第9章 防犯計画

第1 基本的事項

1 全体的な防犯計画

 建築計画的な対応と建築設備的な対応について,幼児児童生徒の障害の特性等に留意し,デザイン面での配慮や他機能とのバランス,費用面での検討,学校や地域の特性等を踏まえ,個々別々ではなく総合的に計画し,安全管理に関する運営体制等のソフト面の対策とも併せ全体として整合性がとれたものとすることが重要である。

2 視認性・領域性の確保

 屋外各部及び建物内の共用部分等は周囲からの見通しを確保した上で死角となる場所をなくし,どの範囲を何によってどう守るのかが明確になるよう,配置計画,動線計画,建物計画,各部位の設計等について工夫することが重要である。

3 接近・侵入の制御

 犯罪企図者の動きを限定し,学校の敷地内や建物内等,守る範囲への接近・侵入を妨げ,犯罪を抑止するよう,配置計画,動線計画,建物計画,各部位の設計等について工夫することが重要である。

4 定期的な点検・評価の実施

 防犯対策に係る施設・設備については,定期的に,また,必要に応じて臨時にそれらの機能について点検・評価し,不都合が生じている場合は,迅速に改修,修理,交換等の改善措置を講じることが重要である。

5 防犯設備等の積極的な活用

 定期的な防犯訓練等を通じ,防犯設備の使用方法等について周知徹底を図ることが重要である。

第2 敷地境界及び敷地内部の防犯対策

1 施設配置

(1) 校舎内や周囲からの見通しがよく,敷地内において死角となる場所がなくなるよう各建物,屋外施設,門等の配置に留意することが重要である。また,建物等を増築する場合は,新たに死角となる場所をつくらないよう既存施設等との関係に十分に留意することが重要である。

(2) 職員室,事務室等については,アプローチ部分や屋外運動場等を見渡すことができ,緊急時にも即応できる位置へ配置することが重要である。また,調理室等についてはサービス用車両の進入頻度も高いことから,その配置や動線計画について配慮することが望ましい。

(3) 特に適切な指示・誘導や介助が必要な幼児や低学年の児童が活動する施設については,防犯上の安全性を確保するため,テラスや遊び場等の屋外スペースを含めその活動範囲を明確にしたり,敷地境界からの距離を十分に確保することや,非常時に即応可能なように,職員室や事務室等の教職員の居場所から近い位置や見通しのきく位置に配置する等の配慮が重要である。

(4) 建物等の配置上,やむを得ず死角となる場所については,防犯監視システムの導入や定期的なパトロールの実施等の対応をとることが重要である。

2 門

(1) 不審者の侵入防止や犯罪防止等の観点から,職員室や事務室等の教職員の居場所から見通しがよく,死角とならない位置に門を設置することが重要である。

(2) 不審者の侵入を防ぎ,かつ,登下校時や避難時に幼児児童生徒が円滑に敷地内外に出入りすることができるよう,門の施錠管理を適確なものとすることが重要である。

(3) 登下校の利便性,サービス用車両の進入等のために,見通しのきかない位置に門を設けざるを得なかったり,死角となったりする場合は,門の施錠や開閉による来訪者の出入管理に特に留意することが重要である。その際,在籍している障害のある幼児児童生徒に加えて,地域の障害者や高齢者の利用にも支障が生じないよう配慮することが望ましい。

(4) 外部からの来訪者を確実に確認できるよう,来訪の際は必ず受付場所へ立ち寄る旨の表示を門等に掲げることが重要である。

(5) 外部からの来訪者が建物内の受付場所へ容易に行くことができるよう,誘導のための案内図やサインを門の周辺に計画することも有効である。

(6) 外部からの来訪者を確認し不審者の侵入を防ぐため,防犯カメラや赤外線センサー,インターホン等の防犯設備を,門の周辺に設置することも有効である。

3 囲障

(1) 学校の領域性を確保し不審者の侵入を防ぐため,周辺地域の状況や施設の配置に応じて守るべき領域の境界に囲障を計画することが重要である。

(2) 囲障を計画する際,特に防犯の面からは,周辺からの見通しを妨げるブロック塀等は避け,視線が通り死角を作らないフェンス等を採用することが重要である。また,周辺環境との調和を図るため,植栽等と組み合わせることも有効である。

(3) 学校建物が周辺建物と密接して立地している場合等で,隣接建物等から不審者の侵入が心配される状況では,囲障について十分な高さや形状を確保することが重要である。

(4) 不審者の侵入や接近を防ぐため,防犯カメラや赤外線センサー等の防犯設備を,必要に応じ囲障の周辺に設置することも有効である。

4 外灯

(1) 夜間における安全性を確保するため,門やアプローチ,敷地境界,建物周囲等の適切な位置に,人の行動を視認できる程度以上の照度を確保できる間隔で外灯を設置することが重要である。その際,省エネルギー対策や近隣の住宅への影響等にも留意することが望ましい。

(2) 不審者が侵入する可能性のある場所や通用門,駐車場等に,外灯の外にセンサー付きライト等を必要に応じ設置することも有効である。

5 植栽

 敷地周辺,敷地内の植栽については,環境に潤いを与える等の緑の持つ効果にも留意した上で,校舎内や敷地周囲等からの見通しを確保し死角の原因とならないよう植栽計画を立案することが重要である。また,樹種,樹高等に応じ定期的に剪定する等の維持管理を行うことも重要である。

6 駐車場,自転車等駐車場

(1) 自動車や自転車等を使用する来訪者を適確に確認できるよう,駐車場や自転車等駐車場の配置,構造等に留意することが重要である。

(2) 校舎内や周囲からの見通しを確保し,駐車場や自転車等駐車場の中に死角を生じないよう配慮することが重要である。

(3) 夜間における不審者の侵入や犯罪を防止するため,駐車場や自転車等駐車場に外灯を設置し,人の行動を視認できる程度以上の照度を確保することが望ましい。

第3 建物の防犯対策

1 受付

(1) 外部からの来訪者を確認し,不審者を識別できるようにするため,運営体制を考慮した上で,来訪者の使用する門に隣接した場所や建物の出入口付近等の分かりやすい位置に,来訪者応対用の受付を設置することが重要である。

(2) 受付では,外部からの来訪者が住所,名前,来訪目的等を記帳した上で,名札やリボンを着用するなど,不審者を識別できるようにすることが重要である。なお,名札やリボン等の適確な管理にも留意することが望ましい。

(3) 受付は,職員室や事務室等に隣接した位置又はその一部や,開放部分の入口等に設置することが望ましい。

(4) 学校の防犯対策については,保護者,地域住民,警備会社,警察等の協力の下に実施することが重要であり,これらの人々の学校内での控室を受付に隣接した位置に設置することも有効である。

(5) 受付の周辺に,用件が曖昧な来訪者等を案内し一時待機させるためのスペースを設定しておくことも有効である。

2 窓・出入口

(1) 接地階に位置する教室,廊下等の窓・出入口については,容易に破壊されにくいものとするよう留意するとともに,非常時の避難にも配慮しつつ,適確な施錠管理を行うことが重要である。

(2) 職員室や事務室等の建具のガラスを透明なものとし,教職員等の視線が常に周囲に行き届き,校内の状況を把握できるようにすることも有効である。

3 避難経路

(1) 非常時に幼児児童生徒が迅速に避難できるよう,複数の避難経路を確保する等の配慮が重要である。その際,幼児児童生徒にとってわかりやすく,記憶しやすい動線の設定に十分留意することが重要である。

(2) 通常の施錠管理を確実に行うとともに,火災や地震等の避難時には内側から簡単に解錠できる構造にも留意することが望ましい。

第4 防犯監視システムの導入

1 設置目的・場所

(1) 防犯監視システムを設置する際は,外部からの来訪者の確認,見通しが困難な場所や死角となる場所の状況把握,犯罪企図者の侵入防止や犯意の抑制,幼児児童生徒の安心感の醸成等,学校や地域の状況を踏まえ,その設置目的を明確化することが重要である。

(2) 防犯監視システムは,見通しが困難な場所や死角となる場所にある門,建物の出入口付近,敷地境界,敷地内や建物内で人目が届かず死角となる場所等に設置することが有効である。

2 出入管理

(1) 外部からの侵入を防ぎ,学校関係者のみが出入りできるように,建物の出入口等に,テンキーパッド,カードリーダー等の認証装置や遠隔操作による開閉装置を設置することも有効である。

(2) 外部からの来訪者を適確に確認するため,門や受付場所のある建物の出入口等に音声タイプやテレビタイプのインターホンを設置することも有効である。

3 侵入監視

(1) 目の届かない場所への外部からの人の出入りや人の存在の有無を把握するといった設置目的を明確化した上で,室内や敷地境界等にセンサーを導入することも有効である。

(2) 防犯カメラを導入する場合は,モニター,記録装置等が必要であり,その設置目的に応じて,設置場所,監視・運用体制等を総合的に勘案することが望ましい。

4 監視体制への配慮

防犯監視システムの導入に際しては,モニター等による監視体制を併せて考慮することが望ましい。

5 夜間・休日の機械警備

警備会社と連携した防犯監視システムを導入し,夜間や休日における建物内への侵入犯罪等の発生を把握し,適切に対応することで防犯対策をより確実なものとすることも有効である。

第5 通報システムの導入

1 通報装置  

(1) 緊急事態発生時に,校内各教室・スペース,校長室,職員室,事務室相互間や,警察,消防への連絡等が迅速に行えるよう,普通教室,特別教室,屋内運動場等の幼児児童生徒が常時活動する場所に,インターホンや電話等の通報装置を設置することが重要である。
 【聴覚障害に対応した施設】:障害の特性に留意し,光や文字により緊急事態の発生を知らせ避難誘導するための設備を適切に設置することが重要である。

(2) 緊急事態の発生を関係者に迅速かつ適確に伝達するため,防犯ベル・ブザーや非常押しボタン等を校内の適切な場所に設置したり,ペンダント型押しボタン等を教職員に配布することも有効である。

2 連絡システム

(1) 校内の幼児児童生徒,教職員等に緊急事態の発生とその具体的内容,とるべき処置等を迅速に伝達するため,校内連絡システムを整備することが重要である。

(2) 緊急事態発生時に,各学校から直接警察や消防等に通報できるホットラインを設けることも有効である。

(3) 緊急事態発生時の学校内外の連絡,情報管理,報道対応等を適確に行うための対策本部を設置する場所を決め,通信機器等の設備や打ち合わせスペース等を確保しておくことも有効である。

(4) 緊急事態発生時に,幼児児童生徒の避難誘導,安全確認等を迅速に行うことができるよう,各学校の危機管理マニュアル,幼児児童生徒の名簿や顔写真,緊急連絡先リスト,拡声器,通信機器等をまとめ,適切な場所を定め保管し,直ちに持ち出せるようにしておくことも有効である。

第6 その他

1 学校施設の開放時の留意点

(1) 学校施設を地域住民等に開放する際,非開放部分に部外者が入らないよう施設面での措置を講じることが重要である。

(2) 開放部分と非開放部分の境界に相互に見通しのきくパイプシャッターや扉を設置し,施錠できるようにすることも有効である。

(3) 管理者を置かない場合の学校施設の開放に際しては,使用団体等への錠の授受方法や保管方法等について検討し,万一紛失等があった場合の対応方法を明確にしておくことが望ましい。

2 複合施設の場合の留意点

(1) 学校施設及び複合化する施設のそれぞれの専用部分,共用部分について,それらの領域を明確化するとともに,その防犯対策に関する責任の所在や役割分担について明確にしておくことが重要である。

(2) 防犯監視システムや通報システム等の導入に際しては,効果的かつ効率的な防犯対策とするため,学校施設及び複合化する施設の双方を総合的かつ全体的に計画することが望ましい。

3 通学路の安全性の確保

(1) 幼児児童生徒の通学路については,周囲からの見通しの確保や,防犯灯,街路灯等の設置により夜間照度を確保することが重要である。

(2) 地下道等の危険や不安の多い通学路については,警察等の関係機関や地域団体と連携し,地域の状況等に応じて,防犯ベル,防犯カメラ,警察に対する通報装置等を設置することも有効である。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画部施設企画課

課長 長坂 潤一(内線2286) 課長補佐 瀬戸 信太郎(内線3181) (特別支援学校)指導第一係長 野口 公伸(内線2291) (高等学校)環境施設企画係長 小林 和弘(内線2288)
電話番号:03-5253-4111(内線2291)

(大臣官房文教施設企画部施設企画課)