資料1 前回会議(第3回)議事要旨(案)

日時

平成26年5月15日(木曜日)14時30分から16時30分

場所

文部科学省 東館3F1特別会議室

出席者

(協力者)小林英嗣、杉山武彦(主査)、土井美和子、中西茂、中西友子、平野俊夫、古山正雄、佛淵孝夫、本間さと、三島良直、山重慎二、山田礼子(敬称略)
(発表有識者)山中伸弥京都大学iPS細胞研究所長
(事務局)関文教施設企画部長、新保技術参事官、平井計画課長、堀田計画課企画官、森計画課整備計画室長、都外川計画課整備計画室長補佐、山川参事官、生川会計課長、黒澤専門教育課長補佐、瀬戸学術機関課学術研究調整官

議事要旨

■事務局から資料2に基づき、前回会議の主な意見について、資料3に基づき、文部科学省における国立大学法人等施設整備に係る取組について説明があった。

<主な意見>(○:協力者、発表有識者、●:事務局)
○資料2の5ページ目、「女性サロンの整備や」というところについて、1つ、メンタルヘルスなどは別に女性研究者には限らないので、ここで「女性研究者」と言う必要はないのではないか。2つ目は、「女性サロン」とは、何をイメージしているのかよく分からない。例えば授乳ができる場所など、明確に示した方が良い。

(1)検討の方向性・課題の整理

■事務局から資料4に基づき、国立大学法人等の長を対象とした施設整備に関する意識調査結果について説明があった。

<主な意見>(○:協力者、発表有識者、●:事務局)
○留学生宿舎がある大学の半分以上は不満ということだが、そもそも絶対量が少ないというような記述がある。その他に不満の要因というのはこの調査から分かるか。
●その他の不満の要因は、この調査上ではまだ明らかにできていない。
●「今後、中長期的に重点を置きたい施設整備等について」というところでは、回答の例の一番上に、日本人と留学生・研究者等を結び付ける共修環境の提供とあるが、これからは留学生の宿舎だけでなく、こういったところも求められているという声は1つの例としてある。
○アンケート調査で、「女性研究者の出産、育児と就業の両立に必要な教育研究支援環境」について、保有なしや「不満」、「やや不満」という回答が多い項目になっている。子育てをしながら研究を続けるというのは、かなり大変。特に大学院時代に子どもをもつと、保育所は働いていることを前提に受け入れているため、研究をしている段階で受け入れてくれるような保育所は少ないということも考えられる。さらに、保育所が都市部においては不足しているため、研究者として自立していても、いい保育所を見つけられないということもあるのではないか。女性の研究者を長い目で育てていく観点から言えば、大学の中、あるいは大学に附属する形で保育所を整備していくことは重要ではないか。文科省で保育施設の需要等について何か調査結果などはあるか。
●様々な機関において取りまとめがなされているが、文部科学省で把握している、国立大学における保育施設の設置状況等によると、平成26年2月現在で保育施設を保有している大学は50大学ある。全部の国立大学数が86あるので、設置割合は58.1%である。取組についても、自治体との連携により、学内だけではなく、外部の人も受け入れる保育施設を設置する例もあるなど様々な取組がある。しかし、取組の全体像に関しては、まだ十分把握し切れていない。
○今後5か年に盛り込むべき観点に、「老朽化対策」の回答が一番多い。社会インフラはリニューアルしないとどうしても老朽化していくため、維持費が非常に重要。これまで整備してきた施設を計画的にリニューアルする場合、これだけは維持費として欠かせないというベースラインを作り、その上にこれくらいしていくという観点も必要ではないか。
○これから何年後にどういうふうに維持していくのかといった計画はあるのか。
●既存ストックを維持するために必要なコストというのは、ストックの量を基に、仮定を置いて試算することはこれまでも試みてきている。今の5か年計画においても、試算を元に整備目標をつくっている。

■事務局から資料5-1~5-2に基づき、「検討の方向性・課題の整理」(取りまとめイメージ)について説明があった。

※山中所長到着により、議論を一時中断し、山中所長のプレゼンテーションを行った。

(2)イノベーションの創出を活性化させる研究施設等について

■山中伸弥京都大学iPS研究所長から資料6に基づき発表(発表後、質疑応答)。
<山中伸弥京都大学iPS研究所長発表内容>
○私が最初にアメリカへ行ったのは1993年。サンフランシスコにあるグラッドストーン研究所で、3年間、博士研究員を行った。当時、このグラッドストーン研究所は、築100年以上の古いレンガ造りの建物の中にあった。日本でもどこにでもあるような古い施設で、特にすごいということはなかった。グラッドストーン研究所だけでなくハーバード大学もスタンフォード大学なども、当時は日本と大きく変わらなかった。むしろ日本より古い設備を大事に使っているという印象であった。1990年代中頃の研究施設は、日本もアメリカもそんなに変わらなかった。
○2007年から再びグラッドストーンに行くと、余りの変化に驚愕した。まず、場所が築100年の古い建物から、最先端の立派な建物に変わっていた。建物以外の様々な研究支援体制も大きく変わっていて非常に驚いたが、建物は外がきれいなだけではなく、その中の構造に非常に驚いた。建物の端から端まで100メートル以上あるが、それが1つの研究室で、壁がほとんどない。ベンチがずらっと並んでいて、1フロア当たり6、7つくらいの研究グループが1つの研究室をシェアする。ベンチの横に今誰が使っているかという札を張ってあるが、そのラボが研究費を多く獲得して人が増えると、スペースが拡大する。プロジェクトが終了して小さくなるとまた収縮するといったオープンラボの形式をとっていた。
○当時も今も日本のほとんどはそうであるが、壁で部屋を小さく区切って、1つの教授の研究室は1つの閉鎖空間を使っており、一国一城の主のような感じである。教授室も奥まったところにあり、研究室が違うと横にいるのにめったに顔を合わせることがなかったが、建物の構造上、顔を合わせにくくなっていると言える。また、A研究室で1億円くらいの設備を買ったところ、実は横のB研究室にも1年前から同じ設備があってほこりをかぶっているということもよく起こっているのではないかと思う。
 グラッドストーンでは、壁をなくして複数の研究室が1つの研究室を使う。そして、居室も教員の部屋がずらっと並んでおり、トイレに行こうと思うと、ほかの教員の部屋の前を通らないと行けないということで、自然と教員同士も会話が生まれ、1日に何回も会うという建物の構造である。毎月一度グラッドストーンに行っているが、数日滞在するだけで日本の残りの1か月に得られる以上の情報を得ることができる。
 また、研究室内に同じ設備が複数あるということも起こり得ない。実験機器等をシェアすることができ、研究費の有効利用にもつながる。さらに研究室を超えた研究員同士の交流も自然に促進されている。
○オープンラボの先駆けの1つは、恐らくスタンフォード大学のBIO-Xであると思う。1998年、スタンフォードの教授Spudich博士が提唱して、最初は草の根運動的にゆっくり始められたものであった。メーンは医学、生物学研究だが、この医学、生物学研究を進めていくためには、工学や化学、物理、そしてコンピューターサイエンスといった、分野を超えた研究者が協力していかない限り、従来の壁は超えられない。新しいイノベーションを生み出すためには、異分野の研究者の協力が絶対必要だということで、スタンフォード大学の様々な学部の研究者に声をかけて、共同研究の輪を広げようということで始められたのがBIO-Xである。彼らはまず、イノベーションを導く異分野融合を促進するような建物を造ろうということで、建物のデザインを始め、様々な篤志家に募って寄附を集めた。その結果、2003年にBIO-Xの研究拠点として完成したのが、James H.Clark Centerである。James H.Clark氏の寄附でできた研究所であり、オープンラボになっている。
 また、単にオープンラボというだけではなく、中庭が交流スペースになっている。屋根はないが、スタンフォードはめったに雨が降らないため、昼になると、みんなここで御飯を食べたりする。中庭からは全部の研究室が見えるというガラス張りになっている。
○2003年の段階では、アメリカにおいてもこういう取組は非常に斬新であった。この効果があっという間に広がり、グラッドストーンやスタンフォードの別の建物、UCSFの新しいシステムセル研究所、さらに、ロシア、エジンバラ、シンガポール、インド等に、このオープンラボ形式の研究所が普及している。
○ラボがオープンであるだけではなく、研究していないときの交流スペースもコラボレーションを促進するということで、いろいろな工夫がされている。ハンコック・センターの場合は中庭がその役割をしている。多くの研究所では玄関ホールを吹き抜けにして、そこで頻繁に様々な交流をする。研究所にいるだけで研究者同士の交流が進むという建物の構造になっている。
○それからもう1つ、今の世界の研究所で非常に重視されているのは、フレキシビリティーのある構造である。例えばレイアウトの変更。ラボであったところを居室にする、居室をまたラボに戻すといったことや、ドラフトや安全キャビネットなどの場所もできるだけ自由に変えられるような工夫がされている。また、設備の増設や電源のメンテナンスの際に、その都度ラボの中に入ると研究の支障になるため、ラボの外から天井裏などに入ることができるようになっている。このように、研究を継続しながら、メンテナンスもできることが重要である。今の欧米の新しい研究施設の多くがこういった形になっていると思う。
○2010年にiPS細胞研究所の研究棟が完成した。できるだけグラッドストーンに近い構造にしたかったため、グラッドストーンまで京都大学施設部の数名と私と一緒に行き、現地の施設担当者とディスカッションをした。その結果、グラッドストーンほどは横に大きくないが、オープンラボになっている。また、螺旋階段があり上下もできるだけオープンにしている。また、玄関ホールは1階から2階を吹抜にし、宴会やサイエンスカフェ、音楽の演奏会などを開催する交流の場として利用している。
○日本の国立大学の多くの場合、30年前、40年前の建物を耐震改修して使っていることが多いのではないかと思う。外観はきれいになっても、中の構造はそんなに変えられないため、オープンラボを作ることは難しい。30年前の建物のコンセプトがそのまま継承されているため、改修をした後も20年から30年は、古いコンセプトのままの建物で、多くの研究者は研究を行っていると思う。異分野交流をしようと思っても、場所がそうなっていないため、限界があると感じる。京都大学にも、時には命の危険を感じるような古い給排水管の設備などがいまだにたくさんあり、非常に今後改修が必要な建物が残っているというのも国立大学の現状だと思う。
○1990年頃は、日本もアメリカも研究環境はそんなに変わらないと思っていたが、今では、アメリカだけではなく、欧米やアジアの幾つかの国と比べても、日本の研究施設のコンセプトや建物の構造において、数十年の隔たりを感じる。
○研究者異分野交流を推進し、その結果、イノベーションを推進するためには、3つのポイントがある。(1)オープンラボ。全てがオープンラボというわけにはいかないが、基本はオープンラボである。オープンラボにはいいところも非常に多いが、例えば細胞の培養や、危険物を扱うような実験は従来のクローズドラボで行う必要がある。そのためオープンラボとクローズドラボをどう組み合わせるかということも必要である。(2)交流スペース。ラボ以外の交流スペースも極めて大切であると思う。(3)フレキシビリティー。研究を継続しながら配管などのメンテナンスを行えるようにすることが重要。また研究の内容が変わったときにすぐに壁の位置や設備の場所、ドラフトの場所等を短時間で変えられるような構造にすると、今後30年、40年、研究内容が変わっても柔軟に対応できると考える。

<質疑応答>(○:協力者、発表有識者、●:事務局)
○日本でも研究のスピードが速く、研究内容の入れ替わりも速いため、従来型の個室では対応できない。大きな機械が急に入るといったときにオープンラボは大変よいという思いをしたことがある。また、昨今問題になっている研究倫理やハラスメントに対しても、学生や研究者が交流することで、そういうことが減ると思う。
異分野交流というのが研究の発展に重要だと思うが、オープンラボの場合、例えば研究の機密性や特許の問題もあるため、年配の先生方などは、躊躇することがあると思うが、そういった問題点はないのか。
○オープンは研究室の壁がないだけではなく、情報もできるだけシェアしようとしているので、知財を含めた機密性というのはすごく気を遣う。私たちは、研究室の間ではなく、研究所の中と外で機密性を確保している。研究所の玄関ホールまでは誰でも入れるが、その先のエレベーターホールから先はカードがないと入れないようになっている。そこから先がセキュリティゾーンとなっている。研究室同士の中はそういったセキュリティはない。そういうことができるのは、iPS細胞研究所が新しい研究所だったので、研究者を採用する際に、交流があっても衝突が起こらないような選び方をしているためできた。しかし、既存の研究所などに応用する場合は、オープンとクローズのバランスをとっていかないといけないと思う。全てがオープンだったら何でもいいかというと、そういうわけでは無いと思う。あとは、企業との共同研究などで、企業の人が入ってくる場合は、企業の方はここまでですというように、セキュリティをかける必要はある。
○実際に研究している人の感想を聞くと、8割くらいの人はオープンスペースがいいと言うと思うが、1割~2割の人はオープンスペースが合わないと言う。しょっちゅう見られていると落ち着かない、うるさいということがあるためである。アメリカでもそういう人はいるため、クローズの場所も必要だと思う。
○オープンというのは、研究をしているかどうかが必ずわかるため、可視性を高めるという点も非常に効果はあると思う。
○オープンラボでの融合が非常に重要だということは、日本の研究でも言われているが、日本の研究者のマインドがオープンでないため、これをどうやったら打ち破れるかという話が非常に重要になっている。オープンラボで異分野の研究者同士が交流するときに、アメリカと日本と比較して、研究者のマインドの違いが影響しているようなことはあるか。
○アメリカにも日本と同じく、一国一城でいたいという人はいるが、それを解決するためには、2つのことが必要。1つはリーダーシップ。アメリカでも、壁を高くして外が見えないようにする人もいたが、所長の権限で、壁は取り払って絶対見えるようにするというように、首尾一貫した指導をグラッドストーンの研究者はやっている。iPS細胞研究所でも、居室を全部ガラス張りにして中が見えるようにしているが、ブラインドを閉めてしまう人もいっぱいいる。それでも、開けるようにしつこいぐらいに言う必要はある。何も言わないと従来の方向に戻ってしまうので、最初は大変。
 もう1つは、オープンラボで研究していると、実際にいろいろな交流が芽生えてきて、自分たちのグループだけではできなかったことができるようになるという実体験が2年、3年すると生まれてくる。そうなってくると、オープンラボが絶対いいと思う人がどんどん増えてくる。アメリカではそう思う人の方が多い。
 また、研究の内容を考えても必要性は高まっている。今の私たちの分野で言っても、バイオ室でiPS細胞だけ作っていたら済むという時代は終わり、ゲノムの解析を行う。そのデータの解析は自分たちだけではやることができないため、コンピューターサイエンスの人たちと密接に交流しないと世界で負けてしまう。そういったことからも、必要性はどんどん高まっていると思う。
○建築空間が研究活性化に非常に強く影響するというのは非常に興味深い。
○スペースの配分は所長権限を強く持っていくというのが運用上のコンセプトになるのか。
○それは必要。スペースは既得権のように、一旦大きくなったら、もう絶対に手放さないとなってしまうと良くない。研究費がなくなると人も少なくなるため、それに見合ったスペースになるが、オープンラボであるので、実験機械などは自由に使えることから、また復活するチャンスはある。
○オープンラボの場合、研究成果の所属はどのグループのものかはっきりさせるのか。
○iPS細胞研究所では同じようなグループを採用しないように配慮し、競争より協力のマインドで行っているが、幾つか同じ分野のグループもあるため、少し独立した場所も必要かと感じている。
○オープン性とクローズド性をバランスよくやるための建物の建て方のガイドラインはあるのか。
○アメリカの場合は、そういうことを研究している人がおり、ノウハウが蓄積されていると思う。なので、研究者はそういうことを考えなくてもいい。そのあたりが日本の課題だと思う。オープンラボとクローズドラボのバランスは、現状はよくても、3年後には変わってしまうことがある。若いPIを雇った場合、それぞれのグループは小さいため、オープンラボのほうが絶対うまくいくと思う。しかし、いくつかのグループが育つと、人数が増えたり、企業も入ってきたりするので、それを吸収できる建物のフレキシビリティーが重要。
○よりよいものを作るためには、予算の規模に限らず、施設をつくる際に研究者の要望を聞きながら設計を行う、研究者以外のスタッフの役割はすごく大きいと思う。
○アメリカでは研究所のデザインを請け負うラボデザイナーがいると思う。予算面で言うと、オープンラボは壁が少ないため、決して建設費は高くはないのではないか。しかし、アメリカと気候が違うので、光熱費が多くかかる課題はある。
○iPS細胞研究所の施設は約43億円で新築されたが、すぐ近くの再生医科学研究所の施設の改修では約14億円の費用を要したと聞いているので、どの手法が一番本当に良いやり方かというと、新築は決して高くないのではないかと思う。
○前にいた築30年、40年の建物では、配管やエアコン等の状態がとても悪かった。しかし、同じ30年、40年でも、メンテナンスを適切に行っていたら、もっといい状態で維持することができたのではないかと思う。研究をしながらメンテナンスができるような構造になっていることが重要。
○理工系に限らず、様々な分野でイノベーションは必要と考えるが、社会科学系、文科系の研究者にとっての研究施設についても、今日の話は基本としては共通するものと考えてよろしいのか。
○社会学系等についても、教員同士の交流はあった方が様々なアイデアが出るのではないかと思う。学生さんについても、他の研究室の学生と交流しながら論文等を書いた方が、いろいろな意味で伸びる人が多いのではないか。

※山中所長のプレゼンテーションを踏まえ、再び「検討の方向性・課題の整理」について議論。
<主な意見>(○:協力者、発表有識者、●:事務局)
○これまでの5年間で最も遅れていたのが老朽化の設備の改善ということが何回か述べられているが、これだけ遅れていると、同様に次の5年も遅れてしまい、徐々に老朽化の状況が累積されることが危惧される。その原因と次の5年に対してどういう対策をしたらよいのか。
●新しい組織ができるなどして、建物を造らなければいけないといったときに、老朽改善と比較して、老朽施設では直ちに大きな事故が起きていないということから、新しいニーズへの対応が優先されてきた面がある。
●5か年の間に老朽改善に比べ狭隘解消がかなり進んでいる点について、新営建物ができることによっての狭隘解消になるが、その原資が必ずしも国費だけではなく、多様な財源を使うことがある。特に寄附建物の場合だと、古い建物を改修する場合に比べて、新しい建物を建てることに関しては寄附がつきやすい。また、目標値が、老朽改善は400万平方メートルに対して、狭隘解消は80万平方メートルであることから、一つ大型の寄附がつくと大きく進捗することになる。予算がない中での整備のため、全体的に進捗が遅れているというのが事実であるが、新営の建物については、単に優先されてきたのではなく、いろいろな要素がほかに加わっている。
○「4.基本的な考え方-検討の方向性」を考える上で、まず、予算が限られているという現実、少子高齢化、環境問題を大きな問題として入れておく必要がる。その上で、国際化、イノベーション、教育研究の多様性をいかに保つか、そのための研究や人材育成をどうしていくかを入れた上で、次期5か年には何を重点的にするかということを考える必要がある。柱立てとしては、(1)国立大学改革プランへの対応等、(2)耐震対策や防災機能強化、老朽改善は一体的なものとして1つにくくる、(3)既存のインフラを改築するのがベストだが、限られた予算の中で時代に合わせてリノベーションする、(4)21世紀の地球のことを考え環境問題について、柱を立てるべきだと思う。
○研究者以外の、研究施設をデザインするスタッフや、ノウハウを蓄積していくことは重要だと思う。5か年における施設の在り方を検討しているが、同じ文教施設部で考えると、小学校、中学校の初等教育については、どのような空間の組み立て方をすると、どういう教育的成果があるのかというノウハウを積み重ねている。それによって様々なタイプの小学校、中学校ができている。そこに、地球環境への配慮についても技術的なノウハウもそれに加わっている。
 一方、大学施設においては、そういうノウハウの蓄積はないと思う。実際に各大学で施設を整備するときは、各大学が持っているノウハウの蓄積や、各大学の先生方の技術的なノウハウでそれが実現されていく形が多いのではないか。日本全体として、イノベーティブな、グローバルな人材育成を進めていくときに、教育環境の水準を高めていくための計画や技術的なノウハウをどう作っていくか、それらを担う人材育成も含め、非常に大事だと思う。アメリカに比べ、そのあたりが日本は薄いと思う。
○機能改修によるリノベーションにより、人材育成や研究上のリノベーションを引き起こす空間構成にすることが目標であり、「4.基本的な考え方-検討の方向性」の各柱がそれぞれ関係していることを共通認識すべき。今後の機能改修は環境への効果だけでなく、グローバル人材育成やイノベーション創出にも非常にプラス効果が高くなるようにすべき。
○既存のストックを有効利用するときに、単に耐震改修や老朽改修だから予算が付くというのではなくて、もっと積極的に目的に合うように改修する視点で予算化するという、柱を立てたらどうか。既存のものをいかに有効利用するかという発想が重要。
○今までの議論の中で出てきたパブリックスペースや交流スペース、オープン性といったキーワードがここに反映されていない。オープン性を高めることも大事だが、何年かたてば研究内容など中身は変わっていくので、フレキシビリティーがあり、将来的にミッションを再定義したら、施設の使用方法を変えられるようなことが必要ではないか。5年間計画を立てたから、また次の5年間考えればいいというわけにはいかないので、長期にわたって、大学の施設整備をどういう方向に持っていくのか、ガイドラインのようなものが必要ではないか。
施設があればいいというだけではなく、それを運営していくためのノウハウの継承についても考えていく必要がある。今までの施設整備の考え方からもう一歩進んで、イノベーションを起こすためにこう整備する、グローバル化に対応してコミュニケーション能力、発信能力を高めるためにこう整備するなど、前向きな形でラボ、交流スペース、フレキシビリティー等のキーワードがでてくると良いと思う。
●単に長寿命化とか老朽改善だけで予算が付くということではなく、老朽施設でなくても目的に合うように改修する視点での予算化をすべきということについては御指摘のとおり。政府全体で国土強靱化や長寿命化ということを進めているため、ここで触れている。そもそも教育施設、教育研究施設であるため、効果や目的を強く打ち出すという点は御指摘のとおりだと思うので再検討していきたい。
 また、フレキシビリティーを持たせるという点や、個々の施設の設計の仕方については、どう盛り込むか検討していく。
○地球環境への配慮と省エネや維持コスト削減の点に関して、東工大の環境エネルギーイノベーション棟は、自前で電力を作って、将来的には地域にも供給していく構想がある。国の予算が厳しい中、こういった稼げるキャンパスという発想を他のキャンパスでも考えられないか。
○スマートキャンパスの構想を他大学と協働して広めていこうという動きはある。地域や自治体とも協力しながら他の大学も進めていくという意味で、そのような展開は非常にこれから起こってくるのではないか。
○施設の基本的な機能として、耐震化や省エネ、スペースなどは全ての大学に普遍的に必要なものである。一方で、グローバル化やイノベーション創出に向けた施設は、スマートキャンパスも含め、個別の大学が、ミッションや理念を遂行するために施設に求める機能である。その中で、優先順位としては、施設の基本的な機能に財源が行かざるを得ない。但し、多様な財源等で更に進んだ整備ができる場合もあるかもしれない。こうしたことから、今後の議論は、施設の基本的な機能と、大学の役割を果たすための施設としての機能を分けて議論した方が分かり易いのではないか。
○大学の研究を支える施設とは、いわゆるラボだけなく、資料や標本の保管、ワークショップを実施する場、さらに農学部で言えば牧場、植物園、動物を飼う施設から色々あるが、今議論されている施設に含まれているのか。
●今回扱っている国立大学施設の中には、ラボだけではなくて、そのような施設全て含めて検討している。
○はこだて未来大学は、情報系の大学であり、オープン性とクローズ性、ある程度のフレキシビリティーを兼ね備えているので、機会があれば紹介していただいてはどうか。

(3)その他

■事務局から、資料7に基づき当面のスケジュールについて説明があった。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室

(大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室)