第1章 総則

第1節 特別支援学校施設整備の基本的方針

1 特別支援教育を推進するための施設環境の整備

「特別支援教育」とは,障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち,幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うものである。
こうした特別支援教育を推進するため,特別支援学校の施設整備については,障害の重度・重複化,多様化等の動向を十分踏まえつつ,障害のある幼児児童生徒の一人一人の教育的ニーズに対応した指導・支援を考慮した施設環境づくりを基本とすることが重要である。
また,地域において特別支援教育を推進する体制を整備していく上で,特別支援学校が中核的な役割を果たすことができるような施設環境づくりを基本とすることが重要である。 

2 高機能かつ多機能で変化に対応し得る施設環境の整備

一人一人の幼児児童生徒の障害の状態及び発達の段階や特性等に応じた指導内容・方法が十分に展開でき,個別又は多様な集団編成等による自立活動※等の学習指導やそれらを支援する様々な教育機器等の導入などを可能とする高機能かつ多機能な施設環境を確保することが重要である。
また,幼児に対する遊びを通した柔軟な指導,中・高等部の職業教育,及び重複障害のある幼児児童生徒の基本的生活習慣の指導への対応などを図るとともに,今後の学校教育や情報化の進展等に長期にわたり対応することのできるような柔軟な計画とすることが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:入院生活等を伴う幼児児童生徒については,様々な生活体験を可能とする施設環境を整えることが重要である。
※自立活動・・・・・障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために設けられている特別の指導領域であり,学校の教育活動全体を通じて行われる教育活動。例として,視覚障害者に対する白杖を使った歩行指導,聴覚障害者に対する音声や文字,手話などの多様なコミュニケーション手段を活用する指導,肢体不自由者に対する姿勢保持や移動の指導などがある。 

3 健康的かつ安全で豊かな施設環境の確保

幼児児童生徒の学習及び生活の場として,日照,採光,通風,換気,室温,音の影響等に配慮した良好な環境を確保することが重要である。特に幼児児童生徒の障害の状態や特性等に配慮しつつ,その健康の保持増進に配慮した快適な空間とするとともに,十分な防災性,防犯性など安全性を備えた安心感のある施設環境を形成することが重要である。
また,幼児児童生徒がゆとりと潤いをもって学校生活を送ることができ,他者との関わりの中で豊かな人間性を育成することができるよう,生活の場として快適な居場所を計画することが重要である。
さらに,それぞれの地域の自然や文化性を生かした快適で豊かな施設環境を確保するとともに,環境負荷の低減や自然との共生等を考慮することが重要である。

4 地域の生涯学習やまちづくりの核として地域と連携した施設環境の整備

地域において特別支援教育を推進する体制を整備していく上で特別支援学校が中核的な役割を担うことに加え,地域の小・中学校等の障害のない幼児児童生徒との交流及び共同学習の場として施設環境を整備することが重要である。
また,障害者等の学習・相談等の場,障害のある幼児児童生徒への理解を深めるための場,地域住民の生涯にわたる学習の場,さらに,まちづくりの核として,地域と連携した施設環境を整備することが重要である。
その際,施設のバリアフリー化を図ること,地域の避難所又は緊急避難場所(以下「避難所等」という。)としての役割を果たすこと,景観や町並みの形成にも貢献できる施設として計画することも重要である。
なお,病院等に併置する場合は,病院等にも開かれた施設として整備することが望ましい。

第2節 特別支援学校施設整備の課題への対応

第1 特別支援教育を推進するための施設整備

1 一人一人の教育的ニーズへの対応

(1) 幼児児童生徒一人一人の障害の状態や特性,教育的ニーズを把握し,それらを踏まえた指導計画の実施に配慮した施設環境を計画することが重要である。
その際,一人一人の教育的ニーズに応じた指導目標や内容,方法等を示した「個別の指導計画」や,教育と福祉,医療,保健,労働等の関係機関との連携による乳幼児期から卒業後まで一貫した支援を行うための教育的支援の目標や内容等を盛り込んだ「個別の教育支援計画」の実施に配慮した計画とすることが重要である。
(2) 障害の重度・重複化等の動向や,複数の障害への対応状況を十分に考慮し,利用する幼児児童生徒にとって支障のない計画とすることが重要である。
その際,近年,自閉症等を併せ有する幼児児童生徒が増加していることにも配慮した計画とすることも重要である。

2 センター的機能を推進するための施設

(1) 特別支援学校が地域の小・中学校等の要請に応じて支援などを行う地域の特別支援教育のセンター的機能を果たすため,地域や学校等の実情に応じて必要な施設環境を整備することが重要である。
(2) 地域の小・中学校等の教員への支援及び研修協力や,障害のある幼児児童生徒への指導・支援,保護者等に対する相談対応・情報提供を行うほか,福祉,医療,保健,労働等の関係機関との連絡・調整を行うなど,各学校の実情に応じて弾力的に対応できるような施設環境を整備することが重要である。
(3) 特別支援学校において通級による指導※を行う場合は,地域の小・中学校に在籍する障害のある児童生徒の障害の状態や特性等を十分に踏まえつつ,通級する他校の児童生徒にとっての利便性等に配慮し,その利用に支障のない計画とすることが重要である。その際,地域の通級による指導の状況や整備計画等を踏まえつつ,各学校や地域の実情等に応じた計画とすることが重要である。
また,通級による指導を受ける児童生徒の保護者との連携や交流を促進することができる施設として計画することも重要である。
※通級による指導・・・・小・中学校の通常の学級に在籍している障害の程度の軽い児童生徒が,ほとんどの授業を通常の学級で受けながら,障害の状態等に応じた特別の指導を特別な場(特定の小・中学校や公共施設等)で受ける指導形態。一部通級による指導の担当教員が特別の場に出向く場合や児童生徒が特別支援学校等に出向く形態等もある。

第2 幼児児童生徒の主体的な活動を支援する施設整備

1 多様な学習形態,弾力的な集団による活動を可能とする施設

(1) 多様な学習内容・形態による活動を可能とする施設として計画することが重要である。その際,幼児児童生徒の主体的な活動を支援する工夫や幼児児童生徒の持てる能力を高め,豊かな学校生活を送ることができる空間として計画することも重要である。
また,多様な学習内容・形態に弾力的に対応するため,学習関係諸室相互の位置関係や幼児児童生徒の動線等を考慮した計画とすることが重要である。
(2) 幼児児童生徒の学習意欲を引き出し,最新の学習内容の習得や自立活動の実施ができるよう,それらに必要な教材,教育機器等の導入や,各種技術の進展に対応した計画とすることが重要である。
(3) 一斉指導による学習以外に,ティームティーチング(複数教員による協力的指導)による学習,個別学習,少人数指導による学習,グループ学習,複数学年による学習等の活動及び幼児児童生徒の学習の成果の発表などに対応するため,学習メディア等が活用できる多目的な空間や,多様なタイプの講義室,ゼミ室など学習空間を十分に計画することが重要である。
(4) 豊かな人間関係を築く観点から,部活動,児童・生徒会及び委員会の活動のための拠点を計画することが重要である。

2 自立活動の推進のための施設

(1) 幼児児童生徒の障害の状態及び発達の段階や特性等を考慮しつつ,個々の幼児児童生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するための自立活動に必要となる施設環境を計画することが重要である。
(2) 自立活動の指導は学校の教育活動全体を通じて行われるものであり,自立活動の時間に行われる指導内容を中心としつつ,各教科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間と密接に関連を図る必要があることから,自立活動関係諸室と普通教室,特別教室等との関係等を考慮した計画とすることが重要である。
(3) 「個別の指導計画」に基づいて個人又は小集団で指導を行うなど,効果的な指導を進めることができるよう弾力的な計画とすることが重要である。その際,幼児児童生徒の障害の重度・重複化,多様化を考慮し,これらの幼児児童生徒の実態に応じた弾力的な教育課程の編成に対応できるような計画とすることが重要である。

3 情報環境の充実

(1) 幼児児童生徒の主体的な活動及び学習を支え,高度情報通信ネットワーク社会にふさわしい学校環境をつくるとともに,障害の特性等に応じた情報保障※を図るよう計画することが重要である。
このため,情報支援機器を活用するなど,幼児児童生徒の障害の状態や特性等に配慮しつつ,校内の情報ネットワークの整備やコンピュータ,プロジェクタ等の情報機器の導入への対応について,適切な安全管理措置を取りつつ積極的に計画することが重要である。
※情報保障・・・・・本指針において「情報保障」とは,「障害等により情報を入手することが困難な者に対して情報入手のための支援を行ったり,情報を発信することが困難な者に対して情報を発信するための支援を行ったりすること」とする。情報保障の手段としては,点字による表示や手話,ノートテイク,コミュニケーション支援機器や支援ソフトを活用して意思の伝達を行うなどの多様な形態がある。
(2) 情報を効果的に活用したり,生み出したりするためには,様々な情報を管理できる学習センター機能のために必要な空間を計画することが重要である。
(3) 教科としての「情報」だけでなく,他教科でも活用したり,日常的な学習活動や自立活動等を支援するために,普通教室や図書室,特別教室,自立活動関係諸室,専門教育関係教室,共通空間等にも様々な情報機器や情報ネットワークを計画することが重要である。
(4) 学校としての取組や学習活動の成果等について,外部へ情報発信できるよう計画することが重要である。
(5) 幼児児童生徒や保護者への情報伝達や,多様なカリキュラムの管理,幼児児童生徒からのレポート等の提出等,学校運営や施設管理,教員の教科研究や教材作成においても,情報機器や情報ネットワークを活用できる環境を計画することが重要である。

4 適切な進路相談や職業教育等の充実への対応

(1) 社会の変化や時代の進展,近年の障害者の就業状況等を踏まえつつ,地域や学校の実態,生徒の障害の状態や特性等を考慮し,適切な職業に関する各教科・科目等を履修するために必要な施設環境を計画することが重要である。
その際,一人一人の興味・関心等に対応し,目的意識を持って学習することができるよう,多様な進路の選択やそのための科目の選択履修を支援することができるよう計画することが重要である。
なお,社会参加,自立を図るための社会生活能力を育成するための施設を計画することが有効である。
(2) 変化する社会に柔軟に対応できる能力を身につけていくことが一層求められており,生徒が主体的に進路を選択してキャリアを形成していくために,就職を含む進路の相談やインターンシップ等,生徒に対するカウンセリングやガイダンス機能を充実させるために必要な空間を計画することが重要である。

5 理科教育の充実のための施設

(1) 多様な教材,教具等を使用した授業など多様な教育方法に対応するため,理科教室と図書室,視聴覚教室等との連携に配慮して計画することが重要である。
(2) 特に観察,実験の重要性を踏まえ,様々な実験器具,情報機器等を教員及び児童が活用できるよう施設環境を計画することが重要である。
(3) 複数の教員等の指導による学習など多様な学習形態への対応も考慮した計画とすることが望ましい。
(4) 自然体験活動を支える空間として,動植物の飼育,栽培のための施設・環境を計画することが重要である。

6 国際理解の推進のための施設

(1) 外国語の指導,外国人教師や幼児児童生徒の受け入れ,日本の伝統文化や異文化理解等の学習活動への対応を考慮した計画とすることが重要である。
(2) 外国語会話学習や,コンピュータ支援による外国語学習,インターネットの活用等にも対応した計画とすることが望ましい。
(3) 国際文化の理解・交流のために,和室など日本の伝統的な空間を計画することも有効である。

7 総合的な学習の推進のための施設

(1) 多様な学習内容・形態に弾力的に対応するため,普通教室,特別教室等の関係や,一斉指導による学習のための空間とグループ学習・個別学習のための空間との関係,児童生徒の動線,学習空間の吸音・遮音性等を考慮し,計画することが重要である。
(2) 体験的な学習に対応するため,地域社会や自然環境等との連携に配慮して施設環境を計画することが重要である。

第3  安全でゆとりと潤いのある施設整備

1 生活の場としての施設

(1) 幼児児童生徒の学習のための場であるのみならず,生活の場として,ゆとりと潤いのある施設環境を計画することが重要である。
(2) 幼児児童生徒の障害の状態や特性,行動特性,動作領域,人体寸法を考慮するとともに,心理的な影響も含めて施設を計画することが重要である。
(3) 幼児児童生徒,教職員等の多様なコミュニケーションの場として,ラウンジ,談話コーナー等を計画することが望ましい。
(4) 多様な学習内容・形態に対応するとともに,障害の状態や特性等に応じ,豊かな生活の場を構成することのできる机・いす・収納棚等の家具を各室と一体的に計画することが重要である。
(5) 生徒の心の拠りどころとなるようなシンボルツリーやモニュメント等を計画することも有効である。

2 健康に配慮した施設

(1) 幼児児童生徒の健康に配慮し,校内の快適性を確保するため,日照,採光,通風,換気,室温,音の影響等に十分配慮した計画とすることが重要である。
【病弱に対応した施設】:病気の種類等に応じて日照,空気及び通風を調節できることが望ましい。
(2) 幼児児童生徒の障害の状態や特性等に配慮しながらその心と体の健康を支えるため,保健衛生に配慮した計画とすることが重要である。特に,重度の障害のある幼児児童生徒に十分配慮した衛生的な環境を計画することが重要である。
(3) 幼児児童生徒の障害の状態や特性等に配慮しながら,体力向上に資するよう運動のための空間を利用のしやすさを考慮し,計画することが望ましい。
(4) 建材,家具等は,快適性を高め,室内空気を汚染する化学物質の発生がない,又は少ない材料を採用することが重要である。
(5) 新築,改築,改修等を行った場合は,養生・乾燥期間を十分に確保し,室内空気を汚染する化学物質の濃度が基準値以下であることを確認させた上で建物等の引渡しを受け,供用を開始することが重要である。

3 地震,津波等の災害に対する安全性の確保

(1) 地震発生時において,幼児児童生徒等の人命を守るとともに,被災後の教育活動等の早期再開を可能とするため,施設や設備の損傷を最小限にとどめることなど,非構造部材も含め,十分な耐震性能を持たせて計画することが重要である。
(2) 学校施設が,津波等※による被害が予想される地域に立地している場合においては,幼児児童生徒等が津波等から緊急避難場所※へ安全に避難できるよう,周辺の高台や津波避難ビルへの避難経路※の確保又は校舎等建物の屋上や上層階への避難経路の確保を検討し,実施することが重要である。
 これらの対策によって安全性が確保できない場合においては,高台への移転又は高層化※を検討し,実施することが重要である。
※津波等・・・・・・津波,洪水,高潮等及びこれらに起因する火災
※緊急避難場所・・・災害が発生し,又は発生のおそれがある場合にその危険から逃れるための施設又は場所(災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第49条の4関係)
※避難経路・・・・ある場所から避難目標地点まで最短時間で,かつ安全に到達できる道筋。一方,避難路とは,避難経路となる道路,通路,避難階段そのものをいう。
※津波等対策における高層化・・・校舎等建物の屋上や上層階を幼児児童生徒等の緊急避難場所とするために,屋内運動場との重層化や他の公共施設との複合化等により,本来,教育機能として必要な階数以上の階を有する建物を整備することをいう。
(3) 学校敷地に津波等による被害が予想され,津波等に対する安全対策として,幼児児童生徒等が校舎等建物の屋上や上層階への避難を行う場合においては,当該場所が想定される津波等の水位以上の高さとすること,当該場所までの有効な避難経路を確保すること及び当該建物が津波等により構造耐力上支障のある事態を生じないものであることが重要である。
(4) 学校施設は,災害時には障害のある幼児児童生徒やその家族,地域の障害者,高齢者等の要配慮者も含めた地域の避難所※としての役割も果たすことから,想定される避難者数や,起こりうる災害種別のリスクを十分に考慮し,あらかじめ学校設置者と防災担当部局※との間でお互いの役割を明確にしながら,避難所として必要となる機能を計画することが重要である。その際,教育活動等の早期再開が可能となるよう計画することが重要である。
※避難所・・・・・・災害の危険性があり避難した住民等や,災害により家に戻れなくなった住民等を滞在させるための施設(災害対策基本法第49条の7関係)
※防災担当部局・・・避難所の指定は市町村長が行うこととなっていることから,原則として,学校の所在する市町村の防災担当部局をいう。
(5)学校施設の防災対策は,運営体制や訓練等のソフト面での取組と一体的に実施することが重要である。その際,防災担当部局,学校設置者,学校,自主防災組織,地域住民等と連携しながら取組を進めることが重要である。
(6)施設自体が防災教育の教材として活用されるよう,各階に標高表示を設置する等,日頃から幼児児童生徒等に津波等災害の危険性の意識づけを計画することが重要である。

4 安全・防犯への対応

(1) 幼児児童生徒の安全確保を図るため,学校内にあるすべての施設・設備について,幼児児童生徒の多様な行動に対し十分な安全性を確保し,安心感のある計画とすることが重要である。
その際,事故の危険性を内包する箇所は特に安全性を重視した分かりやすい計画とすることが重要である。特に,情緒障害や自閉症,注意欠陥多動性障害(以下「ADHD」という。)等の障害を併せ有する幼児児童生徒に対応した施設とする場合は,パニックや多動・衝動性等に十分配慮し,各々にとって十分な安全性を確保した計画とすることが重要である。
(2) 地震,火災等の非常時において幼児児童生徒が安全かつ円滑に避難できるよう計画することが重要である。
(3) 事故を誘発するような明確な構造的な欠陥はもとより,幼児児童生徒が予測しにくい危険を十分に除去しておくことが重要である。
また,可動部材,特に機械制御のものは十分に安全性が確保されていることを確認することが重要である。
(4) 幼児児童生徒の多様な行動に対して,万が一事故が発生してもその被害が最小限となるよう,配慮した計画とすることが重要である。
(5) 外部からの来訪者を確認でき,不審者の侵入を抑止することのできる施設計画や,事故も含めた緊急事態発生時に活用できる通報システム等を各学校へ導入することが重要である。
(6) 敷地内や建物内及び外部からの見通しが確保され,死角となる場所がなくなるよう計画することや,特に不審者侵入の観点からはどの範囲を何によってどう守るかという領域性に留意した施設計画が重要である。
(7) 学校や地域の特性に応じた防犯対策及び事故防止対策を実施し,その安全性を確保した上で,地域住民等が利用・協力しやすい学校施設づくりを推進することが重要である。
(8) 既存施設の防犯対策及び事故防止対策についても,図面や現場等において点検・評価を行い,必要な予防措置を計画的に講じていくことが,関係者の意識を維持していく面からも重要である。
(9) 学校施設の防犯対策及び事故防止対策は,安全管理に関する運営体制等のソフト面での取組と一体的に実施することが重要である。その際,家庭や地域の関係機関・団体等と連携しながら取組を進めることが重要である。

5 施設のバリアフリー対応 

(1) 障害のある幼児児童生徒及び教職員等が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるように,障害の状態や特性,教育的ニーズに応じた計画とすることが重要である。なお,その際,スロープ,手すり,便所,出入口,エレベーター及び情報伝達のための設備等の計画に配慮することが重要である。
(2) 学校の教育活動への地域の人材の受け入れなど様々な人々の学校教育への参加や,地域住民の生涯学習の場としての利用,地震等の災害時には地域の避難所としての役割を果たすこと等を踏まえ,多様な地域住民が利用することを考慮した計画とすることが重要である。
(3) 既存学校施設のバリアフリー化についても,障害のある幼児児童生徒の状態や特性等を踏まえ,所管する学校施設に関する合理的な整備計画を策定し,計画的に推進することが重要である。
(4) 学校施設のバリアフリー化に当たっては,施設の運営・管理,人的支援等のサポート体制との連携等について考慮した計画とすることが重要である。

6 環境との共生 

(1) ライフサイクルを通じた環境負荷の低減や,自然との共生等を考慮した施設づくりを行うことが重要である。
(2) 教育的効果も考慮し,施設・設備自体が環境教育の教材として活用されるよう,また,自然と触れ合う機会が増えるよう計画することが重要である。
(3) 学校施設における温室効果ガスの排出量を削減するため,断熱化や日射遮蔽等の建物性能の向上を図るとともに,照明や冷暖房等の設備機器の高効率化を図ることが重要である。
(4) 太陽光や太陽熱,風力,バイオマス※など再生可能エネルギーの導入,緑化,木材の利用等については,環境負荷を低減するだけでなく,環境教育での活用や地域の先導的役割を果たすという観点からも望ましい。
※バイオマス・・・動植物に由来する有機物である資源。(原油,石油ガス,可燃性天然ガス及び石炭を除く。)
(5) 断熱化や日射遮蔽等の建物性能の向上,設備機器の高効率化,再生可能エネルギーの導入等は,災害時に避難所となる場合においても,良好な温熱環境を確保する観点から有効である。
(5) 省エネルギーやごみのリサイクルの推進等,日常的に環境問題に対して主体的な取組が促されるよう配慮して計画することが望ましい。

7 カウンセリングの充実のための施設 

カウンセリング機能を充実する観点から,保健室や教育相談室,保護者等のための相談スペース等適切な環境を計画することが重要である。

第4 地域と連携した施設整備

1 学校・家庭・地域の連携協力

(1) 特別支援学校施設の計画に当たっては,地域における特別支援教育の中核的な施設として,及び学校・家庭・地域の連携に基づく生涯学習の基盤として,学校・家庭・地域等の参画により,総合的かつ長期的な視点から計画を行うことが重要である。
(2) 専門的知識・技術を持つ企業や地域の諸施設等の様々な人材を受け入れ,学校の教育活動への多様な活力の導入・活用を促すための諸室についても計画することが重要である。
(3) 地域住民等のボランティア活動による学校の教育活動を支援する取組や保護者・地域住民等が学校運営を支援する取組など学校における活動への地域の協力を促すための諸室についても計画することが重要である。
(4) 地域における特別支援教育の中核的な役割を踏まえ,他の文教施設等の整備状況等を勘案しつつ,必要に応じ,これらの施設との適切な役割分担や,各々の特有の機能の共有化,施設等の相互利用・共同利用等を通じ有機的な連携について計画することが望ましい。また,他の文教施設等との情報ネットワークを構築することも有効である。
(5) 他の学校や公共施設との間で,避難所としての防災機能の分担を行うことも有効である。
(6) 地域に開かれた学校づくりの観点から,学校としての取組や学習活動の成果等について,保護者や地域住民など外部へ情報発信できるよう計画することが重要である。

2 学校開放のための施設環境

(1) 幼児児童生徒や地域住民が有効に活用できる施設となるよう計画することが重要である。また,学校や地域の特性に応じた防犯対策を実施し安全性を確保した上で,必要に応じ,地域住民との共同利用のできる施設として計画することも重要である。
(2) 様々な利用者に配慮した,快適,健康,かつ安全で利用しやすい施設であるとともに,学校開放の運営と維持管理の行いやすい施設となるよう計画することが重要である。
(3) 障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒とが,各々の教育的ニーズに応じ,安全かつ円滑に交流及び共同学習を行うことができる施設となるよう計画することが重要である。

3 複合化への対応

(1) 学校と地域社会との連携を深めていく上で,社会教育施設や福祉施設,医療施設等との複合化について計画する場合は,施設間の相互利用・共同利用等による学習・生活環境の高機能化及び多機能化に寄与すると同時に,学校施設における幼児児童生徒の学習と生活に支障のないよう計画することが重要である。また,地域の避難所等としての機能を計画する場合も,学校施設における幼児児童生徒の学習と生活に支障のないよう計画することが重要である。
(2) 多様な利用者を考慮し,防犯対策等の安全管理,バリアフリー等に配慮した計画とすることが重要である。
(3) 学習環境に悪影響を及ぼす施設との合築は避けることが重要である。また,学習環境の高機能化及び多機能化に寄与しない施設との合築についても慎重に対処することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:病院等の中に設置されている分校・分教室等の場合には,病院等に障害のある幼児児童生徒の教育等についての理解を得るとともに,十分な連携を保ちつつ計画的に環境を整備することが重要である。

第3節 特別支援学校施設整備の基本的留意事項

1 総合的・長期的な計画の必要性

(1) 地域内の特別支援学校や他の文教施設等の整備計画との整合
 当該地域における中・長期の特別支援学校の整備計画や他の文教施設等の整備計画との整合性を図り,多様な学習活動の実施,安全性への配慮,環境負荷の低減,地域との連携等を考慮し,総合的かつ長期的な視点から学校の運営面にも十分配慮した施設計画を策定することが重要である。
 なお,病院等に併置する場合,又は他の文教施設等に分教室を設置する場合は,その整備計画との十分な連携を確保しながら当該学校施設の整備計画を策定することが重要である。

(2) 総合的な視野からの計画策定
1 長期的に施設を活用できるよう,将来の教育内容の変化や維持管理のしやすさも含めた施設の長寿命化を考慮した計画とすることが重要である。
2 増築,改築,改修等の場合においても,学校施設整備の基本方針,新たな課題への対応を踏まえ,総合的かつ中・長期的な視点から計画し,これに基づき,計画的に実施することが重要である。
3 施設部分等により,予算科目,所管部課,整備時期等が異なる場合においても,相互に十分調整し,総合的に計画することが重要である。

(3) 幼児児童生徒数の動向等に応じた学校規模の適切な設定
 関係機関と連携し,学齢人口や障害のある幼児児童生徒の数の推移と将来動向,地域内の小学校及び中学校の特別支援学級※の在籍児童生徒数並びに通級による指導を受けている児童生徒数,特別支援学校高等部への進学の状況,特別支援学校の整備計画等から,現状及び将来の学校規模を的確に把握して,適切な規模の計画とすることが重要である。
 特に,幼児児童生徒の数の将来動向を十分に考慮しつつ,柔軟性を持たせた施設計画とすることが重要である。
【病弱に対応した施設】:入院期間の短期化,入退院の頻回化などによる年度途中での幼児児童生徒数の変動や,病弱・身体虚弱の特別支援学級から特別支援学校へ就学先の変更等が年度途中で行われるなどの状況等も考慮することが重要である。
※特別支援学級・・・障害の比較的軽い児童生徒のために小・中学校に障害の種別ごとに設置することが可能な少人数の学級。

2 学校の組織,学級編制等の計画条件の検討及び確認

(1) 当該学校における設置構成等に係る条件設定
 現在及び将来において,当該学校における幼稚部,小学部,中学部及び高等部の各部の設置構成並びに教育課程の編成,高等部における学科等の種類及び専攻科の設置,他の学校との併置,分校又は分教室の設置,重複障害学級の設置,訪問教育※の実施等の有無にかかわる計画条件を検討し,確認することが重要である。
 また,センター的機能として,通級による指導や,いわゆる「巡回による指導」※等の有無にかかわる計画条件を検討し,確認することも重要である。
※訪問教育・・・・・障害のため特別支援学校等に通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対し,特別支援学校等の教員が家庭,児童福祉施設,医療機関等を訪問して行う教育。
※いわゆる「巡回による指導」・・障害のある児童生徒に対する指導及び支援の一つとして,小・中学校又は特別支援学校の教員が複数の学校等を巡回訪問して指導を行う形態。
(2) 学級編制や教育課程の編成等に係る条件設定
1 現在及び将来において,当該学校に入学する幼児児童生徒の障害の状態や特性等を分析・把握して,重複障害等の学級編制,訪問教育,病院等施設内の学級の有無についての計画条件等を検討し,確認することが重要である。なお,複数の障害に対応した施設とする場合は,障害の特性や教育課程の違い等に配慮した計画とすることが重要である。
2 当該学校に在籍する幼児児童生徒の障害の状態や特性等に応じ,幼稚部,小学部,中学部及び高等部の各部について作成される指導計画や,「個別の指導計画」等の実施を踏まえて計画条件を検討し,確認することが重要である。
3 幼稚部を計画する場合においては,就学前の乳幼児を含め障害のある幼児に対する早期からの指導等の内容についての計画条件を検討し,確認することが重要である。

(3) 運営方式の設定
1 小学部,中学部,高等部等の各部については,学習・生活の内容を規定することになる運営方式を,それぞれの教科学習の程度や内容などに応じ,各部別,学年別に十分検討し決定することが重要である。
 その際,特に中学部及び高等部においては,必修科目や選択科目の設定など履修の方式の違いを考慮しつつ,生活単位としての学級と学習単位としての授業集団の在り方や校内における生徒の活動内容を検討することが重要である。
2 中学部の各教科又は高等部の各教科・科目の学習をそれぞれの専用の教室で行う教科教室型の運営方式を採用する場合は,生徒の教室間の移動,学級・ホームルーム活動や持ち物などの保管等のための場(ホームベース)の設定,生徒の教室間の移動,生徒への情報伝達方法,教員等間の連絡調整の方法や場の設定等について十分検討することが重要である。

3 施設機能の設定

(1) 障害の特性等の分析とその条件化
1 幼児児童生徒一人一人の障害の状態や特性,それに応じ必要となる環境条件等を的確に把握・分析して,幼児児童生徒の快適かつ円滑な学習・生活のために必要な施設機能を設定することが重要である。
 特に,複数の障害に対応した施設とする場合は,地域における他の特別支援学校との連携等も考慮しつつ,各々の障害の特性等に配慮した施設機能を設定することが重要である。
 また,分校又は分教室を計画する場合も,障害の特性等に配慮するとともに,幼児児童生徒の快適かつ円滑な学習・生活のために必要な施設機能を設定することが重要である。
2 教育機器,教材・教具,補助用具等の導入・活用も考慮しながら的確に把握・分析して,教職員や介助者等が指導・介助しやすい環境づくりに必要な施設機能を設定することが重要である。 

(2) 教育活動の内容分析とその条件化
1 多様な学習形態に十分留意した上で,活動の内容や機器等の活用方法を将来の動向も含めて的確に把握し,必要な施設機能を設定することが重要である。
【知的障害に対応した施設】:幼児児童生徒の知的発達の状態に応じた指導内容を具体的に分析し,活動集団の構成に留意し,必要な施設機能を設定することが重要である。
2 「個別の指導計画」等の実施など教育活動を具体的に分析・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。
3 特別活動の具体的な内容については,幼稚園,小学校,中学校又は高等学校との交流及び共同学習の内容も含め十分分析・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。
4 教育活動に必須の教材や教具等を準備・作成するために必要な施設機能を設定することが重要である。

(3) 教育相談・進路相談等に対応する施設機能の設定
1  教育相談・カウンセリング,生徒指導のために,運営方法及び人的体制,利用者や動線等について十分分析・把握し,個人情報保護の観点から情報管理について十分配慮して,必要な施設機能を設定することが重要である。
2  特に高等部においては,進路相談や履修指導のために,学科やコース等の編成,職業教育に関する教育方針や指導方法等について十分分析し,把握して必要な施設機能を設定することが重要である。
3  個別相談に対応でき,プライバシーを守ることのできる小部屋を計画することが望ましい。

(4) センター的機能としての施設機能の設定 
1 就学前の乳幼児相談を含め障害のある幼児児童生徒とその保護者に対する相談支援等や学校教育修了後の障害者に対する相談支援等に関する人的体制,情報提供の方法等について十分検討し,個人情報保護の観点から情報管理について十分配慮して,必要な施設機能を設定することが重要である。
2 地域の小・中学校等の教員に対する支援として,個々の幼児児童生徒の指導に関する助言及び相談のほか,当該幼児児童生徒に対する「個別の指導計画」及び「個別の教育支援計画」の実施方法や支援体制等について十分検討し,必要な施設機能を設定することが重要である。
 また,各障害への理解や対応,指導方法等に関する研修の方法等についても十分検討し,必要な施設機能を設定することが重要である。
3 地域の小・中学校等の幼児児童生徒への指導・支援の方法及びその人的体制等について十分検討し,必要な施設機能を設定することが重要である。
 また,小・中学校の児童生徒を対象とする通級による指導やいわゆる「巡回による指導」のほか,就学前の幼児や乳幼児に対して行われる指導及び支援の実施についても,小・中学校等との十分な連携を考慮し,必要な施設機能を設定することが重要である。
4 「個別の教育支援計画」の実施方法等について,関係機関等との連絡・調整の方法等も含めて十分検討し,必要な施設機能を設定することが重要である。
(5) 共通に利用する学習空間機能の設定
  各部に共通する活動内容を把握し,利用頻度等に応じ各学年,各教科,各部等の間で共用する施設機能を設定することが重要である。特に,複数の障害に対応した施設とする場合は,相互利用を考慮しつつ,各々の利用にとって妨げとならないよう施設機能を設定することが重要である。

(6) 学習・生活支援機器等の活用とその条件設定 
 学習・生活を支援する各種教材・教具,各種日常生活学習機器,検査機器,補助用具・点訳システム等について,利用方法や機器等の設置形態,収納・管理その他の条件を将来動向も含めて分析・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。

(7) コンピュータ,視聴覚機器等の活用とその条件設定
1 情報化の進展に対応し,コンピュータの利用形態ごとに,機器等の設置形態や利用方法,データの保存方法その他の条件を,将来動向も含めて分析・把握するとともに,視聴覚機器との複合的利用に配慮しつつ学校全体のシステムの在り方を検討し,必要な施設機能を設定することが重要である。
2 視聴覚機器や通信機器等の利用形態ごとに,利用方法や機器等の設置形態,ソフトの収納・管理その他の条件を将来動向も含めて分析・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。
3 情報ネットワークの整備や情報機器の導入について,適切な安全管理・保守・点検措置を取ることが重要である。

(8) 学校生活の分析とその条件設定
1 通学の手段・形態,上下足の履き替え方式,衣類や持ち物の収納・管理方式,校内の情報伝達方式,食事の場所や方式等について,障害の状態及び発達の段階や特性等に応じ十分検討し,必要な施設機能を設定することが重要である。
2 体育系及び文化系のそれぞれについて,部活動やサークル活動の種類,数,活動内容,活動場所等を具体的に把握し,必要とする施設機能を設定することが重要である。

(9) 寄宿舎生活の分析とその条件設定
 利用する幼児児童生徒の障害の状態及び発達の段階や特性,利用人数等に応じ,学習・生活の実態,日常生活自立への指導,管理体制,防災体制等について具体的に検討し,必要とする施設機能を設定することが重要である。
【病弱に対応した施設】:病弱に対応した特別支援学校の寄宿舎では,病院での学習・生活に準じた配慮が必要となることに十分留意することが重要である。

(10)入院生活等の分析とその条件設定:【肢体不自由又は病弱に対応した施設】
1 病院等に併置する場合は,病院等内及び学校で行われる学習・生活について,具体的に分析・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。
  なお,病院等との密接な連携の中で,幼児児童生徒の病院等内における学習・生活のために,発達年齢,生活環境,心理状態等についても十分配慮された施設機能が設定されることが望ましい。
2 病院等からの通学の方法や経路等について,具体的に分析・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。
3 病院等と学校との間の日常的な打ち合わせ,定期的な会議などの種類や内容等を具体的に分析・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。

 (11) 教職員等施設の機能の設定
1 学校の教育目標や運営方針に基づき,中央職員室,各部の職員室,寄宿舎職員室,教員研究室,会議室,休憩室,更衣室,運転手控え室等や事務部門などの構成を検討し,情報・通信機器の導入も含め,必要な施設機能を設定することが重要である。
2 諸活動を支援する支援員や学生,ボランティア,保護者など教職員以外の当該学校の活動に関与する者の活動状況等を分析・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。

 (12) 事務管理・運営のための施設機能の設定
1 各部の編制や運営方式に対応した事務管理・運営システムを教職員施設の機能と併せて検討・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。
2 施設各部の利用状況等に応じた防災システムを確立し,必要な施設機能を設定することが重要である。
3 建物各部,各種設備,植栽等の維持管理等の方針を確立し,具体的な方法を検討・把握して,施設計画・設計に反映させることが重要である。

 (13) 地域における学習活動等に対応するための機能の設定
 地域における学習需要を分析し,学校教育に支障を及ぼさないよう配慮しつつ,当該特別支援学校における学習機会や場の提供について,その内容及び方法を検討し,必要な施設機能を設定することが重要である。

 (14) 地域の諸施設との有機的な連携
1 地域における特別支援教育の中核的な役割を踏まえ,各部の学習・生活内容等に応じ,地域内の文教施設との有機的な連携について検討し,必要に応じ,これらの施設との相互利用・共同利用に伴う施設機能を設定することが重要である。
2 「個別の教育支援計画」の実施に留意しつつ,福祉施設や医療機関等との連携の内容及び方法等について,部ごとに分析・把握して,緊密な連携を可能とする施設機能を設定することが重要である。
3 高等部において職業教育を主として教育課程を編成・実施する場合は,地域の医療関係施設や高等学校,大学,工業技術教育センター,情報処理教育センター,研究機関,企業等との連携等について十分分析・把握し,必要な施設機能を設定することが重要である。
4 他の特別支援学校等を併置する場合は,幼児児童生徒や教職員の生活面における交流等学習・生活における相互の関係について十分検討し,それぞれの学校にふさわしい学習・生活環境を,空間の共用・多目的利用等に配慮しつつ確保するなど,全体として必要な施設機能を設定することが重要である。
5 学校と地域社会との連携を深め,また地域防災力を強化する観点から,社会教育施設や高齢者福祉施設等との施設間の相互利用,共同利用等による学習環境の高機能化及び多機能化に寄与する複合化について計画することは有効である。その際には,幼児児童生徒の学校施設における学習と生活に支障を生ずることのないよう計画し,設計することが重要である。

 (15) 室構成の決定
1 当該学校に備えるべき施設機能に基づき,敷地の規模や校舎,屋内運動場等の各施設の面積規模を勘案しつつ空間の共用・多目的利用等を検討し,必要な室・空間の種類,数,面積等を適切に決定することが重要である。
2 特に,学習集団や生活集団の数の増加や規模の変化,多様な編成等に十分留意し,必要な室・空間を確保できるように室構成を決定することが重要である。また,学校の規模や各部の利用状況等に応じ,特別教室の構成を十分に検討し,適切に設定することが重要である。
3 複数の部がある場合,又は複数の障害に対応した施設とする場合には,共用する施設機能を考慮しつつ,必要な室・空間を確保するよう室構成を決定することが重要である。
4 幼児児童生徒の障害の状態や特性,人体寸法,動作域に適合した家具の導入について計画することが重要である。

4 計画的な整備の実施

(1) 企画,基本計画・設計,実施設計及び施工の各段階を明確に捉え,特に,企画及び基本計画・設計の各段階において十分な期間を確保し,当該特別支援学校施設への様々な要請に適切に対応しながら学校施設を計画することが重要である。その際,先進事例の視察,資料の収集,専門家の意見の聴取等を行うことも有効である。
(2) 企画から施工に至る整備の各段階において,各段階相互の内容的な連続性,整合性等を十分に確保することが重要である。
(3) 完成後には施設に係る評価を定期的に行い,今後の改修・改築等の計画に生かしていくことが重要である。
(4) 施設の整備を段階的に行う場合は,最終的な施設環境を想定した上で,それぞれの段階での学校運営への施設対応を検討し計画を策定することが重要である。

5 長期間有効に使うための施設整備の実施

(1) 学校施設を常に教育の場として好ましい状態に維持するためには,日常の点検・補修及び定期的な維持修繕が必要であり,これらを行いやすい計画とすることが重要である。
(2) 建物構造体を堅固につくり,室区画や室仕上げは将来の学習内容・形態の変化に応じて変更可能とし,設備の交換・補修を容易にするなどにより,長期間建物を有効に使う計画とすることが重要である。
(3) 情報技術の進展をはじめとする将来のニーズや機能の変化を見込んで,改修しやすい施設となるよう計画することも有効である。
(4) 改築より工事費を抑えながら改築と同等の教育環境を確保でき,排出する廃棄物も少ない長寿命化改修※を積極的に取り入れていくことが重要である。
※長寿命化改修・・・物理的な不具合を直し建物の耐久性を高めることに加え,建物の機能や性能を現在の学校が求められている水準まで引き上げる改修方法。

6 学校施設の有効活用

(1) 学校施設を地域に密着した社会資本として有効に活用していくことが重要である。
(2) 学校施設を常に教育の場として好ましい状態に維持するとともに,その機能を発展させるためには,教職員,幼児児童生徒,保護者,地域住民等の学校関係者が対話し考えながら,持続的・計画的な維持修繕を行うとともに,施設機能を維持するための予防保全を行っていくことが重要である。
(3) 学校施設を有効活用するためには,学校施設の企画・計画,整備,維持管理を一体的に検討し,長期的,戦略的な視点から施設を建設・維持,活用する考え方(施設マネジメント)を導入することも有効である。
(4) 学校施設の整備に当たっては,建設・使用・解体に至るまでの総エネルギー使用量の削減,「もの」を大切にするという教育的な側面からも,改修による既存学校施設の再生を図ることが重要である。
(5) 既存学校施設の再生に当たっては,以下の視点を踏まえ進めていくことが重要である。
1 既存学校施設を改修するに当たっては,学校関係者で考える場をつくり,施設の利用状況や施設機能等の実態を調査・把握するとともに,施設利用者の要望も把握しながら計画する。
2 施設機能を確保しつつ教育内容・方法等の変化に対応するとともに,地域における歴史的・文化的価値を継承しながら地域のシンボルとして活用するという視点から検討し,改修目標を設定する。
3 長期間良好に使い続けるための機能性,安全性,空間性,デザイン性の向上,シンボル性の継承などの観点から,学校関係者で改修計画を作成し,適確に改修を実施する。
4 実施した改修の評価を行い,改修手法を蓄積するとともに,学校関係者が参加しながら持続的,計画的な維持管理を行う。
また,特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の増加への対応のため,高等学校等の既存施設を特別支援学校に転用する場合は,上記1から4に加え,以下の視点を踏まえ,進めていくことが重要である。
5 当該既存施設の特性を踏まえつつ,幼児児童生徒一人一人の障害の状態及び発達の段階や特性,それに応じ必要となる環境条件等を的確に把握・分析して,必要な施設機能を設定する。
6 屋外運動施設等,既存施設の機能を積極的に活用するといった視点にも配慮しつつ計画する。

7 関係者の参画と理解・合意の形成

(1) 当該地方自治体や学校において実施しようとする特色ある学習内容・形態等に対応できるものにするとともに,地域と連携した学校運営が行われるよう,当該学校施設の整備における関係者である教職員,幼児児童生徒,保護者,地域住民等との間で,企画の段階から十分な意見交換の機会を設けて,理解と合意の形成に努めることが重要である。
その際,学校建築や情報システム等の専門家その他の学識経験者の協力を求めることも有効である。
(2) より効果的・効率的な施設運営を行うためには,施設の完成後においても継続的に施設使用者との情報交換等を行うことが重要である。
このことは,設計当初の施設機能が十分に活用され,利用実態の面から安全性を確保する上でも重要である。
(3) 学校開放を行う施設の利用内容・方法や管理方法,当該学校施設が周辺地域に及ぼす騒音・交通・塵埃等の影響,災害時の対応等について,事前から地域住民等と十分協議することが重要である。特に,避難所となる場合は,避難所開設時における学校施設の利用方法や,教育活動の早期再開に向けた対応について,地域住民や防災担当部局と十分協議することが重要である。
(4) 外部資金等を活用する事業手法の場合には,当該事業の施工や維持管理において必要な施設水準を確保するため,発注者は,実施方針の公表や要求性能の提示に当たって,施設利用者等との間で十分に協議する機会を設けて相互理解と合意の形成に努めるとともに,その意向を要求性能等に可能な限り盛り込むことが重要である。

8 整備期間中の学習・生活環境の確保

(1) 増改築や改修等の実施においては,その手順を十分検討し,適切な方法により,整備期間中の学校教育や部活動等に必要な環境を確保することが重要である。
(2) 整備期間中においては,適切な事故防止対策を講じるとともに,工事に伴う車両等の出入り,騒音,振動,塵埃等の発生により,幼児児童生徒の健康や安全及び学習や生活に支障の生じることのないように特に留意することが重要である。また,適切な仮校舎を確保することも有効である。
情緒障害や自閉症,ADHD等の障害を併せ有する幼児児童生徒が在籍している場合は,騒音,振動等の刺激によるパニックや多動・衝動性等に十分配慮することが重要である。
なお,他の文教施設等と併置する場合は,その施設の利用者等の安全にも支障を生じることのないよう十分配慮することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:病院等に併置する場合は,その病院等の業務や他の入院中の患者等の生活や安全に支障が生じることのないように特に留意することが重要である。

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大臣官房文教施設企画部施設企画課

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