄積、継承が重要。

2教育研究の活性化を引き起こす施設のリノベーション

〇機能改修によるリノベーションにより、人材育成や研究上のリノベーションを引き起こす空間構成にすることが目標であり、「4.基本的な考え方-検討の方向性」の各柱がそれぞれ関係していることを共通認識すべき。今後の機能改修は環境への効果だけでなく、グローバル人材育成やイノベーション創出にも非常にプラス効果が高くなるようにすべき。
〇iPS細胞研究所の施設は約43億円で新築されたが、すぐ近くの再生医科学研究所の施設の改修では約14億円の費用を要したと聞いているので、どの手法が一番本当に良いやり方かというと、新築は決して高くないのではないかと思う。

3地球環境に配慮したキャンパス形成

〇地球環境への配慮と省エネや維持コスト削減の点に関して、東工大の環境エネルギーイノベーション棟は、自前で電力を作って、将来的には地域にも供給していく構想がある。国の予算が厳しいなか、こういった稼げるキャンパスという発想を他のキャンパスでも考えられないか。
〇そのような展開はこれから非常に起こってくるのではないか。

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