第8章 設備設計

第1 基本的事項

1 安全性

(1) 多様な学習及び生活の諸活動等において幼児児童生徒の安全及び健康に支障を生じることのないよう十分な防災性,防犯性など安全性を考慮して計画し,設計することが重要である。
複数の障害に対応した施設とする場合は,各々の障害の特性等に留意し,施設設備の安全性及び機能性等を十分に考慮して計画し,設計することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:車いすや補助用具等の多様な移動方法で活動する幼児児童生徒の動きを妨げることのないよう,配管,配線とそのカバー,設備の中継機器等を計画し,設計することが重要である。
(2) 幼児児童生徒の誤っての接触や,車いす,遊具等の衝突などによる事故等の防止に十分留意して,機器,操作装置等の設置位置,高さ,仕様等を計画することが重要である。
(3) 機器等は十分堅牢なものとなるよう計画し,設計することが重要である。また,機器等の設置及び配管は,地震時等においても事故や落下・転倒等による危険の生じることのないよう計画し,設計することが重要である。
(4) 誤動作の防止など安全面に十分配慮して,機器等の電源スイッチ等の配置などを工夫することが重要である。

2 信頼性

(1) 安定した確実な性能の機器を選定し,システムを計画し,設計することが重要である。
(2) 構造体の変形に柔軟に追従できるよう配管,配線等を設計することが重要である。

3 機能性

(1) 幼児児童生徒の障害の状態や特性等を考慮しつつ,学習,生活等において要求される各室・空間の機能及び環境を確保し,維持することができるよう平面計画,各室計画等と総合的に計画し,設計することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:幼児児童生徒が利用する際に教員等が介助しやすいよう,仕様,設置位置等に十分留意して計画し,設計することが重要である
【病弱に対応した施設】:幼児児童生徒の病気の種類等により必要な環境条件が異なることに十分留意して計画し,設計することが重要である。
(2) 将来の学習内容・形態等の変化,情報通信機器の導入及び機器の進展等に伴い必要とされる機能の変化等に柔軟に対応できるよう,計画し,設計することが望ましい。
(3) 環境教育に直接寄与する設備・計測機器等の設置を計画することも有効である。
(4) 災害時には地域の避難所としての役割も果たすことから,必要な情報通信,電気,ガス,給排水等の機能を可能な限り保持できるよう,貯水槽,浄水機能を有するプール,自家発電設備,避難者のための便所など,代替手段も含めた対策を講じることが重要である。

4 快適性

(1) 自然環境を最大限活用しつつ,光,空気,熱,音等の環境条件を良好な状態に維持できるよう計画し,設計することが重要である。
【病弱に対応した施設】:幼児児童生徒の病気の種類等の状態に十分留意して計画し,設計することが重要である。
(2) 幼児児童生徒の障害の状態や特性等を考慮しつつ,各室・空間の利用内容,利用状況等に応じ,適切な環境が得られるように計画し,設計することが重要である。

5 利便性

(1) 各室・空間の利用状況等に応じ利用者が各設備を適宜運転し,停止し,又は調節することができるよう操作性の確保や系統の設定などに留意して計画し,設計することが重要である。
【視覚障害に対応した施設】:必要に応じ,幼児児童生徒が触覚を利用して操作装置の位置や種類を識別し,安全に操作できるような仕様とすることが重要である。また,各種設備の運転,停止等の状況を聴覚や触覚で確認できるように計画し,設計することも有効である。
【聴覚障害に対応した施設】:各種設備の運転,停止等の状況を視覚で確認できるように計画し,設計することも有効である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:操作時の姿勢や上肢・下肢の運動・動作の能力等に配慮して計画し,設計することが重要である。
(2) 室・空間を分割して利用することを計画する場合は,分割した各空間において必要となる設備を確保し,適宜操作することができるように設計することが重要である。
(3) 構造体や内部区画及び仕上げの形式に関わらず設備機器の更新・増設等に柔軟に対応できるようにするとともに,必要とする維持管理を適切に行うことができるよう,維持管理の方法について十分検討して計画し,設計することが重要である。

6 効率性

(1) 各室・空間の利用内容,利用状況等に応じエネルギーを効率的かつ適切に供給できるよう平面計画及び各室計画と併せて総合的に検討して計画し,設計することが重要である。その際,各設備を各棟,各室ごとに個別に制御できるようなシステムを計画し,設計することが望ましい。
(2) 設備機器・システムは,環境負荷の低減に配慮するとともに,初期投資時に必要な費用,維持管理に必要な費用等を総合的に考慮した上で計画し,設計することが望ましい。
(3) 太陽熱給湯や太陽光発電,風力発電等を利用した設備の導入については,導入規模,維持管理方法,休暇期間中の対応,効果等を十分考慮して計画することが望ましい。
(4) 節水型機器の導入,雨水や中水の便所洗浄水や校庭散水への利用,排水再利用など水資源を無駄なく有効に活用する工夫をすることが望ましい。

第2 照明設備

1 共通事項

(1) 照明器具は,障害の特性等を考慮しつつ,当該空間の利用内容,利用時間帯等に応じ必要となる照度を確保し,見やすくまぶしさのない良質な光の得られるものを選定し,設計することが重要である。
情緒障害や自閉症,ADHD等の障害を併せ有する幼児児童生徒への対応として,蛍光灯のちらつきに対する過敏に配慮し,可能な限り自然光や白熱灯を選定することが望ましい。
【視覚障害に対応した施設】:弱視児にとって適切な照度を考慮して調光等の可能な仕様とするとともに,柔らかな光が得られるよう照明の方式等を工夫して設計することが重要である。
【病弱に対応した施設】:調光等の可能な仕様,配置等とするとともに,病気の種類に応じ,紫外線を制御する照明の導入を検討することが重要である。
(2) 照明器具の配列は,当該空間の面積,形状等に応じ,活動空間の各部における明るさの分布が均一となるよう,また,まぶしすぎないよう設定することが重要である。
(3) 照明器具の設置位置は,必要な維持管理等の方法,他の活動空間や周辺地域等に与える影響等について十分検討し,適切に決定することが重要である。特に,夜間照明については,光が周辺へ支障を及ぼすことのないよう位置及び向きに十分留意して設計することが重要である。
(4) 照明の配線系統は,適宜各部の照明の点滅等を行うことができるよう照明器具の配列等に応じ適切に計画し,設計することが重要である。
(5) 照明の点滅装置は,操作しやすい仕様のものを選定し,適切な位置に配置することが重要である。また,省エネルギーの観点からは,センサー等を利用した方式を選定することも有効である。
情緒障害や自閉症,ADHD等の障害を併せ有する幼児児童生徒への対応として,幼児児童生徒が容易に操作できない位置に点灯スイッチを配置するなどの工夫をすることも有効である。
(6) 変化のある空間づくりのために,均一な照度を確保するための全体照明とは別に,照度に変化を持たせた雰囲気づくりのための照明計画を行うことも有効である。

2 室内照明設備

(1) 各室・空間の照明の方式,器具の種類,配列及び設置位置は,障害の特性等を考慮しつつ,当該各室・空間の面積,形状等に応じ適切に設定し,設計することが重要である。
【視覚障害に対応した施設】:各室・空間の照明の方式,器具の種類,配列及び設置位置は,弱視児にとって必要かつ十分な水平面及び鉛直面の照度を確保できるよう設計することが重要である。
(2) 授業時などにおいて幼児児童生徒が注視する面及び視野に入る部分に設置する照明設備は,光源が直接幼児児童生徒の目に入らないよう照明の方式を適切に設定し,向きに留意して適切な位置に配置することが重要である。
(3) コンピュータや視聴覚機器を設置する室・空間の照明設備は,コンピュータや視聴覚教育メディアのディスプレイ画面等への光源の映り込みを防止できるよう照明の方法及び照明器具の種類を適切に設定し,ディスプレイ等の機器の配置に応じ適切に配列することが重要である。
(4) 視聴覚教室等の視聴覚教育メディアを頻繁に活用する室・空間の照明設備は,必要に応じ,室内各部の照度を調節できるよう設計することが望ましい。
【聴覚障害に対応した施設】:幼児児童生徒から教員等の口元や表情,手指の動き等が明瞭に見えるようスポットライト等を計画することも有効である。
(5) 照明設備は落下防止措置を行うとともに,必要に応じ,破損防止の措置を講じることが重要である。特に,運動を行う室・空間の照明設備は,破損・落下防止の措置を講じるとともに,活動の支障とならない位置に堅固に取り付けることが重要である。
(6) 作業学習関係諸室等の照明設備は,材料運搬に伴う破損防止に配慮した仕様等とすることが重要である。また,機械等を操作する部分に必要な照度を確保できるような配置,方式等とすることが重要である。
(7) 災害時の利用も踏まえ,自家発電設備で発電した電気で屋内照明を点灯させるために配線を工夫することや,可搬式発電機の取付口を設けておくことが望ましい。また,省エネ型の照明器具は非常時に電力供給量が不足する場合にも有効である。
(8) 避難所となる場合には,居住スペースとなる部分について,夜間に明るすぎて避難者が眠れないことがないよう,調光機能付きの照明とすることも有効である。

3 屋外照明設備

(1) 外気に直接露出する機器等は,当該地域の気候的状況等を勘案し,十分な耐候性を備えるよう計画し,設計することが重要である。
(2) 照明機器は,必要に応じ,破損防止の措置を講じるとともに,堅固に取り付けることが重要である。また,周辺環境への影響を考慮するとともに,必要に応じ,非拡散性の光源のもので計画することが重要である。
(3) 防犯や防災を目的として校地周辺部,建物周囲等を照明し,又は学校施設のシンボル性の強調等を目的として常夜灯を設けたり,建物,前庭部等をライトアップすることも有効である。
(4) 避難路については,夜間等に停電した場合においても安全に避難できるよう照明等を計画することが望ましい。

第3 電力設備

1 コンセント

(1) 各室・空間におけるコンセントの種類,規格,数等は,当該各室・空間における電力を使用する教育機器等の種類,数,使用電力量等を適切に把握するとともに,将来における各室・空間の使用方法等の変更にも対応できるよう設計することが重要である。
(2) 各室・空間におけるコンセントの設置は,使いやすい位置に,事故防止に配慮した安全な仕様で設計することが重要である。なお,教育機器や情報機器などの多様な利用方法等に応じ,天吊り型のコンセントを計画することも有効である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:電動車いすや補助用具等を使用しての移動に配慮しつつ,使いやすい位置に設計することが重要である。
(3) フロアコンセントを設ける場合は,清掃等の維持管理に留意し,位置,設置方法等を十分検討して設計することが重要である。
(4) 電圧の高いコンセントには,事故の発生を防止するための十分な措置を講じることが重要である。
(5) 安全性を考慮し,特に湿潤な部分や実験机・台などに設けるコンセントには,漏電遮断器を介して電気を供給するように設計することが望ましい。
(6) 作業学習関係諸室等には,機械等の使用状況を表示できるような仕様の配電盤を設置することが望ましい。

2 受変電設備,自家発電設備等

(1) 受変電設備,自家発電設備の容量は,電気を必要とする教育機器,設備等を適切に把握し,電力の需要率を十分検討し,必要な数値を設定して設計することが重要である。なお,将来の電力需要の増大に伴う受変電設備の増設に配慮した計画とすることが望ましい。
(2) 災害による停電時にも医療器具などに電気が使えるよう,安定的な電力の供給が可能な自家発電設備等を整備することが重要である。
(3) 電力使用量を常に把握するため,電力値を計測できるよう設計することも有効である。
(4) 受変電設備,自家発電設備は,津波,洪水,高潮等の想定される災害に対して安全な場所に設置することが重要である。
(5) 受変電設備,自家発電設備の周囲は,必要な高さの施錠可能な防護柵を設けるなどの安全対策を講ずることが重要である。
(6) 太陽光発電設備を整備する場合には,停電時においても自立運転でき,充電した電気を夜間にも使えるよう蓄電機能を備えておくことが望ましい。
(7) 風の強い地域では,風力発電の導入について検討することが望ましい。
(8) 配線の系統は,用途等に応じ適切に区分して設計することが望ましい。

3 充電設備 

充電設備を設ける場合は,電動車いすなどの充電を必要とする機器等の利用状況を的確に把握し,適切な容量のものを,利用・管理しやすい位置に,感電等による事故防止に十分留意して設計することが重要である。

第4 情報通信設備

1 共通事項

(1) 映像系,音声系,情報系の設備は,幼児児童生徒の障害の特性に配慮し,組み合わせによる利用も考慮しつつ,利用目的・内容に応じ,適切なシステムを計画し,設計することが重要である。その際,学習活動における積極的な活用に加え,障害の特性等に応じた情報保障を図るよう機能性を考慮して計画し,設計することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:病院等他の施設での学習において視聴覚設備を効果的に利用できるようなシステムを計画し,設計することが望ましい。
(2) 将来の機器等の発達に柔軟に対応できるようなシステムを検討し,設計することが望ましい。

2 映像系設備

(1) 共聴アンテナによりテレビ放送等の受信を行う場合には,電波の増幅,各室への配線経路等に十分留意することが重要である。
(2) 共聴アンテナを建物外構に設置する場合には,転倒防止,維持管理の方法等について十分留意して設置することが重要である。
(3) 校内番組などの放送のための設備を設置する場合には,受信する各室における映像等の選択,調整等に留意しつつ,送信する映像等の種類に応じ,適切な送信方式を検討し,設計することが重要である。
(4) TV等の受像装置は,幼児児童生徒の目線や衝突などに配慮しつつ,窓,照明等の位置を考慮した適切な位置を選定し,台,壁,天井等に堅固に取り付けることが重要である。
(5) TVやインターネット等の情報通信技術の進展を考慮して計画することも有効である。
【聴覚障害に対応した施設】:障害の特性に留意し,日常の耳から入る情報を保障するため,映像系設備を積極的かつ効果的に導入することが望ましい。

3 音声系設備

(1) 拡声器等は,利用目的に応じ,可聴範囲に留意しつつ,適切な位置に,堅固に取り付けることが重要である。その際,受信側で音量を任意に調節できるように設計することが重要である。
【視覚障害に対応した施設】:障害の特性に留意し,日常の視覚情報を保障するため,音による情報伝達や誘導等を効果的に行うことができるよう音声系設備のシステム等を計画し,設計することが重要である。
(2) 非常時に幼児児童生徒等の速やかな避難行動を促すことができるよう,停電時にも対応できる校内放送設備を整備することが重要である。
(3) 屋外に設置する拡声器については,その音響が周辺へ支障を及ぼすことのないよう位置及び向きに十分留意して設計することが重要である。

4 情報系設備

(1) 情報の種類,内容等に応じ,映像系設備と音声系設備との組合せ等も考慮しつつ,視覚・聴覚による情報伝達のための設備の種類,仕様等を検討し,適切な位置を選定し,事故を生じることないように設置することが重要である。
【聴覚障害に対応した施設】:集団補聴システムは,利用人数や使用する室・空間の規模等に応じ,適切な方式を選定し,必要なチャンネル数を確保できるようなシステムを導入することが重要である。なお,障害の状態や各室・空間の活用状況等に応じて,複数種の集団補聴システムを設置することも有効である。
(2) 校内電話,インターフォン,ファクシミリ,校内LAN,テレビ会議等の設備は,利用目的に応じ,必要とする回線網を適切に確保できるようあらかじめシステムを検討し,導入することが重要である。
(3) 管理関係室から離れている室等には,必要に応じ,校内電話等の通信設備を設けることが望ましい。また,指導者と職員室との連絡のための通信機器の導入を検討することも有効である。
(4) コンピュータの導入においては,学習支援,コンピュータ教育,管理・運営等の利用目的に応じ,将来の機器の増設や更新等に配慮しつつ,適切なシステムを検討することが重要である。
(5) コンピュータ,視聴覚教育メディア等のネットワークを構築する場合には,ネットワークに組み込まれる各室・空間に情報用のアウトレットやコンセントを適切に配置することが重要である。
(6) 室内,廊下等を含めた校内のあらゆる場所で,急速に変化する様々なメディアに対応できるよう,床仕上げ,配線等に柔軟性を持たせた設計とすることが重要である。
(7) 校内各所への情報端末や各教室へのプロジェクターの設置等についても,将来の対応を含めて十分に検討することが重要である。
(8) 災害情報を入手するため,防災行政無線の受信装置を備えておくことが重要である。
(9) 非常時においては,安否確認や救援要請など,外部との連絡が必要となることから,行政機関等との相互通信が可能な防災行政無線設備等を整備しておくことが有効である。なお,津波等の災害により孤立する可能性がある場合には,救助を求めるための情報通信機能を緊急避難場所に持ち出して使えるようにしておくことが重要である。
(10) 避難所となる場合には,災害時に避難所利用者が電話や電子メール等で安否確認等を行うことができるよう,特設公衆電話※等の避難所の情報通信環境を整備することが重要である。
※特設公衆電話・・・災害時の避難所での早期通信手段確保及び帰宅困難者の連絡手段確保のため,災害時に無料で利用できる公衆電話

第5 給排水設備

1 給水設備

(1) 受水槽,高架水槽等は,学習,生活等において利用する水の量を幼児児童生徒数,教職員数等に応じ適切に算定し,同時使用率を考慮して適切な容量を設定し,適切な位置に設置することが重要である。また,災害時の利用も考慮して整備することも有効である。
(2) 飲料水用の給水設備については,水質管理等衛生管理に十分配慮して計画することが重要である。なお,水槽の設置については,衛生管理を行いやすいよう位置を適切に選定し,周囲に管理作業上必要な動作空間を確保するよう計画することが重要である。
(3) 水栓の個数,配置及び配管の経路は,利用状況に応じ,支障なくかつ効率的に水の供給を行うことができるよう適切に設計することが重要である。また,水栓の形状,設置高さ等は,幼児児童生徒が利用しやすいよう,幼児児童生徒の発達の段階等に応じ適切に設計することが重要である。特に,熱水用の水栓及び配管は,容易に識別でき,かつ,十分安全な仕様のものとすることが重要である。なお,幼児児童生徒の状態により,自動的に作動・停止する方式とすることも有効である。
(4) 屋外における教育活動の実施を考慮し,普通教室,特別教室前のテラス等への水栓の設置について計画することも有効である。
(5) 飲料用の浄化装置等を備えた水道についても,必要に応じ設置を検討することが望ましい。
(6) 散水設備を設置する場合には,必要な散水能力を合理的に設定し,利用しやすく,幼児児童生徒の運動や学習・生活活動に支障を生じないように適切な位置を選定し,設計することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:必要に応じ,教員等が介助しやすいよう,幼児児童生徒の身体の動きに関する状態や発達の段階,介助の方法等に応じ適切に設計することが重要である。
(7) 消防用水や生活用水として,雨水貯留槽の水を利用する計画とすることは,災害時にも有効である。

2 排水設備

(1) 当該地域における公共下水道施設の整備状況等を十分把握し,排出される汚水,雑排水等を適切に処理できる排水方式を計画し,設計することが重要である。
(2) 下水処理施設の被災や下水管の破損によりトイレが使用できなくなることもあることから,汚水貯留槽の学校敷地内への設置などの対策を検討しておくことが望ましい。
(3) 浄化槽等を設ける場合には,幼児児童生徒数及び教職員数,地域からの利用者数等に応じた適切な処理能力をもつ浄化槽等を設計することが重要である。
(4) 浄化槽,配管経路等は,雨水が流入し,又は汚水が流出することのないよう適切な構造とすることが重要である。
(5) 浄化槽等の設置は,清掃車が駐車できる部分との連絡がよい位置を選定し,周辺に管理作業上必要な空間を確保することが重要である。
(6) 屋外に設ける手洗い場,足洗い場等については,砂,落葉等の排水への流入を防止できる構造とするとともに,排水管が詰まることのないような排水方式で計画することが重要である。
(7) 廃液を発生する実験・実習室等においては,簡易廃液処理装置等の設備を設置することが重要である。
(8) 調理室においては,バスケットを備えたグリーストラップ等の設備を設置することが重要である。

3 衛生・福祉機器・設備

(1) 洗面器,流し等の設備は,幼児児童生徒の体格,身体の動きに関する状態,発達の段階等に応じ,仕様,設置高さ等を適切に計画・設計することが重要である。なお,幼児児童生徒の体格に応じ設置の高さ等を自由に変えることができるように設計することも有効である。
(2) 小便器,大便器は,幼児児童生徒の体格等に応じ,様式,寸法,設置高さ等を適切に計画・設計するとともに,幼児児童生徒が操作しやすい水洗装置を適切な位置に計画することが重要である。なお,幼児児童生徒の障害の状態等に応じ,特別な仕様とすることも有効である。
【視覚障害に対応した施設】:小便器等の設置においては,幼児児童生徒がその位置を容易に認識でき,安定した姿勢で使用できるような仕様とすることが重要である。
【知的障害,肢体不自由又は病弱に対応した施設】:幼児児童生徒の発達の段階,教職員等の介助の方法に応じ計画し,設計するとともに,教職員等が操作しやすいよう計画する。
(3) 洗浄施設における浴槽,シャワー等の設備は,幼児児童生徒の障害の状態や特性,体格,利用状況等に応じ,仕様,設置位置等を適切に計画し,設計することが重要である。また,シャワーは,換気,やけど防止等に十分留意しつつ,温水利用可能な設備として計画することが望ましい。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:プールや浴槽などの出入りの際に利用する昇降設備は,利用状況等に応じ輸送能力を決定し,安全に昇降できるようかごの間口,奥行き等の形状や手すり等の仕様,昇降速度,安全装置等を計画し,設計することが重要である。
 また,かごへの移動を円滑に行えるよう出入り部分の仕様を設計すること
が重要である。
(4) 幼児児童生徒の障害の状態や特性等を考慮して,多機能トイレを多機能トイレ以外の便所と一体的又はその出入口の近くなど,適切な位置に計画し,設計することが望ましい。また,多機能トイレには,緊急通報ボタンを設置することが望ましい。
【知的障害,肢体不自由又は病弱に対応した施設】:汚物等の洗浄処理設備は,障害の状態や特性等による汚物の発生状況等を適確に把握し,これらの汚物を適切に処理できるよう,洗浄・排水方式等を計画し,利用しやすい位置に配置することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:おむつ交換や着せ替え用のベッド等の設備は,車いす等からの移動がしやすく,教職員等が動作を行いやすい仕様等とし,一連の諸行為の流れを考慮した位置に配置することが重要である。

第6 空気調和設備

1 共通事項

(1) 地域の気象条件,建物規模,設備を必要とする各室・空間の面積,形状,利用目的及び利用時間,幼児児童生徒の心身の発達状況や,幼児児童生徒及び教職員等の健康面への影響,維持管理等の諸条件を総合的に検討し,設計することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:自分で体温を保持することが困難な幼児児童生徒が病気の種類等に適した良好な環境条件を確保できるようなシステムを計画し,設計することが重要である。また,喘息児の利用する室・空間において空気調和設備を計画する場合は,運転による空気の動きの少ない方式等とすることが望ましい。
(2) 配管系統は,各室・空間において適宜設備の運転,停止及び調節を行うことができるよう適切に区分して設定することが重要である。
(3) 操作・制御装置は,教員,児童生徒等が操作しやすい仕様とし,適切な位置に配置することが重要である。
(4) 低騒音仕様の空調設備や消音ダンパの設置など,設備,ダクト等の仕様を設計することも有効である。
【聴覚障害に対応した施設】:聴力検査室や聴覚学習室など静寂さを必要とする室・空間に設置する空調設備は,運転による音の発生を極力抑えることのできるものとすることが重要である。

2 換気設備等

(1) 各室・空間の利用内容等に応じ,十分な換気量を確保するため,適切に計画することが重要である。
(2) 火気を使用する室や,塵埃,ガス,臭気等の発生を伴う室,冷暖房の行われている室,大きな音を発生する室,静寂さの必要な室など活動内容により密閉状態で利用する室等においては,必ず換気設備を設置することが重要である。
また,その他の室・空間にあっても室内空気汚染の低減のため,換気設備を設置するとともに,日常的な運転及び定期的な清掃・点検を行うことが重要である。
(3) 必要な換気量を適切に設定し,これに見合うように計画して,設計することが重要である。
(4) 設置位置は,当該各室・空間の形状等に応じ,適切な高さ,配置等とすることが重要である。
(5) 新鮮空気の取入れ口は,適切な面積を確保し,冬季において冷風が直接児童生徒等の体に当たることのないよう仕様及び位置を適切に設定し,設計することが重要である。
(6) 学習の過程において,塵埃の発生する室・空間には,必要に応じ,除・集じん設備を設けることが望ましい。

3 冷暖房設備

(1) 地域の気象条件,騒音等の周辺環境,地域への開放,災害時における避難所としての利用を含めた各室・空間の利用内容,幼児児童生徒の障害の状態や特性等に応じ,冷暖房設備を計画することが重要である。特に,活動内容により密閉状態で利用する室・空間や重度・重複障害及び病弱の幼児児童生徒の学習・生活空間等については,適切な室環境を確保する上で,冷暖房設備の導入を検討することが重要である。
(2) 当該各室・空間の壁,開口部などの断熱化,室形状,天井高,自然の通風条件等と併せ総合的に計画することが重要である。
(3) 設置する各室・空間の容量,形状,利用人数,学習内容等に応じ,冷暖房の負荷を適切に設定して,学習の諸活動に留意しつつ,方式,規格,数等を計画し,設計することが重要である。この際,室・空間を分割し,効率的かつ効果的に使用できるよう計画することも有効である。
また,年間を通じ,活動の内容や幼児児童生徒の障害の状態等に応じ,各室・空間ごとに冷暖房設備を運転できるようなシステムの導入を検討することが望ましい。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:這っての移動や臥位,座位等での活動等に留意しつつ方式,規格,数を計画し,設計することが重要である。なお,這っての移動や臥位,座位等での活動等に留意しつつ床暖房を設置することも有効である。また,医療的ケアのため,必要に応じ加湿設備の設置を計画することも有効である。
(4) 設置位置は,当該各室・空間の形状,机などの配列等に応じ,適切に決定することが重要である。
(5) 冷暖房の運転及び調節の方法,機器の安全性を十分検討し,適切に仕様を設計することが重要である。
(6) 屋内運動場が体育活動や儀式的行事,文化的行事,各種集会,学習・研究成果の発表等に利用されることを考慮し,地域の寒冷度,利用状況等を十分検討し,冷暖房設備の設置を計画することが望ましい。
(7) 保健室は,地域の実態等に応じ,冷暖房設備の設置を計画することが重要である。
(8) 災害時の利用も踏まえ,再生可能エネルギーを活用した冷暖房設備の設置を計画することも有効である。
(9) 避難所開設時には,冷暖房設備を設置した室を,高齢者,障害者,妊産婦等の要配慮者の専用スペースとすることも有効である。

第7 防災設備 

(1) 自動火災報知設備,非常用押ボタン等の警報設備は,火災の発生を早期に感知し,幼児児童生徒や消防機関等に迅速に通報できるよう,建物規模等に応じ適切に設計することが重要である。その際,幼児児童生徒の障害の特性に留意し,多様な方法による警報のための設備を適切に設計することが重要である。
【視覚障害に対応した施設】:障害の特性に留意し,音声や拡大表示による避難誘導のための設備を適切に設計することが重要である。なお,避難誘導設備は,日常利用する情報伝達のための設備と連動するように設計することも有効である。
【聴覚障害に対応した施設】:障害の特性に留意し,光や文字による避難誘導のための設備を適切に設計することが重要である。なお,避難誘導設備は,日常利用する情報伝達のための設備と連動するよう設計することも有効である。
【視覚障害又は聴覚障害に対応した施設】:危険な箇所には,誘導音,点滅機能及び非常文字表示装置等の警報設備を計画することも有効である。
(2) 屋内消火栓設備等の消火設備は,火災の発生時に早期に適切に消火し,被害を最小限に抑えることができるよう,建物規模や幼児児童生徒の障害の状態及び特性等に応じ適切に設計することが重要である。
(3) 幼児児童生徒の身体の動きに関する状態等を考慮しつつ,避難階以外の階にある各普通教室等から直接屋外に避難できるよう設計することが望ましい。
【知的障害,肢体不自由又は病弱に対応した施設】:避難用のスロープは,多様な移動方法等に加え,教職員等が付き添っての避難を考慮し,十分な幅を確保するよう計画することが重要である。
(4) 消防用設備などについては,幼児児童生徒の日常における学習,生活等に支障を生じることがないよう設置のために必要な空間を適切な位置に確保するよう計画することが重要である。
(5) 防火シャッターについては,維持管理体制にも十分留意しつつ,幼児児童生徒に対する危害防止対策として,閉鎖作動時の危害防止機構等の設置とあわせ,音や光による注意喚起装置を設置することが重要である。
(6) ガス使用場所については,ガス漏れ検知器を設置することが重要である。
(7) 便所のブース内には,必要に応じ,教職員等への緊急連絡のための設備を設置することが重要である。
(8) 寄宿舎における防災設備は,夜間,休日等の防災体制に留意しつつ,就寝時等においても確実に警報が伝わり,安全かつ迅速に避難できるように設計することが重要である。
その際,入舎している幼児児童生徒の障害の特性に十分留意し,多様な方法による警報や避難誘導のための設備を適切に設計することが重要である。

第8 その他の設備

1 昇降機設備

(1) エレベーターは,幼児児童生徒や教職員の在籍状況,障害の状態や特性,他の学校等との交流や地域住民への開放の計画,運搬する機器等の形状・重量,車いす等での利用等に応じ,かごの間口,奥行き,高さ等の寸法,台数,運転方式等を計画し,設計することが重要である。
また,階段との位置関係に留意し,適切な位置に計画することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:車いす,補助用具又はストレッチャー等での利用などに応じ,かごの間口,奥行き,高さ等の寸法,台数,運転方式等を計画し,設計することが重要である。なお,複数の車いす等による同時利用を考慮した形状とすることが望ましい。
(2) 幼児児童生徒の利用するエレベーターの扉は,利用者が安全かつ円滑に乗降できるよう開閉の方式を適切に設定するとともに,かごの床面と扉枠との間に段差や過度の隙間を生じないよう設計することが重要である。また,かごの中の様子がわかるような仕様とすることが望ましい。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:かごの内部には,車いすの状態の確認のための鏡を設置することも有効である。
(3) 幼児児童生徒の利用するエレベーター等の操作装置は,車いすでの利用や身体の動きに関する状態も考慮して操作しやすい仕様とし,適切な位置に配置することが重要である。その際,運転の状況を表示する装置を見やすい位置に設置することが重要である。また,音声で案内する装置を設置することも有効である。

2 廃棄物処理施設

(1) 学校生活や実験・実習等に伴い生じる廃棄物を適切に処理できるよう処理・保管方式,配置等を計画し,設計することが重要である。その際,幼児児童生徒の安全確保に十分留意し,仕様,配置等を計画し,設計することが重要である。
(2) ごみの減量化,環境教育の教材として,生ごみの堆肥化のための施設を設置することも有効である。
(3) ごみのリサイクルの推進のため,児童生徒等の主体的な取組を促すことも考慮し,ごみの保管場所や分別のための場所を明確に計画することも有効である。
(4) やむを得ず高層化する場合において,各階における一般のごみ等の処理の方法に応じ必要となる設備等を,清掃等衛生管理の方法に十分留意して計画することが重要である。

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