第8章 設備設計

第1 基本的事項

1 安全性

(1) 多様な学習及び生活の諸活動等において生徒等の安全及び健康に支障を生じることのないよう十分な防災性,防犯性など安全性を考慮して計画し,設計することが重要である。
(2) 生徒の誤っての接触や教材・教具等の衝突などによる事故等の防止に十分留意して,機器,操作装置等の設置位置,高さ,仕様等を計画することが重要である。
(3) 機器等は十分堅牢なものとなるよう計画し,設計することが重要である。また,機器等の設置及び配管は,地震時等においても事故や落下・転倒等による危険の生ずることのないよう計画し,設計することが重要である。

2 信頼性

(1) 安定した確実な性能の機器を選定し,システムを計画し,設計することが重要である。
(2) 構造体の変形に柔軟に追従することができるよう配管,配線等を設計することが重要である。

3 機能性

(1) 学習,生活等において要求される各室・空間の機能及び環境を確保し,維持することができるよう平面計画,各室計画等と総合的に計画し,設計することが重要である。その際,必要に応じて,障害者や高齢者の利用を考慮した計画とすることが望ましい。
(2) 将来の学習内容・学習形態等の変化に伴い必要とされる機能の変化,住民の生涯学習への利用の増加等に柔軟に対応することができるよう十分な弾力性を確保して計画し,設計することが望ましい。
(3) 環境教育に直接寄与する設備・計測機器等の設置を計画することも有効である。
(4) 災害時には地域の避難所としての役割も果たすことから,必要な情報通信,電気,ガス,給排水等の機能を可能な限り保持できるよう,貯水槽,浄水機能を有するプール,自家発電設備,避難者のための便所など,代替手段も含めた対策を講じることが重要である。

4 利便性

(1) 各室・空間の利用状況等に応じ利用者が各設備を適宜運転し,停止し,又は調節することができるよう操作性の確保に留意して計画し,設計することが重要である。
(2) 室・空間を分割して利用することを計画する場合には,分割した各空間において必要となる設備を確保し,適宜操作することができるよう設計することが重要である。
(3) 構造体や内部区画及び仕上げの形式に関わらず設備機器等の更新・増設等に柔軟に対応できるようにするとともに,必要とする維持管理を適切に行うことができるよう維持管理の方法について十分検討して計画し,設計することが重要である。

5 効率性

(1) 各室・空間の利用内容,利用状況等に応じエネルギーを効率的かつ適切に供給することができるよう平面計画及び各室計画と併せ総合的に検討して計画し,設計することが重要である。
(2) 設備機器・システムは,環境負荷の低減に配慮して計画し,設計することが重要である。
(3) 太陽熱給湯や太陽光発電,風力発電等については,導入規模,維持管理方法,休暇期間中の対応などを十分考慮して計画することが望ましい。
(4) 節水型器具の導入,雨水の便所洗浄水や校庭散水への利用,プール水の循環利用,排水再利用など水資源を無駄なく有効に活用する工夫を検討することが望ましい。

6 快適性

各室・空間の利用内容,利用状況等に応じ,適切な環境が得られるように計画することが重要である。その際,必要に応じて,障害者や高齢者の利用にとって良好な環境が得られるように計画することが望ましい。

第2 照明設備

1 共通事項

(1) 照明器具は,当該空間の利用内容,利用時間帯等に応じ必要となる照度を確保し,見やすくまぶしさのない良質な光の得られるものを選定し,設計することが重要である。
(2) 照明器具の配列は,当該空間の面積,形状等に応じ,活動空間の各部における明るさの分布が均一となるよう,また,まぶしすぎないよう設定することが重要である。
(3) 照明器具の設置位置は,必要な維持管理等の方法,他の活動空間,周辺地域等に与える影響等について十分検討し,適切に決定することが重要である。
(4) 照明の配線系統は,適宜各部の照明の点滅等を行うことができるよう照明器具の配列等に応じ適切に計画し,設計することが重要である。
(5) 照明の点滅装置は,操作しやすい仕様のものを選定し,適切な位置に配置することが重要である。また,環境負荷の低減等の観点からは,センサー等を利用した方式を選定することも有効である。

2 室内照明設備

(1) 各室・空間の照明の方式,器具の種類,配列及び設置位置は,当該各室・空間の面積,形状等に応じ,適切に設定し,設計することが重要である。
(2) 授業時などにおいて生徒が注視する面及び視野に入る部分に設置する照明設備は,照明の光源が直接生徒等の目に入らないよう照明の方式を適切に設定し,向きに留意して適切な位置に配置することが重要である。
(3) コンピュータ教室,視聴覚教室等の室・空間の照明設備は,コンピュータや視聴覚教育メディアのディスプレイ画面等への光源の映り込みを防止することができるよう照明の方法及び照明器具の種類を適切に設定し,ディスプレイ等の機器の配置に応じ適切に配列することが重要である。
(4) 視聴覚教育メディアを頻繁に活用する室・空間の照明設備は,必要に応じ適宜室内各部の照度を調節することができるよう設計することが望ましい。
(5) 照明設備は落下防止措置を行うとともに,必要に応じ,破損防止の措置を講じることが重要である。特に,運動を行う室・空間の照明設備は,破損・落下防止の措置を講じるとともに,活動の支障とならない位置に堅固に取り付けることが重要である。
(6) 災害時の利用も踏まえ,自家発電設備で発電した電気で屋内照明を点灯させるために配線を工夫することや,可搬式発電機の取付口を設けておくことが望ましい。また,省エネ型の照明器具は非常時に電力供給量が不足する場合にも有効である。
(7) 避難所となる場合には,居住スペースとなる部分について,夜間に明るすぎて避難者が眠れないことがないよう,調光機能付きの照明とすることも有効である。

3 屋外照明設備

(1) 外気に直接露出する機器等は,当該地域の気候的状況等を勘案し,十分な耐候性を備えるよう計画し,設計することが重要である。
(2) 照明機器は,必要に応じ,破損防止の措置を講じるとともに,堅固に取り付けることが重要である。また,周辺環境への影響を考慮するとともに,必要に応じ,非拡散性の光源のもので計画することが重要である。
(3) 防犯や防災を目的として校地周辺部,建物周囲等を照明し,又は学校施設のシンボル性の強調等を目的として建物,前庭部等をライトアップする常夜灯を設置することも有効である。
(4) 避難路については,夜間等に停電した場合においても安全に避難できるよう照明等を計画することが望ましい。

第3 電力設備

1 コンセント

(1) 各室・空間におけるコンセントの種類,規格,数等は,当該各室・空間における電力を使用する教育機器等の種類,数,使用電力量等を適切に把握するとともに,将来における各室・空間の使用方法等の変更にも対応できるよう設計することが重要である。
(2) 各室・空間におけるコンセントの設置は,使いやすい位置に,安全な仕様で設計することが重要である。
(3) フロアコンセントを設ける場合は,位置,設置方法等に十分留意して設計することが重要である。
(4) 電圧の高いコンセントには,その電圧,用法等を明記することが望ましい。
(5) 安全性を考慮し,できる限り漏電遮断機を設置することが望ましい。

2 受変電設備,自家発電設備等

(1) 受変電設備,自家発電設備の容量は,電気を必要とする教育機器,設備等を適切に把握し,電力の需要率を十分検討し,必要な数値を設定して設計することが重要である。
(2) 避難所となる学校施設においては,災害による停電時にも照明などに電気が使えるよう,自家発電設備を整備することも有効である。
(3) 電力使用量を常に把握するため,電力値を計測できるよう設計することも有効である。
(4) 受変電設備,自家発電設備は,津波,洪水,高潮等の想定される災害に対して安全な場所に設置することが重要である。
(5) 受変電設備,自家発電設備の周囲は,必要な高さの施錠可能な防護柵を設けるなどの措置を講ずることが重要である。
(6) 太陽光発電設備を整備する場合には,停電時においても自立運転でき,充電した電気を夜間にも使えるよう蓄電機能を備えておくことが望ましい。
(7) 風の強い地域では,風力発電の導入について検討することが望ましい。
(8) 配線の系統は,用途等に応じ,適切に区分して設計することが望ましい。

第4 情報通信設備

1 映像系設備

(1) 共聴アンテナによりテレビ放送等の受信を行う場合には,電波の増幅,各室への配線経路等に十分留意することが重要である。
(2) 共聴アンテナを建物外構に設置する場合には,転倒防止,維持管理の方法等について十分留意して設置することが重要である。
(3) 校内番組などの放送のための設備を設置する場合には,受信する各室における映像等の選択,調整等に留意しつつ,送信する映像等の種類に応じ,適切な送信方式を検討し,設計することが重要である。
(4) TV等の受像装置は,窓,照明等の位置を考慮して適切な位置を選定し,台,壁等に堅固に取り付けることが重要である。

2 音声系設備

(1) 拡声器等は,利用目的に応じ,可聴範囲に留意しつつ,適切な位置に,堅固に取り付けることが重要である。
(2) 受信側で音量を任意に調節することができるよう設計することが重要である。
(3) 非常時に生徒等の速やかな避難行動を促すことができるよう,停電時にも対応できる校内放送設備を整備することが重要である。
(4) 屋外に設置する拡声器については,その音響が周辺へ支障を及ぼすことのないよう位置及び向きに十分留意して設計することが重要である。

3 情報系設備

(1) 校内電話,インターフォン,校内LAN,テレビ会議等の設備は,利用の目的に応じ,必要とする回線網を適切に確保することのできるようあらかじめシステムを検討し,導入することが重要である。
(2) 特別教室,運動施設その他管理関係室から離れている室等には,必要に応じ,校内電話等の通信設備を設けることが望ましい。
(3) コンピュータ,視聴覚教育メディア等のネットワークを構築する場合には,ネットワークに組み込まれる各室・空間に,情報用のアウトレットやコンセントを適切に配置することが重要である。
(4) 室内,廊下等を含めた校内のあらゆる場所で,急速に変化する様々なメディアに対応できるよう柔軟性を持たせた設計とすることが重要である。
(5) 災害情報を入手するため,防災行政無線の受信装置を備えておくことが重要である。
(6) 非常時においては,安否確認や救援要請など,外部との連絡が必要となることから,行政機関等との相互通信が可能な防災行政無線設備等を整備しておくことが有効である。なお,津波等の災害により孤立する可能性がある場合には,救助を求めるための情報通信機能を緊急避難場所に持ち出して使えるようにしておくことが重要である。
(7) 避難所となる場合には,災害時に避難所利用者が電話や電子メール等で安否確認等を行うことができるよう,特設公衆電話※等の避難所の情報通信環境を整備することが重要である。
※特設公衆電話・・・災害時の避難所での早期通信手段確保及び帰宅困難者の連絡手段確保のため,無料で利用できる公衆電話

第5 給排水設備

1 給水設備

(1) 受水槽,高架水槽等は,学習,生活等において利用する水の量を生徒数,教職員数等に応じ適切に算定し,同時使用率を考慮して適切な容量を設定し,適切な位置に設置することが重要である。また,災害時の利用も考慮して整備することも有効である。
(2) 飲料水用の水槽の設置については,衛生管理を行いやすいよう位置を適切に選定し,周囲に管理作業上必要な動作空間を確保することが重要である。
(3) 水栓の個数,配置及び配管の経路は,利用状況に応じ,効率的かつ支障なく水の供給を行うことができるよう適切に設計することが重要である。
  屋外における教育活動の実施を考慮し,必要に応じ,普通教室,特別教室前のテラス等への水栓の設置について計画することも有効である。
  また,飲料用の浄化装置等を備えた水道についても,必要に応じ設置を検討することが望ましい。
(4) 散水設備を設置する場合には,必要な散水能力を合理的に設定し,利用しやすく,生徒等の運動や学習・生活活動に支障を生じないよう適切に位置を選定し,設計することが重要である。
(5) 消防用水や生活用水として,雨水貯留槽の水を利用する計画とすることは,災害時にも有効である。

2 排水設備

(1) 当該地域における公共下水道施設の整備状況等を十分把握し,排出される汚水,雑排水等を適切に処理することのできる排水方式を計画し,設計することが重要である。
(2) 下水処理施設の被災や下水管の破損によりトイレが使用できなくなることもあることから,汚水貯留槽の学校敷地内への設置などの対策を検討しておくことが望ましい。
(3) 浄化槽等を設ける場合には,生徒数及び教職員数,地域からの利用者数等に応じた適切な処理能力をもつよう設計することが重要である。
(4) 浄化槽,配管経路等は,雨水が流入し,又は汚水が流出することのないよう適切な構造とすることが重要である。
(5) 浄化槽等の設置は,清掃車が駐車することのできる部分との連絡がよい位置を選定し,周辺に管理作業上必要な空間を確保することが重要である。
(6) 理科教室等においては,簡易廃液処理装置等の設備を設置することが重要である。
(7) 調理室においては,バスケットを備えたグリーストラップ等の設備を設置することが重要である。

第6 空気調和設備

1 共通事項

(1) 地域の気象条件,建物規模,設備を必要とする各室・空間の面積,形状,利用目的及び利用時間,生徒や教職員等の健康面への影響,維持管理等の諸条件を総合的に検討し,設計することが重要である。
(2) 配管系統は,各室・空間において適宜設備の運転,停止及び調節を行うことができるよう適切に区分して設定することが重要である。
(3) 操作・制御装置は,操作しやすい仕様とし,適切な位置に配置することが重要である。

2 換気設備

(1) 各室・空間の利用内容等に応じ,適切に設置を計画することが望ましい。
(2) 火気を使用する室,じんあい,ガス,臭気等の発生を伴う室,冷暖房の行われている室,活動内容により密閉状態で利用する室等においては,必ず換気設備を設置することが重要である。また,その他の室・空間にあっても室内空気汚染の低減のため,換気設備を設置するとともに,日常的な運転及び定期的な清掃・点検を行うことが重要である。
(3) 必要な換気量を適切に設定し,これに見合うよう種類,規格,数等を計画し,設計することが重要である。
(4) 設置位置は,当該各室・空間の形状等に応じ,適切な高さ,配置等とすることが重要である。
(5) 新鮮空気の取入れ口は,適切な面積を確保し,冬季において冷風が直接生徒等の体に当たることのないよう仕様及び位置を適切に設定し,設計することが重要である。
(6) 学習の過程においてじんあいの発生する室・空間には,必要に応じ,除・集じん装置を設けることが望ましい。

3 冷暖房設備

(1) 当該各室・空間の壁,開口部などの断熱化,室形状,自然の通風条件等と併せ総合的に計画することが重要である。
(2) 設置する各室・空間の容量,形状,利用人数,学習内容等に応じ,冷暖房の負荷を適切に設定し,方式,規格,数等を計画し,設計することが重要である。
(3) 設置位置は,当該各室・空間の形状,机などの配列等に応じ,適切に決定することが重要である。
(4) 冷暖房の運転及び調節の方法,機器の安全性を十分検討し,適切に仕様を設計することが重要である。
(5) 屋内運動場を体育活動や儀式的行事,学芸的行事,各種集会,学習・研究成果の発表等に利用することを考慮し,地域の寒冷度,利用状況等を十分検討した上で,暖房設備の設置を計画することが望ましい。
(6) 保健室や特別支援学級関係室等は,地域の実態等に応じ,暖房設備又は冷房設備の設置を計画することが重要である。
(7) 災害時の利用も踏まえ,再生可能エネルギーを活用した冷暖房設備の設置を計画することも有効である。
(8) 避難所開設時には,冷暖房設備を設置した部屋を,高齢者,障害者,妊産婦等の要配慮者の専用スペースとすることも有効である。

第7 防災設備

(1) 自動火災報知設備,非常用押ボタン等の警報設備は,火災の発生を早期に感知し,生徒,消防機関等に迅速に通報することができるよう建物規模等に応じ適切に設計することが重要である。
(2) 屋内消火栓設備等の消火設備は,火災の発生時に早期に適切に消火し,被害を最小限に抑えることができるよう建物規模等に応じ適切に設計することが重要である。
(3) 避難器具,避難設備などは,火災時における生徒等の安全な避難を確保することができるよう建物規模,生徒等の人数等に応じ適切に設計することが重要である。
(4) 消防用設備などについては,生徒の日常における学習,生活等に支障を生じることがないよう設置のために必要な空間を適切な位置に確保することが重要である。
(5) 防火シャッターについては,維持管理体制にも十分留意しつつ,生徒に対する危害防止対策として,閉鎖作動時の危害防止機構等の設置とあわせ,音や光による注意喚起装置を設置することが望ましい。
(6) ガス使用場所については,ガス漏れ検知器について計画することが重要である。

第8 その他の設備

1 昇降機設備

エレベーターの設置については,障害のある生徒や教職員の在籍状況,特別支援学校等との交流及び共同学習や地域住民への開放の計画,学校給食等物品の運搬等を総合的に検討し,位置,規格等を計画し,設計することが重要である。

2 廃棄物処理施設

(1) ごみの減量化,環境教育の教材として,生ごみの堆肥化のための施設の設置も有効である。
(2) ごみのリサイクルの推進のため,ごみの保管場所や分別のための場所について計画することが有効である。 

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